著者
戸田 善治 竹内 裕一 姜 雪婷 三浦 輔 宮田 知佳 山本 晴久 和田 敦実
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.133-143, 2013-03

本稿は,2011年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究(社会)」における大学教員と大学院生の共同研究の報告である。日本政府は1990年に「入管法」を改正,すべての外国人を就労可・不可にはっきりと区別し,不法就労外国人に対する取り締まりを開始した。一方で,「定住者」資格を認めたブラジル・ペルー出身の日系人に就労を許可し,さらに「研修・実習」制度を中小企業にも活用しやすいように規制緩和し,事実上の就労を認め,この制度の目的が「途上国への技術移転,人材育成」であると一貫して主張してきた。これに対して,受け入れ企業は「単純労働力確保」,中国人実習生は「カネ稼ぎ」を目的とし,この両者間ではWIN-WINの関係にあり,日本政府のいう制度の目的とその運用実態には大きな乖離がある。そこで,この乖離状態に着目し,「外国人技能実習制度」の是非及びその改革案について考える授業を開発した。
著者
竹内 裕希子 ショウ ラジブ
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.79, 2010

1. はじめに<br>2009年8月に発生した台風8号(MORAKOT/モーラコット)は、台湾南部・高雄県甲仙郷小林村が村ごと土砂によって埋没するなど、台湾全土で死者・行方不明者が600名を超える災害となった。台湾は島国であり、その内陸部の多くは山岳地域である。台北などの都心部も含めて、多くの地域が斜面を有しており、台風等による豪雨災害、土砂災害への対応は必須である。現在台湾では、テレビによる災害情報の伝達やハザードマップの作成、災害直後の住宅危険判断指標など、日本の防災技術を取り入れた対策が一部で進められている。<br><br>2.リスクコミュニケーションの必要性<br>自然災害の防止は、ハード対策とソフト対策が併用されて成り立つ。ソフト対策の充実には、住民・地域・行政間において、平常時に防災に関する情報の共有と理解、信頼関係の構築、防災における役割分担等のリスクマネジメントが重要である。このリスクマネジメントを支える方法の一つがリスクコミュニケーションである。リスクコミュニケーションは、個人・集団・組織間のリスクに関する情報と意見の相互的な交換過程であり、リスクコミュニケーションの効果に影響を与える要因は、送り手・受け手・メッセージ内容・媒体の4つに集約することができる(吉川,1999)。<br>リスク情報(リスクメッセージ)の一つとしてハザードマップがある。日本においては、その認知と利用に関して多くの研究が行われており(例えば、竹内2005)、その提示方法や利用方法、配布方法等に問題点を提示している。しかし、2009年に兵庫県佐用町で発生した災害後の調査結果からもこれらの問題点が改善されているとはいえず、ハザードマップに記載される内容を理解する防災教育の場の設定や、地域に見合った行動計画を立案する過程がリスクマネジメンに求められている。<br><br>3.調査概要<br>調査対象地域である台湾中部・雲林県・嘉義県では、2009年台風8号災害にて死者・行方不明者40名、多数の家屋破壊、道路破壊が発生した。また2008年にも大規模な土砂災害が発生しており、雲林県・嘉義県の土石流危険地域では、試験的に土砂災害ハザードマップの作成・公開を行っている。著者らは2009年並びに2010年に雲林県並びに嘉義県内の4つのコミュニティ208世帯を対象としたアンケート調査を実施し、168世帯より回答を得た。アンケート項目は、住民の災害情報の理解と受け取り手段、災害前・後の行動、今後の防災対策、地域における信頼性に関するものであり、これらの結果から、リスク情報の提示方法とリスク情報を活用するための防災教育、またリスクコミュニケーションを行う利害関係者(ステークホルダー)の抽出とその関係性について明らかにした。<br>本発表では、アンケート調査結果と該当地域におけるリスクコミュニケーションの実施概要について報告する。
著者
竹内 裕美 樋上 茂 田中 弓子 山本 祐子 生駒 尚秋
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.S134-S137, 2000

