著者
今村 俊幸 工藤 周平 鈴木 厚 廣田 悠輔 鈴木 智博 椋木 大地
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

エクサ時代のメニイコア環境下において、システム実行効率を向上するための数値計算アルゴリズムならびにタスク技術周辺を数値線形計算の視点から研究する。将来にわたって持続可能な高性能な数値計算ソフトウェアのための開発フレームワーク実現に注力し、数値線形代数カーネル構築の経験から発想される新たなタスクスケジューリング技術(非同期・条件付き・競争的スケジューリング)を研究する。同技術要件をスケジューラプロトタイプとして試作し、既存数値線形代数ソフトウェアに取り込み高性能化・高並列化を実現する。更にエクサ時代のターゲットなる高次元データ解析向け数値計算ソフトウェアに対しても適用範囲を広げていく。
著者
鈴木 智晴 藤井 雅文 村上 光平 中本 浩揮 前田 明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
2019

One of the important roles of a baseball catcher is to check whether an opponent is trying to steal a base. This checking action must occur as part of other events: a quick throwing action (short operation time), a high ball speed (short duration of ball flight), and accurate tagging (the time from the fielder catching the ball to touching the opponent runner is short). In other words, in order for the catcher to check whether an opponent is trying to steal a base, it is necessary to shorten the time between catching the ball and when the fielder touches the opponent runner. However, the relationship between the time and the possibility of checking for an attempt to steal a base and the influence of each phase on the steal check rate have not been examined. The present study investigated the relationship between the time required to prevent a steal and the steal check rate of a baseball catcher using video recordings. The video recordings used for our analysis were videos of steal check successes and failures in exhibition and official university and amateur baseball games, with a focus on runners attempting to steal second base. We classified Motion Time as the period from catching the initial pitch to ball release, Ball Time as the period from ball release to ball arrival at second base, and Touch Time as the period from ball arrival at second base to the fielder touching the runner; the sum of these 3 phases was defined as All Time, and the sum of Motion Time and Ball Time was defined as Pop Time. We constructed 3 models in which the success or failure of the steal check was set as a target variable and each phase time as an explanatory variable, and performed logistic regression analysis on each model. As a result, we clarified that the baseball catcher could check for a steal if the All Time was less than 2.429 s, and there was a significant negative correlation between the steal check rate and All Time. In addition, among the three phases, Touch Time had the greatest effect on the steal check rate. Therefore, it was suggested that accurate throwing is the most important factor in preventing a steal to second base.
