著者
宇賀神 裕美 池内 寛子 櫛田 映子 荒山 麻子 阿久津 里美 江花 裕子 間庭 昭雄 阿江 竜介 中村 好一
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.311-316, 2019 (Released:2019-05-28)
参考文献数
11

精神科医療が入院中心から地域社会へと移行の流れがあり、精神科疾患患者の高齢化も伴い、生活習慣病のリスクの割合が高い精神科疾患患者が地域の中でQOLの高い生活を維持するためには、食生活サポートが必要である。本研究では2014年に実施した「栃木県内精神科病院における栄養食事指導に関する調査」を基礎資料とし、総合病院精神科受診の75人と単科精神科病院受診の367人の精神科疾患患者について解析し比較を行った。総合病院精神科では摂食障害の指導の状況が見られ、指導状況では終了(転院・退院)が見られた。転院先、退院後でも継続的な支援の受け皿の必要性が考えられた。 単科精神科病院では、統合失調症患者への栄養食事指導、指導状況では中断、継続が見られた。指導効果の改善に向けて継続指導の必要性が考えられた。
著者
櫛引 素夫 西山 弘泰
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<b>1.はじめに</b><br> 青森大学は2013年から、立地する青森市・幸畑地域を対象に、交流をベースとした教育・研究・地域貢献活動「幸畑プロジェクト」を展開してきた。特に幸畑団地(人口約4,500人、約2,300世帯)との協働に基づく住民ニーズに応じた空き家調査、住民主体の空き家活用の試行などが進展、転入の実態も明らかになった。成果の一部は2014~2018年の日本地理学会、東北地理学会で報告した。<br> 本研究では5年間の活動を総括し、幸畑団地の空き家発生から再利用・住宅新築に至るプロセスを分析するとともに、空き家をめぐる課題や調査活動について、①地域社会における位置づけ、②大学が果たすべき役割、③地域の将来像の検討と構築に大学や地理学はどう関わり得るか、といった観点から考察する。<br><br><b>2.幸畑プロジェクトの進展</b><br> 幸畑団地は、青森市がコンパクトシティ政策で脚光を浴びた2000年代に、高齢者の街なか居住や子育て世代との「住み替え」のモデル地域として各種施策が進められた。しかし、その結果、皮肉にも「衰退する郊外の象徴」という意識が青森市内や地元に浸透、2013年ごろには住民自身も人口減少や空き家増加に危機感と不安を抱いていた。<br> 発表者は、団地内で空き家の悉皆調査を初めて実施するとともに、住民への報告会を企画した。一連の過程で地域や大学と情報・認識の共有がなされ、さまざまな協働の起点ができた。2014年には青森大学を交えて幸畑団地地区まちづくり協議会が発足し、その後、空き家活用試行や「お試し移住」体験に取り組んだ。<br><br><b>3.経緯と成果</b><br> 空き家調査を端緒として、定期的に幸畑団地を調べ、結果を住民、市内の行政・不動産関係者らと検討する仕組みが整った。調査は常にまちづくり協議会と大学との共同作業として設計、実施し、信頼関係の深化や住民の主体性構築を重視した。2016年には地元町会と学生が合同で新規転入者の調査票調査を実施し、県内の多様な地域から住民が集まっている状況を把握できた。<br> 2018年に5年ぶり2回目の悉皆調査を実施した結果、過去の調査と併せて、①人口減少と高齢化は市平均を上回るペースで進行している、②にもかかわらず住宅の新築が進み、5年で120軒前後が新築された可能性がある、③空き家や空き地を再利用して住宅を新築した事例が多数存在する、④最大要因は安い地価と乗用車2台以上を置ける敷地の広さである、⑤新築を含め、地区によっては年に1割程度の住民が借家を中心に入れ替わっている、⑥子育て世代を中心に住宅新築を伴う転入が続いており、30年後を視野に入れた地域運営の検討が急務である、といった状況が明らかになった。<br> 空き家は、単身・夫婦の高齢者の入院や遠方の子どもによる引き取りなどによって発生するが、配偶者との死別後、空き家に戻り再居住を始めた住民も確認された。また、新築・リフォームに伴う転入者は①幸畑団地で育って転出後、親の近くへ転入、②市内の他地域出身者が転入、③市外出身者が転入、といったケースがあることが分かった。<br> 青森大学は地域との接点を持たず卒業する学生が少なくなかったが、近年は地域貢献演習などのカリキュラムが充実、地域が協働対象として定着している。<br><br><b>4.