著者
志賀 洋介 南 浩一郎 白石 宗大 上園 保仁 松井 稔 堀下 貴文
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

疼痛発生のメカニズムは脊髄レベルでの機序が解析され始めG蛋白共役型受容体(GPCR)が疼痛発生に関与しているという報告がなされてきた。しかし、麻酔薬や鎮痛薬がこれらの受容体にどのように影響を与えて鎮痛作用を引き起こしているかはいまだに結論が出ていない。脊髄後根神経節(Dorsal Root Ganglia,DRG)細胞は多くの神経ペプチドが含有され、一次求心性線維中枢側から急性侵害刺激により遊離される。最近、グルタミン酸受容体が侵害刺激に関与していることが示唆されている。メタボトロピックグルタミン酸受容体(mGluR)はグルタミン酸が作用するGPCRで、同じGPCRであるムスカリン受容体などとは大きくその構造が異なる。mGluRが痛覚伝達や麻酔鎮痛機序にどのように作用しているのか興味深い。本年度は脊髄レベルでの麻酔薬、鎮痛薬の抗侵害作用におけるmGluRの役割を解析することを目的に以下の研究を行った。培養DRG細胞を用いて麻酔薬、鎮痛薬がmGluR1、mGluR5にどのように影響するかを検討し、細胞内Ca^<2+>の変動に対する、麻酔薬、鎮痛薬の影響を解析した結果、グルタミン酸により細胞内Ca^<2+>は上昇することを確認できた。さらに、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いてmGluR1、mGluR5に対する影響を電気生理学的に解析し、mGluR1には麻酔薬デクスメデトミジンが抑制する事実を確認した。また、吸入麻酔薬の一部も抑制することを確認している。今後はこれらの反応に細胞内リン酸化酵素が関与を明らかにする。最終的にはmGluRノックアウトマウスを用いて行動薬理学的に鎮痛薬、麻酔薬の抗侵害作用を検討し、麻酔薬、鎮痛薬の抗侵害作用におけるmGluRの役割を総合的に解析したいと考えている。
著者
白砂 孔明 島村 成美 妹尾 琴実 大津 彩華 白築 章吾 大口 昭英 岩田 尚孝 桑山 岳人
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第108回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.OR2-19, 2015 (Released:2015-09-15)

【目的】胎盤は妊娠に必須の器官である。ヒトでは胎盤形成時に栄養膜細胞の浸潤および子宮らせん動脈の置換が起き,胎盤内が生理的な低酸素環境(酸素濃度5−8%)になる。しかし,重度の低酸素環境(1−2%酸素濃度)に陥ると胎盤から抗血管新生因子(sFlt-1,sEng)や炎症性サイトカインが産生され,妊娠高血圧腎症につながると考えられている。酸素濃度が胎盤機能に影響すると考えられるが,胎盤細胞を用いた多くの研究は通常酸素下(21%)で実施されている。本研究では,軽度な低酸素環境で胎盤細胞を培養した場合,通常酸素環境下とは異なる応答性を示すと考え検証した。 【方法と結果】 ①ヒト栄養膜細胞株Sw71を5%および21%酸素濃度で培養し,炎症性サイトカイン・インターロイキン6(IL-6),sFlt-1およびsEng,細胞増殖率を測定した。5%酸素でSw71細胞を培養すると,21%酸素下と比較してIL-6,sFlt-1およびsEng濃度が低下し,細胞生存活性が増加した。②炎症応答性を検証するためにリポポリサッカライド(LPS)を添加した。両酸素濃度下でLPSはIL-6分泌を刺激したが,LPS誘導性IL-6濃度は5%酸素下において21%酸素下よりも低かった。また,Toll-like receptor 4(TLR4:LPS受容体)発現は5%酸素下で低下した。③低酸素で炎症応答性が変化したため,低酸素誘導因子HIF1αを検討した。21%酸素下ではHIF1αはほとんど発現しなかったが,5%酸素下ではHIF1α発現が増加した。HIF1誘導剤である塩化コバルトを添加すると,TLR4発現が低下するとともに,LPS誘導性IL-6分泌も低下した。また,HIF1抑制剤であるPX-12を添加すると,酸素濃度に関わらずIL-6分泌が増加した。 以上から,軽度な低酸素環境で栄養膜細胞株を培養すると,sFlt-1およびsEngの分泌や炎症応答が低下した。また,5%酸素下ではHIF1が作用することで炎症応答を抑制的に制御することが分かった。
著者
川路 則友 白石 哲
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.123-132, 1980-07

