著者
中澤 達哉 近藤 和彦 森原 隆 小山 哲 小森 宏美 池田 嘉郎 古谷 大輔 小原 淳 阿南 大
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、「王のいる共和政」の国際比較を通じて、近代ヨーロッパ共和主義の再検討を行った。この結果、ハンガリー、ドイツ、ポーランド、スウェーデン、オーストリアにおいて、「王のいる共和政」というジャコバン思想と運動が存在したことを解明した。さらに、これらの地域における「王のいる共和政」論の源流を、16世紀の政治的人文主義(political humanism)による古代ローマ共和政の近世的再解釈に見出した。加えて、この思想が啓蒙絶対王政を正当化するための主導的原理として機能したことを実証した。このようにして、この原理が1790年代の中・東欧において広範に拡大することになったのである。
著者
中谷 大輔 仲谷 英夫
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.5-16, 2023-03-31 (Released:2023-04-14)

Plesiosaur fossils are only scarcely known from the Upper Cretaceous of southwestern Japan. Here, we describe a plesiosaur fossil from the Upper Cretaceous Izumi Group of Kagawa Prefecture, southwestern Japan. The fossil is identified as the diaphysis of a left propodeal, and it belongs to an adult individual because the tuberosity or trochanter is differentiated from the capitulum (sense Brown, 1981). The preaxial margin is concave, and the tuberosity or trochanter is narrow and posteriorly located in dorsal view. This combination is observed in some specimens of the Elasmosauridae and Leptocleidia, but preservation of the described propodial is insufficient to identify even at the family level. Therefore, the specimen is identified as an indeterminate Xenopsaria, which is a clade that include the Elasmosauridae and Leptocleidia. Although fragmentary, the specimen is an important record as the first confirmed adult individual of a plesiosaur recorded in this area.
著者
宮田 和周 中田 健太郎 柴田 正輝 長田 充弘 永野 裕二 大藤 茂 中山 健太朗 安里 開士 中谷 大輔 小平 将大
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.239-254, 2023-04-01 (Released:2023-03-31)
参考文献数
100

長崎半島東海岸に露出する上部白亜系“北浦層”を長崎北浦層と改定した.本層は下部の赤崎ノ鼻砂岩泥岩部層と上部の座頭浜礫質砂岩泥岩部層に二分でき,両部層は断層で接する.赤崎ノ鼻砂岩泥岩部層から産した2種のアンモナイト類(Polyptychoceras obataiとcf. Phylloceras sp.)と1種のイノセラムス類(Platyceramus japonicus),座頭浜礫質砂岩泥岩部層から産したハドロサウルス上科の鳥脚類恐竜の大腿骨化石を記載した.赤崎ノ鼻砂岩泥岩部層の軟体動物化石と砕屑性ジルコンのU-Pb年代から,長崎北浦層の時代は後期サントニアン期以降であり,おそらくカンパニアン期におよぶ.座頭浜礫質砂岩泥岩部層は岩相から長崎半島西海岸の三ツ瀬層の下部(中期カンパニアン期)に対比できる.長崎北浦層の層序は西九州の上部白亜系姫浦層群の下半部に関連すると考えられる.
著者
熊谷 大輔
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.21-37, 2017-03-21