展望</b><br> 空き家問題は「地域住民がどこまで関与するか、できるか」が大きな焦点となる。危険空き家が発生してしまえば、法的・技術的には、一般住民の手が届きにくい。しかし、空き家発生につながる可能性が高い高齢者世帯などを対象に、事前に周囲と対応を相談する仕組みをつくるなどの対策を講じれば、発生抑止が期待できる。地域の見守り活動などと絡め、空き家やその前段階の家屋の活用・維持を考えていく上で、「空き家問題を地域として受け止め、考える」機運の醸成は重要である。<br>幸畑団地の空き家が減少しているとはいえ、幸畑プロジェクトそのものが「物件としての空き家の解消」「空き家の継続的活用」につながっているわけではない。コミュニティ衰退に伴う課題も山積している。それでも、空き家問題への取り組みは地域の実情把握や意識変革、協働の起点となった。幸畑地域は現在、青森市全体の将来像を考える人々の拠点となりつつあり、市域をカバーする「地域メディア」づくりが、幸畑を中心に始まっている。また、筆者らが2018年12月に青森大学で開催した「幸畑団地居住フォーラム」では、出席者から、空き家調査・対策にとどまらず、地域と大学の協働をベースに、学生も主役とした、創造的な〝攻め〟の地域づくりを期待する提案がなされた。<br>「物件としての空き家問題」を超えた持続可能な地域づくりに向けて大学の役割は重要である。また、時間・空間と「人の生き方」を軸に、地域に併走できる地理学には、大きな優位性と使命があると結論づけられよう。<br>(JSPS科研費15H03276・由井義通研究代表)
著者
櫛田 果鈴 齋藤 優里 菅原 佳城 坂間 清子 春山 純一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
Dynamics & Design Conference
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<p>This paper describes behavior of the jump robot which is connected by tether. The internal environment of the hole existing on the moon is not clear and is expected to be investigated. For research of the unknown environment, exploration is planned using a rover with umbilical tether connecting a mother rover near the hole. Then, it is important to study how tether influences jumping behavior of the rover. Equation of motion and differential algebraic equation is formulated by the use of Absolute Nodal Coordinate Formulation (ANCF) and multibody dynamics. Rover is regarded as two bodies with slider joint. Telescopic motion of spring expresses effect of jump. Numerical analysis reveals the relation of jumping behavior and parameters, and is compared with experimental result.</p>
著者
櫛引 素夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

