著者
髙田 勝 田原 岳 天野 卓 野村 こう 高橋 幸水 古川 力 秋篠宮 文仁
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.12-20, 2018-03-09 (Released:2018-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

琉球豚は中国豚由来であり,黒色を有するアグーと白斑を有するアヨーがある。アグーはバークシャー種との交雑により改良されたと報告されているが,西洋系豚や中国系豚との分子遺伝学的類縁関係は明らかでない。そこで,アグー系とアヨー系を系統内交配により維持している今帰仁アグー集団の繁殖豚AG (B),AG (R),AG (W) とその交雑集団AG (O) およびこれらの祖先集団AG06,AY06,さらに西洋系豚,中国系豚について,マイクロサテライト30座位の遺伝子型を解析することにより,琉球豚の遺伝的多様性とともに西洋系豚,中国系豚との類縁関係および遺伝的構造を明らかにすることを目的とした。有効対立遺伝子数,アレリックリッチネス,多型情報量などの遺伝的多様性の指標値は,いずれもAG (W) が最も小さくAG (O) が最も大きく,AG (O) の多様性は西洋系と同程度であった。今帰仁アグー各系統は西洋系品種に比べてヘテロ接合度の観測値が期待値よりも大きい傾向にあり,FIS は負の値を示して,近親交配を避けた交配が行われていたことが示唆された。品種·系統間の遺伝的関係では,主座標分析から,琉球豚,中国系,西洋系が二次元上にそれぞれのクラスターを形成することが明らかとなった。遺伝的距離にもとづく系統樹からは,AG (B) はAG06と近縁であり,AG (W) はAY06と近縁であることが示され,これらを含む琉球豚は中国系とクラスターを形成した。遺伝的構造の解析からも,琉球豚は中国豚と共通する祖先に由来することが示されたが,AG (B) とAG (R) はバークシャー種と共通する祖先集団由来の遺伝子を有すると推察された。この結果はこれまでの琉球豚の由来の記述を裏付けるものであった。
著者
田原 誠 鈴木 智 野波 健蔵
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.781, pp.3386-3397, 2011 (Released:2011-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

The attitude sensor mounted on unmanned systems is required high accuracy attitude under the dynamic acceleration environment for the autonomous attitude control. In order to estimate attitude by using a quaternion based on extended Kalman filter (EKF) , the attitude sensor detects a direction of the gravity by using a tri-axis accelerometer. However, accelerometers are usually sensitive to both the gravity and dynamic accelerations. In this paper, the dynamic accelerations are dealt with explicitly, and two types of algorithms are proposed. In the first approach, measured accelerations are filtered, and divided into the gravity and dynamic accelerations. Using only the gravity, EKF estimates high accuracy of attitude. This algorithm can be realized with relatively small amount of computation, and have a good effect under the short dynamic acceleration environment. The second approach demonstrates adequate performance with EKF which includes the dynamical model of accelerations. This paper shows a critical comparison of attitude estimation algorithms under the dynamic acceleration environment for the autonomous control of unmanned systems.
著者
田原 太郎
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-77, 2021-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
12

本研究の目的は、即時性エコラリアを示す自閉スペクトラム症の幼児へのイントラバーバル訓練におけるモデル提示の効果を検討することである。訓練は、音声プロンプトによる訓練期間、モデル提示を追加した期間、9カ月後のフォローアップ(維持テストと追加訓練)の期間から構成されていた。場面は家庭および通所施設の療育場面で行われた。対象児は即時性エコラリアを示す自閉スペクトラム症の女児だった。訓練開始時は2歳3カ月だった。独立変数の操作として、音声プロンプトを用いた訓練を続け、それにモデル提示を加えた指導を2セッション実施した。ターゲット行動は、名前、年齢、住所の3 つの質問に対するエコラリアのない適切な応答行動とした。結果、当初は音声プロンプトによる介入で訓練の効果がみられなかった。しかしモデル提示を導入後、正反応率が上昇した。その後モデル提示や音声プロンプトを除去した後も正反応がみられた。また質問の文章や人物を変えても答えられるなど一定の般化がみられた。一方で、9カ月後のフォローアップでは名前以外の反応は維持されていなかった。結論としてはまず介入方法の変更の効果がみられた。しかしモデリング時の道具などの剰余変数があり、独立変数をモデリングに限定することはできなかった。また介入効果の維持やターゲット行動の選定などの課題も残された。最後に臨床的意義として本事例の介入法は類似の事例に応用する際、コストが低く、実施が容易である利点が考えられた。
著者
久米井 伸介 柴田 道彦 本間 雄一 松橋 亨 日浦 政明 大西 裕 阿部 慎太郎 田原 章成 原田 大
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.814-820, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

