著者
白石 和也 藤江 剛 小平 秀一 田中 聡 川真田 桂 内山 敬介
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.105-118, 2022 (Released:2022-12-28)
参考文献数
30

沿岸域の海底火山の活動性を評価するために,海底火山下の構造や物性を効果的に調査する地震探査法の確立を目的に,数値シミュレーションによる合成地震探査データを用いたフィージビリティスタディを行った。本研究では,海域と陸域を横断する測線長30 kmの調査を想定し,沿岸域にある海底火山の過去の活動痕跡あるいは現在の活動可能性を示唆する仮想的な構造を持つ深度10 kmまでの地質モデルを対象とした。このモデルでは,地殻内にマグマ溜りを模した3つの低速度体を異なる深度に設定し,その他には側方に連続的な明瞭な反射面が存在せず,一般的な反射法速度解析で地殻内の速度分布を決定するのは難しい構造とした。まず,作成した地質モデルに対して走時および弾性波伝播の数値モデリングを行い,地震探査で得られる初動走時と波形記録を合成した。そして,これらの合成地震探査データを用いて,初動走時トモグラフィと波形インバージョンによる段階的な解析により,低速度体を含む速度構造を推定した。その後,推定された速度モデルを用いてリバースタイムマイグレーションを適用し,反射波による構造イメージングを行った。また,発振点と受振点のレイアウトおよび低速度体の形状の違いについて比較実験を行った。数値データを用いた解析の結果,段階的なインバージョン解析により深度約6 kmまでの2つの低速度体を示唆する変化を含む全体的な速度構造を適切に捉え,深度領域の反射波イメージングによって3つの低速度体の形状を良好に描像することができた。速度構造の推定には探査深度と分解能について今後に改善の余地があるものの,一般的な反射法速度解析が難しい地質構造の場合には,波形インバージョンによる速度推定とリバースタイムマイグレーションによる反射波イメージングを組み合わせることで,地下構造を可視化するアプローチが効果的であることを示した。併せて,効果的な調査を計画するために,想定される地質モデルにおける最適な観測レイアウトや解析手法の適用性などについて,数値シミュレーションを用いたフィージビリティスタディにより事前検討する事の重要性も示された。
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 清水 ミシェルアイズマン 島谷 康司 田中 聡 沖 貞明 大塚 彰
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.75-80, 2007-03-22 (Released:2010-09-09)
参考文献数
29
被引用文献数
5

靴着用が原因と考えられる扁平足、外反母趾等の障害が増加している。これら足部障害の予防には、靴等の環境要因の改善および足部内在筋強化等の身体要因の改善が重要である。本研究では履物着用中の歩行が足部に及ぼす影響について調査し、その中で下駄着用歩行の有効性について検討する事を目的とした。実験は裸足、靴着用、下駄着用の3条件とし、足趾MP関節運動及び内側縦アーチの動態を計測した。関節角度の計測には三次元動作解析装置であるOxford Metrics社製VICON512を用いた。結果、裸足と比較して靴着用中におけるMP関節運動範囲、Arch運動範囲が有意に減少した。また、靴着用中と比較して下駄着用時にはMP関節運動範囲、Arch運動範囲が改善する傾向が認められた。足趾の積極的な使用が足部障害発生予防に有効であると報告されており、下駄着用による歩行の有効性が示唆された。
著者
伊藤 幹二 伊藤 操子 田中 聡 三浦 励一 安斎 達雄 Onen Huseyin
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.176-183, 2005-09-26 (Released:2009-12-17)
参考文献数
6
被引用文献数
6 4