1.はじめに<br>&nbsp; &nbsp;北陸新幹線が2015年3月に開業し、東京-金沢間が2時間半まで短縮された。2016年3月には北海道新幹線が新函館北斗開業を迎える。本研究は、新幹線駅が郊外に立地した市に着目し、より適切かつ速やかな対策の検討に寄与することを目的として、発表者が2015年までに青森市や北陸、北海道新幹線沿線で実施したフィールドワークと郵送調査に基づき、整備新幹線とまちづくりの関連について、地域政策上の論点整理と問題提起を速報的に試みる。 <br><br>&nbsp;2.北陸新幹線沿線の概況<br>&nbsp; &nbsp;JR西日本のデータによれば、北陸新幹線利用者(上越妙高-糸魚川間)は在来線当時の3倍の水準で推移している。ただし、地域を個別にみると、例えば富山県高岡市は新幹線駅が在来線の高岡駅から1.8km南側に位置している上、速達型列車「かがやき」の全定期列車が通過し、さらに北陸本線が経営分離され特急列車も全廃に至った状況に対して住民の強い批判が存在する。新幹線通勤者の発生に伴う新高岡駅一帯の駐車場不足も問題となっている。 <br>&nbsp; &nbsp;また、新潟県上越市は、都市機能が直江津、春日山、高田、上越妙高の4地区に分散した。直江津駅は鉄道の結節点としての機能が低下する一方、田園地域に新設された上越妙高駅周辺の再開発地区利用は進んでいない。上越地方全体としても、特急「はくたか」の廃止によって中越・下越地方との往復手段が激減した。加えて、「かがやき」が上越妙高駅に停車せず、やはり住民の不満が大きい。<br><br>3.北海道新幹線の開業概要<br>&nbsp; &nbsp;北海道新幹線は新函館北斗-東京間が最短4時間2分と時間短縮効果が限られ、直通列車も1日10往復にとどまる上、新駅から函館市中心部まで18km、駅が立地する北斗市の市役所は11km離れている。料金も割高で、開業によって観光客がどの程度、増加するか、また、函館市や北斗市のまちづくりがどう進展するか不透明な状況にある。新函館北斗駅前の利用は進んでおらず、むしろ南隣の木古内駅一帯が、道の駅の併設などによって活況を呈している。<br><br>4.青森駅、新青森駅と市民の意識<br>&nbsp; &nbsp;各市町のまちづくりが今後、どう進展するかを予測する参考とするため、発表者は青森市民を対象に、青森駅および新青森駅に関する郵送調査を実施した(対象257件、回答87件、回収率34%)。<br>&nbsp; &nbsp;市中心部に立地する青森駅からみて、東北新幹線の終点であり北海道新幹線の起点となる新青森駅は約4km西に位置する。2010年に東北新幹線が全線開業した後も周辺に商業施設やホテルは立地していない。<br>&nbsp; &nbsp;ただし、函館市の医療法人が2017年春の開業を目指して総合病院を建設中で、新幹線駅前の利用法の新たな姿を示した。<br>&nbsp; 二つの駅と駅前地域に市民は強い不満を抱いており、総合的な評価で「満足」と答えた人は実質ゼロだった。機能や景観、アクセス、駐車場など、ほぼすべての面で不満が大きく、特に新青森駅の機能や景観への不満が目立った。<br> 両駅周辺の将来像については大半が「今と変わらない」もしくは「すたれていく」と予測する一方、今後の対応については、両駅とも「一定の投資を行い速やかに整備すべき」「投資は抑制しつつ着実に整備」「整備の必要なし」と回答が分かれ、市民のコンセンサスを得づらい状況が確認できた。<br><br>5.考察と展望<br>&nbsp; &nbsp;青森市民への調査を通じて、「新幹線駅はまちの中心部にあって当然」「新幹線駅前には買い回り品を扱う商業施設や都市的な集積、景観が必要」とみなす住民が多いことが確認できた。ただ、多くの回答者は新幹線利用頻度が1年に1往復以下にとどまり、積極的に両駅前へ出向いているわけでもない。上記の認識は必ずしも自らの新幹線利用や二次交通機能、外来者への配慮、さらにはまちづくりの議論と整合しておらず、鉄道駅や駅一帯の機能と景観をめぐり、市民の評価に錯誤が存在している可能性を否定できない。<br>&nbsp; &nbsp;同様の傾向は、高岡市や上越市にもみられている。 <br>&nbsp; &nbsp;住民らは、在来線駅と新幹線駅が併設された都市を念頭に「理想像」を描き、そこから減点法で最寄りの新幹線駅を評価している可能性がある。その結果、新幹線駅が郊外に立地した地域では「理想像からの乖離」が、いわば「負の存在効果」をもたらし、新幹線をまちづくりに活用する機運を削いでいる可能性を指摘できる。 <br>&nbsp; &nbsp;整備新幹線の開業に際しては、主に観光・ビジネス面の効果が論じられがちである。だが、人口減少や高齢化の進展に伴い、医療資源の有効活用や遠距離介護、さらに空き家の管理・活用問題といった、住民生活や都市計画・まちづくりの課題を視野に、地理学的な視点に基づく地域アジェンダの再設定が不可欠と考えられる。
著者
櫛部 幸子 宗田 健一
出版者
鹿児島県立短期大学 地域研究所
雑誌
研究年報 (ISSN:02885883)
巻号頁・発行日
no.48, pp.19-32, 2017-03-24

