著者
渡辺 登喜子 金田 式世 岩田 千鶴子 [ 他 ]
出版者
大垣女子短期大学
雑誌
大垣女子短期大学研究紀要. 調査・研究編 (ISSN:09197745)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.43-55, 1993-03-11

本学歯科衛生科学生159名について,1991年4月,食物摂取状況調査,血液検査及びアンケート調査を行い,次の様な結果を得た。1)調査対象者の身長・体重は同年代女性の全国平均とほぼ同じであった。肥満者は10%でやせは15.7%であった。アンケート調査の結果,他短大生と同様に肥満ではないにもかかわらず肥満と認識する学生が多く,やせ願望が高率であった。2)1日の摂取食品数は18.8±5.25であった。他短大生の報告とほぼ同じであるが,目標値の30食品目に対して63%の充足率であった。3)栄養素等の摂取状況は,ビタミンC,ビタミンA,脂質,ビタミンB_1については充足率は100%をこえ,たん白質,ビタミンB_2はほぼ100%であった。充足率の低いものはカルシウム74.1%,鉄76.2%,ナイアシン86.9%,エネルギー86.9%であった。脂質のエネルギー比が30.4%と高く,穀類エネルギー比が37.2%と低い値であった。4)食品群別摂取状況は充足率100%を越えているものは穀類と藻類であった。充足率が低く摂取上問題と考えられる食品群は,豆類45%,乳類56%,野菜類63%であった。この結果はアンケート調査の結果とも一致した。5)朝食を食べない者,時々食べない者が全体の33.3%で,昼食を食べない者,時々食べない者が14.5%で,夕食を食べない者,時々食べない者が9.4%であった。6)血液検査の結果,貧血の指標ともなるヘモグロビン12g/dl以下の者は10.5%であった。又高脂血症の指標ともなる総コレステロール240mg/dl以上の者3.3%,中性脂肪160mg/dl以上者5.3%,HDL-コレステロール47mg/dl以下の者2%であった。この値は平成1年国民栄養調査の結果^1)(30〜39歳女)より低い値であった。
著者
渡辺 晃生 安藤 大地 丹治 信 稲田 雅彦 伊庭 斉志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.13, pp.5-10, 2009-02-11

昨今,コンピュータに歌を歌わせることのできる VOCALOID というアプリケーションが注目されている.このアプリケーションにおいてはメロディラインや歌詞だけでなく,歌声のパラメータ調整を行う事によって様々な表現が可能であるが,歌声パラメータの調整は知識のないユーザには非常に大きな負担となっていた.今回は対話型進化手法 (IEC) と呼ばれる GA の一手法を用いて,ユーザはコンピュータによって提示される歌声パラメータから好みの物を選ぶという比較的簡単な操作によってパラメータの最適化を行うシステムを実装した.またシステムの評価として手動で調整した歌声パラメータにどの程度のユーザの負担で近づけるかを調べるための実験を行った.VOCALOID is an application that realize singing by computer. VOCALOID enables users to create songs sung by computer only with inputting of melody and lyrics. However, for higher quality of song, complex optimization of voice quality parameters is required. For optimizing problems, genetic algorithm is commonly used. In this paper, we introduce a prototype of an application for optimizing parameters of singing voice easily by using Interactive Evolutionary Computation (IEC). which adopt perceptual evaluation of human for evaluation functions. Besides, to examine the number of times of evaluation by human, we made an experiment to recreate the parameter of some music.
著者
飯田 公司 板井 志郎 渡辺 貴文 三輪 敬之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.552, pp.25-30, 2008-03-15

即興劇のようなドラマ的なコミュニケーションにおいて,ストーリイが持続的に創出されていくためには観客の存在とその働きが重要な役割を果たすと考えられる.そこで本研究では遠隔地間でこれを可能とするため,共感的な観客のもとで演者が舞台としての場に位置づけられる劇場型の共存在空間の設計・開発を行うことを目的とした.その方法として先に著者らが開発した,身体の影によって遠隔地にいる相手との共存在感の創出が可能な影システム(WSCS)を適用することにした.すなわち,WSCS空間を透過型スクリーンと障子スクリーンで二つに分割し,演者と観客の影を個別に投影するとともに,両者の間で空間的な位置関係が整合的になるように表現することで演者,観客,舞台から構成される劇場型コミュニケーションシステムを考案,製作した.さらに,観客が劇場に自由に出入りできるための影表現手法についても検討し,これらをシステムに組み込んだ.以上の開発したシステムの詳細について報告する.
著者
渡辺 真吾 神谷 幸宏 梅林 健太 鈴木 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.135, pp.79-84, 2008-07-10

