著者
武市 尚也 西山 昌秀 海鋒 有希子 堀田 千晴 石山 大介 若宮 亜希子 松永 優子 平木 幸治 井澤 和大 渡辺 敏 松下 和彦 飯島 節
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100763, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 大腿骨頸部・転子部骨折 (大腿骨骨折) 患者における退院時の歩行自立度は退院先や生命予後に影響を与える. 先行研究では, 退院時歩行能力に関連する因子として年齢, 性, 認知機能, 受傷前歩行能力などが報告されている (市村, 2001). しかし, 術後1週目の筋力, バランス能力が退院時の歩行自立度に及ぼす影響について検討された報告は極めて少ない. そこで本研究では, 大腿骨骨折患者の術後1週目の筋力, バランス能力が退院時の歩行自立度に関連するとの仮説をたて, それを検証すべく以下の検討を行った. 本研究の目的は, 大腿骨骨折患者の術後1週目の筋力, バランス能力を独立変数とし, 退院時歩行自立度の予測因子を明らかにすることである.【方法】 対象は, 2010年4月から2012年9月の間に, 当院に大腿骨骨折のため手術目的で入院後, 理学療法の依頼を受けた連続305例のうち, 除外基準に該当する症例を除いた97例である. 除外基準は, 認知機能低下例 (改訂長谷川式簡易認知機能検査: HDS-R; 20点以下), 入院前ADL低下例, 術後合併症例である. 調査・測定項目として, 入院時に基本属性と認知機能を, 術後1週目に疼痛と下肢筋力と下肢荷重率を調査および測定した. 基本属性は, 年齢, 性別, 術式である. 認知機能評価にはHDS-Rを, 疼痛評価にはVAS (Visual Analog Scale) をそれぞれ用いた. 疼痛は, 安静および荷重時について調査した. 下肢筋力の指標には, 膝関節伸展筋を用い, 検者は筋力計 (アニマ株式会社, μ-tasF1) にて被検者の術側・非術側の等尺性筋力値 (kg) を測定し, 体重比 (%) を算出した. バランス能力の指標には下肢荷重率を用いた. 測定には, 体重計を用いた. 検者は被検者に対し, 上肢支持なしで体重計上5秒間, 最大荷重するよう求め, その際の荷重量 (kg) を左右測定し, 体重比 (%) を算出した. 歩行自立度は退院1日前に評価された. 歩行自立度はFIMの移動自立度 (L-FIM) に従い, 歩行自立群 (L-FIM; 6以上) と非自立群 (L-FIM; 6未満) に分類した. 統計解析には, 退院時歩行自立群および非自立群の2群間における基本属性および術後1週目の各因子の比較についてはt検定, χ²検定を用いた. また, 退院時の歩行自立度を従属変数, 2群間比較で差を認めた因子を独立変数として, ロジスティック回帰分析を実施した. さらに, 退院時歩行自立度の予測因子とロジスティクス回帰分析で得られた予測式から求めた数値 (Model) のカットオフ値の抽出のために, 受信者動作特性 (ROC) 曲線を用い, その感度, 特異度, 曲線下面積より判定した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院生命倫理委員会の承認を得て実施された (承認番号: 第91号).【結果】 退院時における歩行自立群は48例, 非自立群は49例であった. 基本属性, 認知機能は, 年齢 (自立群73.9歳 / 非自立群81.8歳), 性別 (男性; 35% / 10%), 術式 (人工骨頭置換術; 56% / 29%), HDS-R (27.2 / 25.9) であり2群間に差を認めた (p<0.05). 術後1週目におけるVASは安静時 (1.0 / 1.8), 荷重時 (3.7 / 5.0) ともに非自立群は自立群に比し高値を示した (p<0.05). 膝伸展筋力は術側 (22.0% / 13.8%), 非術側 (41.8% / 27.6%) ともに自立群は非自立群に比し高値を示した (p<0.05). 下肢荷重率も術側(75.3% / 55.8%), 非術側 (98.2% / 92.3%) ともに自立群は非自立群に比し, 高値を示した (p<0.05). 2群間比較で差を認めた因子を独立変数としたロジスティクス回帰分析の結果, 退院時歩行自立度の予測因子として, 術側膝伸展筋力 (p<0.05, オッズ比; 1.14, 95%信頼区間; 1.04-1.28)と術側下肢荷重率 (p<0.05, オッズ比; 1.04, 95%信頼区間; 1.01-1.08) が抽出された. その予測式は, Model=術側膝伸展筋力*0.131+術側下肢荷重率*0.04-4.47であった. ROC曲線から得られたカットオフ値は, 術側膝伸展筋力は18% (感度; 0.72, 特異度; 0.77, 曲線下面積; 0.78), 術側下肢荷重率は61% (感度; 0.76, 特異度; 0.68, 曲線下面積; 0.76), そしてModelは0.77 (感度; 0.76, 特異度; 0.87, 曲線下面積; 0.82) であった.【考察】 大腿骨骨折患者の術後1週目における術側膝伸展筋力と術側下肢荷重率は, 退院時の歩行自立度を予測する因子であると考えられた. また, ロジスティクス回帰分析で得られた予測式から算出したModelはROC曲線の曲線下面積において上記2因子よりも良好な判別精度を示した. 以上のことから, 術側膝伸展筋力および術側下肢荷重率の両指標を併用したModelを使用することは, 単一指標よりも歩行自立度を予測する因子となる可能性があるものと考えられた.【理学療法学研究としての意義】 本研究の意義は, 術後早期における退院時歩行自立度の予測因子およびその水準を示した点である. 本研究の成果は, 急性期病院において転帰先を決定する際の一助になるものと考えられる.
著者
若林 泰央
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