症例は42歳男性.20歳頃より記銘力障害や軽度の人格障害が出現し,30歳頃より暴言,被害妄想を認め,統合失調症と診断され内服加療をされていた.2010年12月に原因不明の肝硬変及び肝機能障害を指摘され,非アルコール性脂肪性肝炎及び薬物性肝障害と診断された.治療を受けていたが2011年1月より歩行障害,転倒,動作緩慢を認め薬剤性パーキンソニズムが疑われ,肝硬変の精査とともに当院を受診した.Kayser-Fleischer角膜輪の存在,血清セルロプラスミン低値,尿中銅排泄量の増加,肝生検での肝硬変の所見と肝組織中銅含量増加ならびに頭部MRIにて大脳基底核の信号異常を認め,一連の精神,神経症状と合わせて肝神経型のウイルソン病と診断した.Trientine hydrochlorideと酢酸亜鉛の内服及びリハビリテーションの開始により,肝機能ならびにパーキンソニズムや精神症状は徐々に改善を認めている.
著者
田原 鉄也
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.129, no.10, pp.660-663, 2009-10-01 (Released:2009-10-01)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

本記事に「抄録」はありません。
著者
田原 昭彦
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-43, 2000-03-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 3

血液透析は腎不全患者に多大な恩恵をもたらしているが, 一方では副作用が問題となっている. 眼科領域では透析中に眼圧が上昇する症例があることが知られており, 血液透析が眼圧に及ぼす影響が論議されている. 慢性腎不全で血液透析を受けている患者の透析中の眼圧, 血漿浸透圧, 血漿二酸化炭素分圧の変化を経時的に調べると, 血漿浸透圧は透析開始後徐々に低下する. 眼圧は, 房水流出障害がない眼と房水流出障害がある眼とでは異なった変動を示す. 房水流出障害がない眼では透析開始後眼圧に顕著な変化はないが, 房水流出障害がある眼では眼圧は徐々に上昇する. この時, 血漿浸透圧の変化率と眼圧の変化率との間には負の相関関係がある. 房水流出障害があって血液透析中に眼圧が上昇する例に, 高浸透圧薬の点滴あるいは高ナトリウム透析を行って透析中の血漿浸透圧の低下を抑制すると眼圧は上昇しない. したがって, 血液透析中に眼圧は次のような機序で変動すると考えられる. 通常の血液透析では血漿浸透圧は低下する. この時, 眼組織の浸透圧は, 血液眼関門が存在するため血漿浸透圧に遅れて低下する. その結果, 血液中から水分が眼内に流入するが, 房水流出障害がなければ房水が代償性に前房隅角から流出して眼圧は上昇しない. しかし, 房水流出障害が存在すれば, 房水流出による眼圧の調節ができず眼圧は上昇する.
著者
田原 洋樹
出版者
立命館アジア太平洋研究センター
雑誌
APU言語研究論叢 (ISSN:24321370)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.62, 2016 (Released:2022-03-23)
参考文献数
5

いわゆる『ベトナム戦争』は 1975 年 4 月に終結し、その後に南北統一国家としてのベトナム社会主義共和国が成立した。終戦、そして統一国家成立の一方で、ベトナム南部にあったベトナム共和国が消滅した。 このベトナム共和国で行われていたベトナム語と、現在のベトナム社会主義共和国のベトナム語には、語彙選択や「好ましいとされる話法」、および正書法に差異が認められる。 本稿は、主としてアメリカ・南カリフォルニアに居住するベトナム系住民の言語生活を観察することで得られた、旧ベトナム共和国のベトナム語『動態』について、わけても語彙レベルの考察を試みたものである。
著者
関根 麻理子 牧野 利明 田中 耕一郎 嶋田 沙織 四日 順子 古屋 英治 地野 充時 田原 英一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.182-203, 2021 (Released:2022-07-29)
参考文献数
25