著者
佐藤謙次 細川智也 関口貴博 鈴木智
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【目的】膝前十字靱帯(ACL)再建術後再断裂の危険因子に関する報告は散見されており,低年齢やスポーツ活動レベルの高さが指摘されている。一方,ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツの再断裂率は高いとされており,コンタクトスポーツとノンコンタクトスポーツでは傾向が異なることが予測される。しかし,スポーツカテゴリーの違いが再断裂に及ぼす影響に関する報告は渉猟し得ない。本研究の目的はACL再建術後の再断裂の危険因子を明らかにすることである。【対象と方法】対象は当院において2005年から2010年に膝屈筋腱を用いた初回解剖学的二重束ACL再建術を受け2年以上経過観察可能であった949例(男性500例,女性449例:平均年齢26.5歳)とした。両側ACL損傷例,再再建例は除外した。診療記録より再断裂の有無を調査した。再断裂は担当医が理学所見,KT2000,MRI,関節鏡所見から総合的に判断した。性別,年齢(18歳以下・19歳以上),スポーツレベル(競技レベル・レクリエーションレベル),スポーツカテゴリー(コンタクトスポーツ・ノンコンタクトスポーツ)に分けて再断裂率を算出した。なお,練習回数が週4回以上を競技レベル,週3回以下をレクリエーションレベルとした。また,コンタクトスポーツは,フルコンタクトスポーツとリミテッドコンタクトスポーツを含んだものとした。統計学的解析は,再断裂率を項目ごとに両群間でχ2検定を用いて比較した。また,多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて,再断裂の危険因子を抽出した。目的変数を再断裂の有無とし,説明変数を性別,年齢,スポーツレベル,スポーツカテゴリーとした。なお統計ソフトはR2.8.1を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいて行い,データの使用にあたり患者の同意を得た。個人情報保護のため得られたデータは匿名化し,個人情報が特定できないように配慮した。【結果】再断裂は949例中45例に認められ再断裂率は4.7%であった。性別(男性4.2%,女性5.3%)において男女間に有意差は認められなかった。年齢(18歳以下8.1%,19歳以上2.8%),スポーツレベル(競技レベル8.1%,レクリエーションレベル2.3%),スポーツカテゴリー(コンタクトスポーツ5.8%,ノンコンタクトスポーツ2.7%)において両群間に有意差が認められた(p<0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果,スポーツレベルとスポーツカテゴリーが危険因子として選択された(モデルχ2検定:p=0.000)。スポーツ活動レベルのオッズ比は3.4,スポーツカテゴリーのオッズ比は1.8であった。【考察】ACL初回損傷において女性は男性よりも2~8倍受傷リスクが高いことが知られているが,再断裂については男女間に有意差はなく危険因子としても抽出されなかった。したがってACL再建術後のスポーツ復帰に際しては男女ともに同等に注意を要すると思われた。2群間の比較において低年齢,競技レベル,コンタクトスポーツが有意に高い再断裂率を示したが,ロジスティック回帰分析による危険因子の抽出では,低年齢は選択されず,競技レベルとコンタクトスポーツが選択された。これはステップワイズ法により多重共線性をもつ低年齢が除外されたものと解釈できる。一方,スポーツレベルについては過去の報告と同様に危険因子として抽出され,競技レベルはレクリエーションレベルよりも3.4倍再断裂のリスクが高いことが明らかになった。さらにこれまで指摘されてこなかったスポーツカテゴリーにおいて,コンタクトスポーツが危険因子であることが新たに明らかになった。得られたオッズ比からコンタクトスポーツはノンコンタクトスポーツよりも1.8倍再断裂のリスクが高いことが分かった。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,競技レベルとコンタクトスポーツの選手がハイリスク群として抽出された。したがってこれらに対して集中的に再断裂予防策を講じることが効率的・実用的と考える。競技レベルはレクリエーションレベルより3.4倍,コンタクトスポーツはノンコンタクトスポーツよりも1.8倍再断裂のリスクが高いことを患者に対しても説明可能であり,術後理学療法を円滑に進める一助になると考える。とくにスポーツの種類により再断裂率が異なることを新たに証明できた意義は大きいと考える。
著者
鈴木 智也
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自然現象を生み出す背景ダイナミクスをできるだけ破壊しないように時系列データを観測し,このデータよりダイナミクス(法則性)を学習することで予測力の高い時系列予測モデルの構築を目指した.しかし予測誤差を完全には排除できないため,これを予測リスクとみなし,事前の推定方法や緩和方法を検討した.このように将来予測およびリスク管理を両輪とするアプローチは金融工学に応用できるため,決定論的予測モデルに基づく新しい非線形金融工学を提案した.