現在わが国において二つの中小企業会計基準が存在している。しかし,実際にこれら会計基準が普及しているのか,策定目的の一つである「中小企業融資に貢献する」を果たすことができているのかは疑問である。そこで,鹿児島県の中小企業家同友会に属する429社に対しアンケート調査を行い,中小企業会計基準の認知度・浸透度を明らかにした。さらに,中小企業会計基準普及の鍵を握る信用保証協会の保証料率割引制度の認知度・利用度も明らかにしている。調査の結果,中小企業会計基準,保証料率割引制度のいずれにおいても極端に認知度が低く,浸透していないことが明らかとなっている。この原因の一つに,鹿児島県特有の要因があることを明らかにしている。
著者
山元 紀世子 乗安 久晴 櫛山 因 村田 幸栄 渡邉 誠 藤本 孝子 大楠 清文
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.277-283, 2017-05-25 (Released:2017-05-31)
参考文献数
10

Streptococcus infantariusによる感染性心内膜炎(infective endocarditis; IE)が冠動脈閉塞を引き起こした一例を経験した。症例は84歳男性。4年前に大動脈弁置換術の既往があり,胸痛を主訴に救急搬送された。緊急心臓カテーテル検査において冠動脈の左前下行枝から塞栓物が吸引されたが,来院時発熱はなくIEは疑われていなかった。塞栓物は病理組織検査にて微生物感染疑いと診断されたことから,血液培養や経食道心エコー検査などIEの精査が施行された。血液培養は翌日2セットすべてのボトルが陽性となり,また経食道心エコー検査にて大動脈弁に疣腫を認めたことから,IEによる冠動脈塞栓症と診断され,抗菌薬治療が開始された。弁置換術既往などIEのハイリスク患者は,症状や臨床検査値が軽度でもIEを疑い,早期精査施行が望ましい。IEの原因菌は16S rRNA塩基配列の解析によりS. infantariusと決定された。本菌を含むbovis groupの菌種は,IEや髄膜炎,消化管悪性腫瘍など重篤な疾患との関連性が高く,正確な菌種同定が求められる。しかし,Streptococcus属菌種は,生化学的同定法では鑑別困難な場合が多いため,同定困難な場合は専門施設へ解析が依頼できるよう,日頃から体制を整えておく必要がある。
著者
石井 裕之 藤原 俊輔 段 秀和 永田 勝章 永田 雄三 三木 貞徳 櫛橋 輝征
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1453, 2009

【はじめに】投球障害肘の発生は,投球動作中のlate cocking phaseからacceleration phaseにかけての肘外反による内側でのtension force,外側でのcompression forceにより生じる.特に成長期においてはこの動的アライメントに加え,身体能力の未発達・解剖上の脆弱さ,投球過多などの個人因子と練習時間量などの環境因子が相互に絡み合い投球障害肘を発生させる要因となる.一般に生理的肘外反角度は成人に比べ,成長期の方が角度が大きく,この静的アライメントである生理的肘外反角度が投球障害肘の発生要因の1つとして関連があるのかを検討した.<BR><BR>【対象と方法】2007年9月から2008年9月までの1年間,当院を受診し内側上顆剥離骨折や離断性骨軟骨炎などを診断され野球肘と認められた100名(平均年齢12.3±1.7歳)を対象群とし,2008年1月から4月までにメディカルチェックを行なった中学・高校の野球部員のうち,肘関節に投球障害の既往が無かった者109名(平均年齢14.1±1.0歳)を比較群とした.なお,両群においてはあらかじめ本調査の趣旨を説明し同意を得た.方法は,2群共に肘関節完全伸展位・回外位にて上腕骨長軸と尺骨長軸に体表からゴニオメーターを使用し角度を計測した.統計にはF検定にて2群間のばらつきが無いと判断されたため,StudentのT検定を行い,有意水準を1%以下とした.<BR><BR>【結果】生理的肘外反角度において,野球肘である対象群は14.2±3.9°,野球肘既往無しの比較群は10.0±4.4°で対象群は比較群に比べて有意に高値を示した(p<0.01).<BR><BR>【まとめ】成長期野球肘を有する対象群が野球肘既往無しの比較群に比べ,生理的肘外反角度が高値を示したことから,成長期野球肘において生理的肘外反角度が発生因子の1つとして関連があると推測された.今後,他の因子(練習時間・投球数)との関係も検討し,発生因子についてのアプローチを考えていきたい.
