著者
若松 大祐
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

現代台湾(1945-現在)において、中華救助総会(救総)はとりわけ泰緬地区の同胞を救援するに際し、いかにして「我々」(国民国家的な主体)の歴史を叙述してきたのか。本研究の目的はこの問いを解明し、現代台湾という時空をよりよく理解することに在る。三年目の今年度は、現代台湾史において出現した官製歴史叙述や泰緬孤軍像を背景として踏まえた上で、特に救総が展開する歴史叙述について考察を試み、次の2つの知見を得た。すなわち、第1に、現代台湾において泰緬孤軍というふうに名づけられた泰緬地区在住の人々を、中華民国政府の主導する人権概念に基づき、救助対象とみなしていたこと。第2に、世代交代により、孤軍後商(孤軍の末窩)と呼ばれる人びとが出現し、救総の他にも中華民国と孤軍を架橋する媒体が出現したこと、の2点である。孤軍後裔は、救総とのつながりを相対的に希薄化しつつも、台湾との多様なつながりを持ち、タイや台湾という土地に根付こうとしており、タイにおいては朝野挙げての観光立国化の機運の中で、ゴールデン・トライアングルに関するテーマパークを立ち上げたり、台湾においては朝野挙げての多元化の機運の中で、雲南文化公園を設置している。特に第2点について、更なる考察を踏まえ、投稿を前提にした論文を執筆中である。受入機関の京都大学で東南アジア地域研究に関する研究会や講義へ参加し、またタイへ1回、台湾へ1回短期出張して、今年度の研究を遂行ができた。
著者
川原 弘靖 若色 薫 渡辺 顯 KAWAHARA Hiroyasu WAKAIRO Kaoru WATANABE Akira
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所報告 = Technical Report of National Aerospace Laboratory TR-1136 (ISSN:03894010)
巻号頁・発行日
vol.1136, pp.27, 1991-12

航空機は大型化,高性能化が進むと同時に従来の操縦桿・操縦輪に代わり,サイドスティックによる操縦装置が,また飛行計器はグラスコックピットと呼ばれる大型CRTを用いた電子式飛行計器等が導入されるなどコックピットの近代化が進められてきている。さらに飛行計器の表示デバイスもCRTから液晶フラット・パネル・ディスプレイ(以下液晶ディスプレイ(LCD)と略す)にと変りつつある。航空機用液晶ディスプレイは3インチ型TCAS指示計が実用化されており,5~8インチ型が開発段階にあり,実用化の時期も間近の感がある。これら新しい表示デバイスを実機に搭載するにあたってはその前段階として飛行シミュレータによる機能,性能の評価が必須であり,実機搭載に十分な機能,性能を確認する必要がある。今回,日本航空電子工業(株)との共同研究で8インチ型液晶ディスプレイ(PFD,DMD)の機能,性能および表示フォーマットに関して,飛行シミュレータによる評価試験を実施した。その結果,ハードウエアについては従来のCRTの性能と同等あるいはそれ以上の性能を有していること,DMDディスプレイについては使用目的に対応した表示機能とすることにより,その有効性があることが確認できた。
著者
若山 将実
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
no.17, pp.142-153,207, 2002

1970年代に入って支持の増大を経験したイギリスの第三政党は,現在では主要政党の一つとして定着している。本稿は,第三政党支持を変化させる要因を業績評価投票モデルから再検討する。業績評価投票モデルに依拠したこれまでの研究は,政権与党の業績に対する否定的な評価によって有権者は野党に投票するとした仮定がイギリスの第三政党に当てはまらないことを主張してきたが,本稿の分析は,選挙区レベルの経済状況の変化と政党競争の状況を考慮すると,第三政党は経済状況の悪化に対する有権者の不満の受け皿として支持を増大させていることを明らかにした。また,そうした有権者の不満の受け皿としての役割は,第三政党が野党第一党として定着している選挙区において特に大きいことが本稿の分析からわかる。
著者
若浜 五郎 藤野 和夫
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
no.27, pp.135-142,図6p, 1970-03
被引用文献数
1
著者
蟻川 謙太郎 若桑 基博 木下 充代
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.5-11, 2014-02-25 (Released:2014-05-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

Spectral sensitivity of insect visual system is one of the most important functions that are useful for controlling potential pests. After briefly summarizing the basic structure of two typical compound eye types, the apposition type of diurnal insects and the superposition type of nocturnal insects, we will introduce the mechanisms underlying the spectral sensitivity of insect photoreceptors. We will then explain some technical aspects that are crucial for measuring spectral sensitivities.
著者
伊藤 徹 青山 太郎 平芳 幸浩 呂 佳蓉 藤田 尚志 廖 勇超 若林 雅哉 張 文薫

