著者
堀口 淳 宮岡 剛 岡崎 四方 安田 英彰 和氣 玲 新野 秀人 宇谷 悦子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究期間の入院患者総数は132人のうちDSM-IVに基づく診断基準で統合失調症と診断された27人、うち入院加療中にアカシジアが発現した患者は4人である。研究期間の統合失調症患者総数55人(平均年齢37歳)のうちアカシジアの発現した患者総数は11人でアカシジアの発現率は20. 0%である。アカシジアが改善しなかった患者3人に抑肝散(7. 5g/日、分3食前)を投与したが、3例ともアカシジアは改善しなかった。終夜睡眠ポリグラフ検査実施例は24例(13歳~75歳、平均年齢36. 7歳±11. 7歳)であり、うちビデオカメラ撮影可能であったのは3例である。従って抽出できた「覚醒時」ミオクローヌス患者は3例のみである。当初の計画及び目的に対する達成度は遅れてしまった理由として、研究期間前に全ての対象患者が多種類の抗精神病薬で既に治療開始されていた症例であったためアカシジアの発現率と「覚醒時ミオクローヌス」の有症率とを単純には比較できなかったことによる。
著者
大河内 勇 吉村 真由美 安部 哲人 加賀谷 悦子
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.796, 2005 (Released:2005-03-17)

小笠原諸島では、近年昆虫類が固有種を中心に急速に減少しており、減少の時期と、減少の及んでいる地理的範囲、及び減少している種の生態が、1960年代以降侵入して拡がった北米からの外来種グリーンアノールAnolis carolinensis(爬虫類、有鱗目)と一致することから、グリーンアノールが主要な減少要因と影響と考えられている。グリーンアノールの影響は単に固有種の減少にとどまらず、生態系にひろく浸透している。例えばこれまでに本種が小笠原の固有のハナバチを激減させ、花粉媒介のシステムを劇的に変えてしまったことがわかっている。 本報告では、これに加え、二つの生態的影響を報告する。一つ目は、グリーンアノール自身が花粉の媒介者となる可能性である。昼行性のトカゲ類が花粉媒介を行うことは、インド洋、太平洋の熱帯の島々では知られている。その理由として、トカゲ類の密度が高く、天敵が少なく、餌不足になることが挙げられている。この点について、グリーンアノールの密度との関連で報告する。 二点目はやはり外来のマツノザイセンチュウ病との関係を報告する。小笠原には戦前に外来のリュウキュウマツが導入された、全島を覆ったが、1970年代に侵入したマツノザイセンチュウ病で急速な松枯れが始まった。しかし、いかなる防除もしていないのに、松枯れは数年で終息、いまや激減してリュウキュウマツが復活しつつある。これも外来種でマツノザイセンチュウの媒介者、マツノマダラカミキリがグリーンアノールに激減させられているためと考えられる。
著者
加賀谷 悦子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.183, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

クビアカツヤカミキリAromia bungiiは近年日本に侵入した外来生物であり、サクラ、モモ等のバラ科樹木を加害して問題となっている。特定外来生物に今年指定され、その防除は喫緊の課題である。樹皮下で生育する幼虫については、樹木の伐倒駆除や排糞孔への殺虫剤注入で防除が進められている。一般に、一次性穿孔性昆虫の死因は、樹木による防御が多い。つまり、幼虫の多くが孔道に浸潤する樹液や樹脂に溺れることで死亡する。本種の被害木にも樹液の樹皮上への流出が認められることが多く、樹木の抵抗により幼虫が死亡していることが推察される。そこで、本研究ではソメイヨシノの被害樹で、樹液の流出箇所の掘り取り調査を行い、その樹皮下の孔道の有無及び幼虫の生存を調査した。14箇所の樹液流出部位の樹皮を除去したところ、全ての箇所で樹皮下に孔道が認められ、本種の加害による防御であることが確認された。その中で、幼虫は8孔で生存していた。そのため、幼虫の駆除は盛んにフラスが排出されているところだけではなく、樹液が流出しているところでも実施することが必要であることが判明した。
著者
平野 誠志 加賀谷 悦子 宮里 心一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00238, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
7

著者が所属する道路関連会社において,2020年4月から5月にかけて20名の新型コロナウイルス感染者が発生し,クラスターと呼ばれる感染者の集団が発生した.本研究では,事前に策定された既存の感染症BCPに基づき実施した対策について,レジリエンスによる再評価を実施した.すなわち,感染症リスクを低減し感染拡大から回復する力を「レジリエンスの大きさ」,実際の感染者や濃厚接触者,自宅待機者などが通常業務に及ぼす影響を「損害の大きさ」と定義し,両者を比較した「総合評価」を用いて対策の妥当性の再評価を行った.さらに,再評価結果および既存の感染症BCPの準用結果を用いて,新型コロナウイルス感染症を対象にしたBCPに反映すべき対策の提案を行った.
著者
千葉 敦子 石田 賢哉 大西 基喜 メリッサ 小笠原 木村 美穂子 宮川 隆美 水木 希 澤谷 悦子 梅庭 牧子 奥村 智子
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-17, 2018 (Released:2022-02-02)
参考文献数
11