We examined the avifauna in and around the Nagasaki Airport, and investigated the behavior and food habits of the Black-eared Kite, Milvus migrans, which roosted in Usu-jima Islet near the airport from June, 1977 to March, 1979. The results obtained are as follows: 1. Sixty-two bird species belonging to twenty-six families were observed in and around the airport. In the course of census, we found wintering of the American Golden Plover Pluvialis dominica from 1977 to 1978, and the Chinese Great-grey Shrike Lanius sphenocercus on January 10, 1978 which had been rarely observed in Kyushu, Japan. In the airport the dominant species were always the Skylark , Alauda arvensis, and the Tree Sparrow, Passer montanus. 2. The Black-eared Kites left the roost in Usu-jima early in the morning, and flew to the feeding area, but some kites remained on and around Usu-jima all day long. The maximum number of kites is highest between September and November, and they decreased markedly in December; they increased again from January to February, but only a few individuals were observed between March and July. These changes in abundance of kites probably reflect their migratory movements. 3. Between September and October many kites moved in a wide area, but less so in other months. Especially in December, all kites lived within a very restricted area. Accordingly, the extension and reduction of the daily movement seem to relate to the feeding area, which changes with fluctuations in kite's abundance. We found another roost in Osaki Peninsula, north to the Nagasaki Airport, and there seemed to be other two roosts. The kites roosting here seemed not to move so far. Since there is abundant food for the kites along the coast, it seems enough for their existence to feed within a narrow area. 4. Fishes were most abundant as food items of the Black-eared Kites and a kind of gobies, Chaeturichthys hexanema, occupied the highest percentage of them, being followed by insects. Especially in October, a number of kites gathered at the airport in order to feed on locusts which inhabited the grassland, so that the ratio of kites with stomachs including insects temporarily increased. Other foods detected were the kite (probably fed after death), skylark and a kind of pill-bugs, Armadillidium vulgare.1.1977年6月から'79年3月まで,長崎空港周辺の鳥相および臼島を塒とするトビの行動と食性について調べた.2.長崎空港周辺で確認された鳥種は26科62種に達したが,特筆すべきこととしてムナグロの越冬(1977年から'78年にかけての冬)とオオカラモズの確認(1978年1月10日)を挙げた.空港内ではヒバリとスズメが常に優占種であつた.3,トビは朝早く臼島の塒から飛び立ちえさ場へ向かうが,同島やその周辺で終日生活する個体も多く確認された.月別に見た1日のうちのトビの最大個体数は9月~11月に多く,12月になると激減し,1,2月には再び増加し,3月以降7月まで少なかつた.その原因としては渡りが考えられた.4.個体数の最も多い9,10月には直線距離にして最大10km程度の飛翔を行なつて広範囲に行動する個体が増加するが,それ以外の月にはそれほど遠くへ出て行く個体は見られず,特に12月にはすべての個体は1~2kmの範囲内で生活していることが知られた.従つて,これら行動範囲の拡張と縮小は個体数の増減に対応したえさ場の確保と関係があると考えられた.車によるライン・センサスの結果,臼島のほかに確実に1ヵ所,また明示はできないが更に2ヵ所の塒があると推察されたが,それらの塒の個体もさほど遠距離まで行動しないと思われた.恐らく,海岸沿いには常に餌が豊富に存在し,ある程度までの個体数は塒の近距離内で許容されるためと考えられた.5.トビの食物としては魚類が最も多く,その中でもアカハゼが主食となつていることが知られた.次いで昆虫類が多く,特に10月には空港の草原に生息するバッタ類を採食しに飛来するトビが増加し,昆虫を採食している個体の割合が一時的に増大した.そのほかの食物としては鳥類のトビとヒバリ,甲殻類のダンゴムシが確認された.
著者
成瀬 かおる ナルセ カオル Naruse Kaoru 白尾 久子 シラオ ヒサコ Shirao Hisako 中根 洋子 ナカネ ヨウコ Nakane Yoko
出版者
帝京平成大学
雑誌
帝京平成大学紀要 (ISSN:13415182)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, 2015-03

