著者
田中 良明 仁田 善雄 島 正之 岩崎 明子 安達 元明
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.166-174, 1996 (Released:2011-11-08)
参考文献数
43
被引用文献数
2

自動車排気ガスを中心とする幹線道路沿道部の大気汚染が, 学童の呼吸器症状, 特に気管支喘息に及ぼす影響を明らかにするため, 千葉県で主要幹線道路が学区を貫通する都市部6小学校と田園部4小学校の1992年に1~4年生のものを対象として3年間追跡調査を行った。気管支喘息有症率は女子では3年間すべてで都市部の沿道部が最も高率であり, 次いで都市部の非沿道部, 田園部の順となり, その傾向は有意であった。男子では2年目のみ有意であった。2年間の気管支喘息発症率は男子では沿道部5.7%, 非沿道部3.9%, 田園部1.6%, 女子ではおのおの3.3%, 2.5%, 1.0%であり, 男女とも沿道部が最も高く, 次いで非沿道部, 田園部の順となり, この傾向は有意であった。多重ロジスティック回帰により関連要因を調整したオッズ比を求めたところ, 田園部の発症を1とすれば男子では非沿道部1.92, 沿道部3.70, 女子では非沿道部2.44, 沿道部5.97であった。すなわち, 沿道部の大気汚染は気管支喘息の発症に関与していることが疫学的に示唆された。
著者
国末 浩範 市原 周治 野村 修一 野上 智弘 森 秀暁 大谷 裕 石堂 展宏 太田 徹哉 臼井 由行 田中 信一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.118-121, 2009-01-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は96歳の女性で,既往歴として平成19年2月に心嚢液貯留に対し,心嚢—腹腔開窓術を施行されていた.平成19年7月初旬,急に激しい腹痛が出現し,当院を紹介され受診した.腹部は軟らかいが,腹部全体に圧痛を認めた.腹部CTにて心嚢内に腸管が嵌頓するように入り込んでおり,心嚢—腹腔開窓孔による心嚢内ヘルニア嵌頓を疑い開腹術を施行した.開腹所見ではトライツから370 cmの小腸が約30 cm心嚢—腹腔開窓孔から心嚢内に入り込み絞扼され腸管が壊死していた.開窓孔を広げ腸管を腹腔に戻し,小腸部分切除を施行した.また,開窓孔は肝円索にて緩めに覆い閉鎖した.術後の経過は良好で第24病日に退院した.心嚢—腹腔開窓孔による心嚢内ヘルニア嵌屯はまれであるので報告する.
著者
西村 直 田中 尚人 川崎 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.413-424, 1998-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10

本研究は、ニュータウンをはじめとする人為的な空間の水辺計画を考える際の基礎資料として、1960年以降の近畿圏における代表的なニュータウンを対象とし、実地踏査、設計者へのヒアリングをもとに水辺の計画・設計の歴史的な変遷を整理したものである。失われた水辺を再びアメニティの要素として復活させようという社会の要請が高まる中で、ニュータウンの水辺の計画も、初期の機能が限定されていた施設単体の点的、線的な整備の時代から、複合的な機能をもつ施設を重ねてニュータウン全体へ面的な広がりを持たせる整備の時代に至っている。このような中で、本研究では、水辺の立地、水供給システム、意匠のコンセプトの視点から、近年の水辺計画は手法が多様化しているという動向を明らかにすることができた。
著者
箸野 照昌 田中 寿美玲 野口 愛天 峯元 愛 園中 智貴 徳田 佳秀 山畑 雅翔 内田 海聖 大城 新秀 畑島 康史 吉盛 巧人 園田 倭可 谷口 大介 兎澤 瑛太郎
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

