- 著者
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加藤 優志
田原 聖也
梅木 一平
板谷 飛呂
秋山 純一
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.1774, 2015 (Released:2015-04-30)
【はじめに,目的】現在,日本では超高齢社会を迎えており廃用性筋萎縮による活動性低下が介助量増加の一因となっている。今後さらなる高齢者増加が推測されており,廃用性筋萎縮予防が介助量軽減につながると考える。これまで廃用性筋萎縮の予防に関して様々な入浴療法に関する工夫がされており予防効果が報告されている。入浴療法の中でも温冷交代浴には,反復的な血管収縮,拡張による血流の増加作用などが知られている。本研究ではその点に着目し,温冷交代浴による廃用性筋萎縮の予防効果があると考え実験を行った。【方法】本実験は,SD系雌性ラット12匹(平均体重:355.5±33.5g)を使用し,無作為に6匹ずつの2群に分けた。両群は,筋萎縮モデルの作製のため,非侵襲的に継続的尾部懸垂により後肢の免荷を実施した。尾部懸垂を開始した翌日より実験処置を行った。内訳として①群:温冷交代浴群,②群:温水浴群とした。温冷交代浴は,温水42±0.5℃で4分,冷水10±0.5℃で1分を交互に浸し,温浴で始め温浴で終了した。温水浴は,42±0.5℃で20分行った。温度は常に一定にコントロールし,温水は温熱パイプヒーター(DX-003ジェックス(株))を用い,冷水は保冷剤を用いて温度を一定に保った。水浴処置後に再懸垂を目的にペントバルビタールNa麻酔を投与した。すべてのラットにおいて餌と水は自由摂取であった。実験処置の頻度は,1日1回,週6日行った。実験処置を開始してから2週間後,4週間後に各群3匹ずつをペントバルビタールNa麻酔薬の過剰投与にて安楽死処置を行い屠殺し,ヒラメ筋,腓腹筋,長趾伸筋を摘出した。摘出した筋は,精密秤を用いて筋湿重量を測定し,体重に対する筋湿重量比【筋湿重量(g)/体重(g)】を求めた。ヒラメ筋,長趾伸筋は,液体窒素で冷却したイソペンタン液内で急速冷凍した。そして凍結した筋試料はクリオスタット(CM1100 LEICA)を用い筋線維の直角方向に対し,厚さ5μmの薄切切片としてヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行い,筋線維面積の観察をした。腓腹筋は,中性ホルマリン溶液に浸漬し組織固定をした。固定後約3時間水で持続洗浄し,自動包埋装置を用い上昇エタノール系列の60%,70%,80%,90%,100%,100%エタノールで,各3時間脱水を行った。続いてキシレン:エタノール1:1で1時間,キシレンで2時間,2時間,2時間,透徹を行った。その後,パラフィンブロックに対して筋横断面が中心になるように位置を設定し,60℃の溶解したパラフィンで浸透処理を行い,パラフィンブロックを作成した。その後,パラフィン標本を,スライド式ミクロトームにより厚さ5μmに薄切した。薄切切片は湯浴伸展させ,シランコートスライドグラスに積載し,パラフィン伸展器にて,十分に乾燥させ染色標本とした。染色標本は,アザン染色を行い,膠原繊維面積の観察をした。定量解析は,デジタルカメラ装着生物顕微鏡(BX50 OLIMPUS)を用いて,HE染色像,アザン染色像をパーソナルコンピューターに取り込み,画像解析ソフト(ImageJ Wayne Rasband)で筋線維面積を1筋当たり30個以上計測し,膠原繊維は1筋当たり3か所以上計測した。統計処理は,2群間を比較するためにt検定を用いて行った。【結果】筋線維面積は,実験処置開始2週間後のヒラメ筋では交代浴群が温浴群に対して筋線維の萎縮を抑制しており有意差が見られた。筋湿重量比は,実験処置開始2,4週間後の長趾伸筋で交代浴群が温浴群に対し,筋萎縮を抑制しており有意差が見られた。有意差が見られなかった測定結果の多くにおいて,交代浴が筋萎縮を抑制している傾向が見られた。【考察】温冷交代浴には,温水に浸すと血管拡張作用,冷水に浸すと血管収縮作用などがあり,これらが交互に行われることで皮膚,筋内の動静脈吻合部が刺激されたことで血液循環が促進され,筋に酸素,栄養が運搬されたことにより抑制されたと考える。血液循環に加え,細胞に温熱が与えられると細胞内に誘導される熱ショックタンパク質の作用によりタンパク質の合成が亢進され筋委縮が抑制されたと考える。これらの要因から温冷交代浴療法には,筋萎縮抑制効果の可能性があることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究では,廃用性筋萎縮の予防効果として温冷交代浴と温浴の効果を対比させ検討した。今回の結果より温冷浴交代浴が筋萎縮を抑制する傾向が示唆された。温冷交代浴により筋委縮が予防できることで活動性低下を予防の一助になると考える。