医療安全委員会では,安全に漢方方剤を使用するための啓発活動を行っており,前回,日本医療機能評価機構の薬局から登録されたヒヤリ・ハット事例を分析した。今回は,同機構の医療機関から登録された医療事故とヒヤリ・ハット事例を分析した。漢方製剤が関係する事例は626件であった。医療事故には,薬剤性肝障害事例があった。 ヒヤリ・ハット事例に関しては,処方時では漢方エキス製剤の1包の内容量の勘違いによる用法用量の誤り,調剤時では製剤番号・外観の類似や漢方処方名の類似による調剤の誤り,投薬時では漢方処方名まで確認せずに,漢字表記やメーカー名だけで判断することによる投薬の誤りがあった。ヒヤリ・ハット事例は当事者本人や同職種者に限らず,他職種者や患者本人から発見される事例も多かったことから,ヒヤリ・ハット事例は同職種者間での共有に留まらず,他職種者とも共有することが,医療安全の推進につながると考えられた。
著者
吉永 亮 前田 ひろみ 土倉 潤一郎 井上 博喜 矢野 博美 犬塚 央 木村 豪雄 山方 勇次 田原 英一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.383-389, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
15
被引用文献数
2

蜂刺症とムカデ咬症に対して,受傷直後から黄連解毒湯エキスと茵蔯五苓散エキスを中心とした漢方治療を併用し,翌日には著明に改善した5例を報告する。症例1は70歳男性,30分前に左手背をスズメバチに刺されて受診した。症例2は43歳男性,20分前に左顔面をスズメバチに刺され受診した。症例3は55歳男性,10分前に左下腿をスズメバチに刺され受診した。症例4は39歳男性,60分前に右大腿をスズメバチに刺され受診した。症例5は35歳男性,20分前に右第1趾をムカデに咬まれて受診した。5例とも受診後直ちに漢方治療を開始し,以後,数時間おきに間隔を詰めて治療を継続したところ,翌日には疼痛と皮膚の紅斑と腫脹が改善した。蜂刺症,ムカデ咬症に対して漢方治療を行うことで速やかな治癒に貢献できる。
著者
小田原 悦子
出版者
日本作業科学研究会
雑誌
作業科学研究 (ISSN:18824234)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.45-54, 2019-12-25 (Released:2020-02-11)
参考文献数
27

回復期リハビリテーション患者がグループセッションの集合的作業をどのように経験するかを理解する ために,Ricoeur(リクール)の筋立て(ミメーシス)概念に基づいたナラティブ分析を使って探索した. 探 索を通して以下のことが明らかになった. まず,グループセッションの参加メンバーは,共通のゴール,目的,機能を共有する一方で,それぞれに個別のゴール,目的,機能があり,グループにそれぞれの過去の経験を持ち込むこと. そして,個々のメンバーは,セッション中,集合的作業に従事し,現在の共通の経験を共有するが,持ち込んだ過去の経験を通して,その時の経験を意味づけること,さらに,将来への希望を見い出すために,現在の経験から作った意味を利用することである. 将来へのアクションという希望が現れることは,治療的グループ作業の主な結果であると考えられる. グループセッションには,作業と人間存在の社会的性質を利用して,各個人が自分の将来へ向かって動くように手助けする可能性があることが示唆される.
著者
奥原 史佳 江上 周作 清 雄一 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.SWO-057, pp.07, 2022-08-05 (Released:2022-08-10)

近年, 教科全体や科目内全体で俯瞰的な学習が求められており, また, 多肢選択式問題が大量かつ広範囲の出題に向いていることから, 俯瞰的な多肢選択式問題が有用であると考えられる. "俯瞰的な問題" とは,幅広い関連情報を含み全体像をとらえさせるような内容である. 俯瞰的な問題を人手で生成・収集することはコストがかかるため, Linked Data を使って出題時に幅広い情報を提示することで俯瞰的な視点で問題を捉えさせるような多肢選択式問題の自動生成手法を提案した. 一方, 特定分野をターゲットとした出題においては, 該当分野における関連情報の幅広さを考慮できていない. また, 生成問題には解答に直接関係のない情報が含まれており, 回答時の俯瞰的な視点の必要性を考慮できていない. 本研究では, 特に歴史分野における生成問題の俯瞰度と, 回答時の俯瞰的な視点が必要な問題生成について考察する.
著者
狩野 謙一 小田原 啓 山本 玄珠 伊藤 谷生
出版者
国立大学法人 静岡大学理学部地球科学教室
雑誌
静岡大学地球科学研究報告 (ISSN:03886298)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.19-49, 2019-07-31 (Released:2021-11-18)

