著者
明崎 禎輝 山﨑 裕司 野村 卓生 吉本 好延 吉村 晋 濱岡 克伺 中田 裕士
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-31, 2007-03-31 (Released:2018-09-05)
参考文献数
12

脳血管障害片麻痺患者79名を対象に,歩行自立のために必要な麻痺側下肢荷重率について検討した.下肢荷重率の測定には市販用体重計を用い,5秒間安定した保持が可能であった荷重量を体重で除し,その値を下肢荷重率とした.単変量解析では,年齢,麻痺側下肢筋力,下肢Brunnstrom stage,麻痺側下肢荷重率,深部感覚障害の有無において自立群と介助群間で有意差を認めた.ロジスティック解析の結果,麻痺側下肢荷重率のみが自立群に関係する有意な要因であった.Receiver Operating Characteristic曲線による曲線下面積を求めた結果,麻痺側下肢荷重率は自立群を有意に判別可能な評価方法であった.麻痺側下肢荷重率71.0%をカットオフ値とした場合,感度,正診率,陽性適中率のいずれも高い精度で自立群を判別可能であった.脳血管障害片麻痺患者における麻痺側下肢荷重率は,歩行自立度を予測する上で有用な指標と考えられた.
著者
小林 文明 藤田 博之 野村 卓史 田村 幸雄 松井 正宏 山田 正 土屋 修一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.53-64, 2007-01-31
参考文献数
27
被引用文献数
4

2002年10月6日から7日にかけて発達した低気圧の北東進に伴い,各地で突風災害が相次いだ.横須賀市内では10月7日04時頃突風災害が発生した.現地調査の結果,被害は100か所を越える住家で確認され,被害域はほぼ直線的で長さ2.5km,最大幅は約150m(平均で30〜50m)であった.被害スケールはF1から局所的にF2であった.被害域は連続しておらず,かつ蛇行していた.また,最も被害の大きかった公郷小学校付近で被害幅が広がっており,竜巻の複雑な挙動が示唆された.最大風速に関しては,被害が最も甚大であった場所の東端に位置する道路標識から少なくとも風速は34〜38ms^<-1>と見積もられ,被害スケール(F1)を裏付けた.今回の突風は以下の理由から竜巻であったと推測された.地上被害の特徴から,1)被害域の幅が狭く直線的である.2)回転性(低気圧性)の風による痕跡が確認された.3)吸い上げ渦とおもわれる痕跡が2か所確認された.4)吸い上げ渦の痕跡近傍では,実際に体育館の屋根や空調室外機が少なくとも高さ10mは吹き上げられた.上空の積乱雲の特徴は,5)強エコー域の南西端に被害域が対応していた.6)ドップラー速度パターンには直径7kmの渦が上空に確認された.7)このメソサイクロンの影響をうける地上観測点では,1hPaの気圧降下が確認された.横須賀市の竜巻被害は,発達した低気圧の暖域で形成された積乱雲群が広範囲にわたりもたらした竜巻(ダウンバースト)の中のひとつに位置づけられる.
著者
吉本 好延 大山 幸綱 浜岡 克伺 明崎 禎輝 吉村 晋 野村 卓生 佐野 尚美 橋本 豊年 佐藤 厚
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.245-251, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
14
被引用文献数
8 4