We conducted a questionnaire survey involving 108 students in their second year of studying at the nursing department of T University who received a nursing skill test to determine factors influencing their awareness of skill acquisition. The results revealed that: 1) students whose favorite subject was nursing skills showed sufficient self-training, while those whose favorite subject was class work benefited from a mastery learning and felt the importance of points to be noted and the necessity of eagerness to learn; and 2) students with self-awareness that they were skillful undertook sufficient prior learning and self-training and were aware of their success in terms of safety, well-being, attention, and communicating with others. After receiving the test, all students realized their weak skills and the necessity of being aware of this, ability to make decisions, knowledge, and advancing their skills. Repeated self-training in nursing skills facilitates the acquisition of fundamental techniques but does not improve a student's abilities related to emotion/will, such as involving making decisions and attention required for safety and well-being. The study suggests the necessity of improving education methods, coaching systems, and training environments in order to acquire nursing skills to enhance nursing practice abilities.
著者
安達 一雄 梅崎 俊郎 清原 英之 白土 秀樹 中島 寅彦 小宗 静男
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.235-241, 2007-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
4

頸部郭清術の嚥下機能に対する影響について検討を行った。頸部郭清術を行う際に迷走神経咽頭枝を損傷すると咽頭筋麻痺によりクリアランスが低下する。今回の検討では再建例も多く、クリアランス低下に加え、喉頭挙上制限や、嚥下惹起が遅延することで、誤嚥のリスクが高まることが明らかとなった。そのため、極力迷走神経咽頭枝を温存すべきであると考える。
著者
宮地 良樹 Mizzi Fabienne 三田 哲也 白 立岩 生駒 晃彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.278-293, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
12

目的:本治験は,各単剤と比べたアダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルの有効性および安全性・忍容性を,日本人尋常性ざ瘡患者を対象に12週間の治療において検討することを目的として施行された。方法:本治験は,多施設共同,無作為化,二重盲検,実薬対照,並行群間比較の第III相臨床試験で,計417例の被験者が参加し,治験薬は12週間,1日1回,顔面全体に塗布された。総皮疹数の最終来院日の減少率を有効性主要評価項目とした。安全性・忍容性は有害事象や局所刺激性評価などの指標を用いて評価した。結果:本配合ゲルの総皮疹数に対する有効性は高かった(減少率の中央値:82.7%)。単剤に対する優越性は,アダパレン0.1%ゲル(68.6%)に対しては統計学的に有意(p<0.001)であった一方,過酸化ベンゾイル2.5%ゲル(81.6%)に対しては有意でなかった。重症や重篤な有害事象は報告されなかった。局所刺激症状を経験した被験者の割合は,配合ゲルがアダパレン0.1%ゲルや過酸化ベンゾイル2.5%ゲルよりも多かったが,いずれの群でもその症状はほとんどが軽症か中等症であった。結論:本治験により,本配合ゲルの日本人尋常性ざ瘡患者における高い有効性と安全性・忍容性が明らかになった。この結果はこれまでの海外データに矛盾せず,本配合ゲルの尋常性ざ瘡治療における良好なリスク・ベネフィット比を支持するものである。(皮膚の科学,15: 278-293, 2016)
著者
高橋 亨輔 井面 仁志 白木 渡 磯打 千雅子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1124-1137, 2017-05-15

本研究の目的は,災害時の危機的な状況下で,いかに適切な状況判断ができるか,その判断をもとにいかに適切な意思決定を行い行動に移せるか,これら一連の訓練を通して災害時の対応能力を養成するシステムの開発である.2011年東日本大震災では,広範囲の揺れや巨大な津波により,多くの教員や児童が被災した.従来,学校現場で実施される防災訓練は,マニュアルに記載された基本的な行動手順を確認することを目的としているが,現実の災害では,教員にとって想定を超える事態が発生する可能性もあり,教員自らが適切に状況判断し,素早い意思決定のもとに行動することが求められる.そこで,本研究では,災害時の実践的な対応能力の養成を目的とした災害状況再現・対応能力訓練システムを開発する.提案システムは,まず,大型スクリーンに投影されるバーチャルリアリティ(Virtual Reality:VR)映像と,教室の机や教科書などの現実の物を組み合わせて,バーチャルとリアルを融合して訓練体験者が災害時の臨場感を体感できる環境を構築する.次に,この環境下で対応行動をとる訓練ができるように,訓練体験者の行動に応じて災害状況が切り替わる訓練シナリオを開発する.最終的には,小学校教員を対象とした地震発生時の初期対応訓練シナリオを開発し,学校教員を対象とした訓練の実践事例と訓練システムの運用を通じて,開発したシステムの有用性や効果を検証する.This study aimed to develop a disaster risk reduction training system for school teachers to develop their practicable disaster response capabilities. Education for disaster risk reduction is important in protecting lives. However, conventional disaster reduction education in school in Japan has been delivered in accordance with procedures from the disaster reduction education manual. Although this conventional education material is effective to learn fundamental action steps, it does not provide guideline for the development of practicable response capabilities during disasters. In this study, an attempt is made to develop a simulation system for reproduction of disaster situations. First, an environment is developed to experience disaster situations by using virtual reality image projected on a large screen and real props. Feature of the proposed system is to reproduce disaster situations through a mix of real and virtual space. Next, in order to train response capabilities in this environment, a dynamically changing training scenario is developed. This scenario can switch scenes in response to the trainee's behavior. Finally, the proposed system is applied to practicable initial response training for school teachers in earthquake disaster. A training example for school teachers is presented to demonstrate the usefulness of the proposed system.
著者
加藤 和彦 白井 清昭 戸田 巖 和田 隆夫 星野 力 加藤 和彦
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.726-733, 2001-07-15