保健協力員は市町村長の委嘱を受けて地域住民の健康づくり活動を行う住民組織集団であり、青森県では短命県返上に向けてその活動が期待されている。しかし、保健協力員は担い手不足による固定化や高齢化が課題とされており、活動の活性化に向けた方策が求められている。活動を活性化するためには保健協力員の集団特性を把握し、組織特性に応じた支援の方向性を検討する必要がある。そこで、本研究ではA保健所管内の保健協力員と一般地域住民のヘルスリテラシーおよび主観的健康感を比較し、保健協力員の集団特性に応じた組織支援の示唆を得ることを目的に横断調査を実施した。その結果、ヘルスリテラシーでは「情報を理解し人に伝えることができる」の項目が、保健協力員の方が一般地域住民より有意に高いという結果であった。また、健康状態を示す主観的健康感が、保健協力員の方が一般地域住民より有意に高いという結果であった。
著者
深谷 悦子 岩滿 優美
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
pp.2018002, (Released:2019-01-18)
参考文献数
42

Objective: This study aimed to assess how the general public perceives and evaluates people with visible differences.Methods: This study targeted 153 university and graduate students. These students were shown four photographs, and were asked to anonymously answer an originally-developed questionnaire which included items on perception and evaluation of people with visible differences. After excluding questionnaires with missing values, we analyzed data from a total of 127 participants. Results and Discussion: High evaluation scores were obtained for five items, including “readily catching the eyes of others” and “being surprised when running into them.” This reflects difficulties experienced by people with visible differences. There were significant sex-differences in five items, including “being in a disadvantageous position when it comes to marriage” and “difficult to have a loving relationship with someone”; suggesting men evaluated people with visible differences more negatively than women. When assessing how participants perceived the reasons underlying the visible differences in free descriptions, the rate of correct answers differed by the specific reason. In particular, for port-wine stain, even in the perception group are had a low rate. These findings highlight the importance of educating the general public so that they would have accurate knowledge regarding visible differences.
著者
千葉 敦子 石田 賢哉 大西基喜 小笠原 メリッサ 宮川 隆美 木村 美穂子 水木 希 澤谷 悦子 梅庭 牧子 奥村 智子
出版者
青森県立保健大学雑誌編集委員会
雑誌
青森県立保健大学雑誌 = Journal of Aomori University of Health and Welfare (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-28, 2017-03

保健協力員は県民の健康増進の担い手としてその活動が期待されている。しかし,青森県では保健協力員の活動は行政が中心となり,主体的な活動が十分には行えていないという課題や,担い手不足による固定化と高齢化が指摘されている。そこで,保健協力員活動の活性化策を検討するために,A保健所管内の保健協力員を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,活動の主体化およびヘルスリテラシーの現状を明らかにした。 その結果,主体化評価指標の総合得点は市町村間で有意な差はないことがわかった。このことから,保健協力員の質は合同研修等により一定の水準が保たれていることが考えられ,県民全体の健康増進の向上という面からは望ましい結果であると考えられた。ヘルスリテラシー尺度得点と個人属性との関連では,年齢が高い者,健康状態が良好な者,他の役割がある者でヘルスリテラシー得点が統計的に有意に高いという結果が得られた。固定化や高齢化を強みとして保健協力員の活動の強化に活かすことが可能であることが示唆された。
著者
熊谷 悦子 古町 和弘 宮田 智孔 佐中 孜
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.225-231, 2016 (Released:2016-03-28)
参考文献数
28

【目的】 腎不全用必須アミノ酸製剤内服のアミノグラムと栄養指標の改善効果を検討. 【対象】 透析歴1年以上で, 3.0g/dL≦血清アルブミン<3.8g/dL, 摂取熱量25kcal/kg/day以上の34例. 肝機能障害, CRP≧2.0mg/dL, 透析前HCO3− 16mEq/L以下, HbA1c 6.5%以上, BMI 18未満は除外. 【方法】 投与前, 投与後1, 2, 3か月後の血液検査, 投与前と投与3か月後にアミノ酸分析を施行. 【結果】 非必須アミノ酸 (NEAA) は有意に低下, EAA/NEAAは有意に上昇. 分岐鎖アミノ酸/総アミノ酸は有意に上昇. 腎不全用必須アミノ酸製剤は有意に低下, 必須アミノ酸と非必須アミノ酸の比, アミノ酸総量に占める分岐鎖アミノ酸は有意に上昇した. 血清アルブミン<3.5g/dLの群でアルブミン値の上昇傾向がみられた. 【結論】 EAAの内服は透析患者のアミノグラムと栄養状態の改善に寄与する可能性が示唆された.
著者
伊藤 綾 竹内 浩二 高木 章雄 櫻井 文隆 渋澤 英城 菅谷 悦子 栄森 弘己 山岸 明
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.153-156, 2006-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