[目的]本研究の目的は,在宅における脳卒中患者の転倒の有無と,入院中の身体機能との関連性を調査し,入院中から在宅での転倒予測が可能かどうかを検討した。 [対象]入院中に歩行可能であった脳卒中患者79名であった。[方法]身体機能の評価として,Brunnstrom Recovery Stage,片脚立位時間,10 m歩行時間などを発症から3ヶ月以降(発症から身体機能評価までの平均期間111.1 ± 19.6日)に測定し,退院後1年間の転倒状況は,郵送法を用いたアンケート調査を行い,入院中の身体機能との関連性を検討した。[結果]転倒者は50名(63.3%)であった。転倒群は,非転倒群と比較して,Brunnstrom Recovery Stage,麻痺側片脚立位時間,非麻痺側片脚立位時間,麻痺側膝関節伸展筋力,非麻痺側膝関節伸展筋力,Barthel Indexの項目が有意に低値であった(p<0.05)。10 m歩行時間の項目は有意に高値であった(p<0.05)。ロジスティック解析の結果,麻痺側片脚立位時間は最も重要な転倒関連因子(オッズ比:0.902,95%信頼区間:0.829~0.981)であると考えられた。麻痺側片脚立位時間3.5秒をカットオフ値とした場合,感度86.0%,特異度69.0%であった。[結語]在宅における歩行可能な脳卒中患者の転倒予測として,入院中の麻痺側片脚立位時間の測定が有用である可能性が示唆された。
著者
石原 孝 松沢 慶将 亀崎 直樹 岡本 慶 浜端 朋子 青栁 彰 青山 晃大 一澤 圭 池口 新一郎 箕輪 一博 宮地 勝美 村上 昌吾 中村 幸弘 梨木 之正 野村 卓之 竹田 正義 田中 俊之 寺岡 誠二 宇井 賢二郎 和田 年史
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.3, 2017 (Released:2017-04-14)
参考文献数
43

2012年9月から2013年4月にかけて、日本海沿岸で196個体のウミガメ類が漂着した。混獲された個体などを合わせると243個体となり、例年にない数のウミガメ類が発見された。種別の発見数はアカウミガメ151個体、アオウミガメ61個体、タイマイ17個体、ヒメウミガメ4個体、ウミガメ科の雑種4個体、オサガメ3個体であった。本研究で特に注目したのは、当歳幼体とここでは呼ぶ、甲長10 cm前後の孵化後数ヶ月のアカウミガメであった。アカウミガメ当歳幼体は107個体が漂着し12個体が混獲されており、ウミガメ類発見数の大半を占めていた。これらアカウミガメ当歳幼体は、mtDNAコントロール領域における~820塩基対より決定したハプロタイプの出現頻度から、沖縄や沖永良部産で、一部屋久島産が含まれることが示唆された。これらの個体が日本海に流入し始めたのは混獲の目立ち始めた10月から11月にかけてだと考えられ、水温の低下に伴い12月から1月になって日本海の海岸線に大量に打ち上げられたと推察された。水温の低下する冬季の日本海はウミガメ類の生存には厳しい環境であるとも思われるが、中には津軽海峡を通って太平洋へ抜けたであろう当歳幼体もいた。日本海に入ることはアカウミガメの当歳幼体にとって必ずしも無効分散ではないのかもしれない。
著者
野村 卓 元木 理寿
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は食育を推進する教員および指導者(スーパー食育指導者)を養成することを念頭においたものである。特に、食育を推進するために家庭科教育や技術科教育の連携と、この2教科を土台とした他教科(理科、数学科、社会科)との横断手法の開発を行った。また、社会教育的アプローチとして、味覚継承教育手法の開発を行い、鹿児島県沖永良部島における生産調整前の水稲を栽培し、高齢者と青少年の味覚の断絶を乗り越える実践を展開した。これらの成果は日本産業技術教育学会北海道支部、日本環境教育学会北海道支部の研究大会において報告し、教員養成課程学生が食育を通じて教科横断を展開する手法等の開発を行うことができた。
著者
吉本 好延 野村 卓生 明崎 禎輝 佐藤 厚
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.287-294, 2009-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
4

