著者
仲田 直樹 三嶋 康嗣 横山 喬之
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.915-928, 2020 (Released:2020-12-12)
参考文献数
36

Judo, which has become popular in more than 200 countries and regions, has developed while merging with both national and ethnic sports. Among them, chidaoba practiced in Georgia is a remarkable example of anethnic martial art. However, no literature in Japan has yet described the technical form and historical background of chidaoba in detail. Therefore, the purpose of the present study was to clarify the essence of chidaoba by considering its historical and cultural background. The author has mastered basic Russian language skills and performed a search for academic essays and websites using keywords such as chidaoba or Georgia and ethnic martial arts in Russian. To ensure accurate translation from Russian into Japanese, the text was checked by several Japanese with native-level Russian language skills. Chidaoba matches were held on Christian holidays such as Saint George’s Day and the Svetitskhoveli Cathedral Holiday. Thus, chidaoba took root in cities and rural areas as an irreplaceable festival event. Later, when the Christian church banned some forms of ethnic entertainment and physical exercise, only chidaoba was exempt. Before a match, competitors were obliged to perform the traditional dance, kartuli or palavnuri. In chidaoba, any type of grasping from the waist and upper body is allowed, while grasping below the waist is prohibited. There are a wide variety of techniques in chidaoba, such as throwing from close contact, foot throwing, foot sweeps, reaps, and hooks. Due to the diversity of Georgians, ethnic groups vary from region to region. Moreover, there are several different forms of martial arts in the mountainous areas of Georgia, which are very different from chidaoba. In 2018, chidaoba was registered as an Intangible Cultural Asset. The results of this research should serve as a basic material for clarifying the outline of the Georgian ethnic martia art chidaoba.
著者
横山 直也 百鬼 史訓 久保 哲也 川上 有光
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.39-50, 2001-03-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
15
被引用文献数
2

The purpose of this study is to reveal the degree of individual motional difference and to discover the situations and parts of the body where there appears motional difference and to gain basic hints in instructing Shomen-Striking-Motion, as well as to discover implicit motional process common in Shomen-Striking-Motion of a Kendo player and to establish a model of standard Shomen-Striking-Motion by analyzing Kendo Shomen-Striking-Motion using 3-D Motion Analysis Method.The subjects of the study were sixteen males (age: 24.6±5.8years old, Kendo experience: 16.2±5.2years, ranks in Kendo: 4.0±1.3 dan, height: 174.9±6.0 cm, weight: 76.0±8.0 kg) consisting of the current students and the graduates of a university where is a specialized Kendo course.Videotaping of Shomen-Striking-Motion of the subjects was done by using two high-speed VTRs from diagonally to the right-front and left-front of the subjects with shooting speed of 250 frames per second and the shutter speed of 1/2000 second.3-D coordinates in 29 points were calculated in total with the use of DLT (Direct Linear Transformation) Method, consisting of 25 segment endpoints of a subject and 4 measuring points of Shinai.The Shomen-Striking-Motion were divided into two phases in this study; Back-Swing phase (BS phase) which is from the starting time until the ending time of Shinai to be lifted up and Forward Swing phase (FS phase) which is from the starting time until the ending time of Shinai to be struck down. Then,3-D coordinates and angle data of each subject were standardized with phase time being 100%, and the data were averaged per 1% of standard time accordig to the method of Ae et al. Coefficients of variation were calculated to compare standard deviation of each joint angle that was averaged.The following are the acquired conclusions from this study.(1) 3-D model of the standard Shomen-Striking-Motion was acquired that shows implicit motional process common in Kendo players through standardizing and averaging all the coordinate data of sixteen subjects.(2) The standard motion of each joint of Kendo players in fifteen points was exhibited through standardizing and averaging the changes of joint angle of all the subjects. Simultaneously situations that have large and small individual motional difference were observed from the standard deviation.(3) The parts were revealed where there is large individual motional difference by calculating coefficients of variation in the standard deviation of joint angles.
著者
谷津 勲 朝倉 伸司 名倉 正明 福田 収 横山 公要 坂田 洋一 浅野 泰 目黒 輝雄
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1159-1167, 1994-08-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
35