近年、人口減少や高齢化の進行する地方では小地域福祉活動が活発化してきている。一方、それら活動には継続が困難となる場合も少なくない。これら小地域福祉活動における継続要因は、(1)柔軟な参加と活動の仕組み、(2)利他意識の醸成、(3)人との出会いとつながり、(4)地域への理解と愛着の生成、(5)活動に対する誇りと自信、の5 つの論点にまとめることができる。本論文では、福祉をめぐる「場づくり」を目指すF団体に所属するメンバー6 名に実施したインタビュー調査をもとに、活動の継続要因や望ましい活動のあり方について、5 つの論点との関連性と活動メンバー個々人に生じる変化を踏まえて検証した。そのうち、(1)「柔軟な参加と活動の仕組み」は活動の「条件」に当たるものであり、(2)以降の4つの論点は活動の「成果」に当たるものであり、「成果」の実感と活動「条件」の整備との間には困難な調整が求められることが示唆された。さらに、これら「成果」と「条件」は「一般化」と「特殊なものとの融合」という2 つの志向が影響していると考えられ、活動主体のずれは多様な人びとが活動に参加することによる多様性が増せば増すほど活動主体は個々に異なる方向に純化させようとする考え方を生成しやすいことが示唆された。以上を踏まえると次のように結論づけられる。(1)活動メンバーは「活動の仕組み」以上に「人との出会いやつながり」を重視する傾向がある。(2)したがって、小地域福祉活動の継続には、「共同・実践ありき」と呼ぶべき「活動姿勢」の実現が重要な鍵を握る。(3)さらに言えば、「柔軟な参加態度と活動の仕組み」という最低限の「条件」と活動の多様な「成果」との調整が不可欠である。In recent years, small local welfare activities have increased in depopulation and aging regions.However, most of those activities cannot continued. Through my short bibliographic survey, Iconclude the primary factors of continuation of those activities as follows: 1) organization for flexibleparticipation of members and decision of activities, 2) fostering of altruistic awareness of members,3) encounters with the unknown and connections with members, 4) fostering of understanding ofand attachment for local community, and 5) self-confidence and pride of the activities.Therefore, in this paper I studied the interrelationship between these factors, paying attention topersonal changes of members, through the interviews with six members of Group F which aims tochange the negative image of welfare work in Akita City.At first, I analyze that the first factor corresponds to the activities "conditions," and the otherfour factors correspond to the "results." Consequently, the members of group need to difficultcoordination between the first conditional factor and the other resultant factors. In addition, I findout that in the conditional factor "respect for the peculiarity" is oriented and in the resultant factors"generalization" is valued. Accordingly, I guess the latent conflict between members has beenoccurred from this inconsistency of orientations.Lastly, I conclude as follows : 1) the members of groups tend to make much more of the resultantfactors, especially "encounters and connections", than the conditional factor. 2) this "encountersand connections" factor can be called the activity principle for "cooperative practice". 3) thoughtthis principle the group could solve the conflict between organizational condition and resultant fulfillment of members.
著者
麻生 博之 浅見 克彦 荒谷 大輔 冠木 敦子 川本 隆史 城戸 淳 熊野 純彦 中 真生 馬渕 浩二
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、「エコノミー」という事柄を、その概念史をふまえながら、倫理をめぐる原理的問題として考察し、諸々の研究領域を横断する新たな倫理学的視座を模索することを課題として、研究会等での多様な議論を通じて実施された。その結果、従来十分に明らかにされてこなかった「エコノミー」の概念史に関する包括的な視座を獲得し、その概念的実質について一定の知見を得た。また、そのような知見に依拠しながら、「エコノミー」と倫理をめぐる原理的な諸問題の所在を、いくつかの現代的事象や現代思想等に関わる個々の論点にそくして明らかにした。
著者
古谷 大輔
出版者
大阪外国語大学
雑誌
IDUN (ISSN:02879042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.241-258, 2006