著者
奥山 治美 浜 六郎 大櫛 陽一 浜崎 智仁 内野 元
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.30-38, 2018 (Released:2018-07-16)

An open-label, randomized controlled trial in type 2 diabetics with hypertension, dyslipidemia, or both was reported (J-DOIT3 study).The participants were randomly assigned to receive conventional or intensive therapy with respect to HbA1c, blood pressure and LDL-C (n=1,271 in each group),and were followed for 8.5 years at 81 clinical sites. Both the participants and doctors in charge were aware of the group assigned. The experimental design was essentially as recommended in the [Comprehensive risk management chart for the prevention of cerebro- and cardiovascular diseases 2015] from the Joint Committee consisted of 13 internal medicine-related societies in Japan, and the Japan Atherosclerotic Society Guidelines 2017. Therefore, the conclusion from the J-DOIT3 study is expected in medical field to affect the current and future medications for the prevention of atherosclerotic cerebro- and cardiovascular diseases (ASCVD).While analyzing the results of this study,we encountered serious problems associated with the methodology, logics and its interpretations, which were summarized in this review. The follow-up study appears to be in progress as described in the Discussion, but we interpret that the intensive therapy used in the J-DOIT3 study is risky in view of currently available evidence. We propose the authors of the study to let the participants know of the results on its objective endpoint, and newly obtain Informed Consents including the potential risks of the intensive intervention based on the progress in this field after the start of this study.
著者
大櫛 陽一 浜 六郎 浜崎 智仁 内野 元
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.39-47, 2018 (Released:2018-07-16)

A nationwide multicenter randomized controlled study (JDCS) was performed in type-2 diabetes patients. The conventional (CON) group received usual care including anti-diabetic, anti-hypertensive and anti-hyperlipidemic agents to maintain their targeted levels, and the intervention (INT) group additionally received intensive education on lifestyle modifications and adherence to treatment by telephone counselling and at each time outpatient clinic visit for 8 years. The JDCS appears to be based on an assumption that usual treatment of diabetes is appropriate for the prevention of diabetes complications, and that the lack of patients’ compliance is the major cause of unsuccessful treatments. No significant differences between the two groups were found in most of the test results (BMI, blood pressure, fasting glucose level, TC, HDL, lipoprotein-a), use of agents, life style (energy intake, smoking and alcohol intake) at 4 years of intervention. The exercise level was higher at 5 years of intervention, and triglyceride level was lower at 8 years. The incidence of coronary heart disease, retinopathy and neuropathy did not differ significantly between the two groups, but stroke incidence was lower in the INT group. We conducted new analyses on the changes of some explanatory variables in each group. The proportion of participants with pharmacological treatment including insulin significantly increased in both groups except sulfonylureas which about 60% of the participants used at the baseline. On the other hand, those without pharmacological treatment decreased from 19% to 4% in both groups. These indicate that both groups failed in diabetes treatment together. As for the exercise and the smoking cessation, these may prevent stroke, but do not contribute to improvement of diabetes. It is not convincing enough for us to support the validity of publicizing the treatment of diabetes patients used in the JDCS study performed at 59 universities and general hospitals in Japan.
