著者
田中 淳 宇井 忠英
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

北海道駒ケ岳ならびに樽前山は、日本の活火山の中でも最も活動的な火山であるが、噴火の規模や推移は多様であり、迅速な避難が必要であることから、防災意識の涵養が求められる。そこで、住民意識調査と地域リーダーへの面接調査を実施した。駒ヶ岳調査は、駒ヶ岳周辺4町の住民から郵送法で439票(回収率=43%)の回答を、樽前山調査は、苫小牧市内危険の高い地区と低い地区2地区の住民から211票(回収率=42%)の回答を得た。地域リーダーへの面接調査は、12人を対象とした。主な知見を示すと以下の通りである。1.この15年間で防災意識も防災情報行動も向上している。2.駒ヶ岳小噴火ならびに2000年有珠山噴火への関心は高く、大半の人が周囲の人と話題にしているが、職場や同業者で話題になる率が高い。3.防災教育上の課題として、避難の判断を行政に依存していると思われる点、前回の噴火パターンへの拘泥や誤った周期説が流布してしまっている点等が見いだされた。4.防災情報行動にとって重要なのは、単に危険性を認知させたり、不安を高めるだけではなく、関心を高めることが必要である。5.防災情報行動は、噴火への関心の程度といった個人変数だけではなく、地域要因も関係していることを示している。6.地域凝集性の高い地区では、資源動員論でいうフレーム増幅戦略が、未形成な地域では、フレーム拡張戦略が採用されている。
著者
斎藤 正徳 井宮 淳 島倉 信 亀井 宏行 田中 秀文 奥野 光
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

地磁気のベクトル計測が行える探査装置として、「3軸グラジオメータ」を世界に先駆け開発した。3軸グラジオメータは、1インチ径のリングコアを用いたフラックスゲート型センサを3組直交配置した磁力計を、垂直方向50cm離して1本の支持棒に取り付けたもので、出力は磁気勾配3成分(上下のセンサの差出力)と、上方のセンサで捕らえた地磁気3成分である。センサ高は、支持棒への取り付け位置を調整することで、任意に変えられる。測定は、指示棒に取り付けられた水準器で垂直度を確認しながら行う。垂直軸周りのセンサの回転は、上方のセンサからの地磁気3成分を用い、補正することもできる。感度は磁気勾配で、1nTである。本体には、4,000点での測定値を記憶できるメモリを備えており、RS-232Cインターフェイスを介して、コンピュータにデータ転送できる。バッテリ-駆動で、約8時間測定可能である。この3軸グラジオメータを用い、夷森古墳(宮城県宮崎町)、根岸遺跡(福島県いわき市)、大戸古窯跡群(福島県会津若松市)、田尻遺跡(群馬県子持村)、猿田窯跡(群馬県藤岡市)、大寺山洞穴(千葉県館山市)、石ノ形古墳(静岡県袋井市)、大知波峠廃寺(静岡県湖西市)、象鼻山1号墳(岐阜県養老町)、稲荷塚古墳(京都府長岡京市)、久米田貝吹山古墳(大阪府岸和田市)、行者塚古墳(兵庫県加古川市)、七日市遺跡(兵庫県春日町)、東山古墳群(兵庫県中町)、岩戸山古墳(福岡県八女市)、西都原古墳群横穴墓(宮崎県西都市)の各種遺跡において探査実験を行い、本装置の有効性を確認するとともに,本装置をもちいた探査アルゴリズムを確立した。
著者
田中 嘉雄 上野 正樹 濱本 有祐 木暮 鉄邦
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

