著者
川島 逸郎 渡辺 恭平
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.67-83, 2020 (Released:2020-03-31)

名古屋市博物館所蔵の「吉田翁虫譜(小塩五郎写本・四巻仕立て)」(原本は、尾張藩士で「嘗百社」の幹部でもあった吉田高憲(平九郎, 号雀巣庵, 1805–1869)の作)のうち、第一巻に含まれる「蜂(はち)譜」(二十二丁)について、現代の視点から詳細な解析および同定を行った。その結果、概して写実的に描かれてはいるものの、全形図133 個体(部分図や巣、巣材、獲物などを除く)のうち、種レベルでの同定が可能なものは33 個体30 種であった。各種の生活や習性については詳しい記述がなされている一方、その配列や呼称などには規則性はみられず、西洋での系統分類のような視点は存在していない点が窺えた。描かれた種構成からは、当時の尾張から三河地方における、平野から丘陵地にかけてのハチ相や生息環境(里山)の一端も読み取れる。
著者
渡辺 達三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.193-208, 1992-12-25

松平定信は致仕後,自らを楽翁と号し浴恩園の整備を進め,そこにハスの品種を多数集め,それを観賞し,蓮譜『清香譜』を完成させている。それまでは,ハスの品種観念も曖昧で,品種数も数種とり上げられているたすぎなかったが,『清香譜』では九十余種記載されていたといわれ,蓮譜史上,画期的な意義を有する。しかし,その『清香譜』は戦後,散逸し,その実像は明らかでない。また,翁のハスの観賞についても,その実態についてはほとんど知られていない。そこで,本稿では,楽翁のハスの観賞の態度・あり様について,また,その大きな事績である『清香譜』について考察するものである。
著者
北本 勝ひこ 三宅 優 渡辺 誠衛 中村 欽一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.53-58, 1985-01-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

白米の胚芽残存率と, それを用いて仕込んだ清酒のアミノ酸度との間に, 高度な負の相関が認められたので, それを確認するために胚芽単独に添加した仕込を行い, その効果を確認した。胚芽添加仕込により得られた清酒は, 次のような成分的特徴を持っていた。1. アミノ酸度, 総窒素, OD260, OD280, 酸度等は胚芽の添加量に応じて減少した。特にアミノ酸度は対照の50%となった。2. 各アミノ酸のうち, オルニチン, トリプトファン, プロリンを除いてすべて減少したが, 顕著な減少を示したアミノ酸のなかに高級アルコールの生成に関与するバリン, ロイシン, イソロイシン等のアミノ酸の減少が含まれ, それに相応する高級アルコールが増加した。3. 有機酸のうち, 清酒にとって好ましくない酢酸, ピルビン酸の減少が顕著だった。終りに, 御校閲頂いた醸造試験所所長, 佐藤信博士および第6研究室室長, 吉沢淑博士に感謝いたします。
著者
渡辺 恭良
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.94-98, 2007
被引用文献数
3 4

疲労感・倦怠感は,我々が日常的に経験している感覚であり,発熱,痛みとともに,身体のホメオスタシス(恒常性)の乱れを知らせる三大アラーム機構の1つである.疲労は,万人にとって非常に身近な問題であり,ストレス過多の現代社会に生きる私たちの中で慢性疲労に悩んでいるヒトが40%近くを占めるにもかかわらず,科学的・医学的研究はこれまで断片的であった.我々は,ストレスの過重蓄積によって陥る状態を疲労と定義している.ここ数年で,生活習慣病をはじめとする疾患の予防医療・予知医療の発展とともに,このような前病状態(未病ともいわれる)に如何に対処するかという気運が高まり,「疲労の科学」に目を向けられるに至った.多忙なスケジュールに振り回されている状況を回避することが困難な我々21世紀の住人にとって,如何に疲労に対処し回復策を探り過労に陥らないように知恵を絞るかが求められている.文部科学省・科学技術振興調整費による疲労研究班[生活者ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」(平成11-16年度,研究代表者:渡辺恭良)]では,これまでに知られてきた断片的な疲労の分子・神経メカニズムの研究結果を統合し,脳機能イメージングや遺伝子解析などの新しい方法論も取り入れて「疲労」と「疲労回復・予防」についての研究を深めてきた.ここでは,ストレスの人体への影響と大きな関連性を持つ「疲労の神経メカニズム」についての研究の現状についての情報を提供したい.また,2004年夏からは,文部科学省の21世紀COEプログラム革新的学術分野に我々大阪市立大学が申請した「疲労克服研究教育拠点の形成」が採択された(拠点リーダー:渡辺恭良).現在,COE拠点を挙げて,疲労の基礎・臨床研究と抗疲労食薬・環境開発プロジェクトを進めており,現時点での成果についても述べたい.<br>
著者
室山 幸太郎 衣畑 加代子 山下 久仁子 室崎 伸二 山本 佳弘 渡辺 裕彦 曾根 良昭
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.93-99, 2005-08-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
23

