著者
澄川 靖之 上木 裕理子 三好 彰 程 雷 殷 敏 時 海波 澄川 真珠子 幸野 健 青木 敏之 片山 一朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1270-1275, 2007-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
2

【目的】日本,中国におけるアトピー性皮膚炎の有症率と皮膚のバリア機能について調査を行い比較検討を行った.【方法】中国チベット自治区ラサ市68名,江蘇省宜興市67名,兵庫県西宮市99名の小学1年生を対象に皮膚科検診を行い,その際に経皮水分蒸散量(TEWL : transepidermal water loss),角質水分量(capacitance)を測定した.またラサ市,宜興市,大阪府大阪市の中学1年生を対象に入浴回数についてのアンケート調査を行った.【結果】アトピー性皮膚炎の有症率は,ラサ0%,宜興2.63%,西宮4.26%であった.TEWLは西宮が宜興・ラサに比し有意に高く,capacitanceはラサが西宮・宜興に比し有意に低かった.また入浴回数はラサで月2.2回と西宮・宜興に比べ少なかった.【結論】TEWLの増加に従いアトピー有症率が増加する傾向がみられた.生活習慣・環境の変化によりアトピー性皮膚炎の有症率や皮膚のバリア機能がどう影響を受けるか今後も調査を行っていく必要があると考えられた.
著者
片山 悠樹 中村 高康
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.7-17, 2021-07-07 (Released:2023-04-08)
参考文献数
21

アジアへの研究関心が高まりつつあるなか,日本の教育社会学はアジアの教育に対してどのように向き合えばよいのだろうか。欧米との比較を通して発展してきた日本の教育社会学は,アジアとの関係のなかで自らの課題や立ち位置を問い直す時期に差しかかっているのはないか。本稿の目的は,各論稿の要約を行ない,アジアから教育を見る可能性を提示することである。 論文の要約を通じて,次の2つの視点が浮かび上がった。 ひとつ目は,対象との距離感である。欧米との比較で浮上する異質性は,歴史的文脈や社会的価値・規範の違いから,目につきやすいかたちとなりやすいが,アジアという類似性の高い社会との比較では,異質性は目につきにくい可能性がある。そうした微妙な異質性に対してセンシティブになるためには,それぞれの研究者が「類似性」をいかに設定するのかという対象との距離感は重要となると思われる。 ふたつ目は,理論との距離感である。理論の多くは欧米の現実から生れたものであり,欧米の理論を無自覚に内面化することには注意しなければならない。アジア社会の現実を欧米とは異なる視座で適切に理解する作業は欠かせず,そのためにも欧米産の理論に対していっそう自覚的になる必要があろう。
著者
片山一道著
出版者
筑摩書房
巻号頁・発行日
2015
著者
片野田 耕太 伊藤 秀美 伊藤 ゆり 片山 佳代子 西野 善一 筒井 杏奈 十川 佳代 田中 宏和 大野 ゆう子 中谷 友樹
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.163-170, 2023-03-15 (Released:2023-03-23)
参考文献数
40

諸外国では,がん登録を始めとする公的統計データの地理情報を用いた研究ががん対策および公衆衛生施策に活用されている。日本でも2016年に全国がん登録が開始され,がんの罹患情報のデータ活用が制度的に可能となった。悉皆調査である全国がん登録は,市区町村,町丁字など小地域単位での活用によりその有用性が高まる。一方,小地域単位のデータ活用では個人情報保護とのバランスをとる必要がある。小地域単位の全国がん登録データの利用可否は,国,各都道府県の審議会等で個別に判断されており,利用に制限がかけられることも多い。本稿では,がん登録データの地理情報の研究利用とデータ提供体制について,米国,カナダ,および英国の事例を紹介し,個人情報保護の下でデータが有効に活用されるための方策を検討する。諸外国では,データ提供機関ががん登録データおよび他のデータとのリンケージデータを利用目的に沿って提供する体制が整備され,医療アクセスとアウトカムとの関連が小地域レベルで検討されている。日本では同様の利活用が十分に実施されておらず,利用申請のハードルが高い。全国がん登録の目的である調査研究の推進とがん対策の一層の充実のために,他のデータとのリンケージ,オンサイト利用など,全国がん登録を有効かつ安全に活用できる体制を構築していく必要がある。
著者
片山 まゆみ 藤 桂
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.93.20062, (Released:2022-11-01)
参考文献数
57

