著者
髙橋 祥
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.15-24, 2016-05-31 (Released:2016-07-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

“めまい”の原因疾患を検討するため,15か月で1,000例のめまい患者を集めretrospectiveに解析した。めまい患者で最多の診断は,頚性めまいで89%を占めた。頚性めまいと診断し,頚部MRIを施行し得た症例の中で最も多い頚椎・頚髄病変は脊柱管狭窄症であり,脊柱管前後径の正確な測定とその診断基準に沿った判定が重要であると考えられた。また頚椎・頚髄病変が根底にあり,さらにめまいを誘発した頚の姿勢への負荷では,その原因が性別や年代により異なっていた。特に,高齢女性の場合,農作業や草取りなどの庭仕事で長時間の前傾姿勢を取ることが誘因となっていたことは特徴的であった。頚性めまいの患者において,頚・肩筋群の過緊張や緊張型頭痛を伴う場合には,筋弛緩薬による是正が最も重要であり,治療により1週間以内にめまいが消失あるいは明らかに改善した症例は90%であった。本研究では,頚椎・頚髄病変が根底にあり,さらに頚に過度の負荷をかけることでめまいが誘発される頚性めまいの重要性について述べた。
著者
佐藤 佑太郎 太田 経介 松田 涼 濵田 恭子 髙松 泰行
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12356, (Released:2023-06-09)
参考文献数
46

【目的】進行性核上性麻痺患者の病棟内歩行の自立度と歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能との関連性を検討し,抽出された項目のカットオフ値を算出することを目的とした。【方法】進行性核上性麻痺患者86名を対象とした。歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能が病棟内歩行自立と関連するかを多重ロジスティック回帰分析で検討し,抽出された項目をreceiver operating characteristic curve(ROC)にてカットオフ値を算出した。【結果】歩行自立に対してバランス機能評価である,姿勢安定性テストとBerg Balance Scale(以下,BBS)が関連し(p<0.01),カットオフ値は姿勢安定性テストで2点,BBSで45点であった。【結論】進行性核上性麻痺患者における病棟内歩行自立可否には姿勢安定性テストやBBSの包括的なバランス機能が関連することが示唆された。
著者
髙須 香吏 中山 中 窪田 晃治
出版者
信州医学会
雑誌
信州医学雑誌 (ISSN:00373826)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.249-257, 2020-10-10 (Released:2020-11-11)
参考文献数
34

A 40-year-old woman who had undergone long-term hospitalization for schizophrenia was discharged. Four days later, she impulsively self-injured, was hospitalized with a prolapsed intestinal tract, and underwent emergency surgery. The wound on the left side penetrated the upper jejunum, mesenteric vessels, hilar region of the left kidney, iliopsoas, and a paravertebral nerve. The right involved the duodenum and vena cava. We repaired the each damage and performed left nephrectomy. The deadly triad was inferred, so we closed the wounds and transferred her to the ICU. Hemorrhagic shock continued for 31 hours, improved with massive blood transfusion. She then suffered from liver dysfunction, jaundice, renal insufficiency, hydrothorax and atelectasis, and abscess due to duodenal ruptured suture. Continuing care included dialysis, mechanical ventilation, thoracic and abdominal drainage, and nutritional management worked. The acute and subacute care ceased in week 12, and after rehabilitation, she was discharged by foot.We encountered an alive case suffered from definitive operation for multiple abdominal wound. We report it with inquest of the tactics and strategy.
著者
髙木 俊敬 前田 麻由 山下 恒聖 國上 千紘 岡田 祐樹 中村 俊紀 神谷 太郎 今井 孝成 水野 克己
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.228-232, 2021-08-20 (Released:2021-08-20)
参考文献数
16

症例は5か月の男児.ゴマ摂取歴はなく両親にゴマを積極的に摂取する嗜好はない.生後1か月から脂漏性湿疹を顔面に認め,生後4か月には全身に皮疹が拡大した.保護者にステロイド忌避があり自己判断で市販のゴマ油含有外用薬を日常的に広範囲に塗布していた.生後5か月に湿疹増悪と活気低下,体重減少を認め当院に入院した.入院時血液検査で,血清総IgE値,ゴマ特異的IgE抗体価の高値を認めた.ゴマ油含有外用薬を中止,適切な治療にて皮疹は軽快した.乳児期はゴマを完全除去し,1歳3か月時にゴマ0.3gの食物経口負荷試験を実施した.結果,全身に膨疹と掻痒を速やかに認め,ゴマアレルギーと診断確定した.乳児早期からゴマ油含有外用薬を湿疹部に塗布したことにより経皮感作が誘導され即時型アレルギーを発症した可能性がある.皮膚のバリア機能が障害されている患者において食物成分を含む外用を行う際には食品成分に対して経皮感作が起こりうる可能性を考慮し,医薬品をはじめ一般用医薬品や医薬部外品に含まれる食品成分に注意する必要がある.
著者
髙橋 宏和
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.357-370, 2022-11-01 (Released:2022-11-14)
参考文献数
19

