著者
今井 康之 黒羽子 孝太 渡辺 達夫
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

化学物質アレルギーにおいて、抗原の働きを強める作用(アジュバント作用)の重要性が注目されつつある。しかし、アジュバントの機構については不明な点が多い。マウスの接触性皮膚炎をモデルとして、様々なフタル酸エステルのアジュバント作用を比較し、知覚神経に発現する侵害刺激受容チャネルの刺激活性との相関を発見した。さらに、食品成分など抗原性の弱いハプテンの抗原性をフタル酸エステルが引き出すことを明らかにした。
著者
渡辺 雅子 山本 龍兵 采女 尚寛 上月 康則 岡田 直也 玉井 勇佑 野上 文子 河井 崇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_916-I_920, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
5
被引用文献数
3

希少種ルイスハンミョウの生息地消失に対する代償措置として創出された海浜において,ルイスハンミョウ幼虫の生息可能な場所の面積を増やすための手法検討が本研究の目的である.そのため,幼虫の生息環境について,生息標高や植生被度,地盤の安定性を調査した.その結果,(1)標高0.7~1.0m,(2)植生被度25%以下,(3)地盤の変動係数6.7%以下の場所に生息していた.幼虫の生息場所を増やすためには,標高を調節する,植生を除去する,地盤を安定するなどの方法が考えられる.幼虫生息場創出実験により,調節した標高を維持することは難しいが,植生除去により創出した生息地を1年以上維持できることが分かった.以上のことから,維持管理や得られる面積の広さを考慮した結果,ルイスハンミョウ幼虫の生息場の創出方法として海浜植生除去が効果的であると考えられた.
著者
花田 修治 渡辺 貞夫 佐藤 敬 和泉 修
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1279-1284, 1981 (Released:2008-04-04)
参考文献数
30
被引用文献数
5 8

Magnetic heads made of Sendust alloy head cores (standard chemical composition: Fe-9.6 wt%Si-5.4 wt%Al) are known to have superior magnetic properties and wear resistance. The cores are usually made by mechanical working, such as slicing and grinding since the alloy is so hard and brittle that it has been believed to be difficult to make head cores by plastic deformation. In the present work, plastic deformability of the alloys was investigated by compressive tests on Sendust single crystals at temperatures between room temperature and 1173 K and various strain rates. Main results are summarized as follows.The operative slip systems are {110}〈111〉 and {112}〈111〉 depending on compressive axis. Therefore, the von Mises criterion for a polycrystalline material to deform plastically by slip within grains is satisfied, indicating that the brittleness of Sendust alloys cannot be explained by the number of independent slip modes available. At room temperature the stress-strain curve exhibits three stages in a similar manner to Fe3Al and Fe3Si with DO3 structure.Above the temperature where yield stress decreases abruptly, the steady state deformation takes place. Under the condition of the steady state deformation, the strain rate is represented by the relationship of \dotε=Bσnexp(−Q⁄kT), where n=4.6 and Q=540 kJ/mol. These results suggest that even a polycrystalline material of Sendust alloy may be deformable under the suitable conditions.

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著者
渡辺 浩
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.2_3-2_3, 2010-02-01 (Released:2010-11-05)
著者
渡辺 滋
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.190, pp.29-55, 2015-01-30

古代社会で発生した揚名官職(肩書だけで権限・給与が与えられない官職)をめぐっては、有職学(儀式・官職などに関する先例研究)の一環として、また『源氏物語』に見える「揚名介」の実態をめぐって、前近代社会のなかで長期に渡り様々な人々による検討がなされてきた。ところが先行研究では、一部の上級貴族をめぐる個別的・断片的な事例を除き、その展開過程について十分な分析がなされないまま放置されている。そこで本稿では、関連資料が豊富に現存する広橋家の事例を中心として、中世貴族社会における関連研究の展開を解明した。具体的に取り上げたのは、おもに広橋兼秀(一五〇六~一五六七)による諸研究である。国立歴史民俗博物館に所蔵される広橋家旧蔵本から、兼秀によって作成された関連資料を検出・分析することで、従来未解明だった広橋家における情報蓄積や研究展開の諸過程を解明した。その結果、彼の集積した諸情報は家伝のものだけでなく、周辺の諸家からもたらされたものも少なくないことが判明した。そこで中世の広橋家における有職研究の過程で蓄積された情報や、それに基づく研究成果を相対化するため、同家の周辺に位置する一条家・三条西家などにおける研究の展開も検討した。このように中世貴族社会における関連研究の展開過程も分析した結果、諸家における研究が相互に有機的関連を持っていたことや、とくに広橋兼秀の場合、一条家における研究成果から大きな影響を受けていた実態が判明した。以上のような展開のすえ、最終的に近世の後水尾上皇などへと発展的に継承される解釈が、基本的には中世社会のこうした営みのなかで形成されたことが確認された。
著者
橋本 博文 今井 栄一 矢野 創 渡辺 英幸 横堀 伸一 山岸 明彦
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
2016
被引用文献数
1

