著者
木村 翔 筧 康明 高橋 桂太 苗村 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.2781-2790, 2008-12-01
被引用文献数
1

筆者らは,プロジェクタ映像の中に,人間には見えないメタ情報を埋め込んで投影できる可視光通信プロジェクタの開発を進めてきた.このメタ情報による機械の制御は,人が目にする映像と画素単位の精度で一致させることができる.本研究は,実世界に根ざした様々なインタフェースを実現するための基盤技術として位置づけられる,これまで,埋め込まれたメタ情報を読み出すにあたり,ホトセンサ付きの受光端末を用いて,映像中の1点での情報を取得していた.本論文では,高速度カメラを用いてこのメタ情報を読み出す手法を提案する.高速度カメラを用いることで,映像全体から複数のメタ情報を同時に取得可能になる.いくつかのアプリケーション例を示すとともに,実験を通じて,その有効性を明らかにする.
著者
奥山 秀樹 三上 隆浩 木村 年秀 占部 秀徳 高橋 徳昭 岡林 志伸 平野 浩彦 菊谷 武 大野 慎也 若狭 宏嗣 合羅 佳奈子 熊倉 彩乃 石山 寿子 植田 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.352-360, 2014-04-01 (Released:2014-04-10)
参考文献数
12

摂食機能障害において,全国で 26 万人と推定されている胃瘻造設者は最近の 10 年間に急速に増加してきた。胃瘻については,その有効性,トラブル,および予後等に類する報告が今までにされているが,対象者は,胃瘻を管理する医療施設や高齢者施設に軸足が置かれており,実際に胃瘻を造設した術者や,患者側の視点での調査はほとんど行われていない。 そこで今回,医療施設,高齢者施設に加えて,胃瘻を造設した医療施設と在宅胃瘻管理者(家族)とを対象にして,胃瘻に関する実態を調査し,課題の抽出,胃瘻を有効な手段とするための要因等について検討を行った。調査対象は国民健康保険診療協議会(国診協)の直診施設(国保直診施設)全数の 833 件,国保直診の併設および関連介護保険施設(介護保険施設)の 138 件,および国保直診票の対象施設において入院中もしくは在宅療養中の胃瘻造設者の家族 485 件である。 その結果,国保直診施設において胃瘻造設術件数は「減っている」が 53.1%であり,過去 3 年間に減少傾向にあるものの,介護保険施設では「減っている」が 20.3%であり,胃瘻造設を実施する側と,それを受け入れる側とに差を生じた。患者側の胃瘻に対する満足度は,造設前に胃瘻の長所,短所の説明があり,それも医師以外の職種からも説明を受け,自宅療養であること,また結果的に造設後 3 年以上経過しているといったことが,満足する要因になっていた。
著者
谷口 洋 藤島 一郎 大野 友久 高橋 博達 大野 綾 黒田 百合
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.249-256, 2006-12-31 (Released:2021-01-10)
参考文献数
10

【目的】ワレンベルグ症候群(WS)による嚥下障害はしばしば左右差を認める.本研究ではWSにおける食塊の下咽頭への送り込み側と食道入口部の通過側について検討した.【対象と方法】対象は嚥下造影検査(VF)を施行したWSの24症例で,24症例はVFを平均2.0回おこなっており,各検査を独立した47施行として後方視的に検討した.頸部正中位での嚥下を正面像で観察し,下咽頭(梨状窩のレベル)への食塊の送り込みを左右差なし,患側優位,健側優位に,食道入口部の通過を左右差なし,患側優位,健側優位,不通過に分類した.下咽頭へ患側優位に送り込まれた例では,健側に食塊を誘導する目的で健側を下に側臥位をとるか(一側嚥下)患側へ頸部回旋しての嚥下(嚥下前横向き嚥下)をおこない咽頭通過の改善を評価した.【結果】下咽頭への送り込み側は左右差なし15施行(32%),患側優位24施行(51%),健側優位8施行(17%)であった.食道入口部の通過側は左右差なし6施行(13%),患側優位9施行(19%),健側優位16施行(34%),不通過16施行(34%)であった.食塊が患側優位に下咽頭へ送り込まれた15施行に一側嚥下か嚥下前横向き嚥下をおこない,12施行(80%)で食塊が健側の下咽頭へ誘導されることで咽頭通過の改善をみとめた.【考察】従来の報告と同様に食道入口部の通過は健側優位が多かったが,下咽頭への送り込みは患側優位が多く対照的な結果となった.これまでWSにおける食塊の咽頭への送り込み側の報告はない.患側の下咽頭に送り込まれやすい機序として,健側の口蓋筋群がより強く収縮して食塊が患側に偏筒して口峡を通過することや,咽頭収縮筋が健側でより強く収縮して食塊が患側に送り込まれることが推察された.WSではこれらのことを考慮して体位調節により下咽頭への送り込みをコントロールすることが時に重要であると思われた.
著者
高橋 明男 菅 真城 安田 理恵 折登 美紀 佐藤 英世
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、公的文書の管理・保存に係る専門職としてのアーキビストの役割について、アーカイブズと専門職としてのアーキビストの制度が確立している諸外国と比較し、わが国における現状の調査と併せて、ジェネラリストとして定期異動を繰り返すことが通常である文系公務員・職員の中で、どのように専門職としてのアーキビストがその重要な役割を果たし、公的文書の管理・保存プロセスの専門的合理性を確立することができるかを検討する。
著者
高橋 延昭
出版者
札幌医科大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 地域事業 地域イノベーション創出総合支援事業 シーズ発掘試験
巻号頁・発行日
2009