鼻腔通気度検査は、鼻腔の開存度の客観的評価法として臨床で広く使用されている。通常、測定結果は、正常者から得られた正常値と比較して評価される。一方、左右鼻腔の鼻腔抵抗が経時的に変化する生理的現象は、nasal cycleとしてよく知られているが、鼻腔通気度検査で得られた鼻腔抵抗値をnasal cycleを考慮して検討した報告は少ない。本研究では、47人の20歳代の健康成人を対象として、1時間ごとに7時間にわたり、anterior法 (ノズル法) で鼻腔抵抗を測定した。総鼻腔抵抗の変動幅 (最大値と最小値の差) は、片側鼻腔抵抗の約1/4であったが、平均0.1Pa/cm<SUP>3</SUP>/sの変動があった。また、1時間前の鼻腔抵抗を100とした場合の変化率は、総鼻腔抵抗では平均22.8%であり片側鼻腔抵抗の変化率の約1/2であった。本研究の結果から、総鼻腔抵抗値へのnasal cycleの影響は片側鼻腔抵抗に比べると少ないが、鼻腔通気度検査の評価に影響を与えるには十分なものであることが明らかになった。
著者
中村 理恵子 大森 泰 須田 康一 和田 則仁 川久保 博文 竹内 裕也 山上 淳 天谷 雅行 北川 雄光
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1515-1526, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
24

自己免疫性水疱症は自己抗体により細胞間接着が障害され,皮膚や重層扁平上皮に水疱が形成される疾患の総称である.多くは皮膚に水疱やびらんを形成するが,目,鼻,口腔粘膜,口唇,咽喉頭,食道などの重層扁平上皮にも水疱やびらんを形成することがある.しかし,咽喉頭および食道粘膜における病変の発生頻度や特徴についてはよく知られていない.この研究においては,自己免疫性水疱症における上部消化管内視鏡検査の重要性を評価することを目的とし,内視鏡的な咽喉頭食道病変の発生頻度をprimary endpoint,内視鏡的・臨床的特徴を見出すことをsecondary endpointとして評価を行った.口腔または咽喉頭病変を50.4%,咽喉頭病変を30.8%に認めた.通常観察で食道粘膜面に異常を認めなかった症例の40.6%において機械的刺激による表皮剥離または血疱形成(Nikolsky現象)を呈した.全体の16.8%に通常観察で食道病変を認め,56.0%がNikolsky現象陽性を呈した.皮膚病変を認めない29.2%の症例において,77.7%に口腔または咽喉頭病変,36.1%に食道病変,58.3%にNikolsky現象を認めた.上部消化管内視鏡所見より自己免疫性水疱症を疑うことは可能であり,その内視鏡的特徴および所見を理解しておくことは重要である.
著者
児玉 直樹 竹内 裕之 山口 弘次郎 小杉 尚子
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、mild ADとMCIを対象にデータベースに蓄積されたMRIとADAS-Jcogを使用し、mild ADとMCIの早期診断について検討した。対象はmild AD192名とMCI138名の計330名である。本研究の結果、VOI内萎縮度、全脳萎縮領域の割合、VOI内萎縮領域の割合、萎縮比の全てにおいて有意な差が認められた。また、ADAS-Jcogの下位項目のうち10項目で有意な差が認められた。さらに、判別分析の結果、全脳萎縮領域の割合、見当識、単語再生、再生能力、物品呼称で判別率80.9%を得た。よって、この5項目はmild ADとMCIの診断に有用な指標であった。
著者
竹内 裕紀 岩本 整 中村 有紀 河地 茂行 島津 元秀 畝崎 榮 平野 俊彦
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.7-22, 2015 (Released:2015-09-10)
参考文献数
59

Corticosteroids or steroids are useful drug in clinical renal transplantation because of multiple effects in immunosuppression. There are not a few renal transplant recipients who need steroid therapy, although various new immunosuppressive drugs have developed. However, steroid dosage should be kept as low as possible and preferably withdrawn, because adverse effects of steroids are the most problematical in immunosuppressive drugs. The individual difference of efficacy and adverse effects of steroids depends on pharmacodynamics factor. We have been tried to resolve the dual nature of steroid therapy by steroid sensitivities test using peripheral blood mononuclear cell(PBMC). We clarified significant relationship in steroid sensitivity and clinical outcome, relative immunosuppressive efficacy of steroid, availability of methylprednisolone as immunosuppressive drug, utility for selecting patients who can sustain steroid withdrawal, and pharmacodynamic interaction of calcineurin inhibitors and steroids. We describe here not only results of pharmacodynamic research of steroid sensitivity test, but also comprehensive issues, i. e., history of steroid therapy in renal transplantation, action mechanism of steroid and factor of individual difference of steroid sensitivity, pharmacokinetics of steroid, suppression of hypothalamic-pituitary-adrenal system and immune system, adverse effects of steroid, and practice toward optimal steroid therapy for individual renal recipients.
著者
中村 陽祐 竹内 裕美 福島 慶 横山 裕子 森實 理恵 榎本 雅夫
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-6, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
13

