著者
長田 尚子 デイヴィス 恵美 髙尾 郁子 神崎 秀嗣 田中 浩朗
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.3, pp.34-41, 2022-10-03 (Released:2022-10-03)

継続的な授業改善を支援するために,実践コミュニティの存在が重要な役割を果たすとされている.しかしながら,実践コミュニティを誰がどのように構築するのか,そこで参加するメンバーはどのように行動するのか,そこでの行動によってコミュニティがどのように発展するのか,等については十分解明されていない.本研究では,相互研修型大学横断型FDの機会を通じて発展した実践コミュニティについて,当事者によるパターン・ランゲージの開発活動における談話例を用いて考察を深め,FDの領域における実践コミュニティ研究に関する課題を明らかにする.
著者
田中 良英
出版者
The Japanese Association for Russian and East European Studies
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.38, pp.72-88, 2009 (Released:2011-10-14)

In order to understand concretely how the Russian Imperial government used the nobility in state service in the 18th century, it is necessary to investigate the actual conditions in the army, because many noblemen were firstly recruited into the army and trained there as state servants. Once temporarily established under the reign of Peter I only for the coronation ceremony of his Empress Catherine on 8 May, 1724, the Cavalry Guards (Kavalergardy) were reformed as a permanent military unit by Catherine I at the end of 1725. This corps has two noteworthy features. Firstly, unlike the other two existing guard regiments that included soldiers and officers who were recruited from the common people, it was composed exclusively of both Russian and foreign noblemen, most of whom started state service as common soldiers or dragoons and attained the status of company officers on the basis of their continuous work and abilities. Being appointed to the Cavalry Guards was rather beneficial for these military functionaries, because they were frequently and quickly promoted to a higher rank either while in office or at the transfer to different posts despite not being expected to actually fight on the battlefield. After leaving the Cavalry Guards, some of the members became core commanders of the two guard regiments newly founded under Anna Ioannovna in 1730, and others reached the top four ranks in the Russian army or the administrative system. Along with these high-ranking officials, many of the ex-cavalrymen were promoted to offices leading regiments, battalions, or local governments, acquiring grades equal to field officers. Judging from such social origins and career patterns of the staff, the Cavalry Guards can be seen one of the important resources for the Imperial government to gather and organize the talented and experienced noblemen distributed across the vast Empire, thereby utilizing their abilities not only in military but also in civil organs. Furthermore, this unit played a social role in absorbing and posting serviceable foreign families into Russia. The second important point is that the Cavalry Guards were mainly used in the Westernized court and state ceremonies, which were employed by the Russian rulers, especially after the Petrine reform, to propagate their unrivalled authority both in- and outside Russia. For example, at the coronation of Empress Catherine in the Moscow Kremlin, the cavalrymen in white wigs, hats with gold lace and white ribbons, green woollen coats, and red woollen vests guarded both the front and the rear end of the procession of the Empress and her husband when they paraded from the court to the ceremonial cathedral. Contributing greatly to the glorification of the rituals and monarchical power, such colourful costumes attracted considerable attention from contemporaries, above all, the foreign diplomats, one of whom noted their resemblance to the uniforms of the French musketeers (mousquetaire). Additionally, soon after Anna’s arrival at the outskirts of Moscow and at a relatively early stage of her coronation, the Cavalry Guards were granted a special audience with her, which symbolically suggested the respectful treatment of the rulers. Such favour could also have strengthened the connections between the imperial power and the elite, thereby supporting the rapid development of the 18th-century Russian Empire.
著者
田中 凜 澤井 浩子 小山 恵美
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.59-67, 2015 (Released:2017-02-24)

コミュニケーション手段として、小休止時に多くの人が電子機器を使用する可能性が容易に推察される。本研究では、作業中小休止時間の過ごし方がパフォーマンスおよび精神生理状態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、小休止行動として、スマートフォンを用いたテキストでの会話と、従来から行われてきた口頭での会話を比較した。健常若年成人男女26名を対象とした。課題と小休止行動(15分間)を実施し、主観評価、脳波、心電図、課題成績を計測、評価した。小休止行動2条件を比較した結果、口頭での会話中においては、テキストでの会話中よりも、心拍数、心拍変動の小休止15分間平均値が有意に大きい値を示した。また、口頭での会話後には、テキストでの会話後よりも、小休止の気分転換度、休息感、充実感でスコアが有意に高く、これから実施するパフォーマンス評価課題に対するやる気、集中度でスコアが有意に高かった。課題成績において、2条件間に有意な差はみられなかった。作業中小休止時間における会話という行為でも、口頭での会話の方がテキストでの会話よりも、生理的に活性方向の影響を与え、精神的にリフレッシュする効果が大きいことが導かれた。今後、パフォーマンス評価課題を見直すことで、小休止行動がパフォーマンスに及ぼす影響についても明らかになることが期待される。
著者
杉村 朋子 鯵坂 和彦 大田 大樹 田中 潤一 喜多村 泰輔 石倉 宏恭
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.213-218, 2011-05-15 (Released:2011-07-23)
参考文献数
11