Tissue engineering chamber(以下、TEC)を再生の場として、動脈血管束,人工真皮, FGF-2、多血小板血漿(PRP)を併用して、独自の栄養血管を有した軟組織を再生する方法を検討した。実験群は、コントロール群、非活性化PRP群、活性化PRP群、活性化PRP群+ FGF-2群、非活性化PRP+ FGF-2群の6群(n=5)に分け、再生組織の量、器質化の成熟度、血管新生について検討した。結果:血管付軟組織の再生組織量はcontrol群1. 13±0. 33cm^3、非活性化PRP群1. 79±0. 35cm^3、活性化PRP群1. 48±0. 22cm^3で、非活性化PRP群がcontrol群に比し有意差を認めた(p<0. 05)。人工真皮の器質化も非活性化PRP群で進んでいた。TECを用いた血管柄付き軟組織再生において、活性化PRPよりも非活性化PRPが有用であることが判明した。
著者
田中 克史 米竹 孝一郎 木村 浩
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.(1)球状のシリカ粒子、板状のベントナイト粒子/水系コロイド分散系に関して、レオロジー挙動を検討した。板状粒子系の場合、塩添加にともなって粘度が減少し、さらに高塩濃度では増加する結果が得られ、球状粒子系との相異が認められた。(2)徹底的な脱塩・脱水処理を施した板状のベントナイト、ヘクトライト/有機溶媒コロイド分散系では、粒子分散は分散媒の誘電率増大によって安定化する傾向が得られ、電気二重層が水系と比較して極めて薄いことが考察された。2.(1)フラーレン混合物/ポリスチレンプレス複合膜では、極めて良好な粒子分散、熱安定が得られた。(2)酸化チタン/セルロース誘導体等方水溶液系では、溶媒除去による固定化の初期過程が偏光顕微鏡観察及び動的粘弾性計測により高感度で検出された。後者では、測定治具端部の局所的な挙動を反映したと考えられる。また、電気特性計測によって固定化の後期過程が良好に検出された。大振幅正弦波電場下での固定化試料では、セルロース誘導体のらせん軸は、電場方向と垂直な方向に一軸的に配向する傾向が得られ、粒子の分散は良好である結果が得られた。3.(1)反応性シリコーン、カーボンナノファイバー分散系等について、熱特性、レオロジー特性等を検討した。シリコーン系の硬化過程は、電気的測定よりはレオロジー測定によって、より良く検出される結果が得られた。(2)上記分散系における電場配列を行った結果、分散系における見かけの電気特性との間に相関関係が得られ、その場でのモニタリングに有効である結果が得られた。(3)セルロース誘導体異方性水溶液、多層カーボンナノチュ-ブ分散系において、せん断及び正弦波電場印加を行い、電場配向挙動を検討した。観察初期に与えるせん断方向と電場方向の関係によって、電気的な特性に差異が認められたが、より詳細な検討を行う必要があると考えられる。
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男 亀田 弘行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

まず、時間帯ごとの総数死者数および負傷者数の時間変化については、NHKの生活活動調査結果による在宅率などを用い、かつ阪神・淡路大震災のデータを適用して、6つの原因によるものを推定した。その結果、各原因別に時間帯ごとのピークが見出せたほか、被害者総数としては、午前8時前後に最大のピークがあるほか、昼食時や夕方のラッシュアワー時にも大きくなることが見出され、また、兵庫県南部地震が起こった午前5時46分は決して幸運な時間帯でないことが明らかとなった。ついで、被害極限の方法については、間接被害に大きく分けて経済被害と人的被害があり、後者は人命の社会的価値の喪失として位置付けられることを示し、総被害学の評価方法を提案することができた。まず、経済被害としては、阪神・淡路大震災による兵庫県の電力使用料とGRPとの関係から、およそ2兆円と推定され、現象的には復興がすでに終わっていることを示した。また、人的被害の定量化では、平均寿命とGRPとの相関と交通事故による死者、重傷者、軽傷者への保険金支払いなどのコストの比較を用いて、阪神・淡路大震災を解析したところ、およそ2兆円になり、かつこの瞬間的な影響が18年間継続し、その間の総被害額がおよそ10兆円に達することを見出した。したがって、人的被害を軽減することが総被害額を大きく減らすことにつながるという論理が証明され、被害極限には自主防災組織による人命救助の役割が大きいことを見出した。これらのデータをGISに載せ解析することを可能としたが、これまでの町丁目単位ではなく各家屋単位での計算が可能なように次世代GISを開発することを試み、その構築に成功した。これによって、被害者数などを推定しようとすれば、現状の地震動による地盤のゆれの特性(加速度や速度)の評価がまだまだ改良の余地があることを見出した。
著者
田中 隆充
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.56, pp.154-155, 2009-06-20