土壌処理剤によるワルナスビの制御法を確立する目的で, 以下の実験を行った。畑地におけるワルナスビの発生は, 耕起によって切断された根片繁殖系からの萌芽によることから, まず畑地で汎用される除草剤アトラジン, アラクロール, ブタミホス, クロロプロファム, トリフルラリン, ペンディメタリンからワルナスビ根片萌芽抑制効果のあるものを, 根片浸漬処理によって選抜した結果, クロロプロファムが最も有効であることが分かった。次にトウモロコシ畑 (土壌:壌土)においてクロロプロファムを播種直前に0.46, 0.92および1.37kg a. i./ha土壌混和処理し, 埋土しておいたワルナスビ根片からの出芽・生長に及ぼす効果を調べたところ, 5~10cm深に埋土した根片については, 出芽は阻害されなかったが, 生長は0.46kg a. i/ha処理でも抑制され, 抑制はとくにシュートの生長において顕著であった。20~25cmに埋土した根片では, 逆に出芽は阻害されたがシュートの生長の抑制は小さかった。ワルナスビ根片からの萌芽・生長に対するクロロプロファムの土壌混和処理効果は, 土壌の種類により著しく異なり, 砂壌土>黒ボク土>埴壌土>壌土であった。クロロプロファムは高い揮発性によって土壌中に拡散し, 処理層を形成する特徴をもつことから, 効果の差には土壌の孔隙率が関係していると推察された。
著者
田中 聡美 布施 淳子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20211025145, (Released:2022-03-25)
参考文献数
32

目的:病院に勤務している看護師の職務に対する幸福感に影響を及ぼす要因について調査し,リテンションマネジメントに関する示唆を得ることを目的とした。方法:看護師41名に対して自記式質問紙調査を,13名に対しては半構造化面接を実施しデータを収集しテキストマイニング分析を行った。結果:職務に対して幸福と回答した看護師は,患者から感謝されることで自分のしていることに心理的報酬を得ながら自信を持ち,家族や患者との社会的な人間関係を築きながら就業継続のモチベーションを高めていた。職務に対して不幸と回答した看護師の認識は,幸福に関する記述数の少ない外部変数を主要因とせず,上司の部下に対する態度や言動が関連していることが示唆された。結論:今後は,日本の看護師に焦点をあてつつ,幸福感に影響を及ぼす要因の構成要素に対して量的研究による信頼性妥当性の検証,実証調査が一層求められる。
著者
岩崎 亘典 林 和則 田中 聡久 鹿取 みゆき 小口 高
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

我が国の農業における農業従事者の高齢化や減少、耕作放棄地の増加等の問題を解決するためには、効率的な農地の維持、管理が求められている。特に、果樹や野菜等の集約型農業においては、適地適作にもとづく新たな農地の活用方法が必要とされている。そこで本提案では、今後、新規参入者の増加や産地形成が想定されるブドウのワイン専用品種の栽培地域を対象として、ほ場一筆単位のワイン専用品種栽培適地図を作成する技術を開発する。そしてこれらの情報を公開・可視化するシステムを開発し、適地適作に配慮した新しい営農形態である「スマート風土産業」の構築を試みる。
著者
田中 聡一 三木 恒久 関 雅子 重松 一典 金山 公三
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.369-374, 2015-05-15 (Released:2015-05-20)
参考文献数
6
被引用文献数
6 6

To control the amount of solute in cell walls of solution impregnated wood using the conditioning process, the mechanisms of solute diffusion into the cell walls and of solvent evaporation from wood under the process were verified. The effect of relative humidity (RH) on temporal variability of swelling, shrinkage, and mass of wood impregnated with an aqueous solution of polyethylene glycol (PEG1540) was examined. The impregnated wood specimen swelled under the conditioning at the RH over 75%. The specimen was indicated to swell when the amount of the PEG polymers in the cell walls increase in this RH range. On the basis of this indication, the temporal variability of increasing rate of the polymers in the cell walls and of evaporating rate of water from the specimen under the conditioning was well explained by the mechanisms of the solute diffusion and the solvent evaporation, respectively. In the RH range, the increasing amount of the polymers in the cell walls increased with the evaporating amount of the water, which increased with the decrease in the RH. These results were supported by the mechanisms of the solute diffusion and the solvent evaporation, respectively. The diffusion mechanism also supported the effect of the history of the RH on the polymer amount in the cell walls throughout the conditioning and subsequent drying in a vacuum. It was concluded from these findings that the solute diffusion into cell walls is able to be controlled by the surrounding vapor pressure of solvent when the polymers (PEG1540) and water are employed as the solute and solvent, respectively.
著者
中村 慎吾 田中 聡 Ignacia Braga-Tanaka III 小野 瑞恵 神谷 優太 小木曽 洋一
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.55, 2011