【目的】本研究の目的は,運動療法が精神疾患患者の身体機能および能力に与える効果を検討することであった。また,我々は,行動科学的アプローチが運動療法の教室への参加に与える影響についても検討した。【方法】対象は,精神科病院入院患者21名(閉鎖病棟群9名,開放病棟群12名)であった。精神疾患患者には,12週間(週3回)の介入期間にわたって,運動療法(体幹と下肢のストレッチ,筋力増強運動,バランス運動,歩行運動)と行動科学的アプローチ(運動療法の教室参加後の賞賛,運動療法後の食品の提供,参加状況チェックポスターの掲示)を提供した。【結果】開放病棟群の患者は,下肢前方リーチと最大一歩幅が,介入前から12週間の介入後に有意に向上した。閉鎖病棟群の患者は,運動療法の教室への参加率が,作業療法より高い傾向にあった。運動療法の教室参加後の賞賛は,運動療法の教室への参加に効果的なアプローチとして精神疾患患者から高い評価を得た。【結論】精神疾患患者の運動療法の教室への参加を促進するためには,行動科学的アプローチの強化刺激などを工夫すべきである。
著者
野村 卓
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 = Environmental education (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.113-124, 2009-07-31
参考文献数
55
被引用文献数
2 1

&nbsp;&nbsp;In Environmental Education, as for this study, Suzuki and Matsubaguchi organized the research direction until 2005. The content was provided in arrangement with the specialties Home Economics Education, Agricultural Education, Consumer Education, and Teacher Education concerning school education research. However, the problem of food-agriculture in Environmental Education is as diverse as the problems of different regions and societies. In the future, the role of Environmental Education in the problem of Food-Agriculture should cover not only School Education research but also the research direction of Adult and Community Education. Here, the focus is to integrate the accumulated research in the area of Food and Agriculture in a cohesive relationship. We think that these become problems of Environmental Education research in the future, especially where consumer administration is undertaken.
著者
中尾 聡志 上野 将之 野村 卓生 池田 幸雄 末廣 正 公文 義雄 杉浦 哲郎
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.116-117, 2010-04-20 (Released:2018-08-25)

本研究の目的は,有酸素運動が実施困難な糖尿病患者に対し実施可能,かつ糖代謝改善に有効な理学療法(物理療法)を検討することであり,その基礎的研究として,健常成人の安静時・神経筋電気刺激後の血糖値およびインスリン値を比較検討することである。対象は健常成人20名とした。方法は連続した2日間にて安静時・神経筋電気刺激時の2条件において75gのブドウ糖を経口摂取し糖負荷後0分・30分・60分・90分・120分時の血糖値・インスリン値を測定した。結果より神経筋電気刺激群は糖負荷後30分時の血糖値・60分時のインスリン値が安静群と比較し有意に低下しており,神経筋電気刺激による血糖上昇抑制効果が認められた。本研究結果より健常人において神経筋電気刺激により血糖上昇抑制効果が期待できることが示された。今後,糖尿病患者において有効性を検討する必要がある。
著者
越智 貢 岡野 治子 山内 廣隆 松井 富美男 後藤 弘志 衛藤 吉則 畠中 和生 濱井 潤也 野村 卓史 石崎 嘉彦 石田 三千雄 硲 智樹 手代木 陽 眞嶋 俊造
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、平和実現のための実践的で総合的な理論モデルを提示することである。とりわけ、その特徴は、「平和」の問題を、現実生活の諸相が織りなす「和解」の問題として再構成する点にある。研究期間を通じて、応用倫理学(生命、環境、教育、政治、社会)的アプローチによって上記の課題を追求した。本研究の結果、異質な者に対する排他性、闘争性とその連鎖という根源的な問題に、「和解」のプロセスを示すことができた。
著者
辻 陽子 明﨑 禎輝 勝村 仁美 原 臣博 澤下 佑紀 垣崎 仁志 森 耕平 由利 禄巳 野村 卓生 平尾 文雄
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.38-44, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
41

