著者
高橋 英彦
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.51-54, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
4

自己と他者の所有物の高低と自己と他者との関係性の遠近というパラメータを調節することで,妬みの強さを調節し,f MRI 実験を行った。妬みの感情のもう 1 つの側面として,妬みの対象が不幸に見舞われると,私たちは他人の不幸は蜜の味ともいわれる非道徳な感情を抱くことがあり,この点についても併せて検討した。その結果,妬みと前部帯状回の背側部の活動が関係することがわかった。前部帯状回の背側部は身体的な痛みにも関わる部位で,社会的な痛みといえる妬みも同様な部位が賦活されたことは興味深い。また,妬みの対象に不幸が起こると,報酬系である腹側線条体の賦活を認め,文字通り他人の不幸は蜜の味であるかのような反応を認めた。
著者
高橋 隆雄
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 : 熊本大学倫理学研究室紀要 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-17, 2010-03

1981年にイタリアの小説部門で最高のストレーガ賞を受賞した「薔薇の名前」は、イタリアの哲学者であるウンベルト・エーコの著作である。映画にもなったので観た人も多いだろう。中世末の北イタリアの修道院を舞台にして、皇帝とローマ教皇の世俗レベルでの争い、それを神学上の教義に移して繰り広げられる清貧論争、異端審問、複雑怪奇な構造と謎に満ちた文書館、そして連続殺人とその謎解きは、神学上のまた現実の迷宮へと読者を誘ってやまない。本稿では、「薔薇の名前」に登場する清貧論争を権利概念の誕生史の中で捉えなおしてみたい。In one scene of the bestselling novel Il Nome della Rosa written by famous Italian philosopher Umbert Eco, the characters in the novel engaged heatedly in Apostolic Poverty Controversy. The issue of the argument was whether Jesus and the Apostles had propriety over their belongings. When we read the novel within the background of the history of human rights theory, e.g., within the context of Natural Rights Theories: Their Origin and Development, written by R.Tuck, we can find that at the dawn of human rights theory such a controversy in the late Middle Ages played a crucial role.
著者
神谷 知至 本田 孝也 鈴木 修 桐生 恭好 高橋 伸 角本 陽一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.759-765, 1985-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

慢性甲状腺炎・慢性膵炎を合併した原発性胆汁性肝硬変(PBC)の男性症例を報告する.症例は66歳男性,全身倦怠感と肝腫大あるため入院となった.検査成績で血清Al-P値が28.5K-Auと高く,軽度の肝機能障害も示した.血清抗ミトコンドリア抗体および抗甲状腺抗体は陽性であった.免疫二重拡散法にて抗ミトコンドリア抗体のCおよびDが確認されたが,特にDの検出は本邦で初例である.甲状腺生検は慢性甲状腺炎像を呈し,肝楔状生検像は典型的な慢性非化膿性破壊性胆管炎を示した.膵機能は中等度に障害され,ブドウ糖負荷試験は糖尿病型であった.Sicca症候群も後に出現した.結局本症例を慢性甲状腺炎・慢性膵炎・sicca症候群を合併したPBCと診断した.多臓器障害を強く示唆し,しかも今までにほとんど検出されたことがない抗ミトコンドリア抗体Cおよび特にDが認められた男性のPBC例を報告した.
著者
高橋 寿一
出版者
横浜国際経済法学会
雑誌
横浜国際経済法学 (ISSN:09199357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.1-24, 2013-03-25

池田龍彦教授・石渡哲教授退職記念号
著者
高橋 邦明 石井 正光 浅井 芳江 濱田 稔夫 山本 巌
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.1166-1173, 1984 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

種々の西洋医学的治療に抵抗した, 比較的病歴の長い難治性の乾癬患者33例 (尋常性乾癬26例, 乾癬性紅皮症2例, 関節症性乾癬2例) に対し, 乾癬の病態を, 表皮turn overの亢進に基づく慢性増殖性炎症, すなわち於血を基本とした慢性炎症と考え, 駆於血剤である桂枝茯苓丸 (便秘傾向の強い場合には大黄牡丹皮湯) に慢性炎症を抑制する温清飲を合方して長期間投与した結果, 著効16例 (49%), 有効10例 (30%), 無効7例 (21%), 悪化0で, 有効率79%と非常に優れた効果を認めた。副作用もみられず, 今後乾癬の治療法の1つとして極めて有用性が高いと考えられる。
著者
高橋,和雄
出版者
自然災害科学会
雑誌
自然災害科学
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, 1985-12-28

The heavy rain which swept over Nagasaki district on July 23,1982,killed 299 persons and damaged so seriously to Nagasaki city and its vicinity. Roads of Nagasaki city were submerged by flash flood. Many cars were washed away by flood and let along anywhere, so about 20 car drivers were killed. On the other hand, the damage of buses were not so serious and it is considered that buses are a safe transportation system when it rains heavily. However, many buses which were running were cancelled everywhere. Buses were isolated from the out side as well as owner driver's cars. Therefore, bus drivers were very busy because they must collect informations about roads and disaster, make contact with the operation center and order passengers to get off for evaculation. It seems important problems for traffic disaster prevention are presented. In the present work, bus disaster is investigated by interviews and questionnaire for bus drivers. Damage for buses due to flood and driver behavior are clarified and prevention for traffic disaster by flood is shown.

