著者
小暮 敏明 渡辺 実千雄 伊藤 隆 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.349-355, 1997-11-20
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

温経湯が奏効した原発性シェーグレン症候群(pSjS)の三例を報告した。症例1は, 67歳, 女性。1992年4月に目のゴロゴロ感を自覚, 11月砺波総合病院受診。抗核抗体(+), 乾燥性角結膜炎の存在, 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断。点眼薬で加療されたが無効のため1995年6月同院東洋医学科受診, 温経湯を投与したところ眼・口腔乾燥症状の軽快が得られ, 6ヶ月後乾燥性角結膜炎の改善が確認された。症例2は73歳, 女性。1987年腰痛で当科受診し和漠薬治療を受けていた。1991年胸鎖関節痛が出現し当科入院。シルマーテスト(+), 抗SS-A抗体(+), 口唇生検でリンパ球浸潤の存在より, pSjSと診断。温経湯の投与後1ヶ月で胸鎖関節痛は消失し, 赤沈などの炎症反応も正常化した。しかし, この例は乾燥症状の改善は得られなかった。症例3は39歳, 女性。1991年6月多関節痛, 口腔乾燥感を自覚し近医受診, 高γ-グロブリン血症, 抗SS-A抗体(+), 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断,非ステロイド性抗炎症剤を受けていた。和漢薬治療希望で1994年3月当科受診。多関節痛が強いため, 桂枝加苓朮附湯等を投与し関節痛は軽減。口唇乾燥と月経痛から温経湯に転方, 口腔乾燥感, 目のカサカサは軽快したが, 手関節痛の出現のため2ヶ月後, 桂枝加朮附湯加減に転方した。これらから温経湯のpSjSへの応用の可能性が示唆されるとともに, 乾燥症状だけでなく, 関節痛という腺外症状にも有効であったことから, 本方剤を運用するうえで示唆に富む症例と考えられた。
著者
渡辺 正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.593-596, 1996
参考文献数
2
被引用文献数
1

身近な現象にどれほどよく当てはまるか-そこに重きを置くならば, なぜか16個の元素をずらずら並べた例の「イオン化列」はまっさきに「不合格」の印を押すべき素材だろう。いかにも根拠はございますという顔つきながら, じつはあの「右へならえ」は, 理想化をとことん進めた極限, 仮想世界の中でしか成り立たないからだ。現実世界に合わせたければ, 元素の数はぐっと間引いて10個以内, できれば8個くらいにするのがまともな神経だといえる。そのへんを一緒に考えてみたい。
著者
村田 雄哉 猪股 伸一 山口 哲人 渡辺 雅彦 玉岡 晃 田中 誠
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.50-53, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
8

患者は生来健康な26歳,女性.職業はキャビンアテンダント.勤務中に乗客の重い荷物を全身の力で頭上の棚に持ち上げ,その夜より強い頭痛と嘔気が生じた.頭痛や嘔気は立位や夕方に増強し,臥位で改善した.computed tomography(CT)脊髄造影で髄液漏出が認められ,脳脊髄液減少症と診断された.治療として硬膜外生理食塩液持続注入を行い,症状・activities of daily living(ADL)ともに改善がみられた.合併症が多いと考えられる硬膜外自家血注入を行わず,安全かつ効果的に治療することができた.また,非外傷性の脳脊髄液減少症は発症契機が不明なことが多いが,本症例では重い荷物を頭上に持ち上げるようなストレッチ運動が契機となった可能性が高いと考えられた.
著者
渡辺 哲矢 西尾 修一 小川 浩平 石黒 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.86-93, 2011-01-01
被引用文献数
2

遠隔操作型アンドロイドロボットを操作する際,触覚フィードバックがないにもかかわらず,ロボットの身体に触られると自分に触られたように感じることがある.類似の現象として,身体への触覚刺激に同期して身体以外への物体に触覚刺激を与えている様子を観察させると,身体感覚の転移が生ずる「Rubber Hand Illusion」が知られているが,触覚刺激を伴わない身体感覚の転移についての研究事例は少なく,特に対象物を遠隔操作する際の転移に関する報告はこれまでない.本論文ではアンドロイドの遠隔操作時に身体感覚の転移が実際に生じているのかを検証した.その結果,アンドロイドと操作者の動きが同期した場合に,触覚刺激を与えなくても,身体感覚の転移が生ずることが分かった.
著者
山下 英明 立石 慎治 大森 不二雄 永井 正洋 林 祐司 椿本 弥生 松河 秀哉 渡辺 雄貴 松田 岳士 高森 智嗣 柳浦 猛
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,高等教育機関の教学データを一元的に管理・分析し,教職員によって学生指導に活用されることを目的としたIRシステムを開発,評価した.具体的には,学生の留年可能性を早期に発見し,指導に役立てるための留年判定モデルを運用するシステムを開発した.留年判定モデルでは,ソフトマージン・サポートベクターマシンを採用し,機械学習ライブラリを用いてスタンドアロンのPC上に実装した.過去の学生データを用いて留年を判定し,予測精度の確認と教員による評価を受けた結果,留年予測の精度は93%であり,判定結果の理解度も高かった.一方で,表示されるデータの解釈やインタフェースについては課題が残された.
著者
河内 明宏 渡辺 泱 中川 修一 三好 邦雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.1811-1820, 1993-10-20
被引用文献数
1 7