The mechanical thermometer using a bimetallic strip coil was developed for the Tanpopo mission. The Tanpopo mission is a multi-year passive exposure experiment for astrobiology exposure and micrometeoroid capture onboard the Exposed Experiment Handrail Attachment Mechanism (ExHAM) at the Japanese Experiment Module 'Kibo' (JEM) Exposed Facility (EF) on the International Space Station (ISS). The Tanpopo mission apparatuses were launched by the SpaceX-6 Dragon CRS-6 on April 14 2015, from the Cape Canaveral Air Force Station in the U.S.A. Since its microbial exposure experiment requires recording the maximum temperature that the Tanpopo exposure panel experiences, we have developed a mechanical thermometer with no electric power supplied from the ExHAM. At a given time and orbital position of the ISS, the thermometer indicator was video-imaged by the extravehicular video camera attached to the Kibo-EF and controlled from the ground. With these images analyzed, we were able to derive the maximum temperature of the Tanpopo exposure panels on the space pointing face of the ExHAM as 23.9±5 °C. Now this passive and mechanical thermometer is available to other space missions with no electric supplies required and thus highly expands the possibility of new extravehicular experiments and explorations for both human and robotic missions.
著者
渡辺 多恵子
出版者
日本評論社
雑誌
経済評論 (ISSN:02878801)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, 1960-04
著者
加藤 恭郎 渡辺 孝 前田 哲生 垣本 佳士
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.745-751, 2011-06-01 (Released:2011-06-21)
参考文献数
12

わが国においてスターチ腹膜炎についての認識は低く,パウダーフリーの手術用手袋の普及も進んでいない.今回,虫垂切除後にスターチ腹膜炎を発症し,その後の経過を長期に観察しえた1例を経験したので報告する.症例は16歳女性で,1994年,虫垂炎に対し虫垂切除を行った.術後9日目から小腸通過障害をおこし,12日目に腹腔鏡下癒着剥離術を行った.黄色混濁腹水と腹膜小結節を認めた.腹水の培養は陰性であった.術後発熱と高い炎症反応が続いた.CTで腹水の貯留と腸間膜の肥厚を認めた.手袋のパウダーでの皮内反応が陽性であった.スターチ腹膜炎と判断しステロイド投与を行ったところ炎症反応は低下し,腹水も消失した.その後も小腸通過障害,複数回の腹痛があったがいずれも保存的に軽快した.スターチ腹膜炎が長期にわたり患者のQOLを悪化させた可能性があった.今後パウダーフリーの手術用手袋を普及させる必要があると思われた.
著者
渡辺 守
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.295-302, 2006 (Released:2006-10-31)
参考文献数
14

消化器関連領域の臨床医にしか持ち得ない臨床情報に基づいた研究課題を抽出し,臨床材料を用いて研究を展開し,臨床の現場に還元することを目的とした,我々が提唱する概念である「クリニカル・サイエンス」が,いかにこれまでの基礎医学にインパクトを与えたかを我々の実例を挙げて議論した.我々は潰瘍性大腸炎患者の中で胸部X線上,胸腺が肥大している患者が見つかったという臨床情報より,患者の血清中にIL-7を証明した.更に,大腸内視鏡にて得た臨床材料を用いることにより,IL-7が腸管上皮細胞から分泌され,周囲のIL-7受容体を持ったリンパ球の増殖を調節していることを初めて示した.その研究の過程で,IL-7受容体が腸上皮細胞にも発現することを見出し,腸管上皮細胞の傷害時には骨髄由来細胞が入ってきて再生過程をレスキューする可能性を発見した.更に,ヒト骨髄由来腸上皮細胞が再生時に分化の方向が変化して,分泌型腸上皮細胞に変化すること,IL-7の産生機構の解析にて分泌型上皮細胞からのIL-7が極めて特殊な分泌機構になっていることを見出した.最近の腸管免疫,炎症性腸疾患に関する研究の発展は基礎医学と臨床医学を両輪とし,病態解明とそれに基づく疾患治療法の開発が完全に併走した極めて特殊な形態で進んでいる.臨床研究者が大きなアドバンテージを持って研究に参加可能な領域であり,事実,臨床研究者の貢献は非常に大きいことを強調したい.
著者
桜井 良太 藤原 佳典 金 憲経 齋藤 京子 安永 正史 野中 久美子 小林 和成 小川 貴志子 吉田 裕人 田中 千晶 内田 勇人 鈴木 克彦 渡辺 修一郎 新開 省二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.352-360, 2011 (Released:2011-10-12)
参考文献数
30
被引用文献数
6 8