低線量率(20 mGy/ 22 h/ day)のγ線を連続照射したB6C3F1雌マウスでは、非照射対照マウスと比較して、有意に体重が増加することが分かった。この照射マウスに認められる体重増加の機構を明らかにするために、20 mGy/ 22 h/ dayのγ線を9週齢から44週齢まで連続照射したB6C3F1雌マウスの脂肪組織重量、肝臓及び血清中の脂質含有量、糖代謝及び脂質代謝に関連した因子(インスリンやアディポサイトカイン等)と卵巣の機能変化を調べた。組織の脂肪化を伴う有意な体重の増加は、20 mGy/ 22 h/ dayのγ線を連続照射したB6C3F1雌マウスにおいて28週齢から44週齢に至まで認められた(集積線量2.7-4.9 Gy)。卵巣及び膣垢標本の病理学的解析から、連続照射マウスでは、卵母細胞の枯渇による早期の閉経と同時に体重増加が起こることが分かった。以上の結果から20 mGy/ 22 h/ dayのγ線を連続照射したB6C3F1雌マウスでは、早期の閉経が引き金となって、体重増加が起こることが示唆される。本研究は、青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。
著者
高島 正典 林 春男 田中 聡 重川 希志依 牧 紀男 田村 圭子 堀江 啓 吉富 望 浦川 豪 藤春 兼久 佐藤 翔輔 木村 玲欧
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 = Journal of social safety science (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.151-160, 2005-11-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

<p>We examined the effectiveness of Service Management Framework in designing counter operations in disaster victim support through the hands-on support activity for Ojiya city's victim certification after Niigata-ken Chuetsu Earthquake, Oct. 23, 2004. The service package and the Service Delivery System for the counter operation of victim certificate issuance was designed and implemented on the basis of Service Management Framework. As a result of customer satisfaction survey on Ojiya city and Kawaguchi town, a neighbouring town also affected in the event, it was clarified that the counter operation of Ojiya city was evaluated higher in terms of simplicity of the procedure by the victims than that of Kawaguchi town.</p>
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 島谷 康司 大田尾 浩 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 田中 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101851, 2013