一般の小学生と幼稚園児2,033名を対象として,正常児および夜尿児の膀胱容量,夜間尿量と夜尿を含む夜間の排尿行動を,質問紙法により調査した.正常児の朝,昼の膀胱容量と夜間尿量は,年齢との間で直線回帰式にて表せる,有意な相関関係を示した.また体の成長との関係においては,身長,体重および体表面積の3者の内で,体重との間で最も良い相関関係を示した.夜間尿意覚醒時の膀胱容量と朝,昼の膀胱容量を比較すると,朝の膀胱容量が夜間の膀胱容量に近い値を示し,夜尿を論じる際の膀胱容量は朝起床時の膀胱容量を重視すべきであると思われた.夜尿児の朝の膀胱容量は,正常児と比較して,6歳までは小さいが,7歳以上では逆に大きいと考えられた.正常児の間でも10〜15%に夜間多尿であると思われる児童が存在し,これらは覚醒機能が正常で,夜間尿意覚醒するために夜尿とならないと考えられた.夜尿児の頻度は全体で14%であり,9歳までは男が多かったが,10歳以上ではほぼ同じ頻度であった.過去に夜尿があった児童の調査結果より,夜尿の平均自然消失年齢は7.3歳であり,このことより8歳以降持続する夜尿は積極的治療の対象になると考えられた.
著者
渡辺 京子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-14, 2005-10-05

本稿の目的は、多国籍企業社内での意思決定のための会議において日本人とドイツ人の参加者がそれぞれどのようにコミュニケーションを行っており、そこにはどのようなスタイルの差が見受けられるかということを実際に行われた会議の音声収録データをフレーム分析の方法論で考察し、その背景を探ることである。両者の会議発言の構成やフレームの取り方には対照的な差が見られた。日本人は、「前置き-背景説明-短い主張」というフレームで発言しており、ドイツ人は「発言の題目表示-理由説明-まとめ及び行動への呼びかけ」という流れがほぼ一貫して見られた。更に日本人の場合にはそれぞれのフレームの境目が明確に浮かびあがらず、全体とした流れとなってそこに主張が埋め込まれていた。個人間の発話も同様の構造が見られ、積極的に主張を展開することはせず、合意はプロセス共有の果実であり当然の帰結として生じるという暗黙の意識が感じられた。ドイツ人は構成部分を明確に区分けしており、それぞれの区分が際立つ話し方をし、個人間でも同様に明確な領域を主張しながら意思決定に貢献しようとする姿が見られた。このような構造的なスタイルの差異は、意思決定の会議に対する異なる志向性によるものと考えられる。日本人は、思考のプロセスの共有に重きを置き、ドイツ人は明確な領域を主張しながらの意思決定への貢献を志向していると思われる。
著者
村田 雄哉 猪股 伸一 山口 哲人 渡辺 雅彦 玉岡 晃 田中 誠
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0020, (Released:2014-12-26)
参考文献数
8

患者は生来健康な26歳,女性.職業はキャビンアテンダント.勤務中に乗客の重い荷物を全身の力で頭上の棚に持ち上げ,その夜より強い頭痛と嘔気が生じた.頭痛や嘔気は立位や夕方に増強し,臥位で改善した.computed tomography(CT)脊髄造影で髄液漏出が認められ,脳脊髄液減少症と診断された.治療として硬膜外生理食塩液持続注入を行い,症状・activities of daily living(ADL)ともに改善がみられた.合併症が多いと考えられる硬膜外自家血注入を行わず,安全かつ効果的に治療することができた.また,非外傷性の脳脊髄液減少症は発症契機が不明なことが多いが,本症例では重い荷物を頭上に持ち上げるようなストレッチ運動が契機となった可能性が高いと考えられた.
著者
飛龍 志津子 力丸 裕 渡辺 好章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.1079-1084, 2006-12-01
被引用文献数
4