症例は43歳の女性。30歳時に神経性食思不振症と診断され,精神科への入退院を繰り返していた。今回,自宅にて意識レベルが低下したため,救急車で近医へ搬送された。脱水と低栄養状態であり,低血圧,低血糖に対して高カロリー輸液による水分栄養補給が開始された。しかし,多臓器不全を呈したため,第13病日に当センターへ転院となった。臨床経過から,本患者は慢性の半飢餓状態の代謝に適合しており,低リン血症を補正しないまま糖負荷を行ったことによるrefeeding syndromeと診断した。血清リン濃度(IP)0.5mg/dlと著明な低リン血症を呈していたため,直ちにリンの補充を行い,輸液は低カロリーから開始した。低リン血症改善後,ショックから離脱し多臓器不全も改善傾向を示した。しかし,第27病日に敗血症性ショックを合併し呼吸不全の増悪から,第60病日に死亡退院となった。近年,救急・集中治療の領域においても栄養管理の重要性が認識されているものの,依然としてrefeeding syndromeの存在は広く認知されているとは言い難い。神経性食思不振症患者の栄養管理に際しては,refeeding syndromeを念頭に置き,微量元素を含めた低カロリーから開始する栄養補給により臓器不全を回避しなければならない。
著者
村上 孝作 吉藤 元 小林 志緒 川端 大介 田中 真生 臼井 崇 藤井 隆夫 三森 経世
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第33回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2005-10-18)

【目的】 抗Ku抗体は日本人の強皮症(SSc)+多発性筋炎(PM)の重複症候群に見出される自己抗体として報告された.しかし,米国ではSLEに最も多く検出されると報告され,人種ごとの遺伝的背景の違いによると考察されてきた.そこで我々は抗Ku抗体陽性の自験例について臨床的特徴を検討した.【方法】 2001年から2004年までに当院で診療した膠原病とその疑い例1185例の保存血清についてRNA免疫沈降法を施行し,高分子核酸スメアを沈降した血清をさらに35S‐メチオニン標識HeLa細胞を用いた蛋白免疫沈降法を行って抗Ku抗体を同定した.【結果】 70kDa / 80kDa蛋白へテロ2量体を免疫沈降する抗Ku抗体は6例(0.51%)に陽性であり,SLEとPMの重複例2例,SLE 2例(1例はCK値上昇あり),PM 1例,未分類膠原病(レイノー現象・手指硬化症・クリオグロブリン血症・CK値上昇)1例であった.抗Ku抗体陽性6例中,PMないし筋病変は5例に,SLEないしSLE様症状は4例に,両者の重複は3例に認められた.また,多発関節炎が5例に,レイノー現象が4例に,手指硬化などの強皮症様症状が2例に認められた.【結語】 少数例の解析ではあるが,抗Ku抗体は筋炎重複症候群と関連し,特徴的な臨床像を示す可能性が示唆された.
著者
森本 泰夫 田中 勇武
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.37-48, 2008 (Released:2008-04-04)
参考文献数
31
被引用文献数
9 9

ナノ粒子の有害性評価:森本泰夫ほか.産業医科大学産業生態科学研究所―ナノ粒子の有害性に関する研究において,既に有害性評価がなされている繊維状物質やPM2.5などの大気汚染物質の試験法やそのエンドポイントを参考として展開されていることが多い.作業環境における曝露としては,経気道的曝露が想定されるため,吸入曝露試験や気管内注入試験等の動物試験の結果が,有害性評価への貢献度は高い.動物試験のエンドポイントとして,慢性期における持続炎症や線維化及びその関連因子は,ナノ粒子の肺傷害の指標として有用と考えられる.一方,有害性評価試験の結果に差異が認められることがある.この主な原因は,試験に用いたナノ粒子のキャラクタリゼーション(ナノ粒子の物理化学的特性を明らかにすること)が充分に行われていないことにある.そのうち,特に,ナノ粒子の分散性の確認,それも曝露する直前の状態(吸入試験では動物曝露室,気管内注入試験においては,注入する懸濁液)で確認することが重要である.現状では数は少ないが,ナノ粒子のキャラクタリゼーションを行った有害性評価試験の報告が徐々に増加しており,このことが信頼性の高い有害性さらにはリスク評価につながると考えられる.(産衛誌2008; 50: 37-48)
著者
植田 直見 山口 繁生 川本 耕三 塚本 敏夫 山田 卓司 渡辺 智恵美 田中 由理 大橋 有佳 米村 祥央
出版者
公益財団法人元興寺文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