コンブに刺胞動物ヒドロゾアが付着するとその商品価値が半減する。ヒドロゾアは種によりポリプ型とクラゲ型の両方あるいは片方単独の生活史を営むことが知られている。コンブに付着するそのヒドロゾア(モハネガヤと云われている)の生活史は、いまだ不明で、その付着対策も練られていない。本研究はそれを立案するため、そのヒドロゾアの全生活史を解明するために、生態学・環境調査および培養法の確立を目指すものである。
著者
コマロフ アンソニー 高橋 良輔 山村 隆 澤村 正典
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.41-54, 2018-01-01

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は6カ月以上持続する疲労感,睡眠障害,認知機能障害などを生じる疾患である。ME/CFSは自覚症状により定義されているため疾患概念そのものに対する懐疑的意見もあるが,近年の研究では神経画像,血液マーカーの解析,代謝,ミトコンドリアなどの研究でさまざまな客観的な異常が報告されている。特に脳内外での免疫系の活性化がきっかけとなり,炎症性サイトカインが放出されることで病気が発症する可能性が指摘されている。この総説ではME/CFSについての客観的なエビデンスを中心に解説する。
著者
伊藤 正憲 高橋 優基 嘉戸 直樹
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.23-27, 2015 (Released:2016-01-06)
参考文献数
1
被引用文献数
4

While walking, we often change our direction and speed as necessary. The movement made to change the direction is divided into two types: the spin turn and the step turn. The axis of the lower extremity in the spin turn is on the same side as the direction in which the turn is made, whereas in the step turn, it is on the opposite side. In this study, with respect to the spin turn and step turn, the center of pressure trajectories and the electromyography patterns of the lower extremity were measured. Based on these results, the function of the lower extremity required for the spin turn and step turn is explained and discussed.
著者
高岸 治人 高橋 伸幸 山岸 俊男
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.159-166, 2009 (Released:2009-03-26)
参考文献数
32

人々は,不公正な状況(e.g.資源の不公平な分配)に直面した際に,多くの場合,その不公正を是正しようとする傾向を持つ。これまでの最後通告ゲームでの実験によって,行為者の不公正な意図が,不公正の被害者による不公正是正行動に重要な役割を果たしていることが示されてきた。本研究では,同じ研究方法を用いて,第3者が行う不公正是正行動においても,行為者の不公正な意図が重要な役割を果たしているかどうかを実験によって検証した。実験の結果,意図の効果は見られたものの,意図がない状況でも,多くの参加者が不公正是正行動をとることが示された。これらの結果は,相手に意図がない状況で不公平な結果を改善したいという動機が,被害者の立場よりも第3者の立場で強く生じていることを示している。

8 0 0 0 OA 後ろ歩き

著者
嘉戸 直樹 伊藤 正憲 高橋 優基
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.29-32, 2015 (Released:2016-01-06)
参考文献数
5
被引用文献数
3

Walking is the main means of locomotion. Locomotion is performed not only forward but also backward in daily life. However, there are few explanations of backward walking, compared to forward walking, in textbooks of motion analysis. In this study, previous studies of backward walking are reviewed, and the trajectories of center of pressure and electromyogram patterns assessed. The functions of the lower leg and the trunk in backward walking are discussed with reference to the results.
著者
高橋 龍一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.598-606, 2016-09-05 (Released:2017-01-09)
参考文献数
40
被引用文献数
1