Our previous experimental results have shown that a mixture of thiamin, arginine, caffeine and citric acid (TACC) has an enhancement effect on fat metabolism in mice and human. In this study we examined the effect of tea ingestion, which was supplemented with TACC, on energy expenditure during a rest and an exercise period from the viewpoint of fat metabolism (utilization) in healthy subjects. A single-blind, placebo-controlled, crossover study was carried out to compare the energy expenditure after ingestion of TACC-supplemented tea (thiamin, arginine, caffeine, and citric acid; 1.1, 1240, 52, and 540mg, respectively) or control tea on two consecutive days, in 10 healthy male and female subjects (aged 21-27y) in experiment 1. After the tea ingestion, subjects sat on a chair for 30 min followed by treadmill walking (5km/hr) for 30 min. Respiratory quotient (RQ) and oxygen consumption (VO2) were measured during rest and exercise periods. A double-blind, placebo-controlled, crossover study was performed in 14 healthy female subjects (aged 21-22y) in experiment 2, of which study design was the same as that of experiment 1 except for an additional measurement of RQ and VO2 before ingestion of the tea for 30 min in the sitting position. As results, total energy expenditure and fat oxidation were similar between the two cases (ingestion of control tea and TACC-tea) during the rest period after tea ingestion both in experiment 1 and experiment 2. On the contrary, treadmill walking resulted in about three-fold increase in total energy expenditure; however, fat oxidation during the exercise was significantly greater in the case of TACC-tea than in the control tea case in the both experiments. This effect of TACC-supplementation, enhanced fat oxidation and energy expenditure, seemed to be positively proportional to subjects' Body Mass Index.
著者
松岡 宏 依田 勝 渡辺 聡
出版者
Japanese Society for Engineering Education
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.19-22, 1997-07-25 (Released:2009-04-10)
参考文献数
5

World Solar Challenge(以下WSCと呼ぶ)は1987年より,オーストラリアで3年毎に開催されているソーラーカーの世界大会である。本校は1996年の第4回大会に初めて出場し,完走10位,2人乗りクラス3位という輝かしい成果をおさめた。チームは高専5年生を中心として,4年生,研究生,OB,教員の13名が企画から,設計および製作を行なった。この間,多くの在校生や卒業生らの積極的な協力が得られたことは,学校という共同体に身を置く者にとって,この上ない喜びである。ここでは,新しく製作したソーラーカーについての概要とレースに出場した経過および記録について報告する。
著者
山田 成子 渡辺 泰夫 平野 優子 内藤 儁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.401-406, 1973-03-20 (Released:2008-12-16)
参考文献数
14

嗅覚の生理に関しては不明の処が少なくない,嗅覚は非常に鋭敏な感覚であるが,万余の匂いが,どのようにして末梢のreceptorに受容されるのか,末梢のreceptorの受容機構はどの様になつているか,また末梢で受容された刺激は,中枢へどの様に伝達されるか,など未だ未解決の問題が多い.嗅覚の検査に用いられるべき嗅素として,最も適当な匂いは何であるかという基本的な問題も解決されていない.このような現状において文部省科学研究班,"嗅覚測定の基準設定"が結成された.私どもはこの班の一員として次の10種の嗅素の各種濃度(10-1より10倍稀釈で10-14迄)で日本人の平均閾値の測定を行なつている.使用ている嗅素は,バラ臭,糞臭,腐敗臭,樟脳臭,酸臭,麝香,フェノール臭,焦臭,果実臭,にんにく臭,である.撰択的無嗅覚症(selective anosmia or specific anosmia Amoore)という病名はAmooreにより使用され,ある種の匂いにのみ特異的に閾値の高い場合に用いられる.現在まで238名の測定対象に8名の撰択的無嗅覚症例を認めた.このような8症例の中,2例は嗅覚障害を自覚していない.男女性別に差はなく 男女共各4名である.撰択的無嗅覚症がみとめられた嗅素はフェノール臭,麝香臭,パラ臭,糞臭である.撰択的無嗅覚症の機構は不明であるが,恐らく嗅覚受容機構における部分的障害と考えられる,Amooreによれば,青酸,メルカプタン,イソ酪酸に嗅盲が認められるが,嗅盲は遺伝的因子が強いと考えられる,一方,撰択的無嗅覚症は後天的な受容機構の受傷性の差によつてもおこることが考えられる.撰択的無嗅覚症に認められる嗅素は嗅覚機能検査に必要な基本的嗅素の1つであると思われる.
著者
渡辺 和子
出版者
リトン
雑誌
死生学年報
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-70, 2007-03-31