抗ヒスタミン薬の鼻閉に対する効果を補完するために,第2世代抗ヒスタミン薬のfexofenadineフェキソフェナジンと経口血管収縮薬のpseudoefedrineプソイドエフェドリンの配合剤(F/Pと略す)が臨床で使用されている。F/Pの鼻閉に及ぼす臨床効果は経験的に確認されているが,鼻腔通気性の変化を客観的に評価した研究はほとんどない。本研究では,通年性アレルギー性鼻炎患者17人(男性12人,女性5人,平均年齢28.6歳)を対象として,F/P服用後の鼻腔通気性の変化を鼻腔通気度検査によって検討した。また,F/P服用後の自覚的な鼻閉感の変化についてVASを用いて検討した。鼻腔通気度検査は,F/P服用前は4時間,服用後は8時間,30分毎に測定した。また鼻閉感は,鼻腔通気度検査に合わせて測定した。鼻腔通気性の客観的な指標である総鼻腔気流量は,服用後90分から有意に増加し,服用後8時間まで有意な増加が持続した。一方,鼻閉感は,服用後2時間から有意に低下し,服用後6時間まで有意であり,試験期間の服用後8時間の間,効果が持続した。本研究によって,F/Pの鼻腔通気性に対する速やかな効果発現と持続性を客観的に証明することができた。また,鼻腔通気性の改善に伴い自覚的な鼻閉感も有意に改善することが確認された。
著者
泉 政寛 池邉 智史 竹内 裕介 玉井 幹人
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.616-619, 2017

第1肋骨疲労骨折を2例経験したので報告する.2症例ともに高校野球の投手であった.投球後より右肩甲部の痛みを認め,単純X線にて第1肋骨疲労骨折の診断となった.1~2ヶ月間の投球禁止で疼痛は改善した.本骨折は,単純X線にて骨折部が不明瞭で,臨床症状においても特徴的な症状にも乏しく,初診時に診断に至らないことが多い.スポーツ選手における肩関節周囲の痛みでは第1肋骨疲労骨折を念頭に置き診断する必要がある.
著者
高岡 基雄 鈴木 健男 竹内 裕美
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2Supplement1, pp.334-339, 1984-05-10 (Released:2013-05-10)
参考文献数
33

A case of pear pollinosis is reported. This 35-year-old farmer, engaged in pear culture, suffered from rhinitis, which pear pollen extract could provoke. He was also positive to an intradermal test using highly diluted pear pollen extract. An epidemiological survey focused on farmers engaged in culture of pear in Tottori Prefecture was carried out by questionnairing. Replies were submitted from 1412 persons. Occurrence of allergic symptoms during pear pollination work was described by 478 farmers (33.9%). Among the symptoms, sneeze and watery rhinorrhea were distinguished. There was no significant difference in age between farmers with and without allergic symptoms. Between subjects with and without allergic constitution, incidence of allergic symptoms was higher in the former.
著者
気賀澤 悠 中村 理恵子 大森 泰 高橋 常浩 和田 則仁 川久保 博文 才川 義朗 竹内 裕也 北川 雄光
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.86-87, 2015-12-12 (Released:2016-01-06)
参考文献数
4