研究の動機 過去4年間「関口日記」「二條家内々御番所日次記」「妙法院日次記」「守屋舎人日帳」「弘前藩庁日記」に記述された天気を分析した。 そこで、今年は「鶴村日記」を分析した。「鶴村日記」とは、江戸時代の石川県の儒学者、金子鶴村が書き残した1801年(文化4年)から1838年(天保9年)までの災害、文化、生活等の記録である。 研究の目的(1)過年度に調べた「関口日記」「二條家内々御番所日次記」「妙法院日次記」「守屋舎人日帳」「弘前藩庁日記」と合わせてデータベースを作る。(2)インドネシアのタンボラ火山の1812年からの噴火の影響で「夏のない年」と言われた1816年と、天保の飢饉で一番被害が苛烈であった1836年を比較検証する。 研究の方法 天気は現在の気象庁の分類に近づけて、雪>雨>曇>晴れと判別した。1年の1/3の欠測のある年は集計から削除した。ただし、1836年を検討する際は、欠測のない5月~7月、及び9月のみデータを使った。 取得したデータは21年間で、7,148日だった。 データ1 鶴村日記の天気の全期間の出現率と、タンボラ火山の噴火を含む期間である1812年から1816年を算出した。火山の噴火期間は晴れの出現率が低下し、雨の出現率が上昇していることが分かった。 また、1836年の天保の大飢饉においてはさらに晴れの出現率が低下し、雨の出現率が大幅に増えたことが分かる。 データ2 1808~1832年の天気の出現率を季節ごとにグラフにすると、タンボラ火山の噴火の続く、夏の期間の雨の出現率が晴れの出現率を上回っていることがわかる。 データ3 4つの古文書で1816年と1836年の5月から9月の天気を比べると、7月の曇りの出現率が高いことが共通している。 1816年と1836年の違いは、1816年の8月の晴れの出現率の持ち直しが顕著である。 データ4 雷の発生率を四季でみると、1816年の夏の雷は前後の年に比べて減少している。一方、秋は1816年が一番高く、大陸からの季節風の影響の可能性が高い。 データ5 国立情報学研究所の市野美夏さんの論文を参考に天気階級と全天日射量を計算して比較した。市野さんの論文に倣い、日記天気階級は(1)晴れ、(2)曇り、(3)雨天・雪の3つに分類した。そして、現代の気象庁データの平均から得られた地上の全天日射量Qd、地理的データ及び天候から得られるQsを使い、qを求める。 qは地球上にそそぐ太陽のエネルギーの減衰する割合を表している。 求めたQsと天気階級の積を平均したものがQeである。このQeを平年値と比較する。 古文書の天候の情報から毎年の全天日射量に換算し、複数年で比較したのがグラフ6で、1816年、1836年のいずれも1821年から1850年の平均値より低い量になっている。つまり、この2年に関しては、年間通して、全天日射量が低く、寒い時期が続き、農作物などへの影響があったことが読み取れる。 考察(1)データ1のように、タンボラ火山の噴火活動期の1812年~1816年の晴れの出現率は36.12%で、全期間より1.88%低いことから、日照時間が低下し気温も低かった可能性がある。 さらに、データ2から、1816年は鶴村日記の夏から冬において、雨の出現率が晴れの出現率を上回る。夏や秋の気温が上昇しない年だったと考えられる。(2)天保の飢饉は特に東北の冷害が深刻だったとされるが、調査した古文書の緯度があがるにつれて1816年と1836年の晴れの出現率の差が大きいことがわかった。(3)鶴村日記において、 1821年から1850年までの全天日射量の平均と、1816年と1836年の夏の全天日射量を比較すると、両年とも通年で全天日射量が低いことから、気温も低下していたことを示唆する。 まとめ(1) 「鶴村日記」のタンボラ火山の噴火活動期の晴れの出現率は36.31%で、全期間より1.71%低く、日照時間が低下し気温も低下した可能性がある。(2) 天保の飢饉は特に東北の冷害が深刻だったとされるが、古文書の書かれた地点の緯度が上がるにつれて、1816年と1836年の晴れの出現率の差が大きくなっていく。(3)「鶴村日記」の全天日射量をみると、1816年、1836年のいずれも1821年から1850年の平均値より低い量になっていた。 つまり、この2年に関しては、年間通して、全天日射量が低く、寒い時期が続いたことがわかる。 今後の課題 「鯖江藩日記」(福井)をデータ化してデータベースを作り、気象変動を調べて、本年までの分析を裏づけるとともに、オリジナルな全天日射量の計算式を作り、江戸時代の日射量を算出する。
著者
岩室 雅也 田中 健大 榮 浩行 安部 真 河野 吉泰 神崎 洋光 川野 誠司 河原 祥朗 岡田 裕之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.29-36, 2022 (Released:2022-01-20)
参考文献数
18