基地局等の固定インフラを使用せず,端末のみで通信が実現されるアドホックネットワークが注目を集めている.このシステムでは,送信元から宛先までデータパケットを送信するために近隣端末を中継するマルチホップ通信が用いられる.MACプロトコルには無線LANの標準規格であるIEEE802.11DCFが広く用いられているが,この方式は元々シングルホップ通信用に考案されたものであるため,マルチホップ通信には適さないということが指摘されている.この問題を改善しようといくつかの手法が提案されているが,これらの多くはマルチパスフェージングのような現実の無線環境が考慮されていない.よって既存の手法ではマルチパスフェージング環境においてその性能を大きく損なってしまう恐れがある.本稿ではIEEE802.11DCFよりも高効率かつマルチパスフェージングへの耐性を持つMACプロトコルの提案を行なう.
著者
渡辺 鑑江
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.130-158,A7, 1961 (Released:2010-11-19)
参考文献数
38
被引用文献数
1

Female pelvis, as the most important part of maternity, has repeatedly studied not only in Japan but in foreign countries, but few with the research from the point of view of relative growth throughout thewhole ages till maturity. This study of 1543 normal pelvis, sampled at random by sex, year-age (month-age in infancy), through the ages between 1 month and 17 years, was attempted to clarify the developmental changes of pelvic cavity by means of stochastical analysis on the radiographic measurements.The results obtained are as follows.(1) The pelvic cavity was found to become larger with the age advanced, and to show a particularly rapid. growth for three months after birth, between the ages of 1 and 4 years, and also in the puberty.(2) Sexual differences of pelvic cavity were observed already in the infancy, that is, the upper structure in males and the lower structure in females were greater than those in opposite sex. After 10 years old, the growth of pelvic cavity in females was remarkable and in the puberty every parts of the cavity measured in females was greater than that in males.(3) The investigation on relative growth between each parts of the pelvic cavity measuied in this study revealed that in the early infancy the maximum distance between both obturator-foramina increased most rapidly while the distance of Wollenberg's Y-cartilage-line did eminently in the later infancy and also in the puberty. The growth of breadth of the cavity was superior to that of the height in the infancy, while after that the latter became superior to the former ; in the puberty the both were almost of the same increase from the point of view of relative growth.(4) The growth of the pelvic cavity had so close relationship to that of the pelvis that the coefficients of correlation between them gave very high possitive values.
著者
山田 嚴子 小山 隆秀 渡辺 麻里子 小池 淳一 原 克昭 羽渕 一代
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は東北の巫者が近代以降の新たな制度に対応してゆく過程で、在来の「知識」をどのように再配置し、地域住民とともに新たな宗教的実践を再構築してきたのか、そのプロセスを問うものである。一関市大乗寺については、映像資料を作成し、祭文、経典については、録音、翻字を行う。また恐山円通寺については、もと小川原湖民俗博物館旧蔵資料で、現在は青森県立郷土館に寄贈されている文書類の翻刻と、文書の収集の背景の聞き取りを行う。量的調査は青森県、岩手県と比較のために東京都で質問紙調査を行う。研究成果は報告書を作成し、弘前大学地域未来創生センターや青森県立郷土館のwebページなどでも発信してゆく。
著者
渡辺 公三
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.492-504, 2000-03-30 (Released:2018-03-27)

近代人類学の始まりとして1859年におけるパリおよびロンドンでの学会創立の日付がしばしばあげられる。パリ人類学会の中心的な創立者ポール・ブロカは創立直後におこなった「フランスの民族学的研究」という基調報告をケルトやキムリスなどのraceがフランスのnationを構成することの論証にあてている。国民の人種構成を論証するために使われたデータは, 当時ほぼ唯一の全国的な統計資料だった徴兵検査資料, とりわけ身長統計である。身長という粗雑な特徴に満足していたわけではないブロカは, この報告の後, 晩年まで人種的差異の実証的根拠づけに多くの力を注ぐことになった。その後ブロカの洗練した身体計測技法は, ブロカの不肖の弟子でもあったパリ警視庁に勤務するベルティヨンによって意外な用途を発見された。身体の各部分のサイズが全く同じ成人は稀であり, 身体各部の正確な計測値を一定のしかたで分類のエントリーとして使うことで, 名前にも顔にも頼る事なく個体を個体として同定できるというわけである。この着想は軽犯罪の急増に悩む世紀末フランス市民社会にきわめて有効な身元確認技術を提供することになった。ここには国民国家の根幹をなす軍隊の人員管理技術の整備とともに, 人類学的な国民の人種的同一性確定手法が洗練されてゆき, その手法が警察の犯罪者同定技術として利用されていったという過程があったことが示されている。統治技術から人類学へ, そしてまた人類学から統治技術へという人目にはつきにくい知の技法の往還が見出されるといえよう。この小論ではフランスにおける, 今世紀初頭までのパリ人類学会の動向を, 軍および徴兵制との関係を中心に簡単に検討し, とりわけ徴兵制の変化が, 人類学会で一定の学問的な言説としてどのように議論されていたかについて検討する。それがどのような問題構成の枠のなかでおこなわれ, 人類学固有の問題としてどう受け止められていたのか, そしてそこにわれわれは19世紀人類学のどのような存立条件を見極められるのかを見ていくことにしたい。
著者
渡辺 樹 中島 弘美 門田 耕一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.269-274, 2005-04-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
22