7 0 0 0 OA 4.E型肝炎

著者
加藤 孝宣 高橋 和明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2418-2422, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
4
被引用文献数
1

この数年間でE型肝炎に関する常識は大きく変化した.かつては輸入感染症であったはずのE型肝炎は,今や国内感染の頻度が輸入感染を遥かに上回っている.そして国内感染の主な感染経路が動物由来であることが明らかとなってきた.鹿・猪・豚の肉や内臓を非加熱,あるいは不充分加熱状態で食することによりE型肝炎が起こり得る.原因不明の急性肝炎症例ではE型肝炎も選択肢の一つとして認識すべきである.
著者
高橋 昭
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8special, pp.1404-1421, 1980-08-20 (Released:2011-11-04)
参考文献数
70
著者
松原 耕平 新屋 桃子 佐藤 寛 高橋 高人 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.39-50, 2019-01-31 (Released:2019-06-08)
参考文献数
39

本研究の目的は、幼児期の社会的スキルと問題行動が児童期の社会的スキルと抑うつ症状に与える影響を検討することであった。調査開始時点で年長児(5~6歳)であった100名を対象として、幼児期に社会的スキルと問題行動を測定し、小学校5年生時(10~11歳)と6年生時(11歳~12歳)にそれぞれ社会的スキルと抑うつ症状を測定した。その結果、幼児期の協調スキルと主張スキルは児童期の社会的スキルを媒介して、抑うつ症状の低減に寄与することが明らかとなった。幼児期の問題行動は児童期の社会的スキルと抑うつ症状のどちらにも影響はみられなかった。これらの結果から、児童期の抑うつ予防のために幼児期の社会的スキルに焦点を当てることの意義について議論された。
著者
高橋 雄介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.38-56, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
103
被引用文献数
6

本稿の目的は, 2014年7月から2015年6月までの間に発表・報告された人格(パーソナリティ)特性をはじめとする個人差変数が取り扱われた研究について概観し, その動向と課題についてまとめたうえで, 今後の展望や展開を論じることである。ジェームズ・ヘックマンの研究以来, パーソナリティ特性(非認知能力)の発達及び教育的介入の可能性に関する研究に焦点が当たっている。本稿では, まずBig Fiveとそれに並ぶ個人差変数(知能や自尊感情など), そして自己制御とそれに類する心理学的構成概念(衝動性や満足の遅延など)に関する研究について, 次に, パーソナリティ特性や個人差変数と身体的・精神的・社会的健康との関連に関する研究について概観して, それらの成果をまとめた。最後に, 「あ・い・う・え・お」に準える形で(あ : Anchoring vignettes, い : Interactions, う : Unique relationships, え : Environmental Effects, お : Other reports), 5つの観点から今後のパーソナリティ特性研究の展望と展開を考察し, 3つの視座から課題と期待を論じた。
著者
高橋 伸幸 長谷川 裕彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.161-171, 2003-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

北アルプス南部に位置する常念乗越(鞍部)の標高2465m地点において1997年10月~1998年10月の期間で気温観測を行った.その結果,年平均気温は3.9°Cであったが,アメダスデータとの対応で推定される平年値は2.7°Cとなる.また,温量指数の平年値(27.2°C・月)は,常念乗越が亜高山帯に位置付けられることを示しており,温量指数15°C・月により推定される森林限界高度は標高2833mとなる.しかし,実際には西寄りの冬季卓越風により森林の成立が阻まれ,常念乗越頂部から西向き斜面の風衝地を中心に周氷河環境が出現している.年間の凍結・融解出現日数は,72日に及んだ.この値は高山帯周氷河地域における凍結・融解出現日数を凌ぐものである.常念乗越における凍結・融解の出現時期は10~4月であり,3~6月と9~11月に出現時期が二分される高山帯周氷河地域とは明らかに異なる.
著者
武山 尚生 高橋 佑歌 永田 祥平 澤木 佑介 佐藤 友彦 丸山 茂徳 金井 昭夫
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.6, pp.899-912, 2020-12-25 (Released:2021-01-18)
参考文献数
56
被引用文献数
2

The origin of eukaryotic organisms is one of the most important questions in biology. So far, it has been suggested that eukaryotes are phylogenetically related to Archaea. Indeed, recent progress in archaeal genomic biology seems to have accurately determined the exact position of Archaea in the birth of the Eukaryota. In particular, identifying groups of archaeal species, such as the superphylum TACK and the Asgard archaea, has shown that primitive genes for eukaryotic signature proteins (ESP) already existed in the genomes of these archaeal species. Some ESPs are especially important, including actin and tubulin in the cytoskeleton and the ESCRT complex, which is involved in nuclear membrane formation. There have been many reports that eukaryotic intracellular organelles, such as mitochondria and chloroplasts, evolved from specific symbiotic bacteria. Moreover, eukaryotic genes are disrupted by intronic sequences, which must be removed or “spliced” and the exons connected after the primary transcript is generated, to make a mature functional mRNA. Recently, it has been suggested that the self-splicing factor in both bacterial and archaeal genomes, called “group II intron”, may cause gene disruption. In this review, the frontiers of genome biology are summarized in terms of the importance of prokaryotes (both Archaea and Bacteria) for the origin of Eukarya. From an Earth history perspective, how the increase in atmospheric oxygen concentration at 2.4-2.0 billion years ago may have contributed to the rise of the eukaryotes is discussed.