著者
李 佳穎 片山 直也 Katayama Naoya
出版者
関西大学経済学会
雑誌
Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.J-56, pp.1-33, 2021-05-15

コンビニレジの混雑の問題解決のため、2019年11月と2020年12月の2回にわたり、ファミリーマート関大店(以下FMKと略)でレジの決済の観察調査を行った。これら2回の調査期間をまたぎ、コロナ禍・レジ袋有料化・電子決済の普及による影響を受けた。グラフと記述統計の分析より、消費者のレジの決済時の特徴とレジの決済時間の関係にも変化が観察され、次がわかった。1. 消費者のできる混雑緩和(レジの決済時間の短縮)には、レジ袋を辞退する、事前に決済の準備をする、ポイントと決済はスマホで行い、レシートを受け取らないのが有効と推察される(2020年12月の調査時点、3.3節、4.1節、4.11節)。これら行動を全てとった場合、平均約4割程度のレジの決済時間の短縮につながることが分かった。またこれら行動は、プラスチックごみの削減や、新型コロナウイルスの感染防止策としても有効であろう。2. レジの決済時間の分布から、2019年調査と比較して、2020年の調査は、非常に長時間、レジの決済をする層が減り、短時間ですます層が増えた(3.1節)。しかしながら、レジ決済時間の平均は、2019年と2020年では、さほど大きな差は見られなかった(3.1節)。3. 電子決済の普及による影響は、2019年と2020年の比較をして、明らかな比率の変化が見られなかった(3.2節)。しかしながら、コロナ禍の影響も考えられるが、消費者は電子決済と現金決済、いずれか一方のみを選択する傾向が顕著となった(3.3節)。また、電子決済がレジの決済時間の短縮につながることが示された(4.1節、4.11節)。4. コロナ禍による影響と思われる現象として、品数を一度に多く買う客層の比率の増加、決済の準備をする消費者の比率の増加、おつり・レシートの辞退率の増加が観察された(3.2節)。5. レジ袋有料化の影響として、レジ袋辞退率が有料化前と比べて、22%から76%と大きく変化した。これはファミリーマートのプレスリリースや環境省の調査より、FMKではより有料化の効果が表れたことを示している(3.2節)。また、2020年調査より、レジ袋辞退は、レジの決済時間の時短にもつながる傾向があることが分かった(3.3節、4.1節、4.11節)。
著者
渡邊 康玄 高杉 優人 片山 小裕美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_775-I_780, 2021 (Released:2022-02-15)
参考文献数
10

砂防ダムは,土砂災害防止の観点から極めて有効な構造物であるが,河床縦断形や土砂輸送の不連続を生じさせ,河川環境の観点からはこれらへの対策が必要となっている.近年,既設の砂防ダムにスリットを入れ,大規模出水時には土砂を捕捉し,小規模出水時には土砂を流下させる機能を持たせて,河川環境の改善を図る例が多くなっている.河床縦断形や土砂輸送の観点からの知見は増えてきているものの,河床材料の質や河床形態の変化という点では,いまだ十分に明らかにされていない.本研究では,知床半島に位置するイワウベツ川の砂防ダムを基にした水理模型実験を実施し,小規模出水時に排出される土砂によるダム上下流の河道の応答と,その後の大規模出水時の河道の応答について検討を行った.その結果,ダムのスリット化により,河床高の連続性が回復するとともに,小規模出水では,ダムが存在しない状態及びスリット化以前の交互砂州形状を維持するものの,その後の大規模出水時には交互砂州の波長,波高とも増大することが把握された.
著者
片山 直美
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.25-29, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
10

長期間の宇宙滞在を可能にするためには宇宙における様々な生命維持に関する研究が必要である.特に食糧生産に関する研究は重要で,そのために様々な植物性ならびに動物性の栄養素が摂取できるような食材料の取捨選択,栽培ならびに飼育方法の確立が求められている.食材料を確保するうえで,宇宙空間に循環型社会(ミニ地球)を構築し,無駄のない食糧利用を考える必要がある.そのためには昆虫の食糧としての利用は不可欠である.現在地球上の食糧危機回避に関する昆虫食の果たす可能性と役割について,FAOならびにWHOから提唱された内容は,宇宙空間においても同様に役立つ内容である.そこで宇宙空間での昆虫食の可能性について概説する.
著者
鳥居 将太郎 片山 浩之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_423-III_429, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