【はじめに,目的】転倒予防や足部障害の発生予防,パフォーマンスの維持・向上には適切な靴選びが重要である.一般的な靴選びは,まず自覚する足長や靴のサイズに基づき靴を選び,着用感により最終的な判断を行うものと考える.しかし,加齢による足部形態の変化や過去の靴着用経験などから,着用者が自身の足長を正確に把握していない可能性が推測される.また,靴の選択基準はサイズや着用感以外にも,デザイン,着脱のしやすさ,変形や疼痛の有無など様々であることから,自覚している靴サイズと実際の着用サイズが異なる可能性が考えられる.そこで,本研究では地域在住の中高齢者を対象とし,自覚する靴サイズおよび実際に着用している靴サイズ,足長や足幅の実測値から抽出したJIS規格による靴の適正サイズを調査し,比較検討することを目的とした.【方法】独歩可能な中高齢者68名(男性20名,女性48名,平均年齢64.0±6.5歳)を対象とした.調査項目は左右の足長および足幅の実測値,足幅/足長の比率,実測値を基に抽出したJIS規格による左右別の適正サイズ,2Eや3Eなどで表わされる適正ウィズ,自覚する靴サイズ(以下,自覚サイズ),および現在着用中の靴の表示サイズ(以下,着用サイズ)とした.なお,各項目間の比較にはフリードマン検定およびScheffe法による多重比較を行い,統計学的有意水準は5%とした.また,自覚サイズと着用サイズの一致率,適正サイズと着用サイズの一致率,および適正サイズおよび適正ウィズの左右の一致率を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】実験前に書面と口頭による実験概要の説明を行い,同意と署名を得た後に実験を実施した.なお,本研究は全てヘルシンキ宣言に基づいて実施した.【結果】左右足型の実測値は右足足長22.6cm (21.8-23.85),左足足長22.7cm (21.75-23.7),右足足幅9.5cm (9.0-9.9),左足足幅9.3cm (8.9-9.9)であり,足幅/足長比率は右足41.5%(39.8 -42.5),左足41.0%(39.5-42.6)であった.また, JIS規格により抽出した右足適正サイズは22.5cm (22.0-24.0),左足適正サイズ22.5cm (21.5-23.5)であったのに対し,自覚サイズは23.5cm(22.5-24.5),着用サイズは23.5cm (23.0-25.0)となった(結果は全て中央値および四分位範囲).着用サイズおよび自覚サイズと比較し左右適正サイズ(p<0.001),左右足長実測値は(p<0.001)は有意に小さい結果となった.次に各項目の一致率について,まず自覚サイズと着用サイズの一致率は37%であり,被験者の63%は自身で認識する足サイズとは異なる靴サイズを選択し着用していた.また同様に,右足適正サイズと着用サイズの一致率は7%,左足適正サイズと着用サイズの一致率は4%と極めて低い結果となった.なお,適正サイズの左右の一致率は52%であり,これに適正ウィズの結果をふまえた場合,左右の靴の一致率は4%に低下した.【考察】中高齢者が実際に着用している靴サイズおよび自覚する足のサイズは,JIS規格に基づく適正サイズや足長の実測値より大きいことが確認された.また,自覚サイズと着用サイズ,適正サイズと着用サイズの一致率が極めて低く,中高齢者では自身の足の大きさを自覚していないだけではなく,自覚する足サイズに基づく靴選びをしていないものと考えられた.中高齢者の靴の選択基準には装着感や着脱の容易さ,デザインなど複数の要因が関与することが過去に報告されており,本研究でもこれらが影響した可能性が示唆される.次に,実測値から抽出した左右の靴適正サイズの一致率が極めて低いことが確認された.これは,左右同一サイズの靴を購入した場合,いずれか一方の靴が足と適合しないことを意味している.先行研究により靴の固定性の低下が動作時の不安定性や靴内での足のすべりを増加させ運動パフォーマンスの低下を引き起こすことが報告されており,靴の不適合が中高齢者の転倒リスクを増加させる可能性が示唆された。これらの靴の不適合に対し,靴内部での補正や靴紐などによるウィズの調整,片足づつ販売する靴を選択するなどの対応が必要になるものと考える.また,本研究の被験者の多くが自身の足サイズについて適切に認識しておらず,正しい評価や知識に基づく靴選びが重要と考える.【理学療法学研究としての意義】適切な靴の選択は転倒予防や障害発生予防,パフォーマンスの維持・向上を考える際に重要である.また,インソールの処方時や内部障害者のフットケアなどの場面では適切な靴の着用が原則となる.そのため理学療法士は対象者の足型と靴のフィッティングについて理解を深め,適切な靴の着用について啓発していく必要がある.
著者
田中 聡 佐々木 邦博 上原 三知
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-30, 2010-03

名勝における利用者の評価や動態を明らかにするため,甲信地方の峡谷の名勝地である,天龍峡,寝覚の床,御岳昇仙峡において,利用動態と評価を,フィールドマップ調査とアンケート調査により把握した。共通して利用者が名勝に求める目的は「眺望」と「自然散策」であった。一方で実際に魅力に感じる要素は,天龍峡では散策路の多様性や眺望景観。寝覚の床では自然散策や探索の面白さ,体験,御岳昇仙峡では視対象が大きく限定的な滝,岩山といった迫力のある景観であった。良好な景観を楽しむだけでなく,自然散策というレクリエーションを同時に楽しめることが名勝の現代的意義の一つであることが示唆された。
著者
田中 聡子
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.110, pp.120-142, 1996-12-20 (Released:2007-10-23)
参考文献数
14

This paper presents an analysis of the polysemic structure of the verb‘mire (see)’. The word is used with various meanings. But all of its meanings, including those which seem to be arbitrarily extended, can be proved to be motivated and characterized by the nature of human cognition.Its meanings are not discrete but in their typical uses they are discernable by semantic features. The fundamental meaning (m.1) of ‘mire’may be expressed in terms of the semantic features: <visual‹ <perception› . This assumption is supported by the fact that it is usually received in this meaning when it lacks the object word i.e. in the default case.The other meanings can be accounted for based on three principles of derivation which can be said to be psychologically valid: (1) incorporation of interpretive inferences into lexical meaning, (2) metaphor, and (3) metonymy.principle (1) ...... m.2: <visual‹ <perception› <judgement‹ ; m.3: <judgement› ; m.4: <visual‹ <perception› <judgement‹ <taking measures›principle (2) ...... m.5: <non-visual‹ <perception› <judgement‹principle (3) ...... m.6: varying from <experience of a state of affairs› to <occurrence of a state of affairsThe variations of m.6 reflect the degrees of “subjectification”(Langacker 1990: 316) of the viewer construed by the conceptualizer.
著者
篠崎 由賀里 隅 健次 山地 康大郎 田中 聡也 佐藤 清治
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1159-1162, 2014

