著者
田中 沙耶 江崎 芳子 谷藤 香菜江 藤本 真衣 波田 善夫 西村 直樹 松尾 太郎 小林 秀司
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;近年,ニホンジカ <i>Cervus nippon</i>(以下,シカとする )の個体数が全国的に増加しつつある.これに伴い,各地で農林業被害や自動車・鉄道との衝突事故が増加し,自然植生への影響も危惧されている.対策として,これまでは個体の直接駆除や防止柵などによる排除が行われてきた.しかし,猟友会や農山村の高齢化などの問題から,十分な個体数の駆除ができているとは言えない.また,防止柵についても,設置費や維持費がかかること,人の移動まで阻害することなど,さまざまな問題が生じている.そこで岡山理科大学動物系統分類学・自然史研究室では,シカが心理的な圧迫を受けることで,シカ自らが忌避するような移動阻害構造体 (以下,構造体と表記 )の開発を一昨年から試みている.<br>&nbsp;今回は,岡山理科大学内で飼育しているメスの成獣個体2頭を用いて,シカが構造体上を通過する際に,どのような行動がみられるのかを観察した.試験個体は 2011年に岡山県美作市の山中で捕獲されたもので,野生状態での実験結果に近づけるため,山の中で隔離して飼っている.過去のデータより,構造体上で,静止・構造体に鼻先を近づける・檻のフェンスに鼻先を近づけるといった行動や,構造体を前に引き返す・セルフグルーミングをするなどといった行動がみられることがわかっているが,これらの行動と,構造体を設置していない場合にみられる行動を比較することにより,構造体がシカにどの程度の心理的圧迫を与えているか分析した.また,構造体設置による行動の変化の度合いが個体によって異なることや,慣れによってシカの行動が変化することが考えられる.このことより,構造体を通過する際,どのような行動変化がみられるかを,構造体設置後から継続観察することで,行動の変化も調査することにした.そしてこれらのデータを分析し,構造体はどの程度シカに心理的圧迫を与えるのか,どれほどの期間シカに効果があるのかについて評価した.
著者
横山 友子 杉本 吉恵 中岡 亜希子 田中 結華 高辻 功一
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.24-33, 2014-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
30

洗浄剤を使用せずナノミストシャワーを用いた洗髪 (NMS) の有用性について,洗浄剤を用いた洗髪 (TS) と比較するため,健康な成人35名 (31±9歳) を対象に,NMSとTSの両方を実施した.有意水準は5%とした. ATP値では,NMSは洗髪前7381±7171RLUから洗髪後4317±3236RLUに,TSは7763±9977RLUから5921±1782RLUに有意に低下した.皮脂量では,NMSは洗髪前66±30から洗髪後11±9に,TSは93±2から4±2に有意に低下した.ATP値と皮脂量ともに両洗髪間に有意な差はなかった.洗浄感は,両洗髪間に有意な差はなかったが,NMSは「音」「爽快感」「におい」においてTSより有意に劣っていた.所要時間は,TSが8分45秒±1分22秒に対し,NMSは3分52秒±34秒で有意に短かった.使用湯量は,TSが18.5±2.2Lに対し,NMSは4.4±0.8Lで有意に少なかった. 以上より,NMSはTSと同程度の洗浄効果があり,少量の湯と短時間で洗髪できるため臨床での有用性が示唆された.
著者
田中 美保
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.261-277, 2019 (Released:2019-03-23)
参考文献数
24

インターネットの普及やスマートフォンの広まりなどデジタル化の進展により、大手新聞メディアは変革を迫られている。読者がニュースに接触する手段は多様になり、そこに所属する記者も、デジタル空間に対し価値ある情報を発信していくための能力やスキルを身につける必要がある。本論文では、デジタル化に対応する新聞メディアの組織改革をプログラムととらえ、P2Mのプロファイリングマネジメントの手法を用い、新聞メディアの記者からネットメディアの記者、編集者となった5氏へのインタビューを通じて、デジタル化時代の情報発信者について考察した。その結果、顧客との接点が変化したデジタル化時代では、読者の共感や支持をつかみ、読者とのつながり持つことが重要であることがわかった。これらのインタビューの結果から、新聞社の改革の要件を説明する。
著者
東 剛志 菅原 民枝 中田 典秀 山下 尚之 三野 芳紀 田中 宏明 大日 康史
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.226-232, 2014-04-20 (Released:2014-05-13)
参考文献数
42
被引用文献数
1

本研究は,下水処理場に流入する流入下水中のインフルエンザ治療薬のタミフル及びリレンザの濃度をモニタリングすることにより,ある地域におけるインフルエンザ患者数を把握することが可能であることを示した最初の報告である.まず,2010-2011年及び2011-2012年におけるインフルエンザの流行シーズンに,京都市において流入下水中のタミフル及びリレンザの濃度を継続モニタリングした結果に基づいて,同市におけるインフルエンザ患者発生数を推計した.次に,処方せんに記載された医薬品情報の集計を元に疾病の流行を把握する,薬局サーベイランスによるインフルエンザ患者数との対応性について比較検討した.その結果,両者の相関関係が高く増減推移や患者数に良い一致をみた.これらの結果は,下水処理場に流入する薬剤を基に特定疾患の患者数の推定を行う手法が,新しい疫学調査法として有効であることを示唆している.
著者
辻野 綾子 田中 則子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.245-248, 2007 (Released:2007-07-11)
参考文献数
12
被引用文献数
14 8