The number of people changing jobs either once or multiple times has been increasing recently. Based on previous reality shock (RS) research, this study hypothesized that RS during a job-change would reduce work engagement (WE) and increase turnover intentions. This study also focused on self-concept clarity (SCC) which has been suggested to have a reducing and moderating effect on negative responses to stressful events. Four hundred and twelve job changers were asked to answer a web-based survey measuring the RS, WE, turnover intentions, and SCC from the three aspects of Extremity, Certainty, and Temporal Stability. The results showed that RS during a job-change reduced WE and increased turnover intentions. Analysis focusing on the effect of SCC indicated that WE was increased by high Extremity and Certainty, and turnover intentions were decreased by high Certainty as well as Temporal Stability. Moderated mediation analysis showed that although high Temporal Stability moderated the negative effect of RS, RS increased turnover intentions by reducing WE in those who have high Certainty.
著者
片山 直樹
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

全国各地の野鳥の会から公表されている支部報を用いて、探鳥会記録の電子データ化を進めた。観察された種のリストおよび調査努力量としての観察人数のデータを可能な限り記録した。入力作業は、8割ほど完成したものの、いまだ継続中である。来年度には解析に着手したい。一方、モニタリングサイトサイト1000の鳥類データを用いた解析は、着実に進行した。森林草原サイトと里地サイトの両方のデータをもとに、調査手法が統一されている2009-2020年の個体数データを用いて、個体数トレンドを推定した。推定にはTRIM(Trends and Indice for Monitoring data)を用いて、合計300個体以上が観察された47種を対象として、トレンドを推定した。そして、推定された種ごとの年変化率を目的変数し、各種の生活史形質を説明変数としたPGLS(phylogenetic generalized least squares)を行うことで、種ごとの増減の違いを説明する要因を調べた、その結果、種ごとの年変化率を最もよく説明したのは「生息地グループ」であった。具体的には、森林性グループ(21種)では個体数トレンドが安定していた一方で、里山性グループ(19種)と開放地性グループ(7種)では、平均して年1%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。さらに、調査地選択のバイアスが与える影響も調べた。特に里地サイトでは、何らかの里山保全活動が行われているサイトが多い。そこで保全活動を行っているサイト・行っていないサイトで里山性グループの個体数トレンドを比較した。その結果、保全活動を行うサイトでは個体数トレンドが安定している一方、行っていないサイトでは平均して年2%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。現在、論文執筆中である。
著者
片山 剛 Takeshi Katayama 千里金蘭大学 教養教育センター
巻号頁・発行日
vol.11, pp.87-99,

後白河法皇の嗜好によって制作された『伴大納言絵巻』は、九世紀に起こった応天門の火災に取材した説話を絵画化したもので、炎の描写、多様な人物の躍動感にあふれた表現、劇的な展開などの魅力に溢れた絵巻物屈指の名作である。しかし、絵画の読み解きは必ずしも完全に行われているとはいえず、また絵巻物という性質ゆえに原本の体裁をそのまま伝えているとも思えないなどの問題を孕んでいる。 本稿では、従来の説に多くを依拠しながらも、未解決の問題に私見を加え、併せて細部の読み解きを試みるものである。
著者
中村 善行 増田 亮一 藏之内 利和 片山 健二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.59-65, 2017-02-15 (Released:2017-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
5 6

β-アミラーゼ活性の異なるサツマイモ6品種の塊根を蒸した後の肉質と残存デンプン含有率との関係を調べた.活性の比較的高い品種「べにはるか」および「ひめあやか」の蒸した塊根では加熱前のデンプンの約47%が残存したが,活性が中程度の品種「高系14号」および「タマユタカ」,活性を殆ど持たない品種「オキコガネ」および「サツマヒカリ」のデンプン残存率はそれぞれ約62%,約93%であった.蒸す前後のデンプン含有率の差は蒸した塊根のマルトース含有率から見積もった塊根重量当たりのデンプン分解量とよく一致した.また,デンプン分解率(蒸した塊根のデンプン含有率/未加熱塊根のデンプン含有率×100)と未加熱塊根のβ-アミラーゼ活性との間に高い正相関が認められた.これらのことから,蒸したサツマイモ塊根におけるデンプンの減少はβ-アミラーゼによるデンプン分解に起因し,蒸したサツマイモ塊根にはβ-アミラーゼによって糖化分解されなかったデンプンが残存すると考えられた.蒸した塊根の肉質は未加熱より蒸した塊根のデンプン含有率との関連が深かったことから,デンプン含有率とともにβ-アミラーゼ活性が蒸した塊根の肉質に関わると考えられた.β-アミラーゼ活性極低品種が同程度のデンプン含有率でβ-アミラーゼ活性を有する他の品種に比べ,蒸した塊根の肉質が粉質傾向であるのは,蒸してもデンプンが殆ど分解されないためと推察された.
著者
池澤 聰 片山 成仁 河嶌 讓 山口 泰
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

