著者
川喜田 健司 藤木 実 小川 卓良 木戸 正雄 丸山 満也 智原 栄一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.110-123, 2007-05-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
25

本シンポジウムでは、手首の橈骨動脈の脈状から内臓臓器の機能を知るということは可能かという設問に対して、さまざまな立場の専門家が見解を述べた。小川は脈診の臨床的意義を明らかにするためには、脈診の診断法としての再現性と、その証に基づく治療が臨床医学的観点からより有効であることの証明が必要とした。木戸は脈診トレーニング法を紹介し、それに基づく臨床試験の試みから、脈診の診断・治療上の意義を明らかにした。丸山は、圧センサを用いた脈波情報の計測と数値モデル解析による脈診の客観化の試みを紹介し、その限界とともに将来の客観化の可能性に言及した。智原は、脈診で用いられる橈骨動脈で検出される圧脈波のもつ意味について、病態生理学的観点を交えてさまざまな可能性を示し、その情報が全身状態を反映する可能性を認めながらも、その対応は1 : 1ではないことを指摘した。最後に脈診に関する実験的検討の必要性が確認された。
著者
庄司 吏香 早瀬 須美子 北川 元二 山中 克己 藤木 理代
出版者
名古屋学芸大学管理栄養学部
雑誌
名古屋栄養科学雑誌 = Nagoya Journal of Nutritional Sciences (ISSN:21892121)
巻号頁・発行日
no.3, pp.53-67, 2017-12-22

【目的】便秘の評価は、一般に主観的に回答する質問票により行われており、客観的な評価法は確立されていない。欧米人について、便秘と呼気中メタン濃度(以下、メタン濃度)との関連が多く報告されている。日本人については、高齢者に関する報告は散見するが、若年女性を対象とした報告はほとんどない。そこで本研究では、女子大学生のメタン濃度と排便習慣、生活習慣、食習慣ならびに食物摂取状況について調査し、メタン濃度が便秘の客観的な指標となりうるかについて検討した。【方法】女子大学生281人を対象に、メタン濃度を、呼気ガス分析機を用いて測定した。排便習慣(11項目)、生活習慣(8項目)、食習慣(5項目)、ならびに食物摂取頻度調査を実施した。解析対象者は記録に不備のなかった235人である。【結果】メタン産生者のカットオフ値は2.73ppm と報告されているが、今回調査した女子大学生の呼気中メタン濃度の平均値は2.40±0.58ppm であった。排便習慣に関する各質問項目について、回答肢ごとに平均メタン濃度を比較したところ、1週間の排便頻度が1日以下、1日あたりの排便量1個以下、便の形状が硬い、ほぼ毎日硬便、おならがよく出る、排便時のいきみが重い、排便時の残便感が重い、腹部不快感・痛み、胃痛、お腹の張りが重い者では平均メタン濃度が有意に高かった。生活習慣については、普段の体調、水分摂取量、生理中であることが呼気中メタン濃度と関連があった。食習慣および栄養摂取状況については関連がなかった。1週間に3日未満の便秘者と3日以上の快便者間との呼気中メタン濃度に有意差は認めらなかったが、便秘の症状である排便時のいきみ、残便感、お腹の張りなどについては、呼気中メタン濃度と関連がみられた。呼気中メタン濃度は便秘の主観的症状を客観的に評価する指標として期待できると考えられた。【結論】対象者は若年者であり、メタン濃度は全般的にかなり低く、分布も狭かった。1 週間に3日未満の便秘者と3日以上の快便者間のメタン濃度に有意差は認めらなかったが、便秘症状である排便時のいきみ、残便感、お腹の張りなどについては、呼気メタン濃度と関連がみられた。呼気メタン濃度は便秘の主観的症状を客観的に評価する指標としては期待できると考えられた。
著者
山路 奈保子 因 京子 藤木 裕行
出版者
専門日本語教育学会
雑誌
専門日本語教育研究 (ISSN:13451995)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.45-52, 2014

日本語母語話者大学生の文章作成技能の獲得を支援する方法の開発を目ざし、学部後半の文章作成技能獲得状況とそれに伴う認識の変化を把握するため、工学系専攻の学部から大学院に進学した直後の学生に対し、本人が学部3年生時に書いた作文の問題点を指摘するコメントと、同一主題による作文の作成を求めた。作文から文章作成技能が向上したと判断された学生に対しては、自己評価と獲得過程についての自己認識を問うインタビューを実施した。コメントには、根拠の弱さや説明不足の指摘、冗長さの整理やより適切な語・語句への提案がみられ、思考と言語表現の両面で厳密さ・明確さへの意識が高まったことが観察された。大学院進学直後の作文では、全体構造が重層化し、それがメタ言語表現などによって明示されており、学術的文章らしい特徴を強めていた。内容も、議論や判断の前提の記述が出現し、主張に至る推論の各段階が詳細に提示されるなど、議論の過程を読者と共有するために有用な記述が増加していた。インタビュー調査では、学術的文章らしい構造や表現の使用が、単に模倣や形式遵守の意識からではなく「受け手の理解を得られる効率的な伝達の要件」として内面化されていること、受け手への配慮の重要性を認識する上で「自分の表現意図が通じない」という失敗を含む対人コミュニケーションでの経験など、学術的文章執筆以外の経験が有用に働いていることが示唆された。
著者
川邉 千津子 石井 洋平 藤木 僚 小路 純央 森田 喜一郎
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.451-461, 2013-10-15