著者
鈴木 智子 得丸 定子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.17, 2006

<br><b>【目的】</b><br> 近年のインスタント食品、加工食品の増加、外食産業の普及等の食生活環境は、現在の中学生の食生活や味覚に影響を及ぼしている。昨年度の第48回本大会では、食行動と味覚の識別能の関連について、味覚の識別能が高い生徒は「栄養バランス性」が高く、味覚の識別能が低い生徒は「ファスト・濃厚味志向性」が高い食行動であること、生徒の食行動には本人の食への関心と共に食事担当者の意識との関係があることを報告した。今回は昨年の調査を基に、食生活や食体験および食への関心について聞き取り調査を行い、生徒の食意識や食行動に影響を及ぼす要因を探り、今後の食教育の在り方について示唆を得ることを目的とした。<BR><b>【方法】</b><br> 新潟県上越市内の大学法人中学校1年生12名(味覚の識別能高群生徒6名、識別能低群生徒6名)を対象に、1,主食・主菜・副菜の摂取について、2,インスタント食品・ファスト食品・惣菜・スナック菓子等の摂取について、3,味について、4,団らんや食を通したコミュニケーションについて、5,食生活への関心について、等の内容について、半構成面接法による調査を実施した。調査は2004年9月におこなった。<BR><b>【結果と考察】</b><br> 生徒の食生活は、母親の手作り中心の食生活を送る生徒と、インスタント食品などを利用する食生活を送る生徒に二分された。味覚の識別能が高い生徒の家庭では手作り中心の食生活を送っている生徒が多く、識別能が低い生徒の食生活は様々であった。また、手作り中心の食生活を送る生徒は、ファスト化された食品よりも手作り料理の味を美味しいと述べているが、インスタント食品などの利用が多い家庭の生徒は、インスタント食品やコンビニ食品の味が美味しいとの回答が多かった。ファスト化された食品の頻繁な利用により、それらの味への好み形成と味覚識別低下をきたしていると推測された。<br> 「天然だしと合成だしの味の違い」や「旬の野菜とそうでない野菜の味の違い」といった食品の味の識別については、味覚の識別能の高低にかかわらず、実際の食体験の有無に左右されていた。意識的な味覚経験の積み重ねが食品の微妙な味の識別力を育てることが示唆され、素材本来の味や多様な味に触れることの重要性が示された。<br> 味覚の識別能が高い生徒は食への関心が高く家庭の食事の手伝いに関わる生徒と、食への関心が低く親任せの食生活を送る生徒に二分された。一方、味覚の識別能が低い生徒は、家庭の食事の手伝いへの関わりが少なく、食への関心が薄かったり、偏ったりといった傾向にあった。このことにより、味覚の識別能の高低には保護者の食意識と生徒自身の食意識・食行動が関連していることが示された。<BR><b>【今後の課題】</b><br> 生活の根幹である食教育は、本来家庭が中心になり行われることが望ましい。しかし、生活状況の多様化は食生活にも影響を及ぼし、保護者が子どもに豊かな食教育を施すことが難しい家庭があることも現実である。したがって学校教育、とりわけ義務教育における食教育の役割は大きいと考える。今後の課題としては、五感を通した食体験学習と、自立的・自覚的食生活を送るために必要な関心を育て、食に対する基礎的な知識、技術、食事観を教育していくための教材開発が挙げられる。
著者
鈴木 智大 小川 哲弘 阿部 暢男 赤地 拓澄 増田 貴久子 小山 智之 矢澤 一良 河岸 洋和
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.383-388, 2007

Osteoporosis is caused by an imbalance between bone resorption and bone formation, which results in bone loss and fractures after mineral flux. Osteoclast-like multinucleated cells can be differentiated in vitro from co-cultures of mouse bone marrow cells and osteoblastic cells by treatment with osteotropic factors, 1α,25-dihydroxyvitamin D3 (1α,25(OH)_2D_3) and prostaglandin E2 (PGE2). During screening for osteoclast-formation suppressing effects of the extracts of various mushrooms by using the assay, we found very strong activity in the extract of the mushroom Agrocybe chaxingu. Therefore, an attempt was made to isolate the active principles from mushroom and to determine their structures. Powder of the dried fruiting bodies of Agrocybe chaxingu was extracted with CH_2Cl_2, EtOAc and then EtOH. The CH_2Cl_2-soluble fraction only showed the suppressing activity. After repeated chromatography of the fraction, compounds 1 and 2 were purified as the active principles. Osteoclast differentiation was estimated by TRAP-(+) multinucleated cell formation. The addition of compound 1and 2 (3.1μg/ml, 6.8mM) reduced the number of TRAP-(+) multinucleated cells to 66% and 0%, respectively.