This study analyzed the meaning and penetration rate of DX concept in the business world to address the problem that the meaning of present DX concept is noticed only in the definition advocated by the originator of DX concept such as governments and think tanks.A metric text analysis of annual reports from 2019 to 2021, issued by 158 companies picked up from the Nikkei index, was conducted.The results show that 147 companies, or 93% of the total, mention DX, and moreover, the number of companies mentioning DX is increasing year by year.In addition to the fact that the DX concept has been interpreted in a variety of ways, we have shown that the training of personnel for DX has increased over the years compared to other mentions.Finally, this study showed the possibility of leading to the theoretical development of "Sense Making" and "Management Fashion".
著者
髙梨 潤一
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.35-43, 2022 (Released:2022-04-15)
参考文献数
31

急性脳症は500–800人/年,0–3歳の乳幼児に最も多く発症し,頻度の高い順にけいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD, 34%),可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎脳症(MERS, 18%),急性壊死性脳症(ANE, 3%)である.AESDは熱性けいれん重積との鑑別が時に困難であるが,早期診断に高b値拡散強調像,ASL,MRスペクトロスコピーの有用性が報告されている.AESDに特徴的なbright tree appearanceは剖検例の検討から肥胖型星状膠細胞増多を反映していると考えられる.MERSは脳梁の可逆性拡散低下を特徴とし,予後良好である.急性巣状細菌性腎炎にしばしばMERSを併発しやすい.家族性MERSの検討からMYRF遺伝子異常が報告され,MERSの病態が髄鞘浮腫であることを示唆する.自己免疫性GFAPアストロサイトパチーは視床後部の対称性病変,側脳室ないし脳梁の線状病変が特徴的である.
著者
横山 海青 髙倉 礼 志築 文太郎 川口 一画
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.383-396, 2021-11-25 (Released:2021-11-25)
参考文献数
21

A Japanese software keyboard for game consoles has a problem with the entry speed and widget size. In this article, we show JoyFlick that is a text entry method for an improved Japanese software keyboard. We evaluated the text entry speed and accuracy of JoyFlick. Also, we conducted an analysis of the user’s operations to study the tendency of the operations and verify the design of JoyFlick. The results showed the following tendencies: the user tends to tilt the stick to select the keys on the outer edge;the user tends to restore the stick to the neutral position between selections; the user tends to restore both sticks to the neutral position at the same time (M = 15.5 × 10−2s) at the entry of a character. Also, the results showed that the design of JoyFlick, which restricts the order of consonant and vowel selection prevents a part of mistaken entries. Moreover, we show the outlook of the application and the necessity of study in actual and several environments.
著者
髙坂 康雅
出版者
Japan Society of Developmental Psychology
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.284-294, 2013

本研究の目的は,"恋人を欲しいと思わない"青年(恋愛不要群)がもつ"恋人を欲しいと思わない"理由(恋愛不要理由)を分析し,その理由によって恋愛不要群を分類し,さらに,恋愛不要理由による分類によって自我発達の違いを検討することであった。大学生1532名を対象に,現在の恋愛状況を尋ねたところ,307名が恋人を欲しいと思っていなかった。次に,恋愛不要理由項目45項目について因子分析を行ったところ,「恋愛による負担の回避」,「恋愛に対する自信のなさ」,「充実した現実生活」,「恋愛の意義のわからなさ」,「過去の恋愛のひきずり」,「楽観的恋愛予期」の6因子が抽出された。さらに,恋愛不要理由6得点によるクラスター分析を行ったところ,恋愛不要群は恋愛拒否群,理由なし群,ひきずり群,自信なし群,楽観予期群に分類された。5つの群について自我発達を比較したところ,恋愛拒否群や自信なし群は自我発達の程度が低く,楽観予期群は自我発達の程度が高いことが明らかとなった。
著者
八木 雅之 髙部 稚子 石崎 香 米井 嘉一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.67-73, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
55
被引用文献数
1