ITの花咲き乱れる昨今ではあるが,ITを支える基盤ソフトウェアの分野は閉塞感に覆われているのではないだろうか.立ち止まって考えてみよう.足下を見つめてみよう.そして,新たな地平を切り開く可能性を論じよう.
著者
吉田 省造 岡田 英志 土井 智章 中島 靖浩 鈴木 浩大 田中 卓 福田 哲也 北川 雄一郎 安田 立 水野 洋佑 宮﨑 渚 森下 健太郎 牛越 博昭 竹村 元三 白井 邦博 豊田 泉 小倉 真治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-135, 2015

症例は50歳代の男性, キノコ狩りに行きキノコを焼いて食べた翌日に下痢・嘔吐などの消化器症状を自覚し近医を受診. 血液検査にて肝逸脱酵素上昇を認め入院となった. 翌日の採血で肝逸脱酵素の著明な上昇 (AST 5,000台, ALT 5,000台) を認め, 当院に搬送となった. 問診によりドクツルタケ摂取による肝障害を疑った. 入院当日より肝性脳症を認め, 昏睡型急性肝不全と診断. 挿管・人工呼吸管理として, 肝不全治療と同時に毒素除去, 高分子除去を目的として急性血液浄化療法を行った. 入院5日後に肝性脳症は改善し呼吸状態は良好で抜管, 経過良好にて入院9日後に転院となった. ドクツルタケ中毒における血液浄化療法は否定的な意見が多いが, 今回は肝不全を呈したドクツルタケ中毒に対し, 血液浄化療法を行い救命し得た. ドクツルタケの中毒を疑った場合には, 早急な血液浄化療法が有効である可能性が高いと考えられた.
著者
成山 謙一 田中 俊一郎 白土 秀樹 小池 浩次 平川 直也 中島 寅彦 小宗 静男 中村 和正 野元 諭 塩山 善之
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.204-213, 2007-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