要旨:「神経衰弱」実施による脳機能の精神生理学的評価および治療効果の検証へと繋げるため,高次脳機能障害(患者)群と健常群を対象に,前頭極部,前頭葉背外側部,頭頂葉前中部の酸素化ヘモグロビン変動量を近赤外分光法を用い検討した.結果は,患者群は健常群と比較し有意な低下(前頭極部,前頭葉背外側部,頭頂葉前中部いずれもp<0.001)を認めた.また酸素化ヘモグロビンは,健常群では時間経過に伴う増加や左前頭葉背外側部と右頭頂葉前中部で対側と比較し増加を認めたが,患者群では時間経過に伴う増加や左右差を認めなかった.患者群は「神経衰弱」の遂行に関与するワーキングメモリーを司る部位が十分に賦活されていないことが確認された.
著者
金 基淑 藤木 澄子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.172-177, 1984-03-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

1) 梨果汁はこれに肉を浸漬することにより肉の軟化効果をあらわすことが認められた.2) 肉軟化の要因はプロテアーゼの存在のためと推測し, その抽出を試み, 抽出した粗酵素について若干の性質を調べた。i) 粗酵素活性の至適pHは5.5で, 梨汁のpHとほぼ一致している.ii) 粗酵素の至適温度は50~55℃で55℃を越すと活性が急速に低下するから, 加熱調理の初期の段階で強く働くものと思われる.iii) 本酵素はHg2+, Ag+, Cu2+等の重金属イオンによって活性が強く阻害された.また, 活性の発現にはD.T.T.システイン, あるいはメルカプトエタノール等のSH基保護試薬を必要とすることから, パパイン, ファイシン, プロメリソ等の植物起源プロテアーゼと同様にSH酵素であろうと思われる.3) 肉軟化効果は梨汁の場合よりも梨抽出粗酵素溶液を用いた場合のほうがよりいっそう顕著であった.4) 粗酵素の筋原繊維タンパク質への影響を調べたところ, ミオシンが反応時間の経過とともに分解されていくことが認められた.これは肉軟化の大きな要因であると考えられる.5) 肉組織の観察の結果から, 粗酵素溶液の肉基質タンパク質への影響もみられた.6) 筋漿タンパク質についても粗酵素によるプロテオリシスがみられた.
著者
藤木 明
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.373-386, 2014 (Released:2015-07-27)
参考文献数
19

房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)には典型的なslow-fast型以外に非典型とされる様々なタイプがあり,その多様性が指摘されている.房室伝導を構成するcompact nodeとposterior nodal extensionの性質が,不整脈の発生に関与する.周囲の心房筋とtransitional cellを介した接合は,anisotropyの強い心房筋の影響を受けやすい.心房筋との接合部は典型的なfast pathwayとslow pathway以外に,intermediate pathwayとよべる接合が両者の間に存在している.それらpathwayの組み合わせにより多様なAVNRT回路が成立するのであろう.それぞれの回路ごとにアブレーションに対する反応が異なるため,正確な診断が重要となる.また,心房筋との接合状態は房室伝導のconcealed conductionにも関与し,心房細動時の心室応答を規定する要因となる.社会の高齢化とともに,今後さらに多様なAVNRTに遭遇する機会が増えるものと考えられる.
著者
藤木 登
出版者
大東文化大学
雑誌
大東法学 (ISSN:02870940)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.八三-一〇八, 1996-03-30
著者
入鹿山 且朗 田島 静子 藤木 素士
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.392-400, 1967-06-10 (Released:2009-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
3 6

(1) 酸化第二水銀または塩基性硫酸第二水銀とアセトアルデハイドとの反応により, 薄層クロマトグラフィでCH3HgOHと同一Rf値をもつ有機水銀が生成した。この反応液に塩化物を加えるとCH3HgClと同一Rf値をもつ有機水銀が証明された。(2) 酸化第二水銀とアセトアルデハイドより2種の水銀物質を得た。その一つは酢酸第二水銀と同定された。酢酸第二水銀と食塩の混合物を加温してCH3HgClの結晶を得た。
著者
青柿 節子 黒沢 和子 藤木 澄子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.451-456, 1982