宇宙には星や惑星,銀河や銀河団といった多種多様な構造が存在している.これらの構造はいつどのように形成されたのだろう? 宇宙では遠くを見ることにより,過去を知ることができる.そのため,望遠鏡を使い宇宙の構造がどのように進化してきたか,時代をさかのぼって調べることができる.近年の観測技術の向上により,宇宙の太古の時代(ビッグバンから約40万年後)から現在(ビッグバンから約138億年後)まで,進化の歴史を詳細に知ることができるようになってきた.それに伴い構造形成にひとつの問題が浮かび上がってきた.太古から現在まで,構造形成が(理論的に予想されるより)あまり進んでいないように見えるのである.宇宙は138億年前のビッグバンにより始まり,現在も膨張を続けていることが観測から確認されている.現代宇宙論は一般相対性理論を用いて,宇宙の膨張史や構造形成史を調べる.一般相対論が宇宙のサイズ(≈1027 cm)でも成り立っていると仮定するため,宇宙論は大スケールでの物理法則をチェックする舞台にもなっている.様々な観測から宇宙の成分の約7割が暗黒エネルギー,約3割が物質(暗黒物質と元素)から成ることが示唆されている.暗黒エネルギーにより現在の宇宙膨張が促進されていると考えられている.暗黒物質は光と相互作用しない未知の物質で,構造形成は暗黒物質の重力が主に働いて進むと考えられている.このように一般相対論に基づいて,暗黒エネルギーと暗黒物質を主成分とする宇宙モデルは,現代宇宙論の“標準モデル”と呼ばれている.初期宇宙の物質分布は完全に一様ではなく,非常に小さな密度揺らぎがあったことが宇宙背景輻射の観測から示唆されている.そのため周囲に比べ密度の高い領域は,重力も強いため物質が集まりやすく,その場所で構造が形成されたと考えられている.暗黒物質が重力で集まって暗黒ハローと呼ばれる自己重力構造物を作り,その重力場内で元素(水素,ヘリウムなど)が収縮して,星や銀河を形成したと考えられている.宇宙の密度揺らぎは,太古の時代は宇宙背景輻射の観測から,また現在付近は大規模銀河サーベイから非常に詳細に測られている.近年の観測技術の向上や理論模型の高精度化により,密度揺らぎの振幅は数パーセント以下の精度で決定されている.観測誤差が小さくなってきたことにより,太古と現在の揺らぎの振幅に系統的なずれがあることが知られるようになってきた.理論的な“標準モデル”の予言に比べ,太古から現在まで密度揺らぎがあまり成長していないように見える.宇宙背景輻射により測られた太古の密度揺らぎの振幅が相対的に高く,銀河サーベイ等で観測された現在の振幅が相対的に低い値を示している.また現在の揺らぎの振幅が低いために,銀河団もあまりできていない.この問題は,観測的な系統誤差の可能性も残っているが,“標準モデル”の枠組みで多少モデルを変更しただけでは解決できそうに見えない.本記事ではこの問題の現状を紹介し,解決するために提案されているいくつかのアイデアを紹介する.この密度揺らぎの振幅の不一致問題は,暗黒物質による構造形成モデルの修正や,新しい物理法則の発見に繋がるテーマかも知れない.
著者
持田 浩治 香田 啓貴 北條 賢 高橋 宏司 須山 巨基 伊澤 栄一 井原 泰雄
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.177, 2020 (Released:2020-12-24)
参考文献数
139

試行錯誤をともなう個体学習に比べ、他者やその産出物(例えば音声や匂いなど)の観察を基盤とする社会学習は、学習効率が高く、獲得された行動が集団内に迅速に伝わる。また社会学習の存在は、昆虫類などの無脊椎動物から霊長類まで幅広く知られており、近年、キイロショウジョウバエが学習モデルとして導入されたことで、その神経生理基盤や遺伝基盤が解明される日が急速に近づいている。しかしながら、社会学習やそれにともなう集団内での行動伝播が生態学的現象に与える影響は、ほとんど明らかになっていない。とりわけ、種間交渉を通して、社会学習が他種や種間関係、生態系に与える影響について、ほとんど議論されていない。そこで本総説は、昆虫類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類における社会学習の実証研究を紹介し、その課題を取りあげる。また実証研究として紹介した社会学習に関する三つのテーマについて、数理モデルを取り入れた理論研究を紹介する。これらを通して、生態学的現象における社会学習の役割とその重要性を理解し、当該分野の今後の発展に貢献することができれば幸いである。
著者
渡辺 伸一 野田 琢嗣 小泉 拓也 依田 憲 吉田 誠 岩田 高志 西澤 秀明 奥山 隼一 青木 かがり 木村 里子 坂本 健太郎 高橋 晃周 前川 卓也 楢崎 友子 三田村 啓理 佐藤 克文
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.9-22, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
33