著者
田中 洸 柏原 美希 櫛田 佳菜子 丸山 まいみ 大家 千枝子 岡田 有華 木村 典代
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.375-384, 2016 (Released:2017-09-26)
参考文献数
11

本研究は、生徒が自分で簡易に記入できる半定量式食事記録用紙(SSQDR)を作成し、その信頼性および妥当性を検討した。信頼性の検討では、生徒でもSSQDRのポーションサイズを正確に把握できるかどうかを検討するために、1日の食事を料理サンプルにて提示し、中学生32人を対象にSSQDR法を実施した。その結果、提示された食品のポーションサイズを正確に把握した者の割合は平均65%であり、SSQDR法によって算出された栄養素量のα係数は全ての栄養素で0.8以上の高い一致率が得られた。また、高校生49人により1食分の秤量記録法を実施し、同時にSSQDRを記入してもらった結果、両調査法から得られた栄養素等摂取量の相関係数は全ての栄養素で有意な正の相関(r≧0.456、p<0.01)が得られた。以上の結果、SSQDRは簡易に記入でき、秤量記録法と同程度の栄養素等摂取量が推定できる方法であることが示唆された。また、ポーションサイズは中学生でも正確に把握できることから、食事への認識が十分とは思われない生徒でも自分で記録することができる簡便な食事調査法として活用が期待できる。
著者
奥山 治美 浜崎 智仁 大櫛 陽一
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.79-88, 2014 (Released:2014-05-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Previous cholesterol guidelines for the prevention of CHD were based on "the lower, the better" hypothesis, setting upper LDL-C limits and treating patients to maintain their cholesterol levels below the targets, as seen in the ATP 3 issued from the National Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI) and that issued from the Japan Atherosclerosis Society (JAS GL). We published a new cholesterol guideline for longevity (JSLN GL 2010), in which evidence was presented that a high cholesterol level is not a causative factor of CHD but is a predictor of longevity among general populations over 40-50 years of age. Recently, a long-waited revision of the ATP 3 was published from the NHLBI in conjunction with the American College of Cardiology and the American Heart Association (ACC/AHA GL 2013), in which "setting targets to treating patients with statins" and "the lower, the better hypothesis" were abandoned because of the lack of clinical evidence. However, both the JAS GL 2012 and ACC/AHA GL 2013 brought about estimated 10-year CHD (ASCVD) risk mainly based on NIPPON DATA 80 and NHLBI-supported studies, respectively, resulting in increased estimated number of subjects to be treated with statins. Here, we point out that the estimated 10-year risks are not usable because they are not evidence-based. Moreover, we summarize biochemical mechanisms underlying the statin actions to increase heart failure, diabetes mellitus and other diseases after long-term treatments. The cases for which statins, all mitochondrion-toxic, are applicable should be extremely restricted.
著者
櫛引 素夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