目的:温泉は古くから治療目的などにも用いられてきたが,温泉施設を高齢者に対する健康増進を目的とした介入事業の拠点として用いる有効性について検討した研究は極めて少ない.そこで我々は,運動・栄養指導,温泉入浴からなる複合介入プログラム"すぷりんぐ"を開発し,その効果を無作為化比較試験によって検討した.方法:65歳以上の特定健診該当者を対象に公募により本プログラムへの参加者を募集した.68名が事前調査に参加し,60名(72.7歳±6.0)がプログラムへの参加に同意した.参加者を無作為に介入群31名と対照群29名の2群に割付け,交差法により前期に介入群,後期に対照群に対して複合介入プログラムを3カ月間(週2回,90分)実施した.介入群プログラム終了時(3カ月後:第2回調査)と対照群プログラム終了時(6カ月後:第3回調査)に調査を実施し,プログラムの短期・長期的効果の検討を行った.結果:介入に起因した傷害,事故の発生はなく,介入群の平均プログラム出席率は76%であった.性・年齢・BMIを調整した一般線型モデルの結果,第2回調査時には対照群に比べ,介入群の握力と開眼片足立ちに有意な改善が認められた(各々p =0.028,p =0.003).また,第3回調査において,介入直後に確認された握力と開眼片足立ちの有意な改善の維持が認められ(各々p =0.001,p =0.024),改善傾向が見られたWHO-5の有意な維持・改善が示された(p =0.027).交差後の対照群の介入プログラム出席率も平均81%と比較的高く,対照群への介入時においても傷害,事故の発生は確認されなかった.結論:温泉施設を活用した複合的介入プログラムである"すぷりんぐ"は身体機能を中心とした高齢者の健康増進に寄与するプログラムであることが示された.また,その継続的効果とプログラムの出席率・安全性が確保されていることから,温泉施設を高齢者に対する健康増進を目的とした介入事業の拠点とする意義は高いものと考えられる.
著者
渡辺 謙仁
出版者
草の根文化研究会
雑誌
草の根文化の時代
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-53, 2015-03-31

本稿は、「ソーシャルメディア衛星開発プロジェクトSOMESAT」を対象としたフィールドワークに基づく、初音ミクと宇宙開発の「草の根な関係」についての論考である。文化人類学者の小田(2010 p.46)は次のように言う。「どのエスノグラフィーも、特定のエスノグラファーが、特定の時期の、特定のフィールドで調査をし、特定の読者層に対して書いていったものです。そこには常に誤解、誇張、歪曲の可能性がつきまといます」。また、社会学者の佐藤(2006 p.174)は次のように言う。「対象者のスポークスマンによるものとも思えるような民族史を発表するフィールドワーカーもいます」。本稿は、対象者にとっての「正史」ではない。著者から見た「唯一の正しい」対象像を提示するものでもない。むしろ、対象を取り巻く文脈や解釈の多様性を示したい。 本稿では、2章で一見無関係な「初音ミク」と「宇宙開発」、3章でこの2つが結び付いて生まれたSOMESATをそれぞれ概説する。4章では、SOMESATを取り巻く社会状況を見ていくことで、「初音ミク」と「宇宙開発」を結び付けた条件を探る。5章では、SOMESATへの多様な解釈や参加をもたらす、草の根的文脈の多様性と多重性を見る。6章では、初音ミクが有する宇宙へ飛翔するキャラクター的身体について論じる。7章では、まとめと本稿が今後の草の根文化の研究とデザインに貢献する点について述べる。
著者
西上 功一郎 渡辺 澄夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-II (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.119-129, 2003-01-01
被引用文献数
17

情報システムの統計的学習においては,複数のモデルの候補から与えられた規準に対して最も適するモデルを選ぶ操作が必要になる.その規準として,真の分布を最大の確率で見出すための一致性の規準,及び予測誤差を最小にするための有効性の規準がある.正則な統計モデルにおいては,AICやBICなどの規準が提唱され,その性質が詳しく研究されているが,神経回路網や混合正規分布などの特異点をもつ学習モデルの選択のための規準については,不明なことが少なくない.本論文では,特異点をもつモデルのベイズ学習について考察し,確率的複雑さを最小にするモデル選択法において,常に正値の事前分布を用いる方法とジェフリーズの事前分布を用いる方法とを,一致性及び有効性に関する観点から比較する.既に知られている理論的な命題を基盤として,二つの分布の違いについて合理的な予想を行い,その予想を実験的に検証する.特に,学習モデル族が真の分布を含んでいる場合には,ジェフリーズの事前分布が一致性・有効性の両面で優れていること,反対に,学習モデル族が真の分布を含んでいない場合には,常に正値をとる事前分布が有効性において優れていることを実験的に明らかにする.