著者
橋本 禅 松浦 正浩
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.399-403,a1, 2007

司法制度改革の進展と軌を一にして, 行政においても, 公共事業の計画策定や建設工事における紛争の予防手段として, 裁判外紛争処理手法の一つであるメディエーションの活用に対する関心が高まりつつある。本報では, 紛争処理の実践および研究の両面での先進国である米国の農務省農業メディエーション・プログラム認証事業について, その制度の枠組と運用の実態について報告を行う。本認証事業は, 州政府の農業に関わる紛争の解決に向けたメディエーション・プログラムの設立と運営を認証・支援する事業制度である。本認証事業は, さまざまな農業紛争の当事者へ, 手ごろな価格で, 建設的かつ公正な話合いの場を提供し, 柔軟な問題解決を可能にしたと米国でも高い評価を受けている
著者
橋本 嘉代
出版者
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科
雑誌
人間文化創成科学論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.339-347, 2010

From the 1950s to the 1980s, only a few articles about married women's paid work were featured in Japanese women's magazines. After the 1990s, however, these articles began appearing these magazines as a major topic. This study analyzed the tripolarization in definition of labor drawn from women's magazines at the end of the 1990s. The first type of magazines targeted married women whose household incomes were low, and thus, looking for part-time jobs to improve their household economic situation. The second type of magazines targeted full-time housewives, whose household incomes were high and who drew their success as instructors of their specialized hobbies. The third type of magazines targeted career women engaged in full-time jobs earning high incomes. It is difficult to obtain full-time job for married women having small children, but part-time jobs are frequently bored and lowly paid. Women's magazines published during this period focused on various role models that women were able to aspire to and model themselves after.
著者
橋本 学
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.283-288, 2017-04-18 (Released:2017-06-16)
参考文献数
10
被引用文献数
2

改正障害者雇用促進法により2018年4月から精神障害者も法定雇用率算定式に加えられることになり,精神障害者雇用義務化が行われることになった.精神障害者の就労については従来の職業リハビリテーションの「保護的環境で職業訓練してから就労する(train-then-place)」方法では訓練内容が汎化せず,「早く就労の現場に出て仕事に慣れながら訓練する(place-then-train)」方法のほうが就労アウトカムを改善させるという考え方が有力となった.このような援助付き雇用プログラムの1つがindividual placement and support(IPS)である.IPSは多くのrandomized controlled trial(RCT)によって有効性が示されている.今日では,IPSに認知リハビリテーションを併用することでさらに効果を高めようとする試みが行われている.
著者
水津 久美子 橋本 瞳
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.89-101, 2017-02-28

学校給食の7つの目標の一つに「我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること」があげられているが、その具体的な方法や内容を示した資料は少ない。そこで本研究では、伝統的な食文化への理解について、特産品と郷土料理に着目し、学校現場で行われている教育活動の実態を把握することを目的とした。島根県内のA市、B市に勤務する栄養教諭17名を対象に無記名自記式の質問紙調査を行った(有効回収率100%)。調査内容は、学校給食で使用及び提供した特産品及び郷土料理、児童生徒への教育方法並びに教育内容、今後取り入れていきたい活動の4項目とした。その結果、学校給食で使用した特産品は、島根県オリジナル野菜の「あすっこ」、郷土料理は「しじみ汁」が多く、教育方法はどちらも「給食時の放送」が多かった。また教育内容について多かった項目は、特産品は「旬」、郷土料理は「使われている材料」であった。今後さらに取り入れていきたい活動では、体験的な活動(調理実習や栽培など)が約半数を占めた。以上の結果から、教育方法・内容については島根県食育推進計画をほぼ網羅するものであったが、両市の栄養教諭はさらに多様な活動を取り入れたいとする様子がうかがえた。今後教育活動を充実させていくためには、栄養教諭と学校・家庭・地域がこれまで以上に連携して教育を行っていくことが重要である。
著者
橋本 修治 相原 直彦 伊達 裕 勝木 桂子 武村 珠子 鎌倉 史郎 下村 克朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Supplement6, pp.41-46, 1997-12-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