地域には観光ガイドブックやインターネットの情報等にはない、地元の人にしか分からない由来や体 的な歴史がある。それらの情報は現場にいかなければ分からないことや住んでいなければ分からない情報も多々ある。これらの情報は本来、代々伝えていくことが重要であるが、これらをアーカイブ化し、共有することも大切な要素と考えた。また、その情報の貴重性を伝えるために、情報の演出の仕方を考える必要がある。そこで、その場にいてその場の過去の映像や音声を体感することで、その地域の特色や本質的な歴史観を見いだすことができるのではないかと考えた。そこで、それらを具体的に示す方法の一つとして、携帯電話のQRコード読み取り機能を用いて、使い手がインターネットに手軽にアクセスし、そこから過去の画像等を携帯電話側に読み込ませることで、携帯電話の画面やイヤホンから表示できるコンテンツを実 的に制作した。本研究においては岩手大学構内に 力所のQRコードパネルを2006年度から2007年度の 年間に設置し基礎的な実 を行った。そして、2008年度は国立公園に指定されている岩手県浄土ケ浜に設置することで、観光の最前線での試みを行い始めた。
著者
田中 康夫 井上 庸夫 鈴木 雅一
出版者
独協医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

誘発耳音響放射(OAE)に関する私共の行なってきた研究(Tamaka et al.,1988他)からこの音響現象が騒音難聴などの内耳障害程度の指標として役立つことや,更にそれがdip型聴力障害の易傷性と関係を有していることが示唆されてきた。本研究では実際の騒音環境にある対象で耳音響放射の測定を行ない,音響易傷性の個体差について検討を行なった。対象としてF中学校女子吹奏楽部員33名およびS自動車部品工場勤続2年従業員16名を選び,聴覚検査とOAEの測定を行なった。騒音測定装置を用いて解析した作業場の騒音レベルは90.0〜97.0 dBLcegであった。1). 中学吹奏楽部員33名64耳のうち,41耳(63.5%)に自記オ-ジオグラム上のdip型聴力損失を認めた。OAEの持続が6ms以上であった。cーOAEは36耳(56.3%)に認められた。cーOAE(+)耳群のうちdip損失のあった耳は80.6%なかった耳は19.4%であった。dip損失のあった群のうちcーOAE(+)耳は70.7%,cーOAE(-)耳は29.3%であった。2). 工場従業員16名32耳のうち,16耳(50.0%)にdip型聴力損失が認められ,20耳(62.5%)にcーOAEが観察された。cーOAE(+)20耳のうち,13耳(65.0%)にdip型損失あるいは高音急墜がみられたが,7耳(35.0%)には障害が認められなかった。cーOAEが(+)であり,かつdip損失を伴っていた耳群のうち8耳は,22ケ月前の調査で,全例がcーOAE(-)であり,そのうち7耳はdip損失も伴っていなかった。今回の中学校における調査結果は以前に行ったH中学校で得られた成績と同様に,OAEの持続する耳と音響易傷性の関係を支持するものであった。工場における調査では,両者の関係を実証する統計的に有意な結果は得られなかった。工場の調査ではcーOAEが素因ではなく結果である可能性が示唆され今後,作業環境,耳栓装用,および検査前休養時間などの条件をさらに厳密に一定化して検討する必要があると考えられた。
著者
田中 康夫 岡田 真由美 井上 庸夫
出版者
独協医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