Maktfordelningen mellan de suverana staterna i det tidiga moderna Europa utvecklades under trettioariga kriget, dar Sverige vann militart och bleu en stormakt runt Ostersjon. Darfor brukar manga forskare rikta in sig pa den svenska armen i utsikt om alt visa hur den militara utvecklingen tvingade staten att exploatera sina resurser pa ett annat satt och att modernisera statsforvaltningen. Som skal till att Sverige kunde bli en stormakt efter Gustav II Adolfs tid anges att den moderna stat, som byggdes upp pa 1600-talet hade ett rationellt system med varnplikt eller skatt. Men den tolkningen forutsatter att den moderna staten forvaltats endast inom dess grans. Malet fdr uppsatsen ar att undersoka hur Sverige finansierade trettioariga kriget och forklara hur Sverige forvaltades inom och utom dess granser. Efter att Gustav II Adolf med den svenska armen landsteg i norra Tyskland sommaren 1630, okade antalet soldater i den svenska armen plotsligt. Sverige behovde pengar for att anstalla dessa i Tyskland, men under det svenska finanssystemet pa 1600-talet kunde Sverige inte ta in pengar fran hemlandet, eftersom skatt i princip var insamlad in natura. Darfor tankte Gustav II Adolf och andra statsledare att kriget pa kontinenten maste finansieras av pengar som inkasseras fran andra lander. Svenska militarledare forbjod plundring, men svenska armen samlade in kontribution fran omradena som den hade besatt i Tyskland. Detta var grunden till att svenska armen kunde beviljas krediter pa kontinenten. Sveriges kammarkollegium utsag nagra svenska och nederlandska kopman som agenter for svensk krigsfinansiering i nagra stader langs kusten av Nordsjon och Ostersjon, till exempel i Amsterdam, Hamburg, Stettin, Stralsund osv., och forordnade dem att skicka pengar till svenska armen i norra Tyskland. De frammande kopman som hade forbindelser med svenska agenter lanade ut pengar mot borgen for skatt eller resurser som Sverige skulle skaffa i framtiden. Svenska militarledare anvande krediten och kunde inkassera pengar paa kort tid pa detta satt. Sveriges stormakt var alltsa beroende av internationella manskliga och ekonomiska natverk for sin krigsfinansiering.
著者
蔦谷 大輔
出版者
弘前大学國史研究会
雑誌
弘前大学國史研究 (ISSN:02874318)
巻号頁・発行日
no.125, pp.31-33, 2008-10-30
著者
和田 直己 谷 大輔 中村 仁美 大木 順司 西村 剛 藤田 志歩
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2013 (Released:2014-02-14)

脊椎動物の肢は前肢2本,後肢2本の合計4本である.4肢は 動物の体に前後,左右,さらに上下方向に作用する力に対して安定を保つに必要十分であり,また脊椎動物の特徴である体軸の運動を陸上で最大限に活用できる数である.前肢と後肢の機能は動物によって異なる.特に前肢の機能は多様で,動物を特徴づける.前肢は肩甲骨,鎖骨,烏口骨で体幹と連結する.哺乳類は体幹と前肢の連結において特に肩甲骨を発達させた脊椎動物である.肩甲骨の形質は動物の姿勢と運動の特徴を強く反映する.本研究の目的は肩甲骨の外形,力学的特性と動物の形質の関係を理解することにある.本研究の実験方法における課題は機能する肩甲骨の形状をとらえることにあった.そこで骨標本ではなく,全身,または前肢のCT撮影を行い,肩甲骨をPC上で構築し,計測を行った.本学会において,17目 100種の肩甲骨について調査した結果から導きだされた肩甲骨の形状と動物種,身体的特徴と運動との関係について発表を行う.謝辞国立科学博物館 山田格研究室,川田伸一郎研究室,大阪ネオベッツVRセンターのスタッフの方に深謝を.
著者
熊谷 大輔
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-14, 2016-03-18