ウイルスの遊離塩素耐性は水質に依存し,不活化に必要なCT値が水温,pHごとに定められてきた.近年,同じウイルス種内でも塩素耐性に違いがあることが示された.本研究は,高耐性株の存在が実際の浄水の塩素処理効率に及ぼす影響を評価することを目的とした.多摩川,相模川のF特異RNA大腸菌ファージGI型の塩素耐性を評価し,同種内の遊離塩素耐性のばらつきを考慮した不活化モデルを作成した.GI型野生株の86%(30/35株)で,実験室株MS2, frより塩素耐性が高かった.また,MS2の8 log不活化が期待できるCT値では,GI型野生株の全体不活化率が,5.3-5.6 logにとどまると算定された.環境水中におけるウイルスの消毒効果の推測では,実験室株によって代替するのではなく,種内の遊離塩素耐性のばらつきを算入した不活化モデルを採用すべきである.
著者
山辺 晋吾 片山 和明 望月 眞人
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.497-511, 1989-05-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

In order to investigate the role of progesterone in the maintenance of pregnancy, an anti-progesterone agent, RU486 (RU) was injected subcutaneously into pregnant rats on day12 (D12), and morphological changes of the uterus as well as endocrinological changes were observed.In all rats injected with RU, abortion occurred with macroscopic and microscopic intrauterine hemorrhage and degeneration or delivery of conceptuses. Endocrinologically, the levels of progesterone decreased rapidly 48 hours after the injection, while the levels of estradiol showed a tendency to increase.As progesterone is mainly produced by the corpus luteum but not by the placenta in rats, the decrease in progesterone is suspected to be due to luteolysis. Then in order to clarify the mechanism of luteolysis induced by RU and the effects of progesterone on this phenomenon, the dynamics of the luteotrophic factors (estradiol, LH, PRL) and specific binding capacity of the ovaries to LH/hCG were investigated in D7 pregnant rats treated with RU 1 mg/kg alone (RU group) or with both RU 1mg/kg and progesterone 50mg/kg (RU+P group).The serum levels of progesterone in the RU group decreased significantly after 72 hours of administration, while those in the RU+P group remained within the levels of the control group. However, serum levels of luteotrophic factors in the RU group did not de-crease, and some of them were even higher than those in the control group. In the RU+P group, luteotrophic factors remained within control levels.On the other hand, the specific bindings of LH/hCG to ovarian homogenates decreased significantly after 72 hours in the RU group. But in the RU+P group, the specific bindings were kept at the same levels as the controls. Scatchard analysis of these results disclosed that in the RU group, both affinity and numbers of receptors decreased compared to the controls, and that in the RU+P group only affinity decreased transiently and afterwards recovered quickly.From these results, it is concluded that deterioration of affinity and numbers of ovarian LH/hCG receptors seems to be one of the factors which induce luteolysis in pregnant rats treated with RU, and that progesterone can spare the effect of RU on the corpus luteum during pregnancy.
著者
林 容市 岡野 亮太 平林 正晴 片山 靖富 沼尾 成晴 松尾 知明 中田 由夫 田中 喜代次
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.197-206, 2008-04-01 (Released:2008-08-13)
参考文献数
29
被引用文献数
1

The aim of this study was to examine a weight reduction program and residual effects, through confirming the relationship between changes in the morphological and psychological indices including personality and self-efficacy (SE) of the participants. Twenty-five middle-aged women were divided into two groups based on type of weight reduction program intervention. Thirteen women participated in a 3-month diet-only weight reduction program (DO group, 53.3±7.4 yr), and 12 women took part in a 3-month diet and aerobic exercise program (DE group, 48.3±9.6 yr). After the programs, the compatibility score of personality in the DO group was negatively correlated to SE that is indicated as confidence in ability to maintain decreased body weight at 2, 3, and 4 years after the program (r=-0.69, -0.58, and -0.60). It can be seen that personality has an effect on the results of the DO group weight reduction program. Additionally, despite a significant decrease in body-weight and %fat in both groups, only the change of %fat significantly correlated with SE. On the basis of these correlations, the changes of %fat that related to the movability perception of body movements has a greater effect on SE after the program than the information only of weight loss. The results of this study suggest that personality and SE accounted for weight maintenance, and were associated with the results of the weight reduction program.
著者
吉田 祐 森川 充洋 呉林 秀崇 横井 繁周 小練 研司 村上 真 廣野 靖夫 片山 寛次 五井 孝憲
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.2389-2396, 2018 (Released:2019-06-28)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