バイオロギング(biologging)とは、動物に様々なセンサーを取りつけて動物の行動や生態およびその周辺環境を調べる手法である。今世紀に入り、バイオロギングデータを共有するウェブ上の電子基盤システムとなるプラットフォームが世界各国で次々と構築されている。一方、日本国内で取得されたバイオロギングデータの共有は立ち後れている。本稿では、日本国内のバイオロギングデータを保存・管理・利用するために新たに開発したプラットフォーム(Biologging intelligent Platform: BiP)について紹介する。BiP の仕様を決めるにあたり、既存の12 のプラットフォームが格納するデータの種類や解析機能に関する特徴6 項目を3 段階で評価し、格納するデータ量の増大に寄与する特徴について考察し、その結果をもとにBiP の仕様、ならびに今後発展すべき方向性について検討した。既存プラットフォームを比較した結果、格納するデータ量の増加には、データ公開レベルとデータタイプの自由度が高く、データ解析ツールの充実度が高いという特徴が寄与していた。これらの特徴を踏まえてデータ公開レベルとデータタイプの自由度を高めるようにBiP を設計した。さらに次に示すBiP 独自のウェブ解析システム(Online Analytical Processing: OLAP)を搭載した。BiP のOLAP は次のような機能を持つ:1)バイオロギング機器によって得られたセンサーデータ(Level 0)をBiPウェブサイトへアップロードし、個体や装着時のメタデータを入力すると、動物の放出前や機器の回収後の不要部分を除去して、標準形式へ変換したLevel 1 データを作成する。2)GPS データをもとに、海流・風・波浪といった海洋物理情報(Level 2 データ)を抽出できる。3)登録者が公開設定したデータの場合、利用者はLevel 1, 2 データをCSV 形式およびネットワーク共通データ形式(Network Common Data Form: NetCDF)でダウンロードできる。今後は、海洋物理情報をグリッド化したLevel 3 データを生成する機能を付与し、対象種を海洋動物から陸生動物まで、対象地域も全世界へと広げて、収集するデータの質と量を増大させる計画である。
著者
高橋 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-9, 2021 (Released:2021-04-13)
参考文献数
10

第23回宮城県理学療法学術大会での特別講演「運動療法時のリスク管理の要点~適切な運動療法によりアクシデントを防ぐ~」の内容をまとめた。まずは,理学療法のリスク管理と予防理学療法について,「脳卒中・循環器病対策基本法」の成立までの道のりや,「循環器病対策推進計画」の重要性について解説した。特に日本での予防理学療法の発展に期待を寄せた。続いて,運動療法時のリスク管理の要点について,血圧や脈拍数の管理,用量-反応関係(Dose–Response Relationships)の重要性,運動強度の設定の必要性,バイタルサインズの理解について解説した。そして最後に,理学療法士は,再発予防,再入院予防,重症化予防により力を入れて社会のニーズに対応すべきであると提言した。
著者
田辺 利男 水尾 仁志 矢崎 康幸 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.567-574, 2011 (Released:2011-09-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

我が国においてE型肝炎患者数が最も多い北海道におけるE型肝炎ウイルス(HEV)感染の地域差の有無を検討するため,釧路市721例および根室市687例の血清検体についてIgG型HEV抗体を測定し,既報の札幌市および北見市の住民での測定結果と比較した.抗体陽性率は釧路市で5.4%,根室市で2.0%であり,両市とも男性で有意に高率であった(釧路市,男性8.5% vs. 女性3.0%,P=0.0010;根室市,4.0% vs. 0.5%,P=0.0012).40歳以上の年代で各市の抗体陽性率を比較すると,釧路市と北見市,札幌市との間で有意差は認められなかったが(それぞれ7.9%,12.1%,6.4%),根室市では2.1%に過ぎず,北見市,札幌市および釧路市よりも有意に低率であった.道内4都市での感染率の地域差は地域産業および食文化の相違を背景にしたブタ肉・内臓消費量の違いに由来すると推測された.