1)はじめに<br> 整備新幹線は2002年に東北新幹線が八戸開業、2010年に新青森開業を迎えるなど、2015年1月までに5路線中、3路線が営業を開始した。2015年3月には北陸新幹線が金沢開業、2016年3月には北海道新幹線が新函館北斗開業を迎える。<br> 整備新幹線の開業に際しては経済的な効果の研究が多数なされているが、地域社会総体や住民生活の変化、さらに沿線住民の評価に関する研究例は非常に少ない。<br> 発表者は2014年8~9月、青森県内の青森、弘前、八戸の3市で、住民896人を対象に郵送で新幹線の評価に関する調査を実施し、計313人から回答を得た(回収率35%)。本研究では、この調査結果に基づき、地域社会の変化を住民の視点から分析するとともに、新幹線開業の意義や地域政策としての可能性、および課題について検討する。<br><br>2)新幹線の利用動向<br> 新幹線の利用経験は、「11回以上」と答えた住民が八戸市では70%を超えたのに対し、青森、弘前両市では30%台だった。利用頻度でも、八戸市では「年に1~2回」以上と答えた人が70%を超えたが、青森、弘前両市では40%台にとどまった。新幹線開業に伴い鉄道の利用頻度が「大きく増えた」「少し増えた」と答えた人は、八戸市で半数を超えたのに対し、青森、弘前両市では30%前後だった。<br> 他方、青森市では、回答者の50%が、新幹線開業に伴い「新幹線で出かけたい気持ちが強くなった」と答え、八戸市の42%、弘前市の36%を大きく上回った。このことから、青森市でも今後、新幹線の利用が活発化し、定着していく可能性を指摘できる。<br><br>3)鉄道や地元の変化に対する評価<br> 3市とも、新幹線がもたらした変化で最も評価が高いのは「東京や仙台、盛岡との行き来が活発になったこと」である。この項目を除くと、3市の回答にそれぞれ大きな特徴がみられる。<br> 八戸市では、回答者の9割近くが「盛岡や仙台、東京への所要時間が短くなった」と評価しており、青森市の66%、弘前市の68%を大きく上回った。八戸駅は新幹線駅が在来線駅に併設されたのに対し、青森市は新駅にターミナルが移転したこと、弘前市は奥羽線で乗り継ぎが必要なことが影響しているとみられる。<br> また、八戸市では新幹線開業に伴い「市の知名度が上がった」と評価している人が48%に達し、交通面での利便性向上とは直接、関係のない「存在効果」への評価が高い。半面、「新幹線駅一帯が代わり映えしない」ことを心配する人も44%あり、2002年の開業後、駅一帯の整備や開発が大きく進展しないことへの不満や不安も大きい。<br> 青森市では、知名度の向上や観光客の増加を歓迎する回答が多い一方で、22%が「駅の利便性が低下した」と回答し、ターミナル移転への不満が強い。加えて、新青森駅前の開発が進まない現状に対し、回答者の54%が、開業をめぐって「心配なこと」に挙げ、新青森駅の景観や機能への不満はさらに強い。<br> 弘前市は、観光客の増加を評価する回答が34%と高いが、市内に活気が出ていないこと、新青森駅前の開発が進まないことへの不満が強い。<br> これらの変化に対する評価を総合して、「自分の暮らし」「自分が住んでいる市」「青森県全体」の3項目について、新幹線がもたらした変化を「良い効果をもたらした」「悪い影響をもたらした」「何とも言えない」から選択してもらった結果、同一の市でも項目ごとに評価の傾向が異なる上、市によっても評価傾向が異なった。<br> 全体的に肯定的な評価が目立ったのは八戸市で、3項目いずれも「良い効果をもたらした」という回答が40%を超えた。一方、青森市では、「自分が住んでいる市」について「良い結果をもたらした」が34%、弘前市では31%だった。<br><br>4)北海道新幹線開業への予測<br> 北海道新幹線が及ぼす変化の予測については、「自分の暮らしに良い効果をもたらす」と答えた人は3市とも20%台、「悪い影響をもたらす」と答えた人が4~6%で、7割前後が「何とも言えない」と答えた。青森県全体に及ぼす変化については、回答傾向がやや異なり、「良い効果をもたらす」が八戸市で39%だったのに対して、青森市では28%止まりだった。また、「悪い影響をもたらす」と答えた人が3市とも1割を超えた。<br> 具体的な懸念材料としては「道南・函館に観光客を吸い取られる」ことを挙げた人が3市とも最多で、青森市では63%、他の2市でも48%に達した。<br><br>5)考察<br> 新幹線開業がもたらす変化について、住民は「自分の暮らし」「自分の市」「県全体」とで異なる評価の視点を持つことを確認できた。また、「知名度の向上」など、いわゆる「存在効果」への評価も重視していること、さらには新幹線駅周辺の機能や景観が整わない「負の存在効果」にも敏感であることが確認できた。
著者
丹羽 浩一郎 佐藤 浩一 杉本 起一 伊藤 智彰 折田 創 櫛田 知志 櫻田 睦 前川 博 坂本 一博
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.1005-1011, 2013-09-30 (Released:2014-01-10)
参考文献数
14

要旨:大腸穿孔の成因と治療成績,および予後予測因子について検討を行った。過去17年間に当院で緊急手術を施行した大腸穿孔182例を対象とした。死亡例は38例(死亡率:20.8%)であった。穿孔原因別に救命群と死亡群の2群に分けて検討した。大腸穿孔の原因として憩室(44.0%),大腸癌(30.2%),特発性(8.2%)の順に多かった。憩室,大腸癌を原因とする大腸穿孔では,多変量解析でAPACHIIscoreが独立した予後予測因子であった(それぞれp=0.002,p=0.038)。憩室を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが20点以上で死亡率85.7%と有意に高く(p<0.0001),また大腸癌を原因とする大腸穿孔では,APACHIIscoreが18点以上で死亡率75.0%と有意に高くなった(p<0.0001)。各症例の重症度を評価し,治療戦略を立てる際には,APACHEIIscoreが指標になる可能性が示唆された。