目的:一時的回腸瘻造設術後のoutlet obstruction(以下OO)の危険因子や腹腔鏡手術との関連を明らかにし,予防策を検索する.対象・方法:過去10年間に一時的回腸瘻を造設した51例を対象に,OOの有無でOO群(5例)とNon-OO群(46例)に分け,患者背景,腹直筋の厚さ,挙上腸管と腹直筋との関係について後方視的に検討した.結果:OO群は全例男性であった.OOの危険因子は腹腔鏡手術(p=0.014),腹直筋の厚い症例(p=0.001)であり,特に腹腔鏡症例では挙上腸管が有意に腹直筋の中央付近を(p=0.010),そして腹直筋を斜め(p=0.041)に貫いていた.結論:腹腔鏡手術で回腸瘻を造設する際はOOを考慮すべきである.対策として,術前に腹直筋の厚さを評価すること,脱気後に腹直筋に垂直に腸管を挙上することが有用である.
著者
三好 広尚 服部 外志之 高 勝義 片山 信 荒川 明 瀧 智行 乾 和郎 芳野 純治 中澤 三郎 内藤 靖夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.644-651, 1999-06-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2

点滴静注胆道造影法を併用したhelical CT(以下,DIC-CT)による総胆管結石診断の有用性を明らかにする目的で,切石により確診を得た総胆管結石25例を含む胆道疾患82例を対象とした.胆道疾患82例において超音波内視鏡検査(以下,EUS)およびDIC-CTによる総胆管結石の診断能の比較検討を行った.総胆管結石25例の描出率はEUS 87.5%,DIC-CT 94.7%であった.総胆管結石のDIC-CT,EUSの診断能はそれぞれsensitivity 94.7%,87.5%,specificity 100%,100%,accuracy 97.8%,96%であった.DIC-CTは総胆管結石の診断においてEUSやERCと同等の診断能を有し,しかも非侵襲的な検査法であり,胆嚢結石の術前診断として有用な検査法である.
著者
片山 信夫
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
鉱物学雜誌 (ISSN:04541146)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.383-389, 1966-03-30 (Released:2009-08-11)

自然科学成立の根拠やその方法・分類などを批判哲学の立場から論じることは,カント以来多くの哲学者や科学者によって試みられているが,それらの中で鉱物学の地位というものは,かならずしも充分に論じ尽くされてはいないようである。鉱物学の過去における役割りはともかくとして,少くとも現在の鉱物学は,一つの境界領域科学として位置づけられる― と著者は考える。そして,鉱物学がどのような境界領域を占めているかを明らかにするためには,まずいわゆる地学の位置づけを論じなければならない。
著者
目黒 公郎 芳賀 保則 山崎 文雄 片山 恒雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.556, pp.197-207, 1997-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
21
被引用文献数
9 4

本報では, 避難行動の新しい解析手法として, バーチャルリアリティ (VR) を応用した解析システムを開発し, これを用いた避難行動解析を行った. すなわち, 同じ構造を持つ実際の迷路とVR迷路を用いた避難行動実験を行い, 両者の結果を比較・検討することにより, VRによる疑似避難体験が実際の避難行動において訓練効果として現われること, VRを用いて避難時の行動特性を再現し得ることを確認した.避難訓練のマンネリ化による参加者の減少と意識の低下, 危険性のある訓練の実施が難しいことなどを考えると, 防災教育や避難訓練等へのVRの利用価値は高い. さらに, 実際に建設する前の計画や設計段階で, 対象となる施設や構造物の安全性を評価できるなどの点で, VR避難解析システムは大きな可能性を持つ.
著者
今治 玲助 高野 周一 吉田 篤史 片山 修一 久保 裕之 亀井 尚美 岩村 喜信 佐々木 潔 村守 克己 野田 卓男
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.922-926, 2016-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
8

【目的】中国四国地域の小児外科施設におけるapple-peel 型小腸閉鎖症の頻度,治療方針,入院期間,生存率,予後についてアンケート調査の結果を報告する. 【方法】日本小児外科学会中国四国地方会所属施設に対しアンケート調査を行った.対象は1990 年1 月1 日~2013 年12 月31 日に出生し,手術所見でapple-peel 型小腸閉鎖症と診断された症例とした. 【結果】13 施設より回答が得られた.小腸閉鎖症例総数は203 例であり,apple-peel 型小腸閉鎖は17 例(8.4%),男児6 例女児11 例であった.在胎週数平均35 週2 日,出生体重平均2,315 g であった.胎児診断は13 例(76.5%)で行われた.PN 施行期間は平均68.8 日(8~313 日)であり,入院期間は平均98.8 日(19~218 日)であった.1 期的手術は13 例(76.5%)で行われ,13 例中4 例(30.8%)に再手術が行われた.全例生存し,1 歳時体重は平均8.4 kg,3 歳時体重は平均12.6 kg であり長期的合併症は認めていない. 【結論】本研究では全例長期的合併症なく生存しており,予後良好であった.全身状態良好ならば1 期的手術可能であるが,吻合に対する十分な注意が必要である.また敗血症,胆汁鬱滞,短腸症候群を念頭に置いた管理が重要であり,吻合部狭窄・縫合不全により術後肝障害・黄疸の危険性が高まると考えられた.