透析時残血発生機序の検討の一つとして再生セルロース膜に吸着されるマトリックス蛋白質の動態および血液凝固反応の関与を検討した. 血液凝固反応に関しては血液凝固亢進の分子マーカーであるTAT複合体の変化を検討した. 合併症のない慢性腎炎より腎不全へ移行した安定した血液透析患者を対象とした. そのうち透析時残血の存する群 (残血群n=4), 残血のない群 (非残血群n=5) に分けてマトリックス蛋白質であるFbg, VNの透析時血漿中濃度の推移および透析器膜よりの50mM Tris HCl-1M NaCl, pH 7.4による溶出分画中の濃度, 分子パターンを検討した. TAT濃度に両群間で差はなくまた正常範囲内であり残血群でも血液凝固反応が進行している所見はない. このことより残血は血小板の膜への接着を中心とする一次止血機構に似た反応が推定された. マトリックス蛋白質であるFbgの血漿中濃度の推移は両群間で差は認められなかった. しかしVNの血漿中濃度の推移は残血群でより高値の傾向を示した. Immunoblotting法による分子パターンは大きな差は認められなかった. しかしながら透析器膜の1M NaCl-Tris buffered saline (TBS) による溶出分画中の蛋白質には他のマトリックス蛋白質に比しVNが多く含まれていた. またそのimmunoblotting法による分子パターンではVN-multimerが残血群でより多く認められた. この溶出分画中にはFibrinおよびFibrin-bound FNは認められなかったことから, このVN-multimerはFibrin由来とは考えられず, 従って残血の結果生じたものではなく, むしろ残血発生の原因の一つと考えられた. これらの結果より透析時残血発生機序の一つとしてVN-multlmerが強く関与していることが推定された.
著者
浅野 浩一郎 山口 佳寿博 河合 章 森 正明 高杉 知明 梅田 啓 川城 丈夫 横山 哲朗
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.2098-2104, 1992-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

急性低酸素症における臓器レベルの代償機構を検討するため, 麻酔犬に室内気または13%酸素を吸入させ各種血行動態指標および動脈血, 混合静脈血, 頸, 冠, 肝, 腎静脈血の血液ガス諸量を測定した. これらの測定諸量を用いて室内気ならびに低濃度酸素吸入下における生体全体ならびに主要臓器の酸素利用・輸送に関する諸指標を解析した. 低濃度酸素吸入時には生体全体の酸素供給量が減少したが, 酸素摂取率の増加により酸素消費量は有意な変化を示さなかった. 臓器レベルでは低酸素吸入時に酸素摂取率が肝・門脈系臓器で室内気吸入時の1.5倍に, 腎臓で2倍に増加したが, 心臓, 脳では有意な変化を認めなかった. 一方低酸素吸入時の臓器血流量は肝・門脈系で34%減少したのに対し心臓, 脳では各々11%, 22%増加した. 腎血流量には有意な変化を認めなかった. 以上の結果より急性低酸素症時には肝・門脈系, 腎臓の腹部各臓器はその酸素摂取率を増加させることによって, 脳, 心臓は血流量の増加によって臓器レベルの好気性代謝を維持することが示唆された.
著者
伊藤 理紗 兼子 唯 巣山 晴菜 佐藤 秀樹 横山 仁史 国里 愛彦 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.237-246, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動(以下、SB)が治療効果に及ぼす影響性の差異について検討した。ゴキブリ恐怖の大学生(N=30)を対象に、対象者を三つの介入条件のいずれか一つに割り当てた:(a)SBなし群、(b)恐怖ピーク前SB群、(c)恐怖ピーク後SB群。群と時期(エクスポージャー前・エクスポージャー直後・フォローアップ時)を独立変数、ゴキブリ恐怖に関する変数を従属変数とした分散分析の結果、すべてのゴキブリ恐怖の変数において時期の主効果が有意であった。単純主効果の検定の結果、すべての群においてエクスポージャー直後とフォローアップ時のゴキブリ恐怖は、エクスポージャー前と比較して、有意に低かった。最後に、各群のエクスポージャー中の恐怖の推移もふまえて、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動が治療効果に及ぼす影響について、考察した。
著者
三浦 徳宣 井出 健弘 宇田 尚史 野田 輝乙 浅井 聖史 西村 謙一 白戸 玲臣 柳原 豊 宮内 勇貴 菊川 忠彦 丹司 望 横山 雅好
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.79-84, 2014-07-20 (Released:2015-08-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