騒音の曝露によって起る聴器障害の程度の個体差は大である。この個体差が何に基因するかは未だ不明である。誘発耳音響放射(OAE)は内耳の微小機械系振動の外耳道への投影と考えられており、騒音難聴の初期像であることの多いdip型聴力損失との関係が示唆されている。本研究ではそのような関係の有無を実際に騒音環境下にある中学校女子吹奏楽部の部員および、板金工場の従業員に対し動特性分析器および現有の聴力検査機器を用いて施行したOAEならびに聴力の測定結果より検討した。1.吹奏楽部員62名118耳の調査結果、1)dip型聴力損失を有する耳は純音オ-ジオグラム上は10.2%に存在し、連続自記オ-ジオグラム上では59.4%に認められた。2)持続が6ms以上であったC-OAEは50耳42.4%に検出できた。3)純音オ-ジオグラム上にdipのある耳は、C-OAE(+)耳で16.0%、C-OAE(-)耳で5.9%であった。連続自記オ-ジオグラム上でdipのある耳はC-OAE(+)耳で82.0%、C-OAE(-)耳で34.8%であった。2.板金工場で騒音下作業7年以上の従事者34名52耳の調査結果、1)連続自記オ-ジオグラム上で高音急墜型の聴力損失は2耳3.8%dip型聴力損失は34耳、65.4%に見られた。2)C-OAEは17耳32.7%に認められた。3)C-OAEのみられる耳において高音急墜型およびdip型聴力損失を示す耳の割合は82.4%、C-OAEのない場合には62.9%であった。C-OAEをもつ耳の頻度は正常聴力群で3.0%、dip型聴力損失群および一側dip型健側群で約90%であることを以前に報告した。今回の実際の騒音環境下での調査においても、主として騒音障害の初期像であるdip型聴力損失の発生頻度はC-OAEをもつ耳で高いことが示された。C-OAEは内耳の微小機械系の可動性に関係があるので、音響受傷性の個体差の一因子と考えられ、易傷性の予知に役立つ指標といえる。
著者
田中 貴紘 松村 京平 藤田 欣也
出版者
The Japanese Society for Artificial Intelligence
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.683-693, 2010
被引用文献数
2 2

In this paper, we proposed the user uninterruptibility estimation method based on focused Application-Switching (AS) during PC work for establishing information display timing control scheme with less intelligent activity disturbance for users. At first, we collected and analyzed the PC operation records and the subjective uninterruptibility of users. From the analysis, we selected features in AS timing that affect user uninterruptibility. Then, we provided the estimation method based on co-occurring features that are observed in AS timing, and confirmed the availability of our method.
著者
田中 毅弘 後藤 滋
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-6, 1991-10-25
被引用文献数
1

第1報では,遠隔監視システムの概要,解析データと調査概要,警報発生の状況における建物用途・規模別,月・曜日・時刻別,原因・設備別などの解析を多面的に行い,定性的な傾向と特徴を明らかにした.そこで,本報では,初期故障の概念とその評価方法を提案し,具体的な事例として,既報のフィールドデータのうち,幾つかの建物を対象に初期故障の解析を行い,初期故障における発生推移状況,原因・設備別の解析結果を示す.これらの結果は,遠隔監視システムによる建築設備における初期故障の取扱いについての一つの提案と実証を行うものである.
著者
荻野 弘之 大橋 容一郎 田中 裕 渡部 清 勝西 良典 谷口 薫
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