論文撤回のお知らせ 論文タイトル: 術後の癒着・狭窄予防にステロイド局注が著効した下咽頭表在癌の1 例 著者: 気賀澤悠・中村理恵子・大森泰・高橋常浩・和田則仁・川久保博文・才川義朗・竹内裕也・北川雄光 掲載誌: 「Progress of Digestive Endoscopy」第87 巻1 号,pp. 86-87 撤回理由: 編集作業上の事故により同一論文を2 回掲載してしまったため、2 回目掲載の本論文を撤回いたします。 本件は二重投稿には当たらず、出版社が引き起こした多重出版であることをここに明記いたします (撤回通知掲載:第90 巻1 号)。 「Progress of Digestive Endoscopy」編集委員会 委員長 髙橋 信一
著者
竹内 裕希子 廣内 大助 西村 雄一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<b>1.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>はじめに</u></b><b><u></u></b> 東日本大震災の「釜石の奇跡」が例に挙げられるように,防災教育を実施する重要性とその効果が認識されている。しかし,防災教育の実施は未だ手探りである場合が多く,体系化したプログラムが提供されていないため,学校防災では現場教員の意識・知識に頼らざるを得ない状況であり,実施内容や頻度は学校において違いが生じている。 本報告では,愛媛県西条市において2006年度から取り組まれ続けてきた防災に関する「12歳教育」の現状と課題を考察する。ヒアリング調査・アンケート調査から「12歳教育」の効果と継続性の要素を整理し,地理的要素である空間認識と地域特性の理解を取り入れた総合的防災教育プログラムである「新12歳教育」の提案を行うことを目的としている。 <b>2.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>愛媛県西条市</u></b><b><u></u></b> 愛媛県西条市は瀬戸内海・豊後水道に面し,背後に石鎚山を最高峰とする四国山地に囲まれた愛媛県の東部に位置する。2004年に来襲した台風21号・23号により市内の河川が氾濫し,荒廃した山地からの流木により大きな被害が発生した。この災害を教訓として西条市は,大人に近い体力・判断能力が備わってくる12歳という年齢に着目し,防災教育や福祉や環境に関する活動などを行うことによって社会性を育て,子供たちが災害時には家庭や地域で大きな働きをなせるような力を身につけていくことを目的として2006年度から「12歳教育」に取り組んでいる。 「12歳教育」は,西条市内の小学校6年生児童を対象に総合学習の時間を用いて実施されている。各学校は4月に1年間の防災教育課題を決定し,夏休みに代表児童が西条市が実施する「防災キャンプ」に参加し,防災に関して学ぶ。その後各学校で防災教育活動を行い,2月に西条市内の全6年生が集まり「こども防災サミット」と題した発表会を行う。 <b>3.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>調査概要</u></b><b><u></u></b> 西条市教育委員会へのヒアリング調査並びに,西条市内に立地する小学校25校・中学校10校の校長・教頭にアンケート調査を実施した。ヒアリング調査は2013年12月,2014年5月に実施し,アンケート調査は2014年7月に実施した。アンケート調査は,①2006年度から実施されている12歳教育の取り組み内容,②12歳教育の防災教育効果,③総合学習の時間以外の各教科科目内での防災教育の取り扱い状況,④学校管理上の防災の課題の4つの大項目で設計した。 <b>4.&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; </b><b><u>12</u></b><b><u>歳教育の防災教育効果</u></b><b><u></u></b> 12歳教育の防災教育効果を西条市が掲げる教育理念23項目ごとに4件法で回答を求めた。 全ての学校で23. 「防災教育の充実・発展」の理念向上に12歳教育が影響を与えていると回答した。また,11.「西条市の特色ある教育」として捉えられており,17.「ふるさとを愛す態度を養う」21.「コミュニケーション能力の育成」に影響を与えていると回答した。「12歳教育」では,地域住民に話を聞き地図を作成する「防災タウンウオッチング」や学習成果を地域に広める取り組みを行っている学校が多く,それらの地域学習を通じた効果であることが推測される。
著者
竹内 裕希子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