(目的) 副腎皮質癌は稀な疾患であるが,予後不良で治療に難渋する症例が多い.当科で副腎皮質癌と診断された7例における,臨床病理学的特徴と予後について検討した. (対象と方法) 2002年1月から2012年12月までに診断された7例の副腎皮質癌症例の臨床的背景,原発巣最大径,治療法,転帰について調査した. (結果) 男性4例,女性3例であった.診断時の年齢は中央値63歳(36~71歳)で,最大腫瘍径は中央値7.0 cm(4~13 cm)であった.治療は,Stage Iの1例は腹腔鏡下副腎摘除術のみ,Stage IIIの4例は,副腎摘除術に加え,周囲臓器合併切除をおこなった.完全切除した5例のうち4例は中央値55カ月(22~107カ月)で再発なく生存している.遠隔転移があった2例のうち,1例は外科的切除困難にて全身化学療法(エトポシド+アドリアシン+シスプラチン療法+ミトタン)をおこなったが19カ月目に癌死した.もう1例は,副腎皮質癌肺転移に対し,原発巣と転移巣を外科的切除し,術後補助療法としてミトタン内服治療を行っており,術後9カ月で再発は認めていない.7例の3年癌特異生存率は56%であった. (結論) 周囲臓器への浸潤が疑われても,副腎周囲臓器を含めて合併切除することで長期生存できる症例が存在しており,診断時の可能な限りの完全な外科的切除が予後改善に重要であると思われた.
著者
伊藤 理紗 巣山 晴菜 島田 真衣 兼子 唯 伊藤 大輔 横山 仁史 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.63-71, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
17

本研究は,SAD患者の曖昧な場面の中性的・否定的解釈の関連の検討,および曖昧な場面の肯定的・中性的・否定的解釈がSAD症状の重症度に及ぼす影響について検討を行った。SAD患者50名を対象に,(1)Liebowitz Social Anxiety Scale(朝倉ら,2002),(2)曖昧な場面の解釈の質問紙について回答を求めた。相関分析の結果,曖昧な社会的場面の中性的解釈と否定的解釈の間に相関は認められず,曖昧な社会的場面の肯定的解釈と否定的解釈の間のみに負の相関が認められた(r=-.48, p<.001)。重回帰分析の結果,曖昧な社会的場面の否定的解釈(β=.34, p<.05)のSAD症状の重症度への影響が有意であった。本研究の結果から,曖昧な場面の否定的解釈の低減にあたり,肯定的解釈の活性化の有効性が示唆された。
著者
横山 理英 林 聡 岩田 知之 高橋 智紀 高田 潤
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会研究発表会講演論文集 第18回廃棄物学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.128, 2007 (Released:2007-11-23)

ヒノキチップをCa溶液に浸漬したのち炭化、酸処理すると硝酸性窒素及びフッ素イオンを吸着する炭素材料を作ることができる。本研究では原料として各種植物系廃棄物を用い、同様な手法で炭化物を作成し硝酸性窒素吸着能を調べた。その結果いずれの原料でも吸着能は発現することがわかり、特にコーヒーかすを原料とした場合、木質原料よりもさらに高い吸着能があることがわかった。吸着は塩化物イオンとのイオン交換であり、リン酸イオン、硫酸イオンはほとんど吸着せず、硝酸性窒素とフッ素イオンに対して吸着選択性を有する。金魚水槽を用いた簡易な水質浄化試験では硝酸性窒素を吸着してアオコの発生を抑制することがわかった。そのため、水質浄化材料として利用できることが示唆された。
著者
横山 悠貴 安田 宗樹
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.285-286, 2018-03-13