少子高齢化・人口減少社会において福祉への需要は高まっているものの、福祉に対するイメージは都市・地方問わず悪化する傾向にある。しかもその傾向は、今後、福祉を担うことが期待される若年層を中心に広がりを見せている。そこで本論文では、福祉をめぐる「場づくり」を目指すF団体による、福祉と美容を組合せ、参加者どうしの対話を促すイベントへの参加者のうち3名に実施したインタビュー調査をもとに、福祉に対するイメージの転換と主体性が醸成される過程を検証した。まず、当初は世間が抱く一般的な福祉に対するネガティブなイメージの転換に注目していたが、それぞれの参加者が想定する福祉が「従事するもの」か「利用するもの」かにより、イメージが転換する構造に違いが見られた。このうち「従事する福祉」である場合、たしかに世間のネガティブなイメージの内面化が観察されたが、それは福祉に従事すること自体によってもたらされており、単に世間のイメージが問題であるとは言えなかった。他方、「利用する福祉」である場合には、ネガティブなイメージから進んでタブー意識があったりそもそも無関心であったりした。次に、異なるイメージの転換だけでなく主体性の醸成の気づきがあり、しかもそれらが互いに不可分に関連していると考えられた。すなわち「従事する福祉」が想定されていた場合、「相互扶助」や「利他」といった福祉の本来的な魅力の再確認がイメージの転換と主体性の醸成をともに促していた。これに対して、「利用する福祉」が想定されていた場合は、参加者の「自己体験化」が双方の過程で鍵を握っていた。以上を踏まえると、福祉に対するイメージ転換と主体性醸成をともに目指す今後の地域活動においては、福祉が「支え合い」よりも「利用し利用される」ものになっている現実を踏まえ、より「利用者」目線に立った戦略が必要だと言えよう。
著者
古谷 大輔 中本 香
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近年の近世ヨーロッパ史研究で議論されている複合国家論で典型例とされているスウェーデン、スペインを例にとり、国際戦争後の「帝国」再編過程を分析することから、空間的範囲設定を前提とした特異なスウェーデン民族性を統合軸とするようになったスウェーデン、イベリアとアメリカを自由主義的経済政策により相互補完的に統合したスペインといった複合的国家編成をまとめあげる統合軸の論理の差違を明らかにした。
著者
篠原 琢 戸谷 浩 吉岡 潤 割田 聖史 青島 陽子 古谷 大輔 小森 宏美 秋山 晋吾 中澤 達哉 小山 哲 池田 嘉郎 平田 武 梶 さやか
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本プロジェクトは、ポーランド=リトアニア連合王国(ロシア帝国西部諸県)、ハプスブルク帝国、沿バルト地域を中心に、近世から現代にいたるネーション、およびナショナリズムの動態を分析してきた。ここでは近世から20世紀にいたる各時代の政治社会におけるネーションの多次元的な機能と構成が分析された。近世期のネーションは、多様な政治的、文化的文脈で構築され、さまざまな価値と関連付けられ、ネーション理解は単一の政治社会に収斂しない。近代のネーションは政治社会における多様な交渉を全的に文脈化する傾向をもつ。本研究は個別研究と比較史の方法で境界地域におけるこの過程を明らかにした。
著者
尼ヶ崎 彬 副島 博彦 貫 成人 石渕 聡 荒谷 大輔 島津 京 丹羽 晴美 岡見 さえ
出版者
学習院女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

コンテンポラリーダンスは、1990年前後に世界各地で生まれ、わが国もその中心のひとつである。本研究は、その公演規模(社会的ニーズ)、美的質、社会基盤(政府などによる支援など)について、過去25年分10万件におよぶ統計資料作成、各国政府資料調査、聞き取りなどをおこない、各国の状況を明らかにした。その結果、公的支援が貧弱なわが国においても、公演数/支援額比においては見るべきものがあることなどが明らかになった。
著者
植田 隆太 今 裕史 和久井 洋佑 阪田 敏聖 蔵谷 大輔 武田 圭佐 小池 雅彦 鈴木 昭
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.985-991, 2020-12-01 (Released:2020-12-26)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

症例は63歳の男性で,糖尿病性腎症による末期腎不全で血液透析を19年間施行し,高カリウム血症のためポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate;以下,CPSと略記 商品名:カリメート散)を内服していた.進行する貧血と黒色便に対する精査で下行結腸癌の診断となり,腹腔鏡下結腸部分切除術(下行結腸),D3郭清を施行した.術後経過は良好で第11病日に退院したが,その後も貧血の進行と血便を認めたため,第43病日に下部消化管内視鏡検査を施行した.吻合部に全周性の出血する潰瘍を認め,その他に縦走潰瘍を1か所認めた.潰瘍からの生検では,潰瘍底に好塩基性多菱形の沈着物を認め,CPSの関与が疑われた.そのためCPSの内服を中止したところ,貧血の進行は止まり,その後の下部消化管内視鏡検査でも潰瘍は改善していた.それ以降3年間,癌および潰瘍の再発なく生存中である.