水上バイク事故により生じた外傷性直腸肛門損傷から縦隔気腫にまで至った1例を経験した。水上バイクの後部座席に乗船した20歳女性が振り落とされて落水。肛門部痛と気分不良を訴え,6時方向での肛門直腸の断裂を確認。胸腹部CTで肛門から直腸周囲と縦隔にまで広がるairを認め,落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷,後腹膜気腫,縦隔気腫と診断した。緊急手術施行し損傷部位を縫合閉鎖,後腹膜ドレナージ,横行結腸人工肛門を造設した。術後致命的な合併症は無かったが,膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目,人工肛門形成,自己導尿状態で退院。水上バイク事故による重傷損傷は増加しており,国土交通省運輸安全委員会も注意喚起している。本症例では症状は軽度であるも骨盤神経叢の損傷が疑われ膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性もある。同様の事故を防ぐための行政対策も必要と考える。
著者
田中 聡 三浦 励一 冨永 達
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-16, 2008 (Released:2009-03-31)
参考文献数
46
被引用文献数
2 2

都市内の公園などの公共用芝地に出現する草種と土壌要因との関連の基礎的知見を得ることを目的として,京都市内の公共用芝地80地点において植生調査および土壌調査をおこなった。土壌要因として,土壌水分含量,土壌硬度,土壌pH,全窒素,可給態リン酸,各種水溶性イオン(硝酸イオン,リン酸イオン,硫酸イオン,カルシウムイオン,カリウムイオンおよびナトリウムイオン)および活性アルミニウムを分析した。植生データの解析は5月に調査した13地点分(春期)および8,9月に調査した22地点分(夏期)についておこなった。春期には38草種が出現し,スズメノカタビラおよびシロツメクサの出現頻度が高かった。正準対応分析(CCA)の結果,草種の分布は土壌硬度,土壌含水率,水溶性イオン(硫酸,リン酸およびカリウム)との対応関係が強かった。夏期には52草種が出現し,アキメヒシバおよびメヒシバの出現頻度が高かった。CCAの結果,草種の分布は土壌要因との対応関係が明瞭ではなかった。除歪対応分析(DCA)の結果,芝地の衰退に複数の要因の存在が示唆された。
著者
石井 友 松岡 昌志 牧 紀男 堀江 啓 田中 聡
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
no.751, pp.1391-1400, 2018-09
被引用文献数
9

&nbsp;If a disaster such as an earthquake occurs, buildings will suffer damages, including residential houses and public facilities. An investigation of damaged buildings is very important in disaster areas because we use such data to make decisions for the implementation of disaster management and restoration plans. However, in the event of a large-scale disaster, conducting a detailed survey has several problems. The number of buildings to be covered will increase, manpower will be insuffficient, the burden on workers will increase, restoration will take time and will be delayed. Therefore, there is a need for a quick and accurate method of investigating building damages.<br><br>&nbsp;In this study, we allowed a CNN (convolutional neural network) to learn the local and aerial photographs of the 1995 Kobe earthquake and verified the possibility of assessing building damages in the CNN based on the learning curve and discrimination accuracy. The Nishinomiya Built Environment Database, which contained damage certificate data, aerial and field photographs, and their shooting points, was used for analysis. In the Nishinomiya city's damage certificate data, the damaged buildings were classified into four classes: &ldquo;severe,&rdquo; &ldquo;moderate,&rdquo; &ldquo;slight,&rdquo; and &ldquo;undamaged.&rdquo; However, in the present study, three classes&mdash;moderate, slight, and undamaged&mdash;were merged into a single class for simplicity, such that we had a two class classification problem, that is, &ldquo;severe&rdquo; and &ldquo;others.&rdquo;<br><br>&nbsp;First, when we created a data set using the damage certificate data, and aerial and field photographs, and allowed the CNN to learn them, a state called over-fitting was created, which made normal learning more difficult. However, as a result of countermeasures called data incrimination, we were able to obtain a estimation accuracy of approximately 63.6% in the aerial photographs and 73.6% in the field photographs. Since the decrease in the accuracy is due to building internal damages, we should also include the possibility of such damages that could not be assessed from the appearance alone, and of the images of damaged buildings from outside the target building; therefore, we investigated and verified the damaged buildings again based on the &ldquo;images of damaged buildings evaluated by visual interpretation.&rdquo; Then, it became clear that the damaged buildings can be identified with an accuracy of 86.0% in the aerial photographs and 83.0% in the field photographs. Furthermore, in the field photographs, it became clear that collapsed buildings can be distinguished with a high accuracy of 98.5%.<br><br>&nbsp;From the above results, it was found that it is possible to assess the condition of damaged buildings by deep learning using field and aerial photographs taken in the affected area after the earthquake; however, the damage that can be identified with the highest accuracy is limited to the photographs of collapsed buildings. In our future research, we plan to correctly identify the difference between &ldquo;moderate&rdquo; and &ldquo;slight&rdquo; damaged buildings.
著者
田中 聡 仲座 栄三 福森 匡泰 宮里 信寿 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.40-54, 2021
被引用文献数
2