著者
川村 春美 乾 敏郎 鈴木 智 徳永 幸生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.1046-1056, 1997-05-25
参考文献数
7
被引用文献数
5

カラー画像から, 照明光の色を推定する手法の一つに, 物体の平均の色が灰色であると仮定(灰色仮説)し, 画像の平均の色を照明光の色として推定する手法がある. この手法は, 照明光の推定値が物体の平均の色に依存するため, 仮説が成り立たない場合, 推定精度が低下することが問題であった. 本論文では, 相異なる照明光下における共通物体からの反射光の平均の色が, 黒体放射軌跡上にある場合に, 灰色仮説が局所的に成立すること, および, その場合に, 共通物体からの反射光の平均を照明光の色として推定できることを示す. 更に反射光の平均と照明光の色とが知覚的に同一である場合の照明光推定の方法および実験結果を示す. また, 相異なる複数物体における反射光の中から灰色仮説が成立するような色の組合せを選択する方法も示す
著者
内田 賢一 高木 峰子 鈴木 智高 川村 博文
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G4P3234, 2010

【目的】<BR>「ハビリテーション」という言葉は,全国民にほぼ浸透していると思われるが,リハビリテーションと同程度に「理学療法士」という職名が周知されているか,と問われれば疑念の意を抱かずにはいられないのが現状ではないだろうか.理学療法士が「理学療法士及び作業療法士法」という法律で規定されている以上、国会の場でどの程度発言されているのかを調査することは,「理学療法士」が我が国においてどの程度周知されているのかを知る一つの手段になるのではないか,と考えられる。そこで今回、国会会議録を基に調査を行い、発言があった委員会名や時期などについて知見が得られたので報告する。<BR>【方法】<BR>国立国会図書館がインターネット上で提供している国会会議録データベースを基にして、昭和36年1月1日を基準日として平成20年12月31日までの57年間の国会会議録すべてを対象に、会議録中に「理学療法士」が一回でも記録されている会議録の調査検討を行った。国会の各種委員会の会議は,国会会期中毎日開催されており,1回の委員会では様々な案件が審議される.そのため,1回の委員会の中で「理学療法士」という言葉が何度記録されても,1回の委員会は1件として取り扱った.あわせて,国会図書館憲政資料室の請願資料一覧から,理学療法士に関する請願資料をすべて収集し検討した.<BR>【説明と同意】<BR>国会会議録は,国籍を問わず誰でも閲覧できる資料であり,倫理的に問題はない.<BR>【結果】<BR>57年間にわたって開催された国会各種委員会の会議録は、総計60,032件であり、そのうち「理学療法士」との記録がある会議録は377件認められた。内訳は,社会労働委員会の133件が最も多く,続いて厚生委員会が39件、厚生労働委員会が36件、予算委員会が19件、内閣委員会が18件認められた.本会議、文教委員会、予算委員会第三分科会がそれぞれ16件、決算委員会が12件、予算委員会第四分科会が9件、国民福祉委員会が7件、法務委員会、および国民生活・経済に関する調査会がそれぞれ4件であった.予算委員会第二分科会、予算委員会公聴会、文部科学委員会、国民生活に関する調査会、決算行政監視委員会はそれぞれ3件,労働委員会、予算委員会第五分科会、逓信委員会、地方行政委員会、税制問題等に関する調査特別委員会、交通安全対策特別委員会、決算行政監視委員会第三分科会でそれぞれ2件ずつ認められた.農林水産委員会、少子高齢社会に関する調査会、国際問題に関する調査会、行政監視委員会、個人情報の保護に関する特別委員会、議員運営委員会、環境特別委員会、外務委員会、科学技術振興対策特別委員会、沖縄及び北方問題に関する特別委員会で,それぞれ1件ずつ認められた。<BR>377件のほとんどが,会議録に名前が出てきた程度であり,「理学療法士」が議論として壇上に上がっていたのは,わずか44件のみであった.44件の会議は,そのほとんどが厚生省,もしくは厚生労働省管轄の会議においてであり,昭和40年代は「理学療法士及び作業療法士法」に関わる特例措置などが主な議題となっていた.当時は,全日本鍼灸按マッサージ師会の多くの会員から,国会に対して特例期間延長に関する請願が提出されていた.なお,昭和47年11月4日,日本理学療法士協会の野本卓会長は,理学療法士の養成を4年制大学で行うよう理学療法士作業療法士の国家試験受験資格の法改正の必要性を請願し,昭和49年5月7日,参議員の社会労働委員会において日本社会党の藤原道子議員から法改正案として議題にあげられたが,審議されず廃案となっていた.