過去4年間の研究を集約して以下のようなまとめを得た。(1)西洋古代哲学の領域では、実践的推論の結論を字際の行為に媒介する「同意」の概念から派生した「意志」に相当する「われわれのうちにあるもの(如意)」(epi hemin)に関して、後期ストア派、特にエビクテトスとマルクス・アウレリウスにおける展開が跡づけられた。これについては07年度末までに、単行本として成果の一端を刊行する予定。(2)アウグスティヌスの内面的倫理思想の分析として、正戦論の祖とされる聖書解釈の検討により、中世盛期スコラ学の自然法思想との相違が明らかになった。これらについては単行本の形ですでに刊行された。(3)同時にこの概念が、仏教的な「如意」の思想として近代日本思想史に接続する状況を跡づけた。その結果、西川哲学を、孤立した(独創的な)日本独自の思想としてのみならず、明治期の西洋哲学の受容史のうちに置き据えることにより、これまで仏教、特に禅との比較でのみ論じられがちであった西田哲学を、キリスト教の受容史の視点から読み直すという新しい視座を獲得しつつある。これについては渡部によって引き続き研究が継続される。西田に関しては新カント派を経由するかたちで大橋によって、また東西の比較霊性史の見地から田中によっても積極的な提題があり、とりわけ「自覚」と「意識」「人格」の概念的な結びつきが改めて問われることになった。清沢満之の新しい全集の刊行もあって、今後はストア倫理学と仏教思想、キリスト教修道思想の微妙な関係を歴史的、構造的に問題にしていく可能性が開かれつつあることは大きな前進といえよう。(4)残された課題も依然として多い。そのうちでも、近年英米圏の哲学において「後悔」「自信(自負)」といった感情の分析が、モラル・サイコロジーの手法によって、また哲学史研究としても隆盛を見せている、こうした研究動向を睨みながら、従来の思想史の読み直しがどういった可能かについては、今後の課題でもある。
著者
田中 開 大澤 裕 川出 敏裕 寺崎 嘉博 井上 正仁 佐藤 隆之
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究において、我々は、近時問題化している銃器犯罪に関する諸問題につき、実地調査、資料収集、研究会などを行い、その成果のいくつかを公表した。研究した項目は、(1)少年犯罪と銃器、(2)銃器犯罪と民間ボランティア活動、(3)銃器犯罪について今後導入・活用されるべき捜査手法(4)情報提供者や証人の保護、(5)被害者や被害関係者の保護、(6)警察官による銃の使用、(7)諸外国における銃器情勢、であった。とりわけ、少年犯罪と銃器という問題を研究したきっかけは、本研究を開始した1999年4月に、アメリカ、コロラド州にあるコロンバイン・ハイスクールにおいて、少年が銃を乱射して多数の生徒や教師を殺傷するという事件が発生したことであった。少年による銃器を使用した凶悪犯罪は、近年における銃器の一般人への拡散傾向に照らすと、わが国においても、将来的には起こりうる重大な問題である。また、研究の過程で、(a)銃器犯罪の撲滅に向けて、民間ボランティア活動などの各種防犯・啓発活動との連携などによる銃器犯罪対策を考えていくべきこと、(b)おとり捜査、コントロールド・デリバリー、通信傍受をはじめとする捜査手法の活用や工夫が重要であること(捜査手法のなかには、とりわけ薬物犯罪と共通するものが少なくない。外国の例においても、薬物の不法取引と銃器は密接な関連を有している)、(c)情報提供者や証人の保護が肝要であること、(d)被害者・被害関係者の保護を進めるべきこと、(e)警察官による銃の使用の許否・限界につき再検討すべきこと、などの課題が認識された。また、諸外国における銃器情勢については、従来研究していなかったドイツの銃器情勢について調査研究ができたことが、一つの成果である。
著者
高谷 好一 マツラダ Mattulada 深沢 秀夫 田中 耕司 古川 久雄 前田 成文
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