<p> 水平床上に設置した直立護岸の越波流量特性が,規則波を対象として,CADMAS-SURFを用いた数値計算及び大型水理実験により明らかにされている.一様斜面上の護岸特性を明らかにする上でもそのベースとして水平床上の護岸越波特性の把握が重要となる.吉川らは水平床上の護岸越波流量の算定に定常流を対象とした堰の公式を導入し,1波当たりの越波流量算定式を与えた.これを基準として合田は,不規則波を対象として護岸上の越波流量算定図表を提示している.被災時の状況把握には,被災をもたらした1波当たりの最大越波流量の推定が求められる場合も多々あることから,規則波を用いた現象理解は重要となる.本論は,無次元越波流量が相対天端高によって系統的に整理できることを示した上で,反射率と越波流量とを同時生起現象として説明している.</p>
著者
島谷 康司 島 圭介 菴原 亮太 長谷川 正哉 金井 秀作 田中 聡 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 Psiche Giannoni Pietoro Morasso Paolo Moretti
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1228, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】我々は,初期歩行直後の乳幼児にヘリウムガス入り風船(浮力:約2g)の紐を把持させると歩行時の身体動揺が減少し,そのために歩行距離が延長することを報告した。この現象は,Jekaらが報告した「指尖でカーテンに軽く触れることによって姿勢制御に有効に働くこと(Light Touch Contact)」に類似していると考えた。本研究では,初期歩行期の乳幼児に対してヘリウムガス入り風船の紐を把持(以下,風船把持)させることにより姿勢制御を最適化する支援方法を提案するために,まず風船把持の静止立位姿勢制御について検証することを目的とした。【方法】対象は,健常成人60名(男性:30名 女性:30名)であった。重心動揺計測には,アニマ社製重心動揺計(GP-6000)を使用した。また,全対象者のうち無作為に抽出した30名に対して頭部,風船を把持した右手部,仮想身体重心を想定した腹部の位置関係を検証するために,KINECT for Windowsを用いて3次元画像解析を行った。計測条件は,何も把持しない条件(以下,把持なし条件),風船を右手で把持する条件(以下,風船条件)の2条件を設定し,被験者ごとにランダム化して60秒間の計測を行い,データを比較した。計測肢位は閉眼タンデム立位とし,把持なし条件の右上肢はあたかも風船を把持しているかのような肢位とした。計測は被験者が十分に安定したと感じた際に「はい」と合図をさせて開始した。統計処理には,総軌跡長,実効値面積(以下,RMS),外周面積,左右軌跡長,前後軌跡長について,把持なし条件と風船条件の2群間で対応のあるt検定を行った。また,頭部・右手部・腹部の3次元座標から変動係数を算出し,2群間比較には対応のあるt検定を,群内比較にはKruskal Wallis検定および多重比較にはSteel-Dwass検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り,対象者には本研究の趣旨を十分に説明し,書面にて同意を得た後に実験を行った。【結果】重心動揺については,把持なし条件と比較して風船条件は,総軌跡長(p<0.01),左右軌跡長(p<0.01),前後軌跡長(p<0.01),RMS(p<0.05)で有意に低値を示した。外周面積に有意差は見られなかった。各身体部位の変動のばらつきについては,把持なし条件・風船条件ともに頭部と右手部は腹部よりも有意にばらつきが大きく,頭部と右手部に有意差は見られなかった。また,把持なし条件と風船条件の群間比較をした結果,すべての身体部位間に有意差は見られなかった。【考察】本研究の結果,風船把持によって前後・左右の重心動揺速度が減少し,動揺のばらつきを抑えて身体重心を一定範囲内に収めていることが示唆された。しかし,風船の有無によって身体部位の位置関係に有意差が見られなかったことから,風船把持による静止立位姿勢制御の機序までは明らかにすることができなかった。しかし,山本らは,ヒトは各身体部位を前後・左右に微妙に動かしながら立位姿勢を制御すると述べており,本研究では風船把持によってフィードバック制御を賦活し,各身体部位を微動させることによって,より重心動揺を減少させる立位姿勢制御が行われているものと推察した。風船把持の立位姿勢制御が固定点に指尖で軽く触れるLight Touch Contactとは異なるため,今後は風船特有の揺らぎが静止立位姿勢制御に与える影響について詳しく解析し,初期歩行期の乳幼児に対する歩行支援の可能性について検証していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】現在,初期歩行発達遅延の乳幼児に対する確立した歩行支援方法はない。風船は口頭指示が難しい乳幼児にとって歩行練習を行う動機づけに有用な歩行支援用具となりうる可能性があり,健常成人においては,風船把持による静止立位姿勢制御が重心動揺を減少させることが示唆された。
著者
大濱 俊彦 佐藤 愛 田中 聡 石塚 恒夫 勝盛 弘三
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.34-39, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
8

