著者
田中 良英
雑誌
宮城教育大学紀要 = BULLETIN OF MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION
巻号頁・発行日
vol.56, pp.121-137, 2022-01-31

近世ヨーロッパ世界においては、国家的枠組の強化に伴い、諸勢力間の軍事衝突やその危険性が増加したことにより、軍事的な専門性をもって国家に貢献する個人・家系としての「軍事ハウスホールド」の意義が一層高まることになった。その中には、軍事上の活躍を契機に社会的上昇を果たし、官界での影響力を獲得する者も存在したため、彼らの実態を解明することは、近世国家のエリート運用や権力構造全般を理解する上でも必須の課題となる。本稿は将来的な比較史的考察の材料として、18世紀ロシアにおけるピョートル1世期の軍事ハウスホールド、特に1722年時点で陸軍将官であった48名を対象に、その内訳や傾向性の追究を試みた。17世紀以降の軍事改革を受けて、当時のロシアでは非ロシア人の将官も全体の3割強を占めていたが、中央及び地方行政への関与、新首都サンクト=ペテルブルクへの定着度などについては、ロシア人将官との間に一定の差異も見られた。ただし個人差も大きく、所領の有無、親族関係など、さらに個人情報を集積して具体的に検討していく必要がある。
著者
清田 和也 武井 秀文 熊谷 渉 田中 大 浜谷 学
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.729-734, 2018-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
10

目的:救急搬送状況の改善のため,迅速かつ適切な救急搬送体制の確立に向けた施策を実施した。方法:①救急現場におけるタブレット端末を利用した医療機関検索,②搬送困難事案受入医療機関の確保,③MC医師による搬送先コーディネート,など。結果:重症以上傷病者搬送事案では,医療機関への照会回数4回以上の割合が平成23年の10.6%から,平成28年は4.1%と有意に減少した。また,平成29年に,搬送困難事案受入医療機関に要請が可能となる基準に達した事案のうち6号基準を適用して要請を行った件数は23.7%で,要請したうちの80.2%が受け入れられ,重症以上傷病者搬送事案では,現場滞在時間30分以上の割合が平成24年の16.7%から,平成28年は13.3%と有意に減少した。考察:新たな救急医療情報システムでは,救急現場において医療機関の受入状況がリアルタイムで確認でき,医療機関選定の有効なツールとなった。結語:今後,データの分析を進め,救急活動の質の向上とさらなる救急搬送受入体制の改善に役立てていく。
著者
河邊 明男 中野 和久 山形 薫 中山田 真吾 田中 良哉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.317a, 2015 (Released:2015-10-25)

【背景・目的】RAでは線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)が骨軟骨破壊の中心を担うが,RA由来FLS特有のDNAメチル化プロファイルは攻撃的表現型と関連する.今回,最近DNA脱メチル化酵素として同定されたTetファミリーの調節における炎症の関与を評価した.【方法】関節手術で得た患者由来滑膜とFLSを4~6継代で使用.Tet1-3発現をqPCR,WB,免疫染色で,5hmCの発現をDot blotで評価した.siRNAでTETノックダウン後にTNFで96時間刺激し,各種メディエーター分泌と表面抗原の発現,細胞移動度を評価した.【結果】RA滑膜組織ではOAとの比較で強いTet3発現を認めた.FLSにおいて,炎症性サイトカイン(TNF,IL-1L-6,IL-17等)はDNAメチル化酵素(DNMT)遺伝子発現を低下させた一方で,Tet3のmRNAおよび蛋白発現を増加し,5hmC発現を促進した.さらに,TET3 siRNAにより,TNF依存性のCCL2産生,ICAM-1発現,浸潤能等はほぼ完全に阻害された.【考察】炎症性サイトカインによる慢性刺激はDNMT発現低下による受動的脱メチル化だけでなく,Tet3の発現増加による能動的脱メチル化も促進することが明らかになり,滑膜炎症の持続はエピジェネティック異常を誘導し,FLSの攻撃的表現型を付与することで病態の悪化をもたらすことが示唆された.
著者
田中 皓介 森口 颯人 佐藤 俊一 寺部 慎太郎 栁沼 秀樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.37-45, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
6

土木の社会的な印象の悪化に対し,土木業界では「土木」という言葉そのものを避ける事例も見られる.特にそれが顕著なものとして,多くの大学において学科名称から「土木」という言葉がなくなりつつある.しかし,現状では名称の変更が,学科の人気や所属する学生の意識に対してどのような影響を及ぼすのか,実証的な分析は行われておらず,名称変更の是非について建設的な議論ができない状況となっている.そこで本研究では,その影響を明らかにするために,複数の大学の土木系の学科に属する学生に対するアンケート調査,入試データや在学生属性のデータに基づき,学科名称が及ぼす影響を実証的に分析する.分析の結果,土木改名によって,女性比率の向上,建築学科との混同,土木志望度の低下などが生じうることが明らかとなった.
著者
荒田 玲子 田中 景子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.14, pp.76, 2002