【目的】心房細動(Af)例では心房電位が偽陽性の原因になるとされ,体表面加算平均心電図(SAECG)による心室遅延電位(LP)による評価の対象から除外されてきた.しかし,出現時相が不規則であることから加算平均処理により心房電位が相殺され,洞調律(SN)時と同様にLPを評価できる可能性がある.そこで,Af時においてもSAECGがSN時と同様に評価可能か否かについて検討した.【対象と方法】Af時およびSN時に対してSAECGを記録し得た症例17例.各記録をtime domain(TD)法とfrequency domain (FD)法を用いて解析し,比較検討した.【結果】Af時およびSN時記録での各指標の相関はTD法では全指標ともr=0.90以上(p< 0.001)と良好であったが,FD法はarea ratio法でr=0.83(p<0.001),spectro-temporal mapping法でr=0.60(p<0.05)とTD法に比べ劣っていた.【総括】Af時におけるSAECGの有用性をSN時と比較検討した結果,TD法はAf時にもLPを評価することが可能であるが,FD法の各解析法ではLPの評価は困難と考えられた.
著者
橋本 晃啓 調枝 孝治 北村 靖治 宮原 満男
出版者
広島大学総合科学部
雑誌
広島大学総合科学部紀要. VI, 保健体育学研究 (ISSN:02893002)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-66, 1988-02-28

本研究では, バスケットボールの系列運動課題の再生レベルを向上させるリハーサルのタイプを明らかにすることを目的とした。このため, 大学生男子216名を以下の6つの条件に36名ずつ分け, 各条件のもとでそれぞれリハーサルを行わせた後, 系列運動課題を再生させた。6つのリハーサル条件とは, 1)図, 2)図と言語的説明, 3)映像と言語的説明, 4)図と小筋運動感覚, 5)図と言語と小筋運動感覚, 6)図と大筋運動感覚である。再生パフォーマンスの測度は, 1)系列運動課題の遂行時間, 2)下位系列位置における再生率であった。その結果を要約すると, 系列運動課題遂行時間については, 条件6が最も速く, 続いて条件5であった。さらに, 条件1と条件4では最も遅かった。系列運動課題の再生率については, 条件2, 条件3, 条件6で再生率が高く, 条件1と条件4は低かった。このことから以下の2点が結論づけられた。1)言語的説明は系列運動課題の再生に重要な役割を果たしているが, 言語や図に実際の運動を結びつけたリハーサル, すなわち, 筋肉活動による出力に伴うフィードバック情報を付加的に用いて精緻化リハーサルを行う必要がある。2)時間的順序性を含むコード(たとえば, 言語・映像・筋肉運動)を用いたリハーサルを妨害すると再生レベルは低下する。In this paper we intended to make clear the effects of rehearsal types on recall of serial motor task in basketball. 216 male undergraduate students (18-20 yrs.) were divided into following six groups with different rehearsal conditions, i. e. 1) pictorial, 2) picture-illustrated, 3) model-illustrated, 4) pictorial and fine motor, 5) pictorial, verbal, and fine motor, and 6) pictorial and gross motor rehearsal. The students were required to recall the serial motor task after the engagement in one of these conditions. The speed and accuracy in performing the serial motor task were measured for each group.The results were as follows ;Subjects in rehearsal condition No. 6 were the fastest with respect to serial movement time, and in rehearsal condition No. 2, 3, and 6 they performed with high accuracy in contrast with rehearsal condition No. 1 and 4 which showed the slowest and poorly accurate performance. Therefore the elaborate rehearsal with current movements facilitated recall performance. The interference of verbal, model-illustrated, and/or motor rehearsal has caused decline in the level of recall.
著者
吉田 秀 遠藤 平仁 田中 淳一 飯塚 進子 木村 美保 橋本 篤 田中 住明 石川 章 廣畑 俊成 近藤 啓文
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.302-309, 2008-12-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
26