テクノロジーの高度な発展は、その母体となった近代の枠組みを掘り崩し、従来の文化や社会のカテゴリーを無効にしつつある。膨大な情報をしかも瞬時に複製する情報技術が、近代文化の属性である「オリジナリティー」や「個性」を揺るがせていることは、その一例だ。近代化とアジアをテーマに持続的に研究会をもってきた日本と台湾の学際的研究グループによる本シンポジウムは、ACG(アニメ・漫画・ゲーム)、あるいは映画などを手がかりに、「発信地としての日本」という「神話」を始め、創作の原点としての「主体性」や「土着性」、作品の「真正性」について考え直すことに目的を置き、以下の報告を行ない、参加者による総合討論をもった。1.青山太郎(名古屋文理大学)「ドキュメンタリー映画における主体性の成立について:小森はるか+瀬尾夏美作品からの考察」 2.平芳幸浩(京都工芸繊維大学)「東山彰良における台湾と日本―文化の内在化と異化」 3.呂佳蓉(台湾大学)「ACG文化の力:若者言葉とその意味変化」 4. 藤田尚志(九州産業大学)「家族の時間―是枝裕和の最近作における分人主義的モチーフ」 5.廖勇超(台湾大学)「日本SFアニメ・漫画のなかの怪物性と暴力」6.若林雅哉「《自主規制》という商業戦略―アニメーションにおける《黒い》血液」 7.張文薫(台湾大学)「日本大衆文化における漢字の記号性」。国際シンポジウム「ネット文化のなかの台湾と日本――オリジナリティー再考」、会場:京都工芸繊維大学60周年記念会館、開催日:2017年7月23日
著者
阪本 州弘 若林 一郎 吉本 佐雅子 増井 秀久 勝野 眞吾
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.635-638, 1991
被引用文献数
4

柔道や空手など古武道では冬期に川原で寒稽古を行い筋力の増強に努めている。運動と寒冷刺激がテストステロンおよび他のホルモンレベルにいかに影響するかを19才の男子,32名について検討した。<br>自転車エルゴメータによる運動負荷(90watt)によりテストステロン(TS)濃度は20.8%上昇したが,黄体形成ホルモン(LH)はほとんど上昇しなかった。ノルアドレナリン(NA)のレベルは140.0%有意に上昇した。一方,冷水負荷ではTSは10.0%減少し,LHは22.1%上昇し,NAは23.8%減少した。個人で負荷によるホルモンレベルの変化量の関連性をみると運動負荷ではLHとTSとはr=0.40,またTSとNAとはr=0.48の有意の相関がある。冷水負荷ではTSとLHとではr=0.40,TSとNAとではr=0.43であった。<br>これらの結果は,運動はLHとNAの血清濃度の上昇によりTS濃度を上昇させる。しかし冷水負荷ではこの傾向が見出せなかった。
著者
児玉 健一郎 河岡 友和 相方 浩 若井 雅貴 寺岡 雄吏 稲垣 有希 盛生 慶 中原 隆志 平松 憲 柘植 雅貴 今村 道雄 川上 由育 岡田 友里 森本 恭子 織田 麻琴 木村 修士 有廣 光司 茶山 一彰
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.162-170, 2018-03-20 (Released:2018-03-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

63歳,男性.20年前,検診にて肝腫瘤を指摘されたが詳細不明であった.4年前の40×35 mmから60×50 mmと増大傾向となり,紹介入院となった.腹部超音波検査では肝S6/7に60×50 mm大の不整形,境界不明瞭,内部不均一,低エコー腫瘤を認めた.造影CT検査では肝S6/7に60×50 mm大の病変は共に単純CTで等吸収,造影早期相で濃染,後期相で淡い低吸収となった.ソナゾイド造影超音波検査では動脈優位相では全体が不均一に濃染された.門脈優位相ではhypo echoicとなりpost-vascular phase(Kupffer phase)ではdefectを呈した.病理組織検査では肝原発濾胞性リンパ腫と診断され,外科手術にて完全著効となり12カ月生存中である.肝原発濾胞性リンパ腫は非常に稀な疾患であり報告する.
著者
若林 慶彦 岡本 敏明 斉藤 浩一 工藤 寛之 三林 浩二
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.21, 2007