ニューラルネットワークにおいて、隠れ変数を多くして複雑な構造を持たせると表現能力が高くなるが過学習を引き起こしやすくなる。そのため、過学習を引き起こしにくくするためには適切な構造を持たせなければならないがそれは経験と勘により設計しなければならないのが現状である。本講演では統計的機械学習モデルのひとつである制限ボルツマンマシンの隠れ変数に対してスパース正則化を行うことで有効な隠れ変数の数を自動調整し、汎化誤差が低減されているすることを報告する。また、制限ボルツマンマシン学習でよく使われる近似計算であるContrastive Divergence法の他, 厳密計算においてもスパース正則化により汎化誤差が低減することを示す。
著者
田悟 和巳 髙橋 明寛 萩原 陽二郎 益子 理 横山 陽子 近藤 弘章 有山 義昭 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.41-61, 2020-04-23 (Released:2020-05-16)
参考文献数
59

渡り鳥の多くは夜間に渡りを行っていることが知られている.しかし,夜間における渡りの動向を調査する方法は限られているため,日本ではその実態はほとんどわかっていない.そこで,北海道から九州の140地点で船舶レーダーを用いた夜間の渡り鳥の調査を実施した.レーダー調査では種の同定はできないものの,夜間でも鳥類の飛跡数を定量的に調査でき,飛翔高度等が把握できるという利点がある.調査は各地点とも秋・春2回ずつ,日没時刻から日出時刻後3時間まで行い,幅2 kmの範囲の上空を飛翔する渡り鳥の飛跡数を計測した.560地点の飛跡数の平均は秋季14,415,春季4,388で,最大は109,693飛跡であった.飛跡数と環境条件との関係について一般化線形混合モデルにより解析した.応答変数は飛跡数,説明変数は調査地点の緯度,経度,調査時期,標高,地形,レーダー画像取得時間の割合,調査開始時の雲量とした.飛跡数に関係する要因として重要なのは,調査開始時の雲量であった.飛翔高度は対地高度300–400 mを頂点とする一山型を示した.飛翔時間は,日の入り時刻後80分から140分後頃に最大値を迎え,その後,徐々に減少した.本調査により推定された渡りのルートの多くが,既存の調査により既に知られており,このことは,本研究の結果の有効性を示唆するとともに,上昇気流を利用して日中に渡りを行う種と夜間に渡りを行う種の渡りルートは類似していることを示唆していた.このように船舶レーダーを用いた手法は,夜間を含む渡り鳥の動向を調査する方法として,優れた手法であることが明らかになった.
著者
齋藤 良範 柴田 香緒里 安達 美穂 後藤 明美 阿部 明子 庄司 久美 正野 宏樹 荒木 隆夫 齋藤 幹郎 横山 紘一 後藤 敏和 菊地 惇
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.47-53, 2020 (Released:2020-10-07)
参考文献数
10

目的:心房細動(atrial fibrillation: AF)は,血栓性脳塞栓症の原因疾患であり予防には抗凝固療法が有用である.高齢者ほど有病率は増加するとされることから,健康診断受診者における有病率および治療の現状を把握し経年推移を検討した.方法:2017年度の受診者175,462(男性86,923,女性88,539)名の12誘導心電図(心電図)所見から,性・年代別のAF有病率および問診票より治療率を算出した.また,2013年から2017年度まで5年間のAF有病率の推移を検討した.結果:AF有病率は1.13(男性1.81,女性0.47)%で,加齢に伴い増加し各年代とも男性が高率であった.治療率は,60歳未満55.7%,60歳代68.8%,70歳代66.6%,80歳以上63.9%で,60歳未満で低かった.CHADS2スコアが1以上となる75歳以上では65.0%であった.AF有病率の経年推移は,2013年度1.03%,2014年度1.04%,2015年度1.10%,2016年度1.12%,2017年度1.13%と増加傾向が認められたが,男女別の年齢調整後の有病率には差を認めず受診者の高齢化が原因と考えられた.結論:AF有病率は1.13%で,男性に多く高齢になるほど増加した.60歳未満では未治療者が多く75歳以上でも35%は未治療であり,加療の必要性を啓発していく必要がある.
著者
樫林 哲雄 数井 裕光 和田 佳子 徳増 慶子 横山 和正
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.239-247, 2016-09-25 (Released:2016-11-04)
参考文献数
17