要旨 本研究では,在院中の統合失調症患者の3 年後の身体機能,抗精神薬投与量,転倒回数の変化を調査することにより,身体機能に対する介入の必要性について検討することである.対象者は統合失調症患者12 名(男性6 名,女性6 名)であった.年齢は64.2±5.6 歳であった.除外規定としては,車椅子レベルの者,精神疾患による認知機能障害により説明の理解が困難な者,脊椎損傷など整形疾患が原因でADL が低下している者とした.調査は2014 年8 月,2017 年9 月にそれぞれ実施した.調査項目はBMI,筋力(30 秒椅子立ち上がりテスト),バランス能力(開眼・閉眼片脚立位時間,Functional reach test,Timed up and go test),柔軟性(長座位体前屈距離),歩行速度(10m最大歩行速度),抗精神薬投与量,転倒回数であった.統計解析はWilcoxon の符号付き順位検定,対応のあるt 検定を用い分析した.結果,30 秒椅子立ち上がりテストは,初回平均17.4±4.5 回から3 年後には平均13.0±4.8 回へと,開脚片脚立位時間は,初回平均 17.0 ±18.0 秒から3 年後には平均7.7±7.1 秒へと有意に低下した (p<0.05).その他の項目に有意差は認められなかった.在院中の統合失調症患者は,3 年間の経過で,特に下肢筋力と静的バランス能力が低下していることが明らかになった.これらから,身体機能の維持・改善への介入が求められる.
著者
前田 浩子 奥村 恒 中村 りり 野村 卓史 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.147-154, 2019 (Released:2020-01-28)
参考文献数
15

効果的な雑草管理能力や雑草抑制効果がある被覆植物を選択するために,多年生被覆植物として,クリーピングタイム(Thymus serpyllum),シバザクラ(Phlox subulata),ヒメイワダレソウ(Phyla nodiflora),マツバギク(Lampranthus spectabilis),リュウノヒゲ(Ophiopogon japonicus),ペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)およびヤブラン(Liriope muscari)の7種を選定し,5年間の圃場試験を実施した。被覆植物の被度,乗算優占度,発生した雑草の乾物重,雑草の種数および種類を比較した結果,日本在来の多年生被覆植物であるヤブランは,いずれの評価項目においても2年目以降5年目まで最も良好な雑草抑制効果を示した。また,ヤブランはアレロパシー活性評価試験においても強い植物生育阻害活性を示した。ヤブランは葉による光の遮蔽等の影響で雑草の発生が抑制されると考えられるが,プロリンに構造が類似したアゼチジン-2-カルボン酸がヤブランの根や葉に多量に含まれており,これも雑草の発生抑制に関与していることが示唆された。
著者
西上 智彦 榎 勇人 野村 卓生 中尾 聡志 芥川 知彰 石田 健司 谷 俊一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-114, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
20

低活動状態の1日歩行量を補填し,腓腹筋の廃用性筋萎縮を予防するために運動療法メニューの適切な運動回数を検討した。対象は健常者10名。評価筋は右側腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭とした。腓腹筋筋活動量の測定は(1) 端坐位片足踵上げ,(2) 立位両足踵上げ,(3) 立位片足踵上げ,(4) つま先立ち歩行,(5) 最大等尺性足関節底屈運動とした。分析方法はまず,自由歩行時の筋活動量を(1)から(5)の各動作の筋活動量で除し,各運動療法メニュー1回に対応する歩数を求めた。次に,低活動状態を想定し,6,000歩(片側3,000歩)の筋活動量と対応する各運動療法メニューの回数を求めた。結果,一般臨床で実施されている運動回数では筋萎縮の抑制効果は極めて少ない可能性が示唆された。
著者
野村 卓生 池田 幸雄 末廣 正 西上 智彦 中尾 聡志 石田 健司
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.227-231, 2006 (Released:2009-01-19)
参考文献数
20
被引用文献数
10

2型糖尿病患者におけるバランス障害の成因を明らかにするために,閉眼片脚立位時間と定量的な膝伸展筋力の関連を検討した.糖尿病患者では片脚立位時間の減少と膝伸展筋力の低下が認められ,単変量および多変量解析の結果,いずれにおいても片脚立位時間と膝伸展筋力との間に有意な関連が認められた.糖尿病患者のバランス障害の原因として,多発性神経障害による感覚障害の関与が強調されるが,今回の検討より,下肢筋力低下も関与することが明らかとなった.糖尿病患者のバランス障害に適切な対応をするためには,感覚検査に加え,筋力を定量的に捉えることが必要と考えられた.
著者
野村 卓生 吉本 好延 明崎 禎輝 冨田 豊 濱窪 隆 藤原 亮 東 大和生 佐藤 厚
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.D0503, 2006