In Ancient Mesopotamia, people believed that human beings continue to live as ghosts in the netherworld after death. The life of the ghosts, however, depended on food and drink which their living family periodically offered them at their tombs. The periodical offering for the dead was called kispu in Akkadian. The word is attested in the documents, the royal inscriptions and the literary texts from the second and the first millennium B.C. The word kispu refers also to the offering which is entombed with the body. One part of this offering is the ration for the dead during the journey to the netherworld; the other is a gift to the gods of the netherworld.The people of Ancient Mesopotamia were conscious of the continuity between the worlds of the living and the dead. For example, a phrase in a document from the second millennium B.C. reads: “You give me bread as long as I live, and you shall offer kispu when I have died.” It was the greatest misery for them if their ghosts did not get food and drink in the netherworld.The basic Akkadian dictionaries translate kispu into “Totenopfer” or “funerary offering.” Tsukimoto (1985) translates it, however, into the rare German word “Totenpflege” (“caring for the dead”) and shisha-kuy?(死者供養)in Japanese. The connotation of kispu is closer to that of shisha-kuy? than to that of the conventional translations in either German or English.
著者
牛島 一成 志村 正子 渡辺 裕晃 山中 隆夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.259-266, 1998-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

1994年度と1995年度に, 大学の公開講座として運動不足気味の一般市民向けに「体と心にエアロビクス教室」を実施し, その参加者(男性2名, 女性26名, 計28名)を対象に数種の有酸素運動を約2カ月間にわたって, 1回1.5時間程度, 週2回のペースで行って, 心身への長期的影響および短期的精神影響を検討した.長期的精神影響としては, SDSおよびSTAI-Tの著明な低下が認められた.1995年度のみ実施したCMIにおいても身体的自覚症および精神的自覚症の低下傾向, 精神的自覚症のうちの抑うつおよび不安項目群での低下傾向が認められた.これらより, 習慣的で長期的な有酸素運動の実施がメンタルヘルスを考えるうえで大変重要であると思われた.しかし, 性格・行動型である自己抑制傾向, 「いい子」度, タイプA傾向およびI型(情緒不安定内向)傾向には変化が認められなかった.基礎体力では, 2カ月の運動後に無酸素性作業能力のみが増加していた.運動種目ごとにSTAI-S, POMS, Nowiis気分評定表を用いて短期的精神影響を検討したところ, 愉快さ, 活動性, 社会的愛情および活力・積極性はいずれの運動種目でも増加する方向へと変化し, STAI-S, POMSのTMDおよび混乱・物おじはいずれも低下する方向へと変化していた.これらの結果は, メンタルヘルスを目的とした運動処方の可能性を示唆する.
著者
渡辺 峻
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.38-50, 2013-07-01 (Released:2013-07-01)
参考文献数
46

本稿では,情報理論的に安全な秘密鍵共有とそれに関連するトピックについて概説する.まず,秘密鍵共有のモデルについて説明した後,鍵共有プロトコルが情報整合と秘匿増強と呼ばれる二つのステップから成ることを説明し,幾つかの安全性基準を紹介する.その後,情報整合の手段としてSlepian-Wolf 符号化と呼ばれるデータ圧縮法について説明する.次に,従来広く使われていた秘匿増強の方法について述べる.特に,その方法によって生成された秘密鍵は弱い安全性を満たすものの,その他の安全性基準は満たさないことを説明する.そして弱い安全性基準以外の基準を満足するにはどのように秘匿増強を行えばよいか説明する.更に,Slepian-Wolf 符号化と秘匿増強の一般化として,多端子情報源符号化問題と多端子乱数生成問題について説明する.これらの応用として,3者以上の正規ユーザ間での秘密鍵共有と秘匿関数計算について紹介する.
著者
渡辺 俊太郎 小玉 正博
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.32-39, 2001-12-25 (Released:2015-01-07)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

The present study was conducted to develop an Anger Arousal and Lengthiness Scale (AALS), and to investigate its validity and reliability. The AALS was designed to measure individual differences in proneness to anger arousal and the tendency towards maintaining anger over a long period. These tendencies are considered to be risk factors for ischemic heart disease. Two hundred and sixty two college students participated in the study. A factor analysis of 13 items included in the AALS yielded two factors, proneness to anger arousal and tendency toward anger lengthiness. Both Cronbach's alpha coefficient and test-retest correlation were high enough to support the reliability of the AALS. The validity of the scale was established by significant correlations of this scale with both the Japanese version of the Buss-Perry Aggression Questionnaire and the anger scale of the Cornell Medical Index. The utility of the AALS was discussed in the context of the relationships between emotion and health.
著者
植田 英範 渡辺 美好
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.15-26, 2003-12

国士舘大学附属図書館は、「kiss」というマルチメディア対応フルテキストサーチ型データベースシステムを独自に構築し、平成14年秋稼動させた。それは、利用者と管理者双方の作業負担を軽減する操作性と全文検索の高速性が両立する極めて柔軟性に富んだシステムとなっている。その特徴は、原情報からのテキスト自動抽出によって半自動的に作成するサーチエンジンの検索対象であるメタデータを、システム内で関連付ける原情報と共に蓄積するという独特の技法にある。「kiss」によって、システム相互間横断検索という方法での知識共有や、これまでのネットワーク情報源からは得にくい電子文書や教育教材という身近な一次情報の流通などが促進され、より強力で直接的な情報研究支援サービスが可能になる。