サイバーナイフは、小型直線加速器、ロボットアームと位置確認システムから構成される定位放射線照射治療装置である。一般的に頭蓋内疾患 (脳腫瘍、動静脈奇形など) に施行されるが、頭頸部疾患として鼻副鼻腔、上中咽頭、口腔底腫瘍、その他に頸椎、頸髄疾患等に施行されている。当科では、T4特に頭蓋底や眼窩浸潤症例、および大血管浸潤などの手術不能例や、手術可能でも機能温存などの点で患者が手術拒否した症例などに対して施行している。今回、われわれは当院にてサイバーナイフ治療を施行した鼻副鼻腔悪性腫瘍症例6例について検討した。全6例の内訳は、男性4例、女性2例。平均年齢は62歳であった。組織別には、嗅神経芽細胞腫が2例、扁平上皮癌、悪性黒色腫、甲状腺乳頭癌転移例、円柱上皮癌が各1例であった。これらの症例に対して、外照射約50Gy施行し、効果について評価した後、本法を施行した。本法のみの照射量は20-30Gy、平均23Gyであった。効果は、CR3例、PR3例であり、奏功率は100%であった。本法はガンマナイフに比べて、固定フレームが不要のため、適応照射範囲が広い。さらに照射線量を均一にでき照射精度も高く、放射線障害の低減が期待できる。今後の鼻副鼻腔悪性腫瘍治療に対して、本法は機能温存やquality of life (QOL) の改善の点で有用な治療法と考えられる。
著者
白羽 英則 小橋 春彦 大西 秀樹 中村 進一郎 山本 和秀 小林 功幸
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Des-gamma carboxy prothrombin (DCP)は、血管内皮細胞のKDRに作用し、細胞移動能(2.2倍)、細胞増殖能(1.5倍)を亢進させた。これら効果はKDR阻害剤により消失した。肝癌細胞のシークエンス解析からexon2の脱落したΔ2-gamma-glutamyl carboxylase(GGCX)を同定し、クローニングした。肝癌細胞においてΔ2-GGCX発現はDCP産生細胞(69%)において非産生細胞(8%)と比較して優位に高く、本来DCP非産生細胞であるHLE, SK-Hep-1は、Δ2-GGCX遺伝子導入によりDCP産生機能を持つようになった。これらの結果より肝癌におけるΔ2-GGCXの発現は、DCP産生の一因であることが解明された。Δ2-GGCX導入Hep3Bは、parental Hep3Bに対して約10倍のDCPを産生し、逆にWT-GGCX導入Hep3Bは、DCPの産生が消失した。それぞれの細胞を、ヌードマウス皮下に接種し8週間飼育した。Δ2-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積632mm^3)においては、WT-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積153mm^3)と比較して4.2倍と大きな腫瘍をヌードマウス皮下に形成し、血管新生も多く認められた。HCC患者組織(手術標本)でもDCP産生、血管新生の検討を行った。免疫組織染色の検討では、DCP発現と血管新生を示すCD31発現の相関が認められた。また、造影CTで評価したHCCのvascularityと、血清DCPの値にも相関が認められた。これらの結果より、DCPは臨床検体においても血管新生と密接な関連を持つことが判明した。
著者
真田 香澄 島本 真里 影山 真理 平田 祐一 白川 敦史 岡田 雄介 中瀬 浩二朗 萬代 晃一朗 鈴木 安曇 森川 宗一郎 河村 卓二 河端 秀明 盛田 篤広 宮田 正年 田中 聖人 宇野 耕治 安田 健治朗
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital
巻号頁・発行日
vol.33, pp.39-45, 2012-12

総胆管結石のため当院に入院し内視鏡的結石除去術あるいは内視鏡的胆管ステント留置術を試みた85 歳以上の182 例について検討した.内視鏡的に完全切石した症例(66 例)を完全切石群とし,完全切石を行わず,胆管ステントを留置して経過観察している症例(116 例)をステント留置群とした.両群の平均入院期間は19 日および16 日であった.経過観察が可能であった症例での検討では,両群ともに約半数に再発を認めた.完全切石群では平均551 日,ステント留置群では平均313 日での再発であり,再発率にも有意差は認めなかった.内視鏡的治療は有効かつ安全に施行できた.なかでもステント留置は完全切石と遜色ない長期予後を得られる治療法であり,さまざまな背景因子をもつ超高齢者においては有効な選択肢であると考えられた.
著者
多田 稔 高木 馨 川久保 和道 白田 龍之介 石垣 和祥 武田 剛志 藤原 弘明 梅舟 仰胤 齋藤 圭 斎藤 友隆 渡邉 健雄 秋山 大 内野 里枝 岸川 孝弘 高原 楠昊 高橋 良太 山本 恵介 濱田 毅 水野 卓 宮林 弘至 毛利 大 松原 三郎 木暮 宏史 中井 陽介 山本 夏代 佐々木 隆 笹平 直樹 平野 賢二 伊地知 秀明 立石 敬介 伊佐山 浩通 小池 和彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1474-1478, 2015-08-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
15

IPMN,膵嚢胞は,膵癌高危険群の中で最も効率のよい指標である.IPMNは進行が緩徐で比較的予後のよいIPMN由来浸潤癌がよく知られているが,予後不良の通常型膵癌の発生もともなう.最適な経過観察方法は定まっていないが,EUSがいずれの発癌形態にも最も感度のよい検査方法である.ただし,スクリーニングのための最適な検査方法については検討事項である.
著者
平林 弦大 真塩 紀人 白石 和也 田口 祐介 神山 真美
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ga0191-Ga0191, 2012