近年, 東京都の江東地域においてエダマメの葉の黄化や生育不良, 収穫減少などの生育障害が発生している。そこで2005年に都内のエダマメ圃場63カ所を調査した結果, 江東地域では20圃場で生育障害が発生していた。そのうち19圃場では根部にダイズシストセンチュウのシストの寄生と, 土壌中に高密度の本種のシストと卵を認め, ダイズシストセンチュウが生育障害の原因となっている可能性が高いと考えられた。なお, 多摩地域においても初めて本種の分布を確認した。
著者
大野 かおり 磯谷 悦子
出版者
神戸市看護大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:13428209)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.27-34, 1998-03-05

時系列変化の初期-被災後初期-には避難所などに待避する者が多い一方で,高齢者や病弱者などが自宅に取り残されている。阪神・淡路大震災時のローラー作戦の結果と今回の調査結果より,これら弱者の把握,ニーズの把握を適時に行い適切な看護援助を提供することは非常に重要であるということが明らかになった。すなわち救命救急医療期の終わった頃(災害から1週間程経った頃),在宅生活者の保健衛生管理や診療の継続のための看護援助が必要となるのである。そして時宜を逸せず看護援助を提供するには,大量動員による一斉訪問が有効である。また災害時の情報管理や平常時からの弱者把握により,一層効果的な援助が提供できる。訪問に際してはニーズの把握からケアの提供までトータルに対応できる看護職者が望ましい。以上の結果をより具体的に検討し在宅生活者に対する看護援助のモデル(一般化)としていかなければならない。
著者
竹谷 悦子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は1930年代のアフリカ系アメリカ文学を、環太平洋という新しい文学の地政学のなかに布置し、グローバルな視座からその再考を試みるものである。とりわけ、真珠湾攻撃までの約十年間に、アフリカ系アメリカ人たちが思い描いたアジア/日本との超国家的連帯を掘り起こし、「ブラック・オリエンタリズム」の系譜を体系的に分析することを試みた。エドワード・サイードが西洋のコロニアル言説として定義したオリエンタリズムを、(西洋の)黒人とアジアとのあいだの複雑で、様々なねじれを伴う関係性をあぶりだすために援用し、アフリカ系アメリカ文学と植民地・帝国主義言説とのかかわりを多角的に考察した。この二年間に主な分析対象とした作家はジェイムズ・ウェルドン・ジョンソンおよびジョージ・サミュエル・スカイラーである。環太平洋というトポスは、アジアと短絡的に同一視されてはならず、むしろ様々な文化の接触・折衝がおきるコンタクト・ゾーンとして捉える必要がある。ジョンソンは、米国の「裏庭」とされるカリブ海を環太平洋地域として再布置し、米国のニカラグア占領と日本の満州占領とのあいだの歴史的共鳴のなかに、アフリカ系アメリカ人と植民地・帝国主義の共犯性と対抗言説への可能性を見いだしていった。またスカイラー分析では宗教の領域を横断しつつ、人種戦争ファンタジーに焦点をあて調査を行なった。スカイラーの近未来小説『黒人帝国』執筆の動機となったムッソリー二のエチオピア侵攻-第二次イタリア・エチオピア戦争-が与えた歴史的インパクトを、スカイラーが編集主幹を務めた『ピッツバーグ・クーリエ』を含む主要黒人紙から明らかにし、作品や報道に表出された人種戦争ファンタジーの源泉となっていた「日本」の象徴的/政治的機能を解明した。
著者
加賀谷 悦子
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-8, 2005-03-31
被引用文献数
2

近年,生態学分野で急速に分子マーカーの利用が進んでおり,森林昆虫研究に関してもさまざまな成果が報告され始めた.本総説は,分子マーカーの手法と森林昆虫研究に関する国内外の研究事例を紹介するものである.手法として,シーケンシンダ,PCR-RFLP,SSCP,マイクロサテライト,SNPs,RAPD,AFLP,アロザイム,を解説した.上記の手法を用いたマイマイガ(Lymantria dispar)やタイリクヤツバキクイムシ(Ips typographies)などに関する国外の研究事例と,スギカミキリ(Semanotus japonicus)についての国内の研究事例を紹介し,地理的変異の解析をはじめ,近縁種との識別や,個体群間の移動実態の推定に分子マーカーが有用であることを示した.また,DNA解析に供する標本の保存法を説明した.