<BR>昭和50年代は,大学における教育など養成方法に関することが多く,特に昭和60年12月10日の参議員社会労働委員会においては理学療法士の養成過剰が議論されており,竹中浩治厚生省政策局長からは,今後は質の向上に努力したいとの発言が認められた.<BR>昭和60年代および平成に入ってからは,職域に関する議論が多く,介護保険や老人保健施設における理学療法士の役割などに関する議題が多かった.<BR>【考察】<BR>国会会議録を概観すると,その時代に即した議題が目立っていた.しかし,「理学療法士」が議論として壇上に上がったのはわずか44件しかなく,国会の場で理学療法士があまり述べられていない現状を鑑みると,診療報酬において理学療法の重要性が反映されていないことにつながっているように感じられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>第45回衆議院総選挙においては,比例東北ブロックから山口和之氏が初当選したことで,国会の場で理学療法士について議論されることが今後は多くなることが予想される.理学療法士が国会論戦に参加することで,議論の内容がどのように変わるのか,基礎資料となる.
著者
鈴木 智高 髙木 峰子 菅原 憲一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AbPI1125-AbPI1125, 2011

【目的】<BR> 私たちが生活する環境には様々な道具があり,日々巧みに操作され活用されている。理学療法においても,歩行補助具や自助具等に道具が用いられ,各場面において理学療法士は対象者の身体運動に応じて環境を調整し,再適応を図っている。生態心理学によれば,環境が提供するアフォーダンスと動物の知覚が相互に作用することで,行為は制御される。特にヒトの場合,進化の歴史からみても,把握・操作可能な道具は重要な位置づけにあり,ヒトにとっても握る行為は,最も基本的な運動の1つである。よって,これらは極めて高い相互関係にあると考えられる。<BR> 近年の研究により,道具に対する知覚が特異的な脳活動を生じさせ,認知処理過程にも影響を及ぼすことが報告されている。しかし,アフォーダンスと実際の行為における相互作用を明らかにしている知見は少ない。そこで本研究は,道具に対するアフォーダンス知覚と行為の対応性に着目し,その対応性が認知処理と運動発現に及ぼす影響を筋電図反応時間(以下EMG-RT)により検討した。<BR>【方法】<BR> 被験者は健常な右利きの学生22名とした。提示する刺激画像には,道具画像(右手で把握可能な道具)と,動物画像(握ることをアフォードしないであろう対照画像)の2種類を用いた。反応する運動課題は,右手指屈曲(本研究でアフォードさせる動作)と,右手指伸展(対照動作)を採用した。刺激画像と運動課題の組み合わせによって,被験者を以下の2群に分けた。Compatible群(以下C群)は,道具画像に対して手指屈曲を(刺激画像と運動課題が一致),動物画像で手指伸展を行った。逆に,Incompatible群(以下IC群)は,道具画像に対して手指伸展(不一致),動物画像で手指屈曲を行った。<BR> 実験1は通常の選択反応課題であり,予告画像(画面中央に"+")後に刺激画像として道具,動物,NO-GOがランダムに提示された。提示後速くかつ正確に運動課題を実行するように指示した。実験2では予告としてアフォーダンス画像(手すり)を提示し,刺激画像が出るまで右手による把持イメージをさせた。EMG-RT(刺激提示から筋電図出現までの時間:ms)は表面筋電図を用いて測定し,被検筋は右浅指屈筋と右総指伸筋とした。解析は,二元配置分散分析を行い,有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究は,本学研究倫理審査委員会による承認後実施した。参加者には,事前に書面および口頭にて説明し,同意が得られた者を対象とした。<BR>【結果】<BR> 実験1では刺激画像と運動課題の2要因間に有意な交互作用が存在した。post hocテストの結果,道具画像*屈曲動作のEMG-RTが,動物画像*屈曲動作に比べて有意に遅かった。実験2は,実験1に類似した結果であったが,交互作用はわずかに有意水準に達しなかった。実験間の比較では,C群,IC群ともに実験2のEMG-RTが有意に遅い結果となった。この遅延は,IC群において特に顕著であった。<BR>【考察】<BR> 人工物の認識は自然物に比べて遅いと考えられるが(Borghi AM,2007),本研究の選択反応課題では刺激画像に主効果はなかった。