本研究計画は、これまで実施した科学研究費による海外学術調査、「熱帯島嶼域における人の移動に関わる環境形成過程の研究」(昭和55ー59年度)および「マレ-型農耕文化の系譜ー内発的展開と外文明からの変容」(昭和61ー63年度)、の研究成果を統合・総括するために計画されたものである。上記の調査によって、東南アジア島嶼部、スリランカ、南インド、マダガスカルなどのインド洋をとりまく諸地域が古くからの東西交流・民族移動によって共通の農耕文化要素をもつことが明らかになってきた。本計画は、上記二つの調査をとりまとめ、東南アジア、インド、マダガスカルにわたる、いわば「環インド洋農耕文化」ともよべる、この地域に共通の農耕文化の性格を明らかにし、海域世界の人の移動と農耕文化展開との関係を総合的に解明しようとして計画された。研究計画は、若干の補足調査を必要とするスリランカ、南インドへの分担者1名の派遣と、これまでの国外の共同研究者を招へいしての研究集会の開催、および調査成果の刊行の準備作業からなる。まず、補足調査については、分担者田中が10月21日から11月12日の派遣期間のうち前半はスリランカ、後半は南インドに滞在して調査を行い、スリランカでは分担者のジャヤワルデナが調査に参加した。スリランカでは、南西部ウェットゾ-ンの水田稲作における水稲耕作法について精査し、とくにマレ-稲作と共通する水牛踏耕や湿田散播法の分布と作業の由来などについて聴取調査を行った。また、稲品種の類縁関係からマレ-稲作との関連をさぐるための資料として、在来稲の採集・収集を行った。南インドの調査は、タミ-ルナドゥ、ケララの2州を中心にスリランカと同様の調査を実施するとともに、インジ洋交易の中継点となったカリカット、ゴアなどの港市都市を観察した。国外の分担者マツラダおよびジャヤワルデナをそれぞれ約1週間招へいし、分担者との共同研究とりまとめの打ち合せを行うとともに、平成2年1月19日と20日の2日間にわたり研究集会を開催した。研究集会では、各分担者が以下の研究報告を行い、各報告の検討と共同研究成果のとりまとめについて協議された。高谷:環インド洋をめぐる自然環境と人の移動史前田:マダガスカルとマレ-の農耕儀礼古川:環インド洋におけるアフリカ農耕とマレ-農耕田中:環インド洋に共通する稲作技術とその分布深沢:マダガスカル、ツィミヘティ族の村落、農業と牧畜マツダラ:東南アジア島嶼部の漂海民バジョウとその生業ジャヤワルデナ:スリランカ・マレ-の移住、その歴史と現在調査成果の刊行については、上記の研究報告を各分担者の責任において関連の学術雑誌に報告することが研究集会で確認された。また、研究成果を単行本として出版することが計画され、その第一段階として分担者古川が東南アジア島嶼部の低湿地に関するモノグラフをとりまとめた。これは平成2年秋に出版の予定である。
著者
[ぐん] 剣萍 角五 彰 黒川 孝幸 古川 英光 田中 良巳 安田 和則
出版者
北海道大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2006

生体は硬い骨格を除き、殆どが50-85wt%が水分で構成されている軟組織からできている。豊かな福祉社会の実現には生体軟組織と同等の機能を持ったソフト&ウェットマテリアルの創製が不可欠である。本研究は、含水高分子ゲルの構造を制御することによって、生体軟組織に匹敵する高靭性と高機能を有する様々なソフト&ウェットマテリアルの創製に成功した。これらの材料は、軟骨・腱、血管などの生体軟組織の代替材料として応用できる。
著者
田中 仁 NGUYEN XuanTinh NGUYEN Xuan Tinh NAUYEN XuanTinh
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

これまで,海浜変形に関する研究は枚挙に暇がないほど数多くのものがなされている.ただし,これらの既往の研究は,沖浜帯から砕波帯,遡上域までを対象とする研究がほとんどである.海浜において大規模な地形変動をもたらす高波浪時には,このような沖域から遡上域までの海浜部のみならず,波が遡上し,さらには越波が生じる海浜域においても大きな地形変動が生じる.しかし,このような間欠的に生じる越波現象に伴う地形変化については,これまでほとんど研究がなされていない.その理由は,(1)現象の生起がまれであり,またその発生箇所も予測が困難であるため,現地データがほとんど蓄積されていない,(2)間欠的に生じる越波による,ドライな砂面上の薄層流を記述する動力学が確立されていないことなどが挙げられる.そこで,今年度の研究においては,このような越波に伴う地形変化に対する対策工の効果に関する検討を行った.対象は宮城県仙台市に位置する七北田川河口の蒲生干潟であり,同所には砂丘頂部に越波防止を目的とした捨て石堤が建設されている箇所と,未整備の箇所がある.そこで,これまでに開発したモデルを両者に適用することにより,3mの越波防止堤の存在が土砂移動を効果的に防止していることが分かった.一方,越波防止堤が整備されていない箇所については,越流により大規模な土砂堆積が生じることが分かった.また,蒲生干潟海岸では津波の越流により砂浜地形が大きく変化した.そこで,2011年3月以降には津波による地形変動についても現地調査を行い,バリアー地形の回復過程を明らかにした.
著者
田中 圭
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