【背景・目的】胃癌と非癌粘膜の白色球状外観(white globe appearance:WGA)の違いを明らかにする.【方法】胃WGA症例の内視鏡所見と臨床的特徴を後ろ向きに解析した.【結果】胃癌18例,非癌23例にWGAを認めた.胃癌症例は7例(38.9%),非癌症例は17例(73.9%)がプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor:PPI)を内服していた.病理学的には,胃癌症例(18例)のうち腺管の嚢胞状拡張は12例(66.7%),腺腔内壊死物質は12例(66.7%),壁細胞の過形成と内腔への鋸歯状の突出(parietal cell protrusion:PCP)は1例(5.6%)でみられた.一方,非癌症例のうち14例で生検が実施され,腺管の嚢胞状拡張は8例(57.1%),PCPは7例(50.0%)でみられたが,腺腔内壊死物質は指摘できなかった.非癌群において,自己免疫性胃炎を2例,内視鏡的粘膜下層剝離術後瘢痕を2例,腺腫を1例,ランタン沈着を1例,胃MALTリンパ腫を1例に認めた.【結論】胃癌粘膜と非癌粘膜ではWGAの成因は異なり,非癌症例ではPPI服用が関与している可能性が示唆された.
著者
田中 友理 加瀬 佳樹 安松 健
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3Yin205, 2022 (Released:2022-07-11)

芸術分野においても人工知能による様々な作品が誕生しているが,「芸術家が人間であるからこそ,人間に伝わる感動があるのではないか」など疑問の声も少なくない.このような中で議論を進めるには,まず「人が芸術から受ける感動」とはどのようなものか理解していくことが重要である.そこで,本研究では「人が芸術作品から感動を受ける構造」を明らかにする.具体的には,「人生で"視覚を通し"最も感動した芸術作品」についての「感動要因」及び「人間的特性」を主な調査項目とした感動経験についてのアンケート調査を実施した.因子分析の結果,感動要因からは7つの因子,人間的特性からは8つの価値観が抽出された.更に,ベイジアンネットワークにて芸術作品情報,感動要因及び人間的特性等を構造化し,感度分析したところ,美学研究において論じられてきた美的範疇に関連する概念が,芸術作品情報,感動要因及び人間的特性等の関係性において定量的に表現されていることを確認できた.これらの美的類型と人間的特性の構造分析は,美的研究を裏付け,人間の芸術的感性を理解する基礎的知見の一つとなる.
著者
田中 智志
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.13-25, 2002-12-04 (Released:2017-08-10)

他者は、同化されたり馴致されることによって消えていくものではない。他者は、たとえば、近代教育のような現実の言語ゲームが構築するヘゲモニーを撃つ批判的な拠点である。このような他者の存在を承認し、他者の存在を教育することは、いかにして可能だろうか。第一に、他者への教育は、他者の了解不可能性を了解するという態度を要請するだろう。他者を了解することは、他者を承認することではなく物に還元することだからである。第二に、他者への教育は、近代教育の正当性を脱構築する知を要請するだろう。近代教育の正当性は、存在神学という、他者否定の思考にあるからである。近代教育の脱構築は、「進歩」「発達」「文明化」という上昇指向を相対化し、偶有的・刹那的な共在を語らなければならない。偶有的・刹那的な共在を語る存在論は、存在神学を喪った時代を生きる子どものニヒリズムを否定的なものから肯定的なものに反転させる契機となるだろう。つまり、偶有的・刹那的な共在を語る存在論は、生の悲劇性=喜劇性を感受するきっかけを子どもに与えるだろう。
著者
田中 康広
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-7, 2012 (Released:2012-03-29)
参考文献数
47