本症例は脳挫傷による前向性健忘,逆向性健忘,前頭葉症状を呈した.治療の経過で場所の定位障害が残存し,リハビリテーションで正しい現在地を再学習するうちに場所の見当識に混乱が生じて,重複記憶錯誤が出現した.頭部MRIで認められた障害部位は左上前頭回下部,右下前頭回で,IMP-SPECTではこれらの部位に加えて,後部帯状回の取り込み低下を認めた.重複記憶錯誤消失前後でIMP-SPECTを比較したところ左上前頭回下部,右下前頭回に加えて後部帯状回の血流も改善していたことから,重複記憶錯誤の出現に前頭葉と後部帯状回の機能低下が関与していることが示唆された.
著者
岡田 澄子 才藤 栄一 飯泉 智子 重田 律子 九里 葉子 馬場 尊 松尾 浩一郎 横山 通夫 Jeffrey B PALMER
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.148-158, 2005-08-31 (Released:2020-12-26)
参考文献数
15

嚥下肢位として広く使用されているChin downを機能解剖学的肢位と関連づけることを目的に,摂食・嚥下障害を扱っている日本の言語聴覚士34名を対象に郵送と電子メールでアンケート調査した.回収率は88% (30名).1)Chin downの日本語名称は「顎引き」57%,「頚部前屈位」20%など様々で5通りの呼称があった.回答者の臨床経験年数,取り扱い患者数による傾向の違いはなかった.2)Chin downとして5つの頭頚部の機能解剖学的肢位像からの選択では,頭屈位53%,頚屈位30%,複合屈曲位17%の3肢位像が選択された.3)5つの頭頚部肢位像の呼称としては,肢位像おのおのが複数の名称で呼ばれ,逆に同じ呼称が複数の肢位像に対して重複して用いられ,1対1に対応させることが困難であった.4)Chin downに比べChin tuckという名称は知られていなかった.5)回答者のコメントとして「名称や肢位の違いは意識していなかった」などの感想があった.これらの結果は,Chin down肢位が機能解剖学的肢位としては極めて不明瞭に認識され,かつ,多数の異なった解釈が存在していることを意味した.Chin downをめぐっては,実際,その効果についていくつかの矛盾した結果が争点となっている.以上のアンケート結果は,その背景として様々な呼称と種々の定義が存在し,多くの混乱が存在する現状をよく反映していた.混乱の原因として,1)肢位が専ら俗称による呼称を用いて論じられ,また,具体的操作として定義されてきた,2)頭頚部肢位の運動が主に頭部と頚部の2通りの運動で構成されているという概念が欠如していた,3)訳語を選択する際に多様な解釈が介在した,などが重要と考えられた.今後,Chin downを機能解剖学的に明確に定義したうえで,その効果を明らかにしていく重要性が結論された.
著者
横山 晴子 山田 安彦 山村 喜一 中村 均 伊賀 立二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.121, no.3, pp.233-237, 2001-03-01 (Released:2002-09-27)
参考文献数
7
被引用文献数
13 11

The effect of mouth wash on the removal of drug residues in both mouth and pharynx after the use of fluticasone propionate dry powder inhaler (FP-DPI) was studied. The concentration of FP in mouth wash after sprinkle and inhalation of Flutide® 50, 100, 200 Rotadisk® was determined by HPLC-UV. The total amount of the removed FP was measured by the sum of the concentration of FP in 5 times of mouth washes. The mouth wash procedures removed totally 79.3±4.4% (50 μg), 68.5±3.6% (100 μg), 69.3±3.4% (200 μg) of sprinkled amount of FP and 29.5±11.1% (50 μg), 35.6±6.6% (100 μg), 31.6±8.3% (200 μg) of inhaled, respectively. It was required for the removal of 90% of the totally recovered FP to do two times of mouth washes in each case. These data suggest that the mouth wash is an effective precaution for candidiasis induced by FP delivered by DPI.