海藻由来のアクアミネラルは、無味、無臭で、ほとんどの調理加工品に常法で手軽に添加することが出来る天然ミネラル素材である。また、現代日本人に不足しがちなカルシウムとマグネシウムを同時に、その上安全に摂取できるミネラルでもある。また、ミネラルの強化だけでなくチョコレートや、天ぷら衣、パスタ類のおいしさの向上や調製を容易にすることを確認した。その中でチョコレートにおける添加区の優位性を確認した。特に、シード剤を使用しない手作りチョコレート菓子の調製時の調温(テンパリング)が容易であり、カカオ脂の結晶状態も優れている。官能検査においても、その口溶けの良さ、なめらかさ、好みにおいて添加区の方が評価が高かった。
著者
本岡 拓哉 田中 靖記
出版者
九州大学大学院人文科学研究院地理学講座
雑誌
空間・社会・地理思想 = Space, society and geographical thought (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.10, pp.57-83, 2006
被引用文献数
1

2005年, ドイツ・ボーフム大学地理学教室(ウタ・ホーン研究室)と日本・筑波大学土地利用研究室(大村謙二郎研究室), 大阪市立大学地理学教室(大場茂明研究室), 中国・上海同済大学の間で, 学部学生・院生の相互交流を目的としたサマースクールが開始された。2005年8月のドイツラウンド(対象地区 : ライン・ルール大都市圏)を皮切りに, 2005年9~10月には, 日本ラウンド(対象地区 : 大阪・東京大都市圏)が行なわれた。本稿は, そのうち2005年8月に開催された, ドイツ・ボーフム大学主催サマースクール(タイトル「ヨーロッパ大都市圏ライン・ルール地域における都市・地域発展」)の内容をレポートするものである。……
著者
田中啓爾著
出版者
古今書院
巻号頁・発行日
1949
著者
田中 博道 内田 祐子 篠崎 操 早川 弘之 松田 彰 宮坂 貞
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.787-790, 1983-02-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
21 32

6-Chloro-9-(2, 3-O-isopropylidene-β-D-ribofuranosyl) purine (1) was found to be a suitable substrate for the preparation of C-8 substituted purine nucleosides. Thus, upon lithiation of 1 with LDA and successive reaction with various types of electrophiles, the C-8 substituted products were obtained. The C-6 chlorine atoms in these products were readily replaced by an amino group, a mercapto group, or hydrogen, providing a facile preparation of 8-substituted adenosines, 6-thioinosines, or nebularines.
著者
IWATSUKI Yukio NAGINO Hayato TANAKA Fumiya WADA Hidetoshi TANAHARA Kei WADA Masaaki TANAKA Hiroyuki HIDAKA Koichi KIMURA Seishi 岩槻 幸雄 投野 隼斗 田中 文也 和田 英敏 棚原 奎 和田 正昭 田中 宏幸 日高 浩一 木村 清志
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学大学院生物資源学研究科紀要 = THE BULLETIN OF THE GRADUATE SCHOOL OF BIORESOURCES MIE UNIVERSITY
巻号頁・発行日
vol.43, pp.27-55, 2017-09

Annotated checklist of marine and fresh water fishes is reported from the Hyuga Nada area, including Miyazaki Prefecture, southern coastal area of Oita Prefecture and eastern coast of Kagoshima Prefecture, southwestern Japan. Such fishes are classified into 228 families, 680 genera and 1,340 species including 24 subspecies and 1 hybrid, consisting of natural inhabitants in the area, and invasive and introduced fishes as alien species out of Japan or from the other areas. Confirmation of each species on identification is based on voucher specimens kept in Miyazaki University and other museums, photographs of fishes taken in the area, confirmed photographs in websites and references formerly reported before August 2016. Fish occurrence tendency by our gross observation is noted at each species.
著者
菊池 武彦 田中 一成 齊藤 寿幸
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.457-466, 2006-09-25 (Released:2009-08-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