近年,樹状細胞を用いた悪性腫瘍に対する免疫療法は特に注目を集めており,腫瘍抗原特異的な抗腫瘍効果の誘導を目指した臨床試験が世界各国のさまざまな施設で行われてきた。樹状細胞は生体内において最も強力な抗原提示細胞であり,T細胞を中心とした免疫担当細胞を調節し,腫瘍特異的な免疫反応を誘導するうえで重要な存在だと言える。この樹状細胞を用いた免疫療法は1996年に悪性リンパ腫に対して初めて臨床試験が行われ,2010年4月にはホルモン療法抵抗性の転移性前立腺がんに対する樹状細胞療法(sipuleucel-T)の製造販売が初めてFDAにより認可された。これまでのところ樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫療法は腫瘍抗原が明らかとなっているペプチドのパルス療法が主体となっており,その他腫瘍抗原自体やその溶解成分,またはRNAをトランスフェクトする方法なども行われてきた。これらの方法は腫瘍抗原の同定が必要であるが,腫瘍抗原が未だ同定されていないものも多く存在する。このような腫瘍に対しては腫瘍細胞と樹状細胞をポリエチレングリコールにて処理した融合細胞によるワクチンが有効と考えられる。本稿では現在までに筆者らが行ってきた樹状細胞と腫瘍細胞からなる融合細胞を用いた免疫療法とその抗腫瘍免疫の機序について概説し,頭頸部腫瘍に対する免疫療法の現状についても言及したい。
著者
田中 厚子 高井 史比古 西川 幸江 本田 孝行 川本 敦子 中島 勇 堀越 節子 小川 隆司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.269-275, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

日本EPI協議会のワーキング活動において,IPランドスケープをテーマに,知財関連の解析手法について研究を行った。テーマとしては炊飯器を題材に,3チームに分かれ,それぞれが異なる炊飯器メーカーを担当した。国内市場をターゲットに分析を行い,市場におけるポジションの確認や,事業戦略,経営層への提言を検討した。各チームでまずは市場における外部要因を確認し,ベンチマークを行った上で,SWOT分析,ファイブフォース分析,ポジショニング分析,特許分析,テキストマイニング,ワードクラウド等の手法を駆使し,それぞれの結論へと導いた。本稿では,研究活動を通して得られた分析手法の知見を紹介する。
著者
道城 裕貴 原 説子 山本 千秋 田中 善大 江口 博美 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.175-186, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究の目的は、(1)発達障害児に模擬授業場面において個別およびグループトレーニングを行い、小学校で必要な行動を身につけさせること、(2)母親へのチェックリストにより教室場面での般化を確認することであった。対象児は、広汎性発達障害と診断された就学前の6歳2か月の女子1名であった。トレーナーおよびアシスタントは大学院生であった。模擬授業場面は、大学内に設置した小学校の教室場面と類似した環境であった。標的行動は、予備観察から「手を挙げて発表する」などの34の授業準備行動を選択した。個別トレーニングは1対1、グループトレーニングは1対2以上で行い、(1)個別トレーニング、(2)グループトレーニングという順で導入した。トレーニングでは、課題分析、モデリングやプロンプトなどの行動的技法を用いた。フォローアップでは、参加児が就学後に母親のチェックリストの記入により教室内における般化を検討した。結果として、大学の模擬授業場面において、発達障害児はさまざまな授業準備行動を身につけ、教室場面においても般化を確認することができた。
著者
田中 きく代 Kikuyo Tanaka
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.64/65, no.4/1, pp.141-162, 2015-05-20