立位での前方リーチ動作の際には,前足部への荷重が増大し,足趾の支持が重要になると考えられる。本研究では健常女性19名を対象とし,立位での足趾圧迫力の大きさと前方リーチ時の足圧中心(Center Of Pressure:COP)位置との関係を検討した。その結果,10°前方傾斜リーチ(股・膝関節,足部規定あり)条件と最大前方リーチ(規定なし)条件において,母趾圧迫力と最終肢位保持時のCOP位置には有意な正の相関が認められ,最大前方リーチ条件では母趾圧迫力のみならず,第2~5趾圧迫力と最終肢位保持時のCOP位置においても有意な正の相関が認められた。これらの結果より,前方リーチ保持時には足関節底屈力だけでなく,前足部や足指の底屈方向への力発揮も重要であることが示唆された。
著者
田中 信彦
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産土木 (ISSN:03884872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.37-41, 1987 (Released:2018-11-30)
参考文献数
9
著者
岩切 龍一 田中 聖人 後藤田 卓志 岡 志郎 大塚 隆生 坂田 資尚 千葉 俊美 樋口 和秀 増山 仁徳 野崎 良一 松田 浩二 下野 信行 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.1370-1396, 2018 (Released:2018-07-20)
参考文献数
160
被引用文献数
1

日本消化器内視鏡学会は,内視鏡診療ガイドライン作成作業の一環として,消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドラインを作成した.本邦と欧米先進国では消化器内視鏡医療の環境が異なる.欧米先進国では消化器内視鏡の施行は,ほぼ専門施設に限られ,厳格な洗浄・消毒の既定が遵守されている.本邦では小規模クリニックでも消化器内視鏡が行われ,年間に行われる消化器内視鏡数は膨大な数になる.内視鏡の洗浄・消毒法も医療機関によって差が認められるのも事実である.洗浄・消毒に関しての根拠は,エビデンスが乏しいのも事実であるが,内視鏡医療の発展のためにも消化器内視鏡の洗浄・消毒の標準化が必要である.
著者
田中 千都 四本 かやの 田中 究 橋本 健志
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.189-197, 2015-04-15

要旨:強迫性障害の中でも重度の強迫性緩慢は,薬物療法や行動療法が十分な治療効果を示さず,社会的孤立や著しい生活機能の低下につながると言われている.症例は強迫性緩慢が著しくADLに長時間を要し言語的コミュニケーションが困難な若年女性であった.機能的自立度の改善を目的とし,生活に困難をもたらしているADLと対人面の具体的な活動に焦点化し能動性の改善を図る作業療法を行った結果,強迫性緩慢は軽減しADLと対人面は改善した.また,その後5年のフォローアップ期間も症状再燃することなく機能は保たれ地域生活を送っている.以上から,重度強迫性緩慢の患者には遂行困難な活動に対して能動性の改善を図る作業療法が有用であると示唆された.
著者
田中 恒夫 真次 康弘 松田 正裕 石本 達郎 香川 直樹 中原 英樹 福田 康彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.1477-1482, 2006-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

目的:脳卒中既往患者における開腹手術のリスク評価を検討した.方法: 2002年1月から3年間に脳卒中で入院歴を有し,開腹手術を行った77例を対象とした.手術のリスク評価のために術後合併症のあり群(n=33)となし群(n=44)に分けて,術前因子,血液検査,手術因子, POSSUMの比較を行った.結果:入院死亡は4例(5.2%)であった.術前因子,検査では年齢,脳出血後,呼吸器障害あり, performance status 2以上,アルブミン値,コリンエステラーゼ値の6項目で有意差が認められた.手術因子では緊急手術と出血量で, POSSUMでは3項目で有意差が認められた.結論:脳卒中既往症例の開腹手術における術前リスク評価の指標として, performance statusとPOSSUMは有用であった.
著者
金城 慎也 田中 創 副島 義久 西川 英夫 森澤 佳三
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.102, 2009 (Released:2009-12-01)