【緒言】適度な身体活動の継続は,他の要因から独立して慢性疾患リスクを減少させるが,運動療法に関する教育を体系的に受けた糖尿病患者においても運動の継続は極めて困難である.数ある運動の中でも「階段を昇る」ことは,多くの個体集団に適用可能で,日常生活における運動習慣定着へのモデルになると考えられる.本研究では,階段使用促進を目的としたメッセージを付記したバナー(バナー)を用い,不特定多数を対象に「階段を昇る」行動が促進されるかどうかの検討を行った.<BR>【方法】測定場所は,階段(37段)とエスカレーター(昇り)が隣接したH県内某私鉄の駅構内とした.測定者は2名とし,測定者1が階段を昇る通行者,測定者2がエスカレーターを使用する通行者を記録した.測定は平日,午前7時からの2時間30分とし,週2回,計16回の測定を実施した.通行者は,性別,年代層別(高齢層,青中年層,学生層,新生児及び小児は除外)に分類し,カウンターで記録した.2週間隔で通行者数を合算し,SPSSを用いて統計解析を行った.<BR>【介入手順】まず,ベースライン測定を2週間行った.ついで,バナーを階段前額面,柱側面,壁面に計45枚貼付し,同様の測定を4週間行い,4週目の測定最終日にバナーの撤去を行った.フォローアップ測定としてバナー撤去から3週後に2週間,同様の測定を行った.なお,本研究は臨床研究に関する倫理性に十分に配慮した.<BR>【結果】全測定期間において通行者は計43,241名測定された.階段使用者の割合は,全通行者でベースライン3.58%,バナー貼付後1-2週4.93%,バナー貼付後3-4週5.80%,フォローアップ3.68%であり,ベースラインに比較してバナー貼付後1-2週,3-4週においては有意な増加を示した(p<0.001).性別及び年代層別では,ベースラインと比較してバナー貼付後1-2週においては男性高齢層,青中年層,学生層でそれぞれ3.76%,0.10%,6.33%,女性高齢層,青中年層,学生層でそれぞれ1.44%,0.42%,16.6%の増加を示した.バナー貼付後3-4週において,男性高齢層,女性高齢層,女性学生層ではバナー貼付後1-2週より階段使用者率は低下したが,ベースラインと比較して高い階段使用者率が維持されていた.フォローアップでは,男性青中年層のみ有意な階段使用率が維持されていた.<BR>【考察】階段の昇り1回に要する消費カロリーは小さいが,生活範囲の多くの場所において身体活動促進のための啓発・教育が実施されるならば,個人の運動消費カロリーを現状よりも増加させ,慢性疾患の予防・進展抑制効果が期待できる可能性は高い.人の運動行動を誘発し,行動を維持させることは非常に困難である.本研究では,不特定多数の人の行動を簡便な方法で,全体で約2%であるが変容させることに成功できたことは非常に意義深い.
著者
明崎 禎輝 川上 佳久 平賀 康嗣 野村 卓生 佐藤 厚
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.689-692, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

〔目的〕本研究では,書字練習方法として,なぞり書練習と写字練習を比較し,なぞり書練習が書字正確性を向上させるために有用であるか検討した。〔対象〕健常者20名(男性10名,女性10名,年齢30.3歳)とした。〔方法〕対象者を介入A,介入Bに分類し,書字練習を行った。介入Aは規定文章の上にトレーシングペーパーを重ね,その上から写っている文字に反復してなぞり書練習を行った。介入Bは規定文章を白紙の横に並べ,白紙に反復した写字練習を行った。書字評価は書字正確性と書字時間を測定した。〔結果〕練習前後において,介入Aのみ書字正確性に有意な向上が認められた。〔結語〕なぞり書練習は,非利き手による書字正確性を向上させるために有用な練習方法であることが示唆された。
著者
明﨑 禎輝 大原 勝義 川上 佳久 野村 卓生 佐藤 厚
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.35-38, 2011-03-31 (Released:2018-11-28)
参考文献数
8