<b>1.&nbsp;&nbsp; </b><b><u>はじめに</u></b><b><u></u></b> 公立小中学校は,児童・生徒の教育の場として子供達の命を守るだけでなく,地域において重要な公共施設として存在し,災害時には避難場所等の役割を果たし,災害が発生した場合には,地域住民の生活の場となる。そのため,学校施設の安全性は防災対策を行う上で重要な課題であり,強い建物としての学校だけでなく,安全性を確保された立地条件において建設を進めることが重要である。 東日本大震災では,6,244の公立学校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校,文部科学省調べ2011)が被害を受け,そのうち202の学校が「被害状況Ⅰ」に分類されている。この「被害状況Ⅰ」は,建物の被害が大きく,建替え又は大規模な復旧工事が必要とされるものである。建替えを必要とする被害は,学校施設の立地に大きく影響を受けている。 本報告では,岩手県釜石市南部に位置する唐丹地区住民を対象とした学校施設に関するアンケート調査結果から,地区内に立地する学校施設に対する地域住民の要望とその背景に存在する地形条件を考察する。 <b>2.&nbsp;&nbsp; </b><b><u>岩手県釜石市唐丹地区</u></b><b><u></u></b> 岩手県釜石市唐丹地区は唐丹湾に面しており,東日本大震災では15haが津波により浸水した。この津波により唐丹湾を有する唐丹地区では32名の死者・行方不明者,343戸の住宅被害が発生した。 唐丹地区には,唐丹小学校ならびに唐丹中学校が立地している。唐丹小学校は明治9年(1873年)の開校当時は,現在の唐丹中学校の位置に立地していた。その後の児童増加と中学校開設にともない,昭和22年に図1中の唐丹小学校跡へ移転した。東日本大震災では鉄筋校舎3階の天井まで浸水し,校舎は使用不能となった。震災後は釜石市内の平田小学校に間借りをしていたが,2012年に仮設校舎が現在の唐丹中学校敷地内に建設されたことに伴い,現在は唐丹中学校内に併設されている。唐丹中学校は,津波被害は受けなかったが,地震動により校舎が破損被害を受けた。 <b>3.&nbsp;&nbsp; </b><b><u>アンケート調査概要</u></b><b><u></u></b> 岩手県釜石市唐丹町住民を対象として,2011年10月8日~10月24日に実施した。対象数(配布数)は746世帯で,回収数(率)は308世帯(41.2%)であった。配布方法は,地区内居住者は自治会を通じて各戸へ配布し,震災による地区外居住者は郵送した。回収は全て郵便で行った。 <b>4.&nbsp;&nbsp; </b><b><u>学校施設への要望と地形条件</u></b><b><u></u></b> 回答者の50%が,学校施設から高台(国道45号線)へ直結する道路の設置を要望した。これは,東日本大震災時に地域住民が避難をした国道45号線と唐丹中学校の高低差が31.8m存在していること,国道45号線と学校をつなぐ現在の道路は東日本大震災時の浸水ライン上に位置していることが理由として考えられる。平常時の学校運営と学校用地として確保できる敷地面積を考慮した場合の立地場所と,災害時を考慮した場合の立地要因・地形要因を検討する必要がある。
著者
後藤 修 竹内 裕也 北川 雄光 矢作 直久
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1632-1640, 2015 (Released:2015-08-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

内視鏡と腹腔鏡を用いて胃を開放させずに任意の部位を過不足ない範囲で全層切除する非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(non-exposed endoscopic wall-inversion surgery:NEWS)について概説した.腹腔内汚染や医原性腹膜播種の可能性を理論的に払拭できる本法は,経口的に回収できる腔内もしくは壁内発育型胃粘膜下腫瘍や,リンパ節転移陰性が期待できるが内視鏡治療が技術的に困難な早期胃癌が良い適応となる.さらに,本術式をセンチネルリンパ節ナビゲーション手術と融合させることで,リンパ節転移の可能性が否定できない早期胃癌に対してもより低侵襲な胃機能温存手術を提供することができる.正確な漿膜マーキング,腹腔鏡下漿膜筋層切開・縫合,内反した病変周囲の粘膜切開,縫合糸近傍の粘膜下層切開など,技術的にも新規性に富む過程が満載されている.解決すべき課題は多いが,本法は内視鏡を用いたより理想的な胃癌低侵襲手術の一つとして期待が寄せられている.
著者
河井 康孝 須甲 憲明 福元 伸一 竹内 裕 大泉 聡史 原田 真雄
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.227-233, 2013 (Released:2013-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