近年の少子化や過疎化の進行による小中学校の統廃合・廃校により、貴重な大型木造建築である木造校舎がまだ使用できる状態にもかかわらず、次々に取り壊されてきており、現在も多くの木造校舎がその危機に瀕している。その理由として、耐震性の不備と補強・補修の費用が高額であることなどを挙げる自治体が多い。そこで本研究では、昨年度に引き続き、大分市近郊の山間地域にあり、地域交流施設の一部としての利活用が検討されている木造校舎について、詳細な調査を実施し、その老朽度・耐震性などについて詳細な検討を行うとともに、補強方法についての提案を行った。また一方で、昨年度からの本研究で明らかとなった古い木造校舎特有の構造である「接合部が釘止めのみの大断面筋違を持つ耐力壁」と「大断面梁、束ね柱、方杖から構成される柱-梁接合部」について、実際に使用されている寸法、接合を再現した試験体を製作し、その耐震性能を確認する実験を行った。これにより「大断面筋違を持つ耐力壁」は、現在の建築基準法に定められている断面寸法による壁倍率に比べ極端に小さい壁倍率しか発揮できず、現状では危険である可能性が明らかとなった。しかし、その後行った同耐力壁の補強方法を検討する実験により、研究代表者らが開発した接合法を補強に応用することで、比較的簡単な施工で現在の基準と同等の耐震性能まで補強することができることが明らかとなった。また、「柱一梁接合部」の実験により、この接合部は最大耐力は比較的大きいものの、初期剛性が低く、これによりラーメン構造と考えた場合の水平耐力が低くなることが明らかとなった。このように本研究の調査により、現存する木造校舎の実態とその特徴が把握できたとともに、実験により、その性能も定量的に確認し、補強方法とその効果についても確認提案を行った。今後も研究を進め、補強の必要な木造校舎それぞれについて、現実的な補強方法などを提案していきたいと考えている。
著者
福田 央 日吉 智 砂川 英之 田中 健太郎 藤田 仁 山根 雄一 若林 三郎
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.299-302, 2001-08-25
被引用文献数
3

清酒もろみの原料利用率の向上を目的とし, セルロース, キシラン, およびペクチン溶解酵素といった, いわゆる植物細胞壁溶解酵素が, 清酒もろみの並行複発酵に及ぼす影響を検討した.セルロース, キシラン, およびペクチン溶解酵素を有する市販酵素剤の添加により, 蒸米の溶解およびアルコール発酵は顕著に促進され, またアルコール収得量も増加し, 原料利用率の向上が得られた.さらに, 麹菌を小麦フスマを基質とした液体振盪培養に供して得られた培養上清液よりアミラーゼ・プロテアーゼを除いた粗酵素液を調製し, もろみ発酵試験に供した.この結果, もろみ発酵・原料利用率ともに顕著に向上し, 酵素剤添加区の最高値に匹敵する結果を得た.調製した粗酵素液は著量のセルロース, キシラン, およびペクチン溶解活性を有することから, これらの植物細胞壁溶解酵素が, 清酒もろみでの蒸米の溶解・糖化に対する促進効果を有することが強く示唆された.
著者
田中 一男 大竹 博 大竹 博 WANG Hua
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年,ロボットの多機能な複合動作実現のニーズが高まっている.本研究では,多機能複合動作を有するロボット系のための統一非線形制御アプローチの方法論を構築した.とくに,非線形ダイナミクスを多項式表現モデルに変換し, Sum of Squares手法を理論的核とした効果的に制御系を設計する方法の開発に成功した.さらに,飛行ロボットのホバリング制御,軌道安定化制御に適用し,本研究の有効性を明らかにした.