約30年前に保存処理された出土青銅製品に含浸された樹脂を分析した結果、分子構造が変化している可能性が推測された。さらに、出土金属製品の保存処理で最も使用頻度の高いパラロイドNAD10がすでに製造中止となり、今後在庫がなくなれば使用できなくなる。本研究では全国各地の様々な条件で保管されている出土金属製品の現状を調査し、含浸された樹脂を採取・分析・評価する。並行して未使用の樹脂の劣化促進実験を進め、その変化を追跡し、化学変化と機能の低下との関係を見極め、樹脂の寿命を予測し、新しい樹脂の使用時期を判断する指標を確立する。加えて今後出土金属製文化財に使用する新規の樹脂の開発に向けた指針を構築する。
著者
田中 秀典 今井 順一 齋藤 巌 春日 伸予 長島 知正
出版者
日本感性工学会
雑誌
感性工学研究論文集 (ISSN:13461958)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.71-76, 2005-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
15

Colic crying, which is a baby's abnormal crying induced by unknown causes, is a typical example of sounds giving unpleasant impressions to listeners. Recently, Mukai et al. suggested that the colic crying would cause the child abuse because of its unpleasantness. In this paper, we propose the extended pitch perturbation quotient (ePPQ) for the evaluation of unpleasantness of crying. It is shown that the ePPQ is an index to quantify instability of fundamental periods, which seems to be cause of unpleasantness of colic crying. The ePPQ for colic crying is significantly higher than that for crying cured by operation. Furthermore, as a result of subjective evaluations, it seems that there is a tendency for the scale of unpleasantness to be high when the ePPQ is high. Therefore, it is considered that the ePPQ is a useful index for evaluating unpleasantness for crying.
著者
宮城島 慶 松井 敏史 小原 聡将 三ツ間 小百合 田中 政道 輪千 督高 小林 義雄 長谷川 浩 神﨑 恒一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.260-268, 2015-07-25 (Released:2015-08-13)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

目的:2011年に提唱された医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインに従い高齢者肺炎の治療を行い,入院前後の介護度悪化にかかる予後規定因子を検討した.方法:2012年4月から2013年3月にかけて杏林大学付属病院高齢診療科で肺炎の治療を行った112名(平均年齢:86.8±5.5歳,男/女:72/40名)を対象に,退院後にNHCAPガイドラインに従い,市中肺炎(CAP)(29名)とNHCAP(83名)に,NHCAPは更に耐B群(耐性菌リスク無)とC群(有)に分類した.介護度は入院前後にJABCスコアで判定し,肺炎治療後2段階以上のADL低下または死亡を転帰悪化とし,各肺炎群の臨床的特徴と,転帰について評価を行った.結果:NHCAP患者の入院日数はCAP患者に比べて長く(CAP vs. NHCAP:21日vs. 33日,p=0.02 by Mann-Whitney U test),肺炎重症度であるADROPスコアが高値で(CAP vs. NHCAP群:2.45±0.87 vs. 2.88±0.80点,p=0.02),誤嚥を有する頻度が高かった(42.9% vs. 89.2%,p<0.0001).一方,B,C群間ではこれらの項目の程度は同等であった.また各肺炎群における死亡例の頻度に差はなかった.いずれの肺炎群でも入院前後で全体のJABCスケールは悪化し(CAP群,p=0.002;NHCAP-B群,p<0.0001;NHCAP-C群,p=0.01,Wilcoxon順位検定),特にNHCAP-B群では,全体で1ランク低下していた.死亡例を含む2ランク以上の介護度悪化者はCAP群37.9%に対し,NHCAP群は43.8%であった.年齢,性別,入院時JABCスコアで補正したロジスティック回帰分析を行ったところ,NHCAP(CAPに対し相対危険度6.2,95%CI 1.2~32.2,p=0.03),血清アルブミン2.5 g/dl未満(7.8,95%CI 1.7~35.7,p<0.01)が介護度悪化に関与した.一方ADROPスコアや誤嚥の有無は入院による介護度悪化に関与しなかった.結論:NHCAP自体が,栄養状態を反映する血清アルブミン低値とともに,入院による介護度悪化の危険因子であった.NHCAP症例は入院治療で肺炎が軽快しても介護度が悪化する可能性が高く,そのような予後予測を念頭に置いて診療を行う必要がある.
著者
三田村 仰 田中 善大
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.105-114, 2014-05-31 (Released:2019-04-06)

発達障害児の保護者はしばしば、子どもに対する効果的な支援を求めて学校の教師に対し依頼や相談を行う(三田村,2011)。三田村・松見(2009)は保護者から教師への依頼・相談行動を円滑にするための発達障害児の保護者向け機能的アサーション・トレーニング・プログラム(以下、保護者向けプログラム)を開発した。本研究では、保護者向けプログラムの効果について、1)三田村・松見(2009)と比較し、より相互作用を重視した面談ロールプレイを用いて検討した。また、2)現役教員補助者を評定者として、保護者の依頼・相談によって実際の効果的な支援に結びつくかという課題達成の側面について、プログラムの効果を検討した。その結果、本研究での保護者向けプログラムによって、保護者による適切なタイミングでの感謝表現が増加し、聞き手である教師の支援の動機づけを一層高めることが示唆された。