近年,生物が有する様々な生体アルゴリズムをテクノロジーヘ応用するバイオミメティックス(生態模擬技術)が提案されている.本研究は,次世代の音響センシング技術などへのブレークスルーを指向し,コウモリが超音波を利用して行う効率的な周囲環境情報収集システムを工学的に明らかにしていくことを目的としている.本稿では,生物ソナーと呼ばれる彼らのエコーロケーション能力を,実際の行動観測から得た結果を基に紹介する.
著者
渡辺 俊行 龍 有二 林 徹夫
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、パッシブ住宅の室内熱環境を予測評価するための設計支援システムの開発を目的としている。パッシブ住宅とは、日射・風・気温・地温などの自然エネルギ-を利用して、建築の構造体や空間が持っている熱的環境調整機能をコントロ-ルすることにより、夏涼しくて冬暖かい快適な室内環境の形成を図るものである。最終的に得られた成果は以下の通りである。1.パッシブ住宅の熱環境計画基本フロ-を示し、住宅用熱負荷概算プログラム,単室定常熱環境予測プログラム,多数室非定常熱環境予測プログラムを作成した。2.単室定常熱環境予測モデルにおいては、新たに室内平均放射温度と室内相対湿度の計算を組み込み、体感温度SET^*による評価を可能にした。このモデルは設計途中で熱環境を予測する際に有効であり、どの程度の通風を期待したらよいかなどを決定することができる。3.多数室非定常熱環境予測モデルにおいては、居住者の在室スケジュ-ルと体感指標PMVを設定した予測シミュレ-ションが可能である。ブラインドを含む窓面の伝熱モデルを追加し、いわゆるニアサイクル型のパッシブ住宅も取り扱えるよう改良した。夏季の日射遮蔽,通風,夜間換気,地中冷熱、冬季の断熱,気密,集熱,蓄熱を考えて基準住宅モデルの仕様を変更し、PMV±0.5以内を目標値とした室温および負荷変動のシミュレ-ション結果を基に、各パッシブ要素の個別効果と複合効果、補助冷暖房の必要期間と所要エネルギ-を明らかにした。4.徳山市および福岡市の各実験住宅において、夏季および冬季の室内熱環境を実測調査し、多数室非定常熱環境予測モデルによる計算値と比較検証した。その結果、計算値は測定値とよく一致し、本予測評価システムの有効性が確認された。
著者
石井 幹 並木 昌子 渡辺 文子 久保田 義正 安部 直重 高崎 宏寿 大宮 正博
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.73-80, 1983-03-01

1.1977年における調査乾草補給という条件下の, 乳用種去勢牛48頭の行動を夏の5日間, 屈斜路酪農研修施設の4haの放牧地と0.2haの通路で, 日中14時間観察して次のような結果をえた。1)平均行動時間は採食形が262分(31.2%), 反芻形を含む休息形が486分(57.8%), 移動形が14分(1.7%), そして混合形が78分(9.3%)であった。2)暑い日における採食時間は215分, 涼しい日は294分であったから, 暑い日は涼しい日より採食時間が79分も少なかった。移動時間は15分と13分でほとんど変らなかったが, 休息形は暑い日が505分, 涼しい日が473分で32分の差があった。混合形は105分と60分で, 暑い日が45分も多かった。3)平均休息率は59.8%であったが, 暑い日が63.9%, 涼しい日が57.0%であった。横臥率は平均16.7%で, 暑い日が13.9%, 涼しい日が18.5%であった。4)採食型は2回型と3回型に分れたが, 平均気温との関係は明らかでなかった。5)牛群は日の出後に食草することが多かった。6)採食時間のうち乾草採食時間が57.3%, 食草時間が42.7%であった。暑い日と涼しい日の間にはあまり差がなかった。7)平均採食回数は6.2回で, 採食1回当りの平均時間は44分であった。暑い日は7.0回採食して, 1回当り採食時間は32分であったが, 涼しい日は5.7回, 53分であった。2.1979年における調査酪農研修施設の3.0haの放牧地と通路において, 乳用種去勢牛15頭の行動を夏の4日間, 午前4時から14時間(ただし, 霧雨の1日だけは午前9時から9時間)観察した。平均気温は18.1〜21.5℃にあったので, いづれも涼しい日に該当した。調査結果はおよそ次のとおりであった。1)平均行動時間は食草形が461分(54.9%), 反芻形が243分(28.9%), 休息形が107分(12.7%), そしてその他の行動形が29分(3.5%)であった。2)反芻形と休息形における横臥姿勢の割り合いは, それぞれ75.3%, 72.0%で, 全体として横臥姿勢が多かった(74.3%)。しかし霧雨の日には反芻形を含む休息形105分のうち, 起立姿勢が63.8%を占めた。3)すべて1日3回の食草型であった。4)早朝の食草行動は, すべて日の出前から行われた。3.1977年と1979年における調査結果の比較両年における観察結果から, 次のことが明らかになった。1)良質乾草を十分に補給した場合の採食時間は, 通常の夏季放牧の約57%であった。2)乾草補給下の放牧では, 主要採食形が2回型と3回型に分れたが, 通常の放牧ではすべて3回型であった。3)通常の放牧では牛群は日の出前から食草を始めたが, 乾草補給の放牧では日の出よりかなり遅れる傾向があった。
著者
馬 青 吉見 毅彦 渡辺 靖彦
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

英作文において、部分的に適切な英語表現が思い浮かばないとき、本来言い表したい日本語表現(単語またはフレーズ)をそのまま入力するだけで、すなわち、日英混在の入力文から、適切な英語表現を生成してくれる英作文支援システムを開発した。単語レベルでの支援においては最適な文脈による訳語選択手法と大規模で高品質な英語コーパスと超大規模なWebデータの統合利用手法を提案した。フレーズレベルでの支援においては日本語フレーズを構成する各単語の訳語候補の組み合わせによる英語フレーズの生成手法と、大規模で高精度な日英対訳表現抽出手法とそれにより抽出した日英対訳表現を利用した用例ベースに基づく英作文支援手法を開発した。