食肉検査時に発見された豚の子宮腫瘍16例を病理解剖学的, 病理組織学的および免疫組織化学的に検査した.腫瘍を認めた豚はすべて2~4歳の繁殖豚で, 単発性が9例, 多発性が7例で, ほとんどが子宮角に存在していた.腫瘍細胞は束状および渦巻状配列を示し, 交錯していた.核は楕円形から長楕円形で, 両端が鈍であった.免疫染色では全症例の腫瘍細胞が, α-平滑筋アクチンとデスミンに対し陽性反応を示し, 15症例中13症例がビメンチンに陽性であった.これらの成績から検索した子宮腫瘍はすべて平滑筋由来と考えられた.一般に腫瘍細胞の核分裂像は目立たなかったが, 強拡大で10視野あたり4~5個みられる症例が1例あった.増殖細胞核抗原陽性細胞は, 0~85%とさまざまであった.他臓器への転移がなく, 核分裂像も少ないことから, すべての症例を良性腫瘍と診断した.
著者
吉田 康久 河野 公一 原田 章 豊田 秀三 渡辺 美鈴 岩崎 錦
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.450-458, 1978-06-30 (Released:2009-02-17)
参考文献数
18
被引用文献数
1 5

耐熱性の目的でポリアミド, ポリエステルが近年比較的多量に用いられているが, その限界温度以上での使用または廃棄時に毒性のある熱分解成分が生成する可能性がある。本研究はこれを解明する目的で空気中熱分解ガス等を, ガスクロマトグラフ, 同マススペクトログラフにより分析するとともに, また, 動物試験としてマウスについて急性暴露を行って, その主要死因を確かめたものである。熱分解ガスとしてポリエステルでは一酸化炭素, エタン, プロピレン, アセトアルデヒド, ベンゼン等が, また, ポリアミドではこれらの成分に加えてアンモニア, ペンテン等が検出されたが, 毒性並びに発生量よりみて一酸化炭素が優勢な成分として推定された。動物試験では, 単一, 一時間暴露, 一週間観察による概算的致死濃度がポリアミドで79.6g, ポリエステルで30.5g/1000l空気であり, この場合一酸化炭素濃度が2700∼3000ppmと認められた。この一酸化炭素が主要死因であることは, 血液の一酸化炭素飽和度をガスクロマトグラフにより分析した結果, その値が55%を越えることから確認することができた。フユーム, またはグリース状物質として発生する熱分解成分は, 生成後直ちに凝集してその大きさ100μm以上に達し, また, 赤外分光分析により原試料に近似した構造を示すので, ある種のフッ素樹脂の熱分解における特異なポリマーフユーム熱の原因にはなり得ないと考えられる。動物試験ではまた暴露後48時間程度に肺水腫等の傾向が認められて死亡する場合も多いので, 一酸化炭素につぐ比較的毒性の大なる第2の致死因子が存在することも確実である。したがって, もし実際の症例においては, 予後における十分な観察と早期の治療が必要なものと指摘される。
著者
渡辺 貴裕 岩瀬 直樹
出版者
日本教師教育学会
雑誌
日本教師教育学会年報 (ISSN:13437186)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.136-146, 2017-09-29 (Released:2020-08-04)
参考文献数
6
被引用文献数
5