背景.原発性肺癌の自然退縮は非常に稀な現象である.症例.55歳,男性.右頚部腫瘤を自覚し,前医にて頚部リンパ節生検を施行されたが壊死が強く確定診断はできなかった.右肺尖腫瘤もあり,当科にて経気管支肺生検を行ったところ,組織像は瘢痕像のみでやはり確定診断は得られなかった.その後,肺腫瘤および頚部リンパ節はともに無治療で縮小を続けたが,8か月後に別の右頚部リンパ節腫大が新たに出現し生検にて分化度の低い癌細胞を認めた.さらに右肺上葉切除術を施行した結果,肺大細胞癌と確定診断された.肺原発巣および頚部リンパ節ともにHLA class Iの強い発現とCD8リンパ球浸潤を認めた.また経過中,病状悪化時には白血球数および血清G-CSFも高値であり,腫瘍細胞も免疫組織学的にG-CSF陽性であったため,G-CSF産生腫瘍と考えた.結論.悪性腫瘍の自然退縮はいまだその機序は解明されていないが,HLA class I発現やCD8リンパ球浸潤など腫瘍免疫が深く関与していると考えられる.本症例はG-CSF産生肺大細胞癌が自然退縮を示したと推察される興味深い症例と考え報告した.
著者
戸田 善治 竹内 裕一 大久保 紗容 中村 友亮 松永 智貴 高橋 和雄 天野 孝太郎
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.203-213, 2012-03

本稿は,2010年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究」における,大学教員と大学院生の共同研究の報告である。そこでは,中学生を対象とする授業《ベトナムと日本のODA》を開発した。日本政府は,政府開発援助の方針を決めてきたODA大綱を新たに発表した。この旧から新へのODA大綱の変化とその背景となった要因を捉えるため,ベトナム高速鉄道計画という一つの例について考えつつ,日本の政策決定の一過程について検討させる授業の開発を行った。
著者
戸田 善治 竹内 裕一 大久保 紗容 中村 友亮 松永 智貴 高橋 和雄 天野 孝太郎
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.203-213, 2012-03

本稿は,2010年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究」における,大学教員と大学院生の共同研究の報告である。そこでは,中学生を対象とする授業《ベトナムと日本のODA》を開発した。日本政府は,政府開発援助の方針を決めてきたODA大綱を新たに発表した。この旧から新へのODA大綱の変化とその背景となった要因を捉えるため,ベトナム高速鉄道計画という一つの例について考えつつ,日本の政策決定の一過程について検討させる授業の開発を行った。
著者
竹内 裕
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.876-877, 2009-09-15
被引用文献数
1

魚類の生殖機構。基礎と応用。水産増養殖への応用。発生工学的アプローチによる生殖細胞のコントロール。現在までに多くの魚種の種苗生産技術が確立しているが、クロマグロやブリ、ウナギのように、未だ産業レベルで完全養殖を行うには、多くの課題が残されている魚種も少なくない。特に、これらのいずれの魚種においても、良質の受精卵を安定供給する技術が発展途上である。例えば、クロマグロは親魚が大型であるため、海上のイケスで養成することが必須であり、成熟誘導のために環境制御(水温や日長制御)を行うことは原理的に不可能である。また、ブリやウナギにおいては、受精卵の質の安定性に問題が残されており、親魚養成から成熟誘導技術のさらなる改善が望まれている。我々は、最近、サケ科魚類を用いて生殖細胞の異種間移植系を確立し、"ヤマメにニジマスの配偶子を生産させる技術(代理親魚養殖)"を開発した。これにより、ドナー種よりも小型かつ若齢で成熟する宿主種(=代理親)を利用して、省スペースで効率的にドナー種の種苗を生産可能であることが示された。さらに、これらの代理親魚の体内では、宿主種の内分泌系支配によりドナー種由来の配偶子が生産されるため、陸上水槽内で宿主魚の成熟に適した環境を提供することで、目的の種苗を周年採卵することも可能になると期待される。したがって、本技術を上記各魚種に応用することで、クロマグロを生むマサバ、ブリを生むマアジ、ウナギを生むアナゴ、などの生産も可能になると期待される。現在、我々は、マグロ類やブリ類など多くの水産上有用魚種と同タイプの分離浮遊卵を産卵する小型の海産魚であるニベを用いた生殖細胞移植技術の開発を行っている。本稿では、海産魚における代理親魚養殖の確立に向けた戦略、現状および課題について概説する。