A woman of 50 years of age who had a 13-year history of hypothyroidism was diagnosed with systemic lupus erythematosus (SLE) with butterfly rash, leukopenia, positivity of antinuclear antibody, anti-DNA antibody and anti-Sm antibody. Two years later, she developed nephritis (WHO type IV) and remitted with corticosteroid pulse and intermittent intravenous cyclophosphamide pulse therapy (IVCY). Four years after the onset of SLE, she relapsed with proteinuria and leukopenia when she was taking 9 mg/day of prednisolone (PSL) but she stopped all the medication of her own accord. Four months passed without any therapy, she was admitted to our hospital with disturbance of consciousness and anasarca. Laboratory findings showed pancytopenia (WBC 1300/μl, RBC 233×10⁴/μl, Hb6.9g/dl, Plt3.6×10⁴/μl), aggravation of lupus nephritis and hypothyroidism. Chest X-ray and ultrasonography demonstrated pleural and pericardial effusion and the absence of hepatosplenomegaly. She was also diagnosed with myelofibrosis upon bone marrow inspection. Three instances of corticosteroid pulse therapy, oral corticosteroid (PSL was tapered from 50 mg/day) and supplement therapy of levothyroxine improved every symptom and pancytopenia. The second bone marrow biopsy showed reduced fibrosis and recovery of bone marrow cells. These findings implied the secondary myelofibrosis caused by SLE because the myelofibrosis came along with aggravation of SLE and corticosteroid therapy was effective. This is a rare case of SLE in which myelofibrosis improved by high-dose corticosteroid therapy, which was confirmed by bone marrow biopsy and suggests the pathogenic mechanisms for myelofibrosis.
著者
高橋 美沙 渡邊 裕之 嘉治 一樹 津村 一美 橋本 昌美 高平 尚伸
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48102030, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】肩関節の安定性には,inner musclesである腱板とouter musclesである浅層筋群との力のバランスが重要であり,このバランスが破綻すると肩関節の不安定性を生じさせ,肩峰下インピンジメント症候群などの種々の障害を引き起こす(筒井ら,1992).特に,棘上筋は上腕骨頭を求心位に保つ機能を有しており,動揺性肩関節患者では棘上筋が正常な機能を果たしていないことが報告されている(河野,1986).したがって,棘上筋を強化すること(棘上筋トレーニング)は肩関節安定性の向上を目的とした肩関節障害予防として重要である.従来,棘上筋トレーニングの効果判定法として肩甲骨面挙上筋力測定が行われてきた.しかし,肩甲骨面挙上筋力測定は三角筋の影響を受けやすく,棘上筋単独で筋力を評価することは困難である(Reinold et al,2007).一方,超音波画像診断装置を用いた筋厚測定は技術的に簡便かつ非侵襲性であるため棘上筋トレーニングを評価する方法として着目されている(二木ら,2001).棘上筋筋厚はMRIで測定された棘上筋断面積と相関することが報告されている(Yi et al,2012).また,我々が事前に実施した実験の未報告データにおいて,棘上筋筋厚と筋活動との相関が認められ,筋厚測定によって筋活動を推定することが可能である.棘上筋トレーニングの実施効果を縦断的に検討した報告は少なく,棘上筋トレーニングの効果については不明な点が多い.本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて棘上筋筋厚を測定することにより,棘上筋トレーニングが棘上筋筋活動に及ぼす影響について検討することである.【方法】対象は健常成人男性9 名の18 肩とした.肩関節疾患および外傷の既往歴,肩関節に疼痛を有する者は対象から除外した.棘上筋トレーニングの方法は,イエローセラバンド(2kg負荷)を使用し,肩関節外旋位での肩甲骨面挙上0°〜30°までの反復運動とした.回数は20 回× 3 セットとした.棘上筋筋厚は超音波画像診断装置(ProSound,SSD-4000,ALOKA)を使用して測定された.超音波画像の撮像位置は,肩甲棘長を100%とし,肩甲棘基部から10%,50%の部位に15MHzのリニアプローブを肩甲棘に対して垂直にあてた.筋厚は,棘上筋浅層筋膜と深層筋膜との間の距離とした.試行動作は,肩関節外旋位での肩甲骨面挙上30°の肢位にて,他動保持時,セラバンド2kg負荷時,最大等尺性収縮時の3 条件とした.実験手順を以下に示す.トレーニング開始前に棘上筋筋厚を測定しベースライン値とした.その後,対象者は棘上筋トレーニングを週に5 回の頻度で6 週間実施した.トレーニング終了後,再度棘上筋筋厚を測定した.統計学的解析として,各条件における棘上筋筋厚をWilcoxonの符号付順位和検定を用いてトレーニング前後で比較した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:2012-014).本研究実施に際し,対象者に研究内容に関して説明し,書面にて同意を得た.【結果】肩甲棘長の10%部位での棘上筋筋厚は他動保持時(介入前0.28 ± 0.16cm,介入後0.41 ± 0.14cm)およびセラバンド2kg 負荷時(介入前0.61 ± 0.26cm,介入後0.80 ± 0.22cm)の条件においてトレーニング後に有意に増加した(p < 0.05).50% 部位での棘上筋筋厚は他動保持時(介入前1.76 ± 0.19cm,介入後1.89 ± 0.12cm)の条件においてトレーニング後に有意に増加した(p < 0.05).【考察】肩甲棘長の10%および50%の部位における棘上筋筋厚は,6 週間の棘上筋トレーニング後の他動保持時,セラバンド2kg負荷時において増加した.Yiらは,棘上筋筋厚と筋断面積が相関することを報告している.また,我々が実施した実験の未報告のデータによると,棘上筋筋厚と筋活動との間に相関が認められたことから,筋厚の増加は筋活動の増加を反映している可能性がある.したがって,6 週間の棘上筋トレーニングは筋活動を増加させる可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】6 週間の棘上筋トレーニングは棘上筋筋厚を増加させた.したがって,本研究で実施した棘上筋トレーニングは肩関節障害予防を目的とした棘上筋強化法として有用である可能性がある.また,超音波画像診断装置を用いた棘上筋筋厚測定は,棘上筋筋活動を非侵襲的に評価でき,棘上筋トレーニングの効果判定法として有用である可能性が示唆された.
著者
渋野 拓郎 村上 寛 橋本 博明 具島 健二
出版者
広島大学生物生産学部
雑誌
生物生産学研究 (ISSN:1341691X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.p93-100, 1993-12
被引用文献数
1