【はじめに、目的】 社会構造の変化に伴い,リハビリテーションの果たす役割は大きくなり,疾病対策・健康増進・介護予防など多分野での活動が求められている.それらに伴いセラピスト養成校も比例的に増加し,現状は需給バランスを欠く状況へと変化しつつある.今後の就業状況は多様化し求人が減少傾向に向くことが予測され,養成施設においても就職活動の方略を見直す必要性がある.そこで今回は,セラピストを目指す学生が現状の就職状況をどのように考え,就職先には何を望んでいるか,就職選定要因を把握するため調査を行ったので報告する.【方法】 3年制専門学校にて,臨床実習を含めたすべての学事が終了した理学療法学科3年生35名,作業療法学科3年生21名,合計56名を対象とした.学生へは今後の就職の見通しと、就職先へ望むものについて質問紙法によるアンケート調査を行った。就職の見通しについては「今後セラピストの就職は厳しくなるか」という問に対し,「かなり厳しくなる」から「かなりしやすくなる」の4段階で回答を求めた。就職先に求めるものについては,就業志向尺度(若林ら,25項目)を用い実施した。この尺度は,仕事に求めるものや結果,期待に関する項目に対し,「普通以下でよい」から「非常に沢山あってほしい」まで5段階で回答するものである.統計処理にはSPSS(Ver.16)を使用し,見通しについてはχ<sup>2</sup>検定,就業志向尺度については因子分析を用い学生が就職先に望む要因について検討を行った.【倫理的配慮、説明と同意】 対象となる学生へは学内承認のもと,今回の研究について目的・方法・倫理的配慮など口頭および文書にて十分説明を行い,同意を得た上で実施した.【結果】 アンケートの回収率は100%(56名),有効回答率100%であった.1)今後の就職の見通しについて「今後セラピストの就職は厳しくなるか」という問に対し,「かなり厳しくなる」.「どちらかといえば難しくなる」と回答した学生が51名であり,有意に多い結果となった.(p<0.01)2)職業志向尺度因子分析には,一般化した最小2乗法を用いて,因子の回転にはバリマックス回転を用い,因子数は第6因子まで有効であった.なお、抽出された中には単独の変数かつ他の項目との関連性が低い因子があり,24項目の変数から再解析を行った。抽出された因子の命名は過去の研究を参考に行った.第1因子は,「自分の能力が試される,専門性,独創性・創造性」などの因子負荷量が高く,「職務挑戦」と命名した.第2因子は「職場の雰囲気,環境の快適さ」などの因子負荷量が高く,「職場環境」と命名した.第3因子は「福利厚生・昇進の可能性」などから構成され,「労働条件」と命名した。第4因子は単独となり,「高い給与やボーナス」が抽出された.第5因子には「社会の役に立つ,安定した会社」から構成され,「社会貢献」と命名した.第6因子は「仕事の自由度」が抽出され,「自由度」と命名した.なお,上位3因子の累積寄与率は52.8%であった。【考察】 今回の研究から,卒業を控えた学生は就職に対し今後厳しくなると考えており、就職先には因子負荷量から「職務挑戦」「職場環境」「労働条件」を特に重視している結果となった.大多数の学生が今後の就職が厳しくなると感じていることについては,実習や就職活動から現状の需給バランスを欠く状況を認知していることが理由であると考えられた.先行研究と比較し学生が就職先に望むものは,抽出された因子に変化は無いものの,「労働条件」などの外発的報酬よりも「職務挑戦」という内発的報酬に重きを置いている結果となった.このことは,学生は就職に関する現況を正しく理解し,セラピストという職業に対して自己実現や社会貢献という「やりがい」を中心とした職業観を持つためであろう.諸氏らの先行研究では,就職先を決めるにあたり給与や通勤などの労働条件や職場環境に重きが置かれていると報告されている.しかし,今回の研究結果から学生は内発的な要因であるキャリア形成に重きを置いており,近年は現状を反映し選定要因が変化していると考えられた.これら学生が求めているものについては,求人票や施設見学,ホームページから把握することが困難であり,リアリティショックや早期離職が危惧される.養成施設としては他業種同様,より早期からの働きかけを行い,キャリア形成のための専門的人材配置など就職方略を修正することが必要である.【理学療法学研究としての意義】 理学療法士の質の低下が論議される中、現状は需給バランスを欠く状況へと変化し求人が減少傾向に向いている.本研究は近年の学生の職場に対するニーズから,新たな就職指導を検討するために意義のあることと考えられる.