当該年度の研究は主に二種類へ大別される。一つ目は、p進タイヒミュラー理論のシンプレクティック幾何学的観点についての研究である。複素数体上のタイヒミュラー理論において、射影構造のモジュライ空間上に構成される様々なシンプレクティック構造の比較は、基本的な主題の一つである。特に(様々な意味での)一意化により標準的に構成されるシンプレクティック構造とGoldmanによる構成との比較は、S. Kawai、P. Ares-Gastesi、I. Biswas、 B Loustauらによってなされている。当該年度の研究では、通常べき零固有束のp進持ち上げによる一意化において、同様の比較定理が成り立つこと証明した。これにより、p進タイヒミュラー理論の新たな側面を見出し、解析的な一意化の議論をp進版において実現する技術が拡張された。当該成果は論文「Symplectic geometry of p-adic Teichmuller uniformization for ordinary nilpotent indigenous bundles」としてまとめ、プレプリントを近日公開する予定である。二つ目は、正標数におけるベーテ仮説方程式に関する研究を行った。E. Frenkelによって示された「ベーテ仮説方程式の解と然るべきMiura operとの対応」の正標数(およびdormant operにおける)類似を証明した。その応用として、小平消滅定理などの反例を与える正標数の代数多様体の具体例を構成した(これは正標数の代数幾何学において基本的な主題の一つである)。これらの成果は論文「Dormant Miura opers, Tango structures, and the Bethe ansatz equations modulo p」としてまとめ、プレプリントを近日公開する予定である。
著者
若林 嘉一郎 山口 信吉
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.244-246, 1987-08-15 (Released:2017-11-30)

昭和59年9月9日午後11時ごろ,富山県下のアルミニウム鋳造工場のアルミスクラップ溶解炉で爆発事故が発生し,作業者が死亡した.この事故は溶解炉内の溶融アルミがアルミスクラップが含有していた水分に接触した直後に起きたため,翌朝のテレビではこれを水蒸気爆発の発生と報じた。 ところが,その後のわれわれの調査により,この事故では水蒸気爆発のほかに2次的に発生したアルミ液滴の燃焼による爆発(霧滴爆発)が存在したとわかった.また,この事故が大きい被害をもたらしたことの主体は,2次的な霧滴爆発であることもわかった. 溶融アルミにおける水蒸気爆発では2次的に霧滴爆発が随伴する可能性が高いことは研究ずみであるが1),それが起きたという事故例についての報告が少ない、本報ではそれを報告する.
著者
若月 英三
出版者
東京歯科大学学会
雑誌
歯科学報 (ISSN:00373710)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.p788-791, 1975-05
著者
伊藤 譲 櫻井 唯太 若松 純哉 服部 辰広 平沼 憲治
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.2001-2013, 2020

The purpose of this study was to describe the role of judo-therapist’s office, named Sport Cure Center (SCC), based on the medical records. In general, many judo-therapist’s office visitors are elderly. Most of the SCC patients are athletes of the Nippon Sports Science University. There have been few reports on sports in-juries based on the medical records of judo-therapist’s office. Therefore, we analyzed the medical records of SCC and examined the role of SCC. In 2.5-years of study period, we identified 4,903 injuries in approximately 44,000 athletes. Bruise and muscle sprains were the most common type of injuries (42.8%), and lower extremity was the most frequent site of injury (55.9%). Most of the patients of SCC belonged to the track, soccer, and rugby clubs that are active on the same campus as SCC. The type and site of sports injuries were characterized by the type of sports. Our study on sports injuries can help coaches and trainers take appropriate strategies for the prevention of injuries. These results suggest that the role of SCC is not limited to providing first aid and rehabilitation to the injured university athletes; SCC has the provision to provide information on injury prevention according to the sports categories.
著者
大久保 淳一 長谷川 翔一 髙橋 梓 竹内 頌子 若杉 哲郎 鈴木 秀明
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.277-282, 2019 (Released:2019-04-13)
参考文献数
15
被引用文献数
1