糖化(glycation)はアミノ酸やタンパクと還元糖の非酵素的な化学反応で生体内のさまざまなタンパクに起こる。糖化したタンパクはカルボニル化合物を中心とする糖化反応中間体を経て,糖化最終生成物(advanced glycation end products: AGEs)に至る。糖化ストレス(glycative stress)は還元糖やアルデヒドによる生体へのストレスと,その後の反応を総合的にとらえた概念である。糖化ストレスの評価には糖化反応の過程で生じるさまざまな物質がマーカーとなる。糖化ストレスマーカーには,血糖,糖化タンパク,糖化反応中間体,AGEsがある。抗糖化作用の評価には,タンパクと還元糖を含むリン酸緩衝液中に試料を添加して反応させた後,生成したAGEsや糖化反応中間体の量を測定する。既に,多くの食品,化粧品素材に抗糖化作用が見つかっている。我々はこれらの素材を利用することで糖化ストレスによる老化や疾患を予防できる可能性がある。
著者
髙橋 康徳
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.98-110, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
参考文献数
23

上海語では複数音節からなる語句で変調が起きる。この変調のドメイン(変調域)は1980年代から理論的アプローチや中国語方言学的記述の枠組みで考察されており,最近では実験音韻論的研究が変調域の適格性に関する聴覚音声学的データを提供した。本稿では上海語の変調域に関する従来の研究をまとめた上で,会話教材を用いて変調域の産出データを分析する。観察された変調域の基本的な特徴は先行研究の分析で説明可能であるが,未報告の変調形成パタンも観察された。
著者
田中 善大 伊藤 大幸 村山 恭朗 野田 航 中島 俊思 浜田 恵 片桐 正敏 髙柳 伸哉 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.332-343, 2015 (Released:2017-12-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究では,単一市内の全保育所・公立小中学校の児童生徒の保護者を対象に調査を実施し,ASD傾向及びADHD傾向といじめ被害及び加害との関連を検討した。ASSQによってASD傾向を,ADHD-RSによってADHD傾向を測定した。いじめ被害及び加害は,関係的いじめ,言語的いじめ,身体的いじめのそれぞれのいじめについて測定した。保育所年少から中学3年生までの計8396名の幼児児童生徒のデータに対する順序ロジスティック回帰分析の結果,他の独立変数の効果を調整しない場合には,いじめ被害及び加害ともに,いずれのいじめに対してもASD傾向とADHD傾向の効果が示された。これに対して,他の独立変数の効果を調整した場合には,2つの発達障害傾向のいじめに対する影響は異なるものであった。いじめ被害では,全てのいじめでASD傾向の主効果が確認されたが,ADHD傾向の主効果が確認されたのは関係的いじめと言語的いじめのみであり,オッズ比もASD傾向より小さかった。いじめ加害では,全てのいじめでADHD傾向の主効果が確認されたが,ASD傾向ではいずれのいじめにおいても主効果は確認されなかった。これに加えて,学年段階や性別との交互作用についてもASD傾向とADHD傾向で違いが見られた。
著者
野中 直之 髙田 智仁 西片 由貴 ノナカ ナオユキ タカダ トモヒト ニシカタ ユキ Nonaka Naoyuki Takada Tomohito Nishikata Yuki
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-27, 2014-03-31

手鑑とは、古人の筆跡(手)である古筆切や短冊、色紙等を鑑賞や手習いの手本(鑑)とするために貼り込んだ帖のことを指す。本手鑑は2004年度に大東文化大学図書館に受け入れられたものである。縦38.8センチ、横25.6センチである本手鑑は、表面66葉・裏面66葉の計134葉を収め、聖武天皇、光明皇后から始まる基本的な手鑑行列の配列に従っているものの、貼り替えの跡が多数見られ、また手鑑行列も乱れている点から、製作当初とは所収内容が変更されていると思われる。しかしながら、伝藤原有家筆「墨流切(多田切)」、伝西行筆「曽丹集切」、伝藤原俊成筆「顕広切」などの固有古筆名を有した名物切も所収する。本解題は表面二回・裏面二回の計四回に分けて掲載を予定し、本年度は表面のうち、冒頭の「聖武天皇」から「中院殿通村公」までの37葉を扱うものである。