知性、創造性、芸術、リーダシップ、あるいは特定の学術分野において高い潜在能力を有するギフテッドの人々は学校、職場で不適応など種々の心理社会的機能上の問題を抱える。背景には、彼らが潜在的に高い処理能力を有するだけでなく、様々な感覚的情報も大量に取り込み、強く反応する“過興奮性: Overexcitability”の特徴を有することが想定される。本研究では、ギフテッドの基準を満たす人々及び年齢性別をマッチさせた定型発達者を対象として、認知機能、過興奮性および日常生活機能の関連を検討し、過興奮性および日常生活機能の改善を目指した介入法の開発につながる基礎情報を得ることを目指す。
著者
片山 瑠衣 松尾 歩 廣田 峻 陶山 佳久 阿部 晴恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.277, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

日本に自生するヤブツバキ(Camellia japonica)とユキツバキ(C. rusticana)は、ツバキ属ツバキ節(sect. Camellia)に属する。ヤブツバキは赤く大きな花弁を持つ鳥媒介植物であり、ユキツバキの花弁色や大きさは同様に鳥媒シンドロームに属するものである。しかし、先行研究によると、ユキツバキは昆虫が主要な花粉媒介者であることが報告されている。また、これらの在来種と比較して、アジア大陸に自生するツバキ属は、色や大きさにおいて、より多様な花形態を示す。これらの背景から、ツバキ節における系統解析は、花の進化過程の解明に大きく貢献できると考えられる。そこで本研究では、選択圧が大きく影響すると考えられる花形態に着目し、花形態の比較およびMIG-seq法を用いた分子系統解析を行うことで、日本産ツバキ節の種分化の要因と系統的な位置づけを探ることを目的とした。花形態の比較では、東アジアから東南アジアにかけて自生するCamellia属のうち、27種を対象に各3花ずつ採取して花形態の測定および解析を行った。その結果、花形態は節ごとに異なった傾向を示した。この結果をMIG-seqを用いた分子系統解析と合わせて考察する予定である。
著者
片山 きよみ 上村 文子 舛井 雅子 柳田 惠理子
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学留学生センター紀要 (ISSN:1881834X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.39-64, 2008

初級教科書の作成を初めて2年半、ようやく「試用版」の完成にこぎつけることができた。新学期からの試用を前に、ここで一度、これまでの作成過程を振り返ってみることによって、今後の課題をさぐりたい。 私達が目指したのは、熊本で学ぶ留学生に「日本語でコミュニケーションするときに必要な文法」を教える教科書作りである。初級レベルの学習者が「話す」のに必要な文法項目は何か、従来の初級教科書の文法項目の見直しから始めた。何を教え、何を教えないか、どのような順序で提示するか、さらに、その文法項目を各課でどう教えるか、内容についての検討を重ねてきた。このような試行錯誤の過程の中で、私達がこだわった点、作成の方針にした点などを整理し、新教科書の概要と特徴を示した。最後に、参考資料として、「試用版」で扱う文法項目一覧および主用教科書との対比表を付けておく。
著者
斉藤 雅也 片山 めぐみ 伊藤 哲夫 吉田 淳一 吉野 聖 酒井 正幸
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.15, no.29, pp.207-210, 2009-02-20 (Released:2009-04-08)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

The old-fashioned orangutan house in Sapporo Maruyama Zoo was renovated with a concept of “environmental enrichment” in 2008 spring. The concept was stretched for not only the orangutan but also visitors and a zookeeper as well. In the outside field for the orangutan, there are soils, many natural plants, and some play equipments such as ropes, beds, seat swings, and ponds. On the other hand, at the observation area for visitors, they can see the movement and the condition of the orangutan at close range through the full-height glazing. In summer solar shading strategies as Sudare and louvers can provide the cool spots for the orangutan, visitors, and a zookeeper as well.