ニシキベラの成長に伴う食性と採餌行動の変化を、南西諸島の口永良部島の磯水域で調査した。小型魚は主に小型甲殻類(ヨコエビ類、カイアシ類、介形類、等脚類、タナイス類、クマ類)を、これらの小型の餌生物が豊富な微小藻場で摂餌していた。一方、大型になるに従い、worm類(多毛類、ホシムシ類)、貝類(巻貝類、ピザラ異類、二枚貝類)、大型甲殻類(カニ類、シャコ類、エビ類、ヤドカリ類)を含む、より大型の餌を摂餌していた。これらの、より大型の餌生物の生息宿度は微小藻場では比較的低いため、大型になるに従い採餌の範囲を拡大すると共に、より大型の餌生物が生息する石灰藻場やブダイ類のかじり跡へと採餌場所を移行させた。Ontogenetic changes in diet and foraging behavior of Thalassoma cupido were studied on the shallow reefs at Kuchierabu-jima Island, southern Japan. Small fish mainly took small crustaceans (gammarids, copepods, ostracods, isopods, tanaids and cumaceans) from algal mats, where the small prey species lived in a large numbers. While larger fish consumed correspondingly larger prey, including worms (polychaetes, sipunculids), shells (gastropods, chitons and pelecypods), and large crustaceans (crabs, stmatopods, shrimps and hermit crabs). Because the density of larger prey species was relatively low in the initial habitats foraged, larger fish shifted their foraging attention to coraline algal mats and sites scraped by scarid fish, where the larger prey species were present, as well as foraging over larger areas.

1 0 0 0 OA 九州の山旅

著者
橋本三八 著
出版者
朋文堂
巻号頁・発行日
1944
著者
橋本 健二
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.94-113, 2008-06-30 (Released:2010-04-01)
参考文献数
63
被引用文献数
4 4

今日の「格差社会論」の隆盛は,これまでの階級・社会階層研究には深刻な問題があったことを明らかにした.階級・社会階層研究は,拡大する経済格差と「格差の固定化」など,社会的に注目されている諸現象を十分解明することができず,社会学に対する社会的要請に応えることができない状態にある.このことは同時に,社会学の諸分野に階級または社会階層という有効な独立変数を提供するという,階級・社会階層研究の固有の使命を十分に果たしえていないということも意味する.こうした階級・社会階層研究の困難をもたらしたのは,その戦後日本における独特の展開過程だった.戦後日本の階級研究は大橋隆憲によって確立され,その階級図式は社会学者を含む多くの研究者に受け入れられたが,それはMarxの2階級図式を自明の前提とし,しかも労働者階級を社会主義革命の担い手とみなす政治主義的なものであり,1980年代には有効性を失った.社会階層研究を確立した尾高邦雄も,同様に階級を政治的な存在とみなしたが,大橋とは逆に現代日本には明確な階級が存在しないと考え,連続的な序列,あるいはその中に人為的に作られた操作的カテゴリーとしての社会階層の研究を推進した.こうして日本では,他の多くの国とは異なり,階級と社会階層がまったく別の概念とみなされるようになり,その有効性と現実性は大きく制約されてしまった.階級・社会階層研究のこうした弱点と困難を克服するためには,(1)Marxの2階級図式を明確に否定して,資本家階級,新中間階級,労働者階級,旧中間階級の4階級図式,あるいはそのバリエーションを採用するとともに,(2)社会階層を,階級所属が産業構造,労働市場,家族,国家などさまざまな制度によって媒介されることによって形成される社会的カテゴリーとして定義することが有効である.このとき階級と社会階層の不毛な対立は克服され,両者を相互補完的に活用することにより,現代社会の構造を分析する生産的な研究分野としての「階級-社会階層研究」を構想することができよう.
著者
橋本 晃啓 調枝 孝治 北村 靖治
出版者
広島大学総合科学部
雑誌
広島大学総合科学部紀要. VI, 保健体育学研究 (ISSN:02893002)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.53-71, 1989-02-28