当科における過去15年間の咽頭・頸部食道義歯異物症例について検討した。症例は26例で年齢中央値は79.5歳,クラスプ介在部位最深部は食道入口部〜頸部食道11例,下咽頭10例,中咽頭4例,上咽頭1例であった。全身麻酔を要した例は14例,気管切開術を要した例が4例,頸部外切開を要した例が1例,死亡例が1例あった。全身麻酔症例は,食道入口部〜頸部食道介在義歯11例中9例(82%),U型義歯14例中9例(64%)であった。気管切開症例の義歯は全てU型で,この中には死亡した1例が含まれていた。頸部外切開例ではU型義歯が食道入口部に介在していた。以上より,介在部位が食道入口部〜頸部食道の場合やU型義歯では重症化しやすいと考えられた。
著者
若林 恭子 武藤 志真子 神戸 絹代 石川 元康
出版者
日本健康学会
雑誌
日本健康学会誌 (ISSN:24326712)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.12-23, 2018-01-31 (Released:2018-02-16)
参考文献数
17

The influence of stress on employee health has recently increased. The present study aims to clarify the relationship between eating behavior and stress as factors in obesity, which has become a central issue for lifestyle-related disease prevention. We surveyed 220 male employees between February and March 2014 and examined relationships among eight categories of eating behavior in four groups: obesity and high-stress (Group I), obesity and low-stress (Group II), non-obesity and high-stress (Group III) and non-obesity and low-stress (Group IV). We previously compared the scores for each category of four groups with those of a group with normal weight using t-tests. Here, we compared our earlier findings with those from the four groups described above. The responses showed that Groups I and III differed significantly in all categories related to eating behavior. This indicated that high stress was associated with changes in eating behavior and that some respondents had problems with eating behaviors regardless of whether they were obese. These results indicate that health guidance is needed in the future to understand the stress levels of obese individuals.
著者
若林 哲宇 丸山 誠太 星野 遼 森 達哉 後藤 滋樹 衣川 昌宏 林 優一
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.2, 2017-10-16

電波再帰反射攻撃(RFRA: RF Retroreflector Attack)とはサイドチャネル攻撃の一種である.盗聴を行いたいターゲットにFETとアンテナから構成されるハードウェアトロイ(HT)を埋め込み,そこへ電波を照射するとHTを流れる信号が反射波で変調されて漏洩する.攻撃者はこの反射波を復調することでターゲットの信号を盗聴することが可能となる.反射波の復調にはSDR(Software Defined Radio)を利用する方法が安価で簡単であるが,性能の限界が専用ハードウェアと比較して低い.本研究ではSDRによる電波再帰反射攻撃の脅威を示すとともにその限界を調査した.
著者
中村 誠 三村 治 若倉 雅登
出版者
日本眼科学会
雑誌
日本眼科学会雑誌 (ISSN:00290203)
巻号頁・発行日
vol.119, no.5, pp.339-346, 2015-05
著者
岩佐 真弓 塩川 美菜子 山上 明子 井上 賢治 若倉 雅登
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-58, 2018

Leber遺伝性視神経症(LHON)は10~20代の若年男性に好発するとされるが,比較的高齢発症する症例の臨床的特徴を検討した.2002年から2015年に受診したLHON92例のうち,発症年齢が50歳以上であった14例に対し,その年齢・性別・ミトコンドリアDNA変異の種別,臨床経過をレトロスペクティブに検討した.50歳以上で発症した14例(男性11例,女性3例)のDNA変異はm.11778G>Aを有し,そのうち8例で家族内発症が明らかであった.最低視力の平均は0.01,最終視力の平均は0.02であり,視野はゴールドマン視野計で5~30度の中心暗点を呈した.また,アルコール依存症,網膜静脈閉塞症,胃全摘などの既往歴がみられた.当院で経験したLHONのうち,50歳以上の症例は10%を超えており,稀ではなかった.いくつかの既往歴は,誘因としての役割という観点から今後注意していくべきものと考えられる.
著者
麻原 きよみ 小野 若菜子 大森 純子 橋爪 さつき 井口 理 池谷 澄香 小林 真朝 三森 寧子 宮崎 紀枝 長澤 直紀 佐伯 和子 留目 宏美
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.80-88, 2019 (Released:2019-08-30)
参考文献数
25

目的:自治体で働く事務職と保健師が,両者が関わる中で保健師の仕事をいかに認識しているのかについて記述した.方法:2つの自治体の事務職10名,保健師15名に対するインタビューを中心として参加観察,資料の検討を行い,質的に分析した.結果:事務職については〈事務職がもつ基準で保健師の仕事をとらえる〉〈事務職と同じ行政職としての仕事を求める〉のカテゴリと4つのサブカテゴリ,保健師については〈保健師の仕事と専門性が理解されない〉〈行政組織の一員として保健師の仕事をするために努力する〉のカテゴリと4つのサブカテゴリが抽出された.考察:事務職は官僚制組織の特性を示す基準,保健師は専門職の基準で保健師の仕事をとらえていること,そこには組織内の集団間パワーバランスが関連していると考えられた.保健師は事務職とは判断基準が異なることを前提として,協働のあり方や基礎・現任教育を考える必要がある.