天ぷらを作る際に衣にしょうが汁を添加すると軽い好ましい衣ができるといわれているのでその理由を検討したところ次のような結果が得られた.<BR>1) 小麦粉のとき水に10%しょうが汁を添加した衣は放置時間に伴ってBL型粘度計による粘度, 揚げ種への付着量, テクスチュロメーターによる硬さ・付着性が低下した.<BR>2) 20分間放置した添加衣を光学顕微鏡により観察すると連続していたグルテンが小さく分散していることが認められた.<BR>3) 揚げ衣はしょうが汁添加後の放置時間の延長に伴って水と油の交代がよく行われた.無添加衣にはこのような傾向は認められなかった.<BR>4) 添加衣, 無添加衣を用いてさつまいもの天ぷらを作り, 官能検査をした結果, 添加衣を20分間放置したものが最も好まれた.<BR>5) しょうがからプロテアーゼを抽出精製して, その酵素液をグルテニン・グリアジンに作用させ, SDS-PAG電気泳動を行った結果, 5分間の反応により, グルテニンの分子量104,000, 84,000に相当するバンドおよびグリアジンの分子量46,000に相当するパンドが消失して低分子化していることが認められた.<BR>以上の結果より天ぷらの衣にしょうが汁を添加するとからりとした好ましい成績が得られることが明らかになった.また魚等の腿臭のある揚げ種にこの衣を用いると, しょうがの芳香も有効に働き, 効果的ではないかと考えられる.
著者
畠山 正行 加藤木 和夫 石井 義之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.2567-2581, 2000-09-15

多様な科学/工学分野のドメインユーザの低いプログラム開発力を向上させるため,ユーザの母国語である自然日本語をベースとしてオブジェクト指向の構造化記述ができるオブジェクト指向記述日本語OODJを分析段階の記述言語として考案・開発した.OODJは自然日本語に対し強い構造記述性を持つオブジェクト指向の枠組みを記述モデルと構文規則の形で導入・設計された.オブジェクト指向記述環境もあわせて設計・実装してOODJに含めた.評価用に記述例を作成するとともに,数人のドメインユーザによる記述実験を行った.その結果,自然言語の持つ強い記述力の上にオブジェクト指向の構造化記述法を確立したことで記述力の高さに対する顕著な向上が認められ,設計の狙いは実現した.そのほか,プログラミング言語フリー,自然言語の範疇であることからくる記述の容易性・高い了解性,日本語一貫記述言語系の一環であることのメリットが認められ,かつ重大な欠点は見出せなかった.他の言語(主としてUML)との比較・評価も行われ改良案も提案された.以上からOODJがドメインユーザにとって十分有用な分析記述言語であることが結論された.
著者
藤木 大介 中條 和光
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.252-269, 2005 (Released:2009-10-16)
参考文献数
37
被引用文献数
2

This study investigated the forming process of the sentence semantic representation. Fujiki and Chujo (2005) consider it the integration process of schemata. Their model assumed that the integration occurred when encountering syntactic head words of phrases, and that the schemata of the constituents except the head were integrated into the head schema. However, their model could explain only two types of integration, so this study extended the model including the process of comparison and alignment for schemata. To test the validity of this extended model, we compared sentences including acceptable noun phrases with sentences including unacceptable noun phrase. As the result of the measuring the reading time of those noun phrases and judgment time of the acceptability of those sentences, the semantic processes of these sentences changed depending on the load of sentence processing. We proposed that the model would change its behavior as the amount of the available resources changed
著者
藤木 大介
出版者
The Japanese Psychonomic Society
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.43-44, 2002-09-30 (Released:2016-11-18)

This study investigated comprehension processes of Japanese sentences which included an adjective-noun phrase. Specifically, we examined whether evaluation of a consistent semantic relation between an adjective and a noun in a sentence of reading material was suspended until the argument structure of the sentence was constructed. Twenty-three participants read two types of sentences: acceptable sentences that contained a plausible adjective-noun phrase, and unacceptable sentences that contained an implausible adjective-noun phrase. In comparison with the acceptable sentences, phrase-by-phrase reading time for the unacceptable sentences was prolonged not only at the position of adjective-noun phrase but also at the position of the verb that constructed the propositional representation of the sentence. This result suggests that evaluation of a semantic relation of an adjective-noun phrase is postponed until the coherent argument structure is constructed.
著者
藤木源吾 著
出版者
文晃書院
巻号頁・発行日
1949
著者
藤木 淳 赤穂 昭太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.760, pp.141-146, 2005-03-23
参考文献数
8
被引用文献数
5

高次元ベクトルデータの解析においては, ベクトル間の類似性の尺度としてユークリッド距離のかわりに相関係数を用いることが多く, この際, 高次元ベクトルデータは単位超球面上の点として表現される.そこで本稿では単位超球面上の点列の次元縮約を低次元の超球面のあてはめで実現するために, 極射影によるユークリッド化を用いた球面最小二乗法及び段階的次元縮約法を提案し, その手法の有効性を人工データを用いたシミュレーションにより確認した.