本研究では,脳血管障害患者に対して,失敗体験の少ない床からの立ち上がり動作練習を実施し,その有効性を検討した.対象は,60歳男性,診断名は脳梗塞であった.床からの立ち上がり動作は,仰臥位から横座りまでは可能,横座りから片膝立ち位までが困難であった.方法は,シングルケースデザインのAB法を用い,ベースライン期(8日)後に,介入期(5日)を設けた.介入方法としては,横座り時に殿部の下に枕2つ重ねて挿入した状態から片膝立ちまでの練習を繰り返し行い,片膝立ちが可能となれば,枕の数を減らしながら練習を行った.結果,ベースライン期においては,床からの立ち上がり動作は介助が必要であったが,介入3日後には監視レベルへと改善した.これらのことから,本研究で用いた方法は,床からの立ち上がり動作獲得のために有用なものと考えられた.
著者
野村 卓生
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.107-110, 2016 (Released:2016-05-27)
参考文献数
22
被引用文献数
1

The limitations of what physical therapists can differ from country to country. In Japan, physical therapists are national licensed health care professionals who can help patients improve or restore their mobility. Most Japanese physical therapists provide care for people in health care facilities, medical-welfare transitional facilities, and welfare facilities for the elderly. Currently, physical therapists are unable to sufficiently contribute to primary preventive health care in Japan. However, there are many health problems that physical therapists could help alleviate. For example, low back pain (LBP) more likely than any other condition prevents people from working; thus, making the establishment of effective measures to prevent and reduce LBP vital. An estimated 20,500,000 Japanese individuals have diabetes mellitus (DM) or are at a high risk of developing the disease. DM commonly accompanies stroke and/or heart disease, and is characterized by complications that result from chronic hyperglycemia. Evidence-based physical therapy is effective for the prevention and treatment of LBP and DM. The Japanese Physical Therapy Association established the Japanese Society of Physical Therapy (JSPT) in June 2013. The JSPT has 12 departmental societies and 10 sections. We believe that the JSPT will advance the study of the potential role of physical therapists in primary preventive health care. In the future, it is expected that Japanese physical therapists will contribute to primary preventive health care.
著者
野村 卓志 林 左和子 岡田 建志 ライアン ジャック 井出 直樹 ノムラ タカシ ハヤシ サワコ オカダ タケシ ライアン ジャック イデ ナオキ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
no.19, pp.151-156, 2019-03-31

図書館にeBookサービスを導入することにより、図書の貸出等の管理を容易にし、さらに利用者の利便性を上げる効果があるとされている。本学図書館へのeBook導入へ向けての試行として、eBookを複数の講義で学生に利用させた上でアンケート調査を行った。eBookは2社のシステムを利用し、その比較を行った。他大学の事例と比較しつつ、本学の図書館にeBookサービスを導入するときの特徴や問題点、さらに講義環境に求められる特性について論じた。
著者
野村 卓生 浅田 史成 高野 賢一郎 佐藤 友則 川又 華代 廣滋 恵一 坂本 和志 明崎 禎輝
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.146-147, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
5

本研究は,日本における産業理学療法の推進をめざした3 年度計画の研究である。初年度(平成25 年度)においては,Web メールを用いた腰痛予防を目的とした理学療法士による指導効果に関する予備調査の検証を行った。2 年度(平成26 年度)目においては,初年度行った予備調査の検証から得られた成果を参考にして,産業理学療法指導システム(Consulting system for physical therapy in occupational health:以下,Compo)を開発し,介護労働者の腰痛予防を目的として,Compo を用いた臨床介入研究を計画した。最終年度(平成27 年度)においては,Compo を用いた臨床介入研究を始動させた。