20年前に1型糖尿病と診断されインスリン加療中の54歳の男性が,全身倦怠感,脱力感にて当院救急室を受診した.受診3日前より食後の心窩部痛を自覚し,摂食すると嘔気嘔吐がみられたため,食事摂取もできず,受診2日前からインスリン注射を中断していた.受診当日,コーヒー残渣様嘔吐を認め,その後全身脱力感,意識レベル低下を認めたため救急車要請となった.救急車内でモニター上10秒程度のVT波形となり,血圧も低下した.到着時意識障害を認め,心電図波形で高カリウム血症性変化を認めた.血液検査にて血糖値1435 mg/dl, K 8.6 mEq/l,アシドーシスを認め糖尿病ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis,以下DKAと略す)と高カリウム血症にて緊急入院となった.その後の集学的治療にて病態をコントロールすることができた.翌日の上部消化管内視鏡にて上部消化管に出血性潰瘍を認めた.DKAから高カリウム血症を認めることはあるが,K 8.6 mEq/lという著明な高カリウム血症はあまり報告例をみない.本症例は消化管出血や腎前性腎不全も併発していたために致死性不整脈が生じるほどの血清カリウムの上昇につながったと思われる.糖尿病罹病期間の長いDKAで著明な高カリウム血症を認めた場合,背景に消化管出血を合併している可能性があり,本症例のように早急な治療が求められることが多いため注意を要する.
著者
片岡 弘明 田中 聡 北山 奈緒美 村尾 敏
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.350-356, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
31

2型糖尿病患者の骨格筋量の低下に影響を及ぼす因子を検討した.対象は2型糖尿病患者111名(男性58名,女性53名)で生体電気インピーダンス方式体組成計を用いて上下肢筋量を測定し,糖尿病に関連する因子との関係について男女別に検討した.上肢筋量および下肢筋量を従属変数としたステップワイズ重回帰分析の結果,男性の上肢ではHbA1c,下肢筋量では糖尿病神経障害とHbA1c,女性の下肢筋量では,糖尿病神経障害,LDLコレステロール/HDLコレステロール(L/H)比が有意な独立変数として選択された.本研究の結果から2型糖尿病患者の骨格筋量の低下には,男性では糖尿病神経障害とHbA1c,女性では糖尿病神経障害とL/H比が関与していた.2型糖尿病患者の骨格筋量低下に関連する因子は複数存在しており,さらにこれには性差が存在していることが明らかとなった.