よって,刺激同定段階の影響は少なく,道具画像*屈曲動作の遅延はその対応性によるものであり,反応選択・反応プログラミング段階に差が生じたと考えられる。動物画像に対する動作や道具画像に対する伸展動作は対応性のない無意味な行為であり,刺激同定後,機械的に運動発現に至る。このような対象を識別する視覚情報処理は腹側経路にて行われると言われている。一方,道具画像に対する屈曲動作には対応性があるため,その行為は目標指向性を帯び,視覚誘導性が強調されると考えられる。対象の空間情報や視覚誘導型の行為は背側経路によって制御される。さらに,両経路にはネットワークがあり,道具の認識において相互作用が生じると示唆されている。加えて,道具に対する頭頂葉の特異的な活動を示唆する報告もある。よって,道具の認識と対応する行為の選択には広範な神経活動を伴い,その結果,運動発現が遅延したものと推察される。<BR> 実験2ではアフォーダンス予告により全条件でEMG-RTが延長した。運動イメージを課すことでEMG-RTが遅延した先行研究もあり(Li S,2005),本研究も同様にアフォーダンス予告がタスクの複雑性を増大させたものと考えられる。しかし,この遅延はIC群で著しく,道具画像*屈曲動作において最少であったことから,予告状況下と刺激画像*運動課題の一致がEMG-RTの遅延を軽減させうると考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 環境との相互作用により生じるアフォーダンスと行為の対応性は,非意識下において特異的な認知処理を生ずることが示唆された。ゆえに,理学療法場面では患者の特性に応じて各種動作を円滑にする豊かな環境と知覚探索機会をともに提供していくことが望ましい。
著者
亀山 顕太郎 高見澤 一樹 鈴木 智 古沢 俊祐 田浦 正之 宮島 恵樹 橋川 拓人 岡田 亨 木島 丈博 石井 壮郞 落合 信靖
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1000, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】成長期の野球選手において野球肘の有病率は高く予防すべき重要課題である。その中でも離断性骨軟骨炎(以下,OCD)は特に予後が悪く,症状が出現した時にはすでに病態が進行していることが多いため,早期発見することが重要である。OCDを早期発見するためにはエコーを用いた検診が有効であり,近年検診が行われる地域が増えている。しかし,現状では現場に出られる医師数には限界があり,エコー機器のコストも考慮すると,数十万人といわれる少年野球選手全体にエコー検診を普及させるのは難しい。もし,エコー検査の前段階に簡便に行えるスクリーニング検査があれば,無症候性のOCDを初期段階で効率的に見つけ出せる可能性が高まる。本研究の目的は,問診・理学検査・投球フォームチェックを行うことによって,その選手のOCDの存在確率を推定し,二次検診が必要かどうかを判定できるスクリーニングシステム(以下OCD推定システム)を開発することである。【方法】調査集団は千葉県理学療法士会・スポーツ健康増進支援部主催の「投球障害予防教室」に参加した小中学生221名とした。この教室では問診・理学検査20項目・投球フォームチェック5項目の他に医師による両肘のエコー検査が行われた。OCDが疑われた選手は病院での二次検査に進み,そこでOCDか否かの確定診断がなされた。上記の記録をデータベース化し,OCDの確定診断がついた選手と有意に関連性のある因子を抽出した。この抽出された因子をベイズ理論で解析することによって,これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率を推定するシステムを構築した。推定されたOCDの存在確率と実際のデータを照合し,分割表を用いてシステムの妥当性を評価した。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ条約に基づき,事前に各チームの監督,保護者に対して検診の目的,内容について説明し同意を得た。また,「プライバシーの保護」「同意の自由」「参加の自由意志」を説明し,協力・同意を得られなかったとしても,不利益は生じないことを記載し当日文書にて配布した。【結果】221名中17名(7.7%)の選手が,エコー上で骨頭異常を認め二次検診を受けた。結果,4名(1.8%)の選手がOCDと確定診断された。