東京電力(株)が過去40年以上にわたって実施してきた送電設備に関する着氷雪対策技術の状況についてまとめた.本報告書では着氷雪現象のうち特に樹氷型着氷と湿型着雪を対象とした.現象の把握や送電設備への機械的影響,その影響を軽減するための対策技術について述べる.観測データは,現地での有人による直接的な調査や実規模試験線などを用いた調査結果である.着氷雪現象の物理的理論や数値解析,対策技術(偏心重量錐と回転自在型スペーサ,ルーズスペーサなど)の基本的考え方は,各検討段階において学識者やメーカ各社と協働で蓄積した.それらの技術が現実的に有効であるか否かについて,現地で自然発生する着氷雪や強風に曝される実規模試験線(高石山試験線,最上試験線)を用いて観測した.観測の結果,送電線への着氷雪に伴う荷重の増加量や振動抑止装置の効果を再現性あるデータで示すことができた.これらの成果は,現在運用されている送電設備に適用され,安定運用に貢献している.
著者
隈元 庸夫 世古 俊明 田中 昌史 信太 雅洋 伊藤 俊一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.371-375, 2014 (Released:2014-07-03)
参考文献数
8
被引用文献数
3

〔目的〕骨盤側方移動運動中に骨盤固定による受動抵抗をうけることが移動方向と反対側の中殿筋活動へ及ぼす影響を異なる立位姿勢条件で比較し,閉鎖性運動連鎖での股関節外転筋トレーニング法の筋電図学的根拠を得ることとした.〔対象〕健常成人男性20名とした.〔方法〕左方向に骨盤を側方移動させる運動課題を両股関節内旋位・外旋位・中間位の3条件,右下肢への荷重を最大にした時と体重の半分の大きさにした2条件で実施した.左右の中殿筋,大内転筋を導出筋とした.〔結果〕股関節内旋位・最大荷重での運動課題実施時に右中殿筋活動量が最も高くなった.〔結語〕立位骨盤固定位で骨盤を側方へ移動させる運動は片脚立位が困難でも立位で実施可能なCKC外転筋トレーニングとなることが筋電図学的に支持された.

2 0 0 0 IR 侍・凡下考

著者
田中 稔
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.p499-529, 1976-07

個人情報保護のため削除部分あり中世における社会身分として、侍・凡下の別が行われていた。現存する史料の上からは、この区別の実態がもっとも明瞭なのは検断沙汰・服装の面においてである。中でも犯罪の嫌疑をかけられた時、凡下は拷問されるが、侍は拷問されないのが当時の通例であった。この侍の拷問免除規定の法源は公家法の有官位者に対する免除規定にあるようで、侍身分は律令制的官位を帯することができる者と系譜的に密接な関連を有するといえる。鎌倉幕府法においても侍・凡下の区別は厳格になされており、この侍もまた有官位者と関連をもつようであるが、郎等は侍とは認めていない。しかし在地で侍・凡下の身分差をいう場合には郎等も侍に入っているようである。これらの侍・凡下の具体的な在り方を通じて、中世身分制度の解明の手懸りを探りたい。There was a status discrimination between the Samurai and the Bonge in the Middle Ages. According to the extant documents, it was in Kendansata (検断沙汰 the code of criminal procedure) and in the costume of those days that the discrimination was most evident. For example, as a rule, the Bonge was tortured when accused as a suspected criminal, but the Samurai was exempted from the torture. This privilege given to the Samurai seems to have originated in the privilege given to the person of official rank in the Kuge-law 公家法. So it may be said that the Samurai had a close connection genealogically with those who had been allowed the official ranks in Ritsuryō 律令 system. Then, when the status discrimination between the Samurai and the Bonge becomes an issue, it must be noticed that the Rōtō 郎等 was not included in the Samurai in the law of the Kamakura shogunale 鎌倉幕府, nevertheless, in reality in his residence it seems that the Rōtō was included in it. This article, by the consideration of the Samurai and the Bonge, aimes at finding a clue that should make clear the status system in the Middle Ages, especially in the days of the Kamakura shogunate.
著者
田中 乙菜 越川 房子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.15-27, 2010-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、自己陳述を用いて、中学生が学校対人場面で考えている内容を明らかにし、自己陳述と心理的ストレスとの関係性を検討することである。対人ストレス場面6場面、全60項目からなる中学生の学校対人ストレス場面における自己陳述2次調査票が作成され、914名の中学生を対象に実施された。因子分析の結果、ポジティブな自己陳述は、状況を肯定的に評価するもの、ストレス状況に対処するもの等を中心に構成されており、ネガティブな自己陳述は、自己・他者・状況を否定的に評価するもの、不安感情を表したもの、自己の責任を回避するもの等を中心に構成されていた。また、自己陳述の頻度の高低によるストレス得点の差を∫検定で検討した結果、自己陳述の頻度の高い群が低い群よりもストレス得点が有意に高く、自己陳述の内容にかかわらず、自己陳述を行う頻度の高い人がストレスも高いことが示された。