【はじめに】 肩関節周囲炎患者において,肩関節の内外旋や前腕の回内外の可動域制限が肩関節挙上角度に影響を及ぼすことは先行研究により示唆されている.また,臨床場面においても,前腕の回内外可動域制限を来している症例が多い.しかし,それと同時に手指機能が不良な例も多く,特に母指の伸展,外転の可動域制限を来している症例をよく経験する.母指の伸展,外転の可動域制限は末梢からの運動連鎖として前腕の回内,肩関節の内旋を余儀なくされ,肩関節挙上制限の一因子となると考えられる.そこで今回,肩関節周囲炎患者に対して,母指可動域と肩,前腕可動域の関係性について検討したので報告する.【対象及び方法】 対象は保存的加療中の一側肩関節周囲炎患者12名(平均年齢54.25±6歳)とし,自動運動での肩関節の前方挙上(以下、前挙),外旋,前腕回内外,母指橈側外転,伸展の可動域を計測した.得られた計測値をもとに健側を基準として各計測値の左右差を求めた.統計学的処理にはウィルコクソン符号付順位和検定を用い,得られた値から肩,前腕,母指の可動域制限の関係性を調べた.【結果】 統計処理の結果,肩関節前挙と母指橈側外転(p<0.05),肩関節前挙と母指伸展(p<0.01),肩関節外旋と母指橈側外転(p<0.05),肩関節外旋と母指伸展(p<0.01),前腕回外と母指伸展(p<0.05),母指橈側外転と母指伸展(p<0.05)に有意な正の相関が認められた.【考察】 研究結果より,肩関節周囲炎患者において,肩関節前挙制限には母指橈側外転制限と伸展制限,肩外旋制限には母指橈側外転制限と伸展制限,前腕回外制限には母指伸展制限との関係性が認められた.肩関節前挙に関して肩外旋可動域制限が多大な影響を及ぼすことは知られており,上肢の運動連鎖において,前腕の回外運動には肩外旋として運動が波及することが言われてる.今回の研究結果から,遠位関節からの運動連鎖として,母指橈側外転と伸展が前腕の回外運動に影響していることが示された.その背景として,遠位橈尺関節から回外運動を波及させる為には,筋の起始停止の走行から長母指外転筋と短母指伸筋が関与していると考えられ,それらの機能が破綻することで前腕回外制限が生じると考えられる.これらのことから,肩関節周囲炎患者の挙上制限に対しては前腕,母指の影響まで考慮してアプローチしていく必要性が示唆された.
著者
田中 拓道
出版者
岩波書店
雑誌
思想 (ISSN:03862755)
巻号頁・発行日
no.1012, pp.81-102, 2008-08
著者
西田 功 田中 孝三 上原 輝久 矢場田 武 高野 成
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.189-196, 1985-02-01 (Released:2009-06-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1

No. 2 blast furnace in Kobe Works was blown in on February 4, 1981 and because of the economic conditions it was blown out on April 22, 1983. Since its working period was very short (about 2.2 years), it was banked with the expectation of blowing in after several years.The methods employed were :(1) to lower the stock line down to just above the level of the SiC brick lining (lower shaft) with the burden being replaced by coke, (2) to cool the furnace by N2 gas, (3) to preserve the furnace brick under N2 atmosphere.Two samples of SiC brick at lower shaft part were collected just after and at 8 months after blowing out, and then they were investigated. It was found that there was no impairment in the SiC brick during this 8-month period.Hot stoves were cooled by the natural cooling method with keeping airtight and their cooling periods were about 3 months. After cooling them, the observations inside them were done and it was confirmed that the damage of the brick was very little, so the reoperation of them would be of no trouble.
著者
田中 一大
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.e00020, 2017 (Released:2019-04-27)
参考文献数
42

生体を構成する細胞は,さまざまな物理的刺激(メカニカルストレス)に応答して,増殖・分化・形態形成を制御する。近年,物理的刺激が感知された後の応答分子として,Hippoシグナル経路およびその標的因子である転写共役因子YAP/TAZが同定された。Hippoシグナル経路・YAP/TAZは,発生過程で臓器サイズを決定する重要な役割を担う一方で,腫瘍の悪性化にも深く関連している。肺癌においては,YAP/TAZが細胞外基質の硬度に応答して細胞増殖に寄与している可能性が高い。それに対し,悪性中皮腫においてはHippoシグナル経路の破綻が基軸となり,YAPの恒常的活性化を引き起こしている。YAP/TAZの活性化は,細胞外基質の再構築にも関与し腫瘍進展を促進している。
著者
田中 瑛津子
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.12-28, 2013-06-18 (Released:2018-01-31)
被引用文献数
3

中学2年生を対象にした授業場面において,興味の二つの側面であるポジティブ感情と価値の認知に着目し,興味の深化を促すための介入の効果を検討した。本研究では理科の授業を扱うことから,価値の中でも,「学習内容は日常生活と関連がある」という認識である日常関連価値の認知に焦点を当てた。実験1では,授業の導入時に意外な結果が生じる実験を提示してポジティブ感情を喚起し,「これから学ぶ内容を埋解すれば結果を説明できるようになる」と貝体的な達成日標を示して積極的授業参加を促進した。すると,日常関連価値の一般化強調の効果が引き出されることが示された。実験2では,日常関連価値への介入には,生徒の意味理解志向による調整効果があることが示された。すなわち,日条例の提示と日常関連価値の一般化の強調だけでは意味理解志向の低い生徒には不十分であることが示された。日常場面の問題を自分で解き説明する活動を加えることで,意味理解志向の高低に関わりなく,日常関連価値の認知が効果的に高まることが示唆された。