Mock lessons and review sessions have been used in teacher education at universities sometimes aiming to promote students’ reflection. In most cases, the review sessions proceed in this way: “learner-role” students simply judge the lessons and give advice, while “teacher-role” students improve their lessons based upon the feedback. However, the reflection through this type of review sessions can be shallow because it tends to be action-oriented. To make reflection deeper, inquiry into the meaning behind a lesson’s process is essential. In review sessions of mock lessons, learner-role students can present the thoughts and feelings that they experienced during the lessons in which they participated. This can produce dialogue between a teacher-role student and learner-role students. The differences that emerge in such dialogue contribute to inquiry into the meaning and deeper reflection.  The authors launched a teacher education program centering on dialogue-based review sessions of mock lessons. Dialogue in this type of review session has two features: various understandings and feelings from learners’ perspective can be expressed, and implicit assumptions and values of teacher-role students can be extracted.  In the program, the reflection cycle in review sessions is connected with educational practicum. Firstly, students perform a mock lesson and a review session in university; secondly, they revise it and put it into practice in school; finally, they give a practice report and discuss it in university again. Through this program, students make progress in the depth of reflection, as well as enhance their facilitation mindset.  The authors’ study addresses not only the procedure of dialogue-based review sessions of mock lessons, but also aims to challenge some common assumptions of teacher education. This contributes to three changes in teacher education: changes from a focus on improvement of action to inquiry into meaning, from a hierarchical relationship to a more equal one, and from an emphasis on planning and preparation to “thinking through creating”.
著者
田中 勤 玉木 昌幸 田中 秀之 渡辺 徹 村上 宏 八幡 えり佳 田中 敏春
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.551-558, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
7

背景:心肺停止傷病者に対するアドレナリン投与は3〜5分間隔が推奨されているが,実際に病院前での投与間隔について調査検討した報告例は少ない。目的:新潟市の院外心肺停止傷病者に対するアドレナリン1筒目と2筒目の投与間隔が社会復帰に影響するか検討した。方法:新潟市消防局のウツタインデータを用い,2011〜2015年の院外心肺停止傷病者において心原性心停止でかつ病院前で2筒投与された傷病者を対象に初回投与時間の中央値と投与間隔5分未満群と5分以上群とに分け,社会復帰率,心拍再開率,短期生存率を解析した。 結果:対象の院外心肺停止傷病者は134例で5分未満群は37例,5分以上群は97例。社会復帰は各々7例と2例で5分未満群が多かった(p<0.05)。結語:投与間隔が5分未満である症例では社会復帰例が多く,適正な投与間隔でアドレナリン投与を行うことが院外心肺停止傷病者の社会復帰率改善に寄与する可能性がある。
著者
渡辺 晋一
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.315-326, 2007-01-15 (Released:2008-01-15)
参考文献数
17
被引用文献数
3

ナノ秒のパルス幅のQスイッチ・レーザーは肝斑以外の色素病変の治療に有効である.しかし,カフェオレ斑のような茶アザはレーザー治療に反応しない事が多い.そこで,正確な診断を下すことがレーザー治療の鍵を握る.ただしレーザー治療後に炎症後色素沈着が見られるが,通常3-4カ月で自然消失する.もし,炎症後色素沈着が1年以上続く場合は,組織学的色素失調を疑わなければならない.血管腫の治療にはマイクロ秒のパルス幅のレーザーを使用しなければならない.また,光が到達する深さには限界があるため,すべての血管腫に有効というわけではない.脱毛や皮膚の若返りは,ミリ秒のパルス幅のレーザーあるいは光によって可能である.しかし,このパルス幅の光では表皮のダメージが強いので,照射エネルギーを下げ,また表皮を冷やさなければならない.その結果,皮膚の若返り効果は不十分である.いずれにせよレーザー光のパルス幅と波長はレーザー治療の鍵となる.使用するレーザーのパルス幅と波長をみれば,その治療の結果がどのようになるかを予想することができる.
著者
渡辺 達三
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.19-24, 1993-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
48
被引用文献数
1

わが国前近代のハスの観照の歴史的な変遷をみ, 1) 上代では, ハスへの観照がみられるが, 中国からの影響の大きい, 女性, 恋愛などの寓意性をもった人事中心のものであること, 2) 中古では, ハスの植物や生態などの特性がよく観察され, それを基礎にした植物や, 釈教, 人事上の事柄について観照されていること, 3) 中世では現実的, 実践的な性格を強め, ハスは環境との連係を強め, 空間, 時間, 音響などの再構成された, 複合的な事象の中で, それらとの連関において観照されていること, 4) 近世では, 前代の現実的指向, 環境との連係の傾向をいっそう強め, その植物や生態等の特性に即したものとなり, 釈教的な観照はほとんどみられなくなっていること等をみた。