OCDに関連性の高かった問診項目は「野球肘の既往があること」「野球肩の既往がないこと」であり,理学検査項目は「肘の伸展制限があること」「肘と肘をつけた状態で上肢を鼻の高さまで上げられないこと(以下 広背筋テスト)」「非投球側での片足立ちが3秒間安定できないこと」,投球フォームチェックでは「投球フォームでの肩肩肘ラインが乱れていること(以下 肘下がり)」であった。これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率をベイズ理論を用いて推定した。推定したOCD存在確率のcut off値を15%に設定し,二次検査が必要か否かを判別し,実データと照らし合わせたところ,感度100%,特異度96.8%,陽性的中率36.4%,陰性的中率100%,正診率96.8%と高精度に判別できた。【考察】本システムは,OCDの危険因子を持った選手を抽出し,その存在確率を推定することによって,危険性の高い選手にエコー検査を積極的に受けるように促すシステムである。このシステムでは問診や理学検査を利用するため,現場の指導者でも簡便に使うことができ,普及させやすいのが特徴である。こうしたシステムを用いることで,選手や指導者のOCDに対する予防意識を高められるという効果が期待される。本研究でOCDと関連性の高かったフィジカルチェック項目は,投球フォームでの肘下がりや非投球側の下肢の不安定性,肩甲帯・胸椎の柔軟性を評価するものが含まれている。こうした機能の低下はOCDに対する危険因子の可能性があると考えられた。今後普遍性を高めるために,他団体とも連携し縦断的かつ横断的観察を進めていく予定である。【理学療法学研究としての意義】OCD推定システムを開発し発展させることで,理学療法士がOCDの予防に貢献できる道筋を開ける。今後,より簡便なシステムを確立し,無症候性のOCDを高精度にスクリーニングできれば,より多くの少年野球選手を障害から守ることが可能になる。
著者
河村 隆 野内 知樹 降旗 克行 栗林 直樹 青柳 匡尚 中﨑 滉平 北橋 尚浩 鈴木 智 飯塚 浩二郎
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集 2016 (ISSN:24329509)
巻号頁・発行日
pp.C-20, 2016 (Released:2017-06-19)

Curling is one of the winter sports called chess on ice. Athletes are required high level skill and smart strategy. This paper deals with curling phenomenon of rotation stone on the ice.To Understand this phenomenon, polypropylene and Teflon sheet makes low friction environment, and curling stone experiment was carried out. Then curling stone phenomenon was reproduced on force plate instead of ice.
著者
礒崎 総一郎 中村 宏 鈴木 智郎 植村 俊郎 若菜 弘之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.277-282, 1993

A new type of traffic terminal has been constructed at Yokohama bay recently. It is composed of 2-storied house on a floating pontoon and moored by pile-fender system. There are ticket counter and waiting lounge on the first floor and restaurant on the second floor. Since the floating type was applied to the passengers terminal station for the first time in Japan, We examined the relation between comfortability and motion of the terminal. Several interesting results, such as people who are easy to get seasick have tendency to estimate the motion of the structure excessively, are obtained.