We have examined the surface geology and tectonic landforms of the Hoshiyama Hills and its surrounding areas in the Fujikawa-kako Fault Zone (FKFZ), central Japan. The FKFZ is generally regarded as a collision zone between the Honshu Arc, mainly composed of the pre-Neogene accretionary and the Neogene collisional complexes of South Fossa Magna region, and the Neogene Izu-Bonin Volcanic Arc on the Philippine Sea Plate. This zone is believed to be the most active and dangerous area of Japan in association with violent earthquakes. One of the keys to understand the activities of this zone since the Pleistocene is to reveal the geologic structures of the Hills, as well as the characteristics of the Omiya and Iriyamase Faults along the northeastern and southeastern margin of this Hills, respectively. Our surface geological survey reveals that the upper Lower-lower Middle Pleistocene Ihara Group, main constituent of the basement of the Hoshiyama Hills, has complicated structures including several-hundreds meters scale steeply-dipping beds without distinctive preferred orientations. The structures also include chevron-shaped anticlines and flat synclines, suggesting that the E-W horizontal shortening due to fault-related foldings was the main cause of their formations. The flexure-landform associated with the Omiya Fault clearly suggests that the Fault, previously believed to be a high-angled normal fault dipping toward NE, is a reverse fault dipping toward SW. However, the landform around the Iriyamase Fault, also believed to be a NW dipping reverse fault, show no evidence of its existence. Finally, we have summarized the tectonic and volcanic events in and around the FKFZ since about 1 Ma. These results suggest that the Quaternary tectonics and seismic activities of the FKFZ should be necessary to re-evaluate based not only on the surface geological and landform data but also on the subsurface geological structures now being poorly known.
著者
田原 静 張 婧 梁 庭昌 村松 潤一
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.12-19, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
18

消費者個人が携帯端末上のサービスを利用することに伴って発生するパーソナルデータの多様化に伴い,企業によるデータ取得と乱用が問題化する中,両者を仲介し問題解決を目指す仕組みとして情報信託制度の検討・整備が進められている。本研究はこの制度について取り上げ,それが消費者にどのように認知され受容されるのか,そして問題解決となるのかを,制度的課題は何かという視点から明らかにする。価値共創の視点を取り入れた調査結果をもとに,現行の制度がコミュニケーションを視野に入れていない一方通行の仕組みであることの問題点を指摘した。本研究の調査結果に基づくならば双方向の形にするとともに,消費者(顧客)と企業による価値共創的な仕組みにすべきであるという結論を示した。
著者
亀山 正義 田原 康博 吉田 堯史 松浦 太一 宮吉 紗綾子
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.138, no.7, pp.103-115, 2022-07-28 (Released:2022-07-28)
参考文献数
19

In some cases, mine drainage containing heavy metals (arsenic, cadmium, lead, and other metals) continues to flow out from mine mouths and accumulation sites in abandoned metal mines. The local governments that manage the abandoned mines continue to treat mine drainage water day and night. Therefore, practical and realistic measures to reduce the volume of mine drainage are required. A large amount of data on mine drainage has been accumulated for a long time at each mine. Also, several technologies have been introduced that make it possible to understand the actual hydrological water flow of mine drainage and to predict the quantitative effects of countermeasures. Under these circumstances, JOGMEC applied a surface water-groundwater coupled simulation technique to the old Matsuo Mine located in Hachimantai City, Iwate Prefecture. The simulation was used as a part of the results of the "Research and Study on Groundwater Control Technology" of the " Advanced Research and Study for Mine Drainage Treatment in Abandoned Mines Project", a project commissioned by the Ministry of Economy, Trade and Industry of Japan. It was confirmed that the existing countermeasures were efficient and effective under the limited budget. Thus, proving that it was the best practice.
著者
山口 拓朗 長谷 諭 坂部 龍太郎 田原 浩 布袋 裕士 前田 佳之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.2772-2776, 2017 (Released:2018-06-30)
参考文献数
17

Interparietal herniaはヘルニア嚢が腹壁の様々な筋層・筋膜間へ進展するヘルニアで,鼠径部に発生するものは鼠径ヘルニアの1亜型と考えられている.今回われわれは,鼠径部interparietal herniaに対しPlug法でヘルニア根治術を施行した1例を経験した.症例は75歳,女性.腹部CT検査で偶然右下腹部に腹壁ヘルニアを指摘され,当科紹介となった.腹部CT検査所見よりSpigelian herniaを疑い,Plug法によるヘルニア根治術を施行した.術中所見でヘルニア嚢は内鼠径輪より脱出し,鼠径管方向ではなく頭側の外腹斜筋と内腹斜筋の間へ進展していた.以上の所見より,interparietal herniaと診断した.本疾患に対して,前方到達法はヘルニア嚢の進展を直視下に観察可能であり,有用な術式と考えられた.