本研究では細胞膜での能動輸送のように、化学物質を認識しその化学エネルギーを力学エネルギーに、常温・常圧で直接変換する新規な駆動機構「有機エンジン」を生体材料と有機材料を用いて作製し、この有機エンジンを利用することで、液体成分やその濃度で駆動・制御可能な生化学式アクチュエータを開発した。
著者
若子 直也 堀 美智子
出版者
じほう
雑誌
調剤と情報 = Rx info (ISSN:13415212)
巻号頁・発行日
vol.24, no.15, pp.2337-2340, 2018-11
著者
若松 養亮
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.209-218, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20

大学生における進路未決定のうち, 一般学生に見られる決定の困難さのメカニズムを解明するために, 教員養成学部において質問紙調査を実施した。分析の対象は3年生233名である。「もう迷わない」と決めた進路の選択肢があるか否かで操作的に決定・未決定を定義づけたところ, 決定者が84名, 未決定者が149名であった。その両群間によって, 未決定者は (A) 自分の抱える問題が何なのかを理解できていないのではないか, および (B) 意思決定のための行動に結びつきにくい困難さを抱えているであろうという2つの仮説を検討した。その結果, 仮説Aは支持されたが, 仮説Bは支持されなかった。そこで「快適さ」の指標を加えて分析対象者を限定したところ, 未決定者が情報や答が得られにくい問題に悩まされているという結果が見出され, 仮説Bが支持された。さらに未決定者のうち, indecisive傾向の強い者は拡散的に新たな進路の選択肢を求めるという結果が見出され, それは仮説Bを支持するものであった。最後に, 未決定者に対して有効と思われる処遇と, 今後の研究に向けての考察を行った。
著者
若林 広
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 教養学部 (ISSN:03892018)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.229-243, 2007

For the French-speaking population of Wallonia, the Belgian Constitutional Reform process culminated in 1993. However it was only a step toward further reform for the people in Flanders. Up until the middle of 1990's the political atmosphere had been relatively calm in Flanders, but 1996 saw a major change with the publication of a 'Proposal for a Constitution for Flanders' written by four jurists who were close collaborators of political leaders in Flanders. Since then various claims and slogans contained in this proposal have been discussed openly both in and outside of the Flemish Parliament. In 1999 that Parliament adopted a series of resolutions calling for a new State Reform. These resolutions related to (1) general principles for State Reform, (2) fiscal autonomy of Regions, (3) the Brussels problem, (4) competencies transfer and (5) other pending issues. In the same year as these resolutions were adopted, a coalition government led by Liberal Party leader Guy Verhofstadt was sworn in, which marked the beginning of the State Reform debate at the federal level. A series of political agreements was consequently reached during the first Verhofstadt Government, which resolved many of the fiscal autonomy and competencies transfer problems, but the Brussels problem remained unsolved. During the second coalition government, by establishing various parley institutions, Prime Minister Verhofstadt tried to solve this problem but the negotiation stalled with the general elections in view in 2007. Presently the Belgian State is under siege from both the Flemings and the Walloons. The centrifugal forces of the Flemings are far more marked than the centripetal forces of the Walloons. This balancing game will determine the future form of Belgium, be it a Federal State or a Confederation, or even a disintegration. But the Flemish need Brussels as their capital, which is situated at the heart of Flanders, even though the majority of its population are French-speaking. Therefore the resolution of the Brussels problem would be the decisive factor for how Belgium would evolve in the foreseeable future.
著者
古田 世子 吉田 美紀 岡本 高弘 若林 徹哉 一瀬 諭 青木 茂 河野 哲郎 宮島 利宏
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.433-441, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
27
被引用文献数
4 6

琵琶湖(北湖)の今津沖中央地点水深90 mの湖水検体から,通常Metallogeniumと呼ばれる微生物由来の特徴的な茶褐色のマンガン酸化物微粒子が2002年11月に初めて観測された。しかし,Metallogeniumの系統学的位置や生化学については未解明な部分が多く,また特に継続的な培養例についての報告はきわめて少ない。今回,Metallogeniumが発生した琵琶湖水を用いてMetallogeniumの培養を試みたところ,実験室内の条件下でMetallogenium様粒子を継続的に産生する培養系の確立に成功した。Metallogeniumを産生する培養系には,真菌が存在する場合と真菌が存在せず細菌のみの場合とがあった。実際の湖水中には真菌の現存量は非常に少ないため,細菌のみによるMetallogeniumの産生が湖水中での二価マンガンイオン(Mn2+)の酸化的沈殿に主要な役割を担っていると考えられる。真菌が存在する培養系では約2週間程度の培養によりMetallogeniumが産生された。しかし,細菌のみの培養系においては,Metallogeniumの産生に4週間から6週間を要した。本論文では特に細菌のみの培養系におけるMetallogeniumの発育過程での形態の変化を光学顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて継続観察した結果について報告する。