本研究では、バスケットボールの系列運動課題の精緻化リハーサルにおいて、どのような精緻コード化が行われているのかを、体制化および使用される情報コードという点から明らかにすることを目的とした。被験者は、バスケットボールに熟練した男子大学生64名(18歳~22歳)と熟練していない男子大学生56名(18歳~20歳)であった。被験者は以下の4つのリハーサル条件に同数ずつランダムに割り当てられ、各条件のもとでリハーサルを行った後、系列運動課題を1回だけ再生した。リハーサル条件は、a) 図で提示されリハーサル時に筋出力を禁止される、b) 言語と映像で提示されリハーサル時に筋出力を禁止される、c) 図で提示され小筋活動によってリハーサルする、d) 図で提示され大筋活動によってリハーサルする、であった。そして、再生後に系列運動課題を記憶したときの精緻コード化について、質問紙による調査を受けた。再生パフォーマンスは、系列運動課題の遂行時間と再生率から整理された。その結果、熟練者は「アウトサイドスクリーンプレイ」「2線速攻」に関する手続き的知識に基づいて、個々の動作を結びつけて3~4つの高次単位を形成し、動的な映像イメージを用いてコード化した。一方、未熟練者では、プレイに関する知識に乏しく、個々の動作を関係づけて高次単位を形成するという体制化の過程は見られなかった。また、熟練者と異なり、静的な画像イメージを用いてコード化する傾向が認められた。再生パフォーマンスは、速さ、正確さとも熟練者の方が優れており、再生レベルの向上に対する体制化の有効性が示唆された。Some questionnaires were employed to study the characteristics of elaborative coding for a serial motor task in basketball. 64 male experts on basketball (18-22 yrs.) and 56 male novices (18-20 yrs.) were divided into following four different rehearsal conditions, i. e. a) pictorial presentation of movement patterns without physical rehearsal, b) modeled and verbal explanation without physical rehearsal, c) pictorial presentation with fine motor rehearsal, and d) pictorial presentation with gross motor rehearsal. After the reproduction of the serial motor task, subjects were required to reply how they had encoded it. The speed and accuracy in performing the task were measured for each rehearsal condition, too. The results were as follows.1) The experts organized the to-be-remembered items of movement based on the procedural knowledges of "out-side screen play" and "2men break".Then they encoded the serial motor patterns by using the visual image of moving picture. On the other hand, the novices did not organize the items, since they have little knowledge of those plays. And they encoded by using the visual image of pictorial pattern.2) The experts performed the serial motor task much faster and much more accurately than the novices. Then the roles of organization in the elaborative coding processes were discussed in relation to recall performance.
著者
松田 正吾 橋本 宗明
出版者
日経BP社
雑誌
日経ドラッグインフォメーションpremium
巻号頁・発行日
no.187, pp.28-30, 2013-05

薬学教育の6年制課程が始まって2期生となる学生たちが、今春、社会に出てきた。昨年同様に病院志向が強く、病院では予定通りの薬剤師採用を達成したもようだ。一方で国家試験の合格率が低下したため、内定者らが不合格となり、薬局は不足の状況に。
著者
橋本 陽介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.29-32, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
9

本研究では,1人1台の端末を使用した集団活動の際に,発達障害児童にみられる行動特性を,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,発達障害児童には,端末を見る・触るという逸脱行動が出現しやすく,それらを低減させる方策が必要となると考えられた.これを受け,端末で作業するスペースと発表に取り組むスペースを分けるといった,視覚的なわかりやすさが伴う,実施環境の配慮を行い,再度,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,実施環境への配慮は,1人1台の端末を使用した際に,発達障害児童に出現しやすい逸脱行動の低減に寄与する可能性が示唆された.