著者
加治木 章 津田 徹 山崎 裕 城戸 優光
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.1290-1295, 1992-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

Methylphenidate (リタリン®) 静注乱用者2名に高度の閉塞性換気障害と拡散障害を認めた. 胸部X線所見上1例はブラ, 無気肺を伴う肺気腫所見を示し, 自然気胸も合併した. 他の1例は間質性陰影を主体としていた. 両者とも静注乱用をはじめて約10年で労作時呼吸困難を自覚するようになった. 当時の静注乱用の仲間で現在生存している他の1名も胸部X線所見にて肺気腫を認めている事, 比較的若年で発症している事より, これらの肺障害はリタリン静注乱用によりおこったものと考えられた. 若年性の肺気腫や, 拡散障害を伴う閉塞性換気障害の症例ではこのような薬物静注乱用の可能性も考慮する必要がある.
著者
石田 啓一郎 畠山 忍 幸村 克喜 江部 達夫 荒井 奥弘
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.1852-1857, 1992-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18

症例は24歳の女性で, 1989年7月19日の検診にて胸部異常陰影を指摘され, 精査治療のため当院呼吸器科に紹介となり11月2日入院した. 胸部X線写真では両側中・下肺野の末梢に強い浸潤影を認め, 胸部CTでは胸膜下の小葉性陰影と考えられる density の上昇を認めた. 以上より肺胞蛋白症を疑い, 右中葉気管支より気管支肺胞洗浄および右上葉, 下葉から経気管支肺生検を施行した. 気管支肺胞洗浄液の沈渣物と経気管支肺生検における組織の電顕像にて, 多数の multilamellar body を認め肺胞蛋白症と診断した. なおかつ間質領域にマクロファージの浸潤像がみられたことから, 比較的早期と考えられる肺胞蛋白症においても間質性病変が同時に, または先行して起こる可能性が示唆された. 治療に関して, 我々は Ambroxol を経口および吸入で使用し, ある程度の有効性を認めた.
著者
宮本 昭正 可部 順三郎 荒木 英斉 牧野 荘平 児玉 太郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3-4, pp.171-179, 1966-12-31 (Released:2010-02-23)
参考文献数
9

Thirty eight asthmatic patients were studied on pulmonary diffusing capicity for carbon monoxide, history of bronchial asthma, chest X-ray and some of pulmonary function tests. Moreover, pulmonary diffusing capacity among normal subjects was measured and compared to that of asthmatic patients. DLCO was measured by Forster's single breath method modified by Oglivie and CO-workers. Krough's “Permiability” (KCO) was calculated from the same procedure as DLCO.1) Pulmonary diffusing capacity was found to decrease with advancing age and to increase with increasing either height or alveolar volume. Pulmonary diffusing capacity of asthmatic patients was almost equal to or higher than that of nomal subjects.2) No significant correlation was found between pulmonary diffusing capacity and FEV 1.0/FVC.3) Pulmonary diffusing capacity, especially KCO, showed an tendency to decrease with increasing severity of asthma and with advancing emphysematous change in chest X-ray.4) Asthmatic patients were divided into 2 groups; patients who had asthmatic symptoms since childhood, and patients who had the first experience of asthmatic attacks after adolescence. There was found no significant difference between pulmonary diffusing capacity of these 2 groups. From this result, an impression is given that long-standing bronchial asthma does not necessarily progress to diffuse obstructive emphysema.5) The more the patients showed severe asthmatic symptoms, the more marked emphysematous changes were proved in chest X-ray of the majority.6) Pulmonary diffusing capacity was measured among asthmatic patients with history similar to “Tokyo-Yokohama asthma”. No cases showed lowered pulmonary diffusing capacity. This result suggests that there is neither destructive changes as seen in the lung of chronic emphysema nor alveo-capillary block among these patients.
著者
中元 隆明 飯塚 昌彦 Okamoto Shingo 桃木 茂 原澤 寛 加藤 士郎 長谷 達也 久我 英世 大野 邦彦 森 博美 斎藤 浩一
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.144-153, 1997

SpO<sub>2</sub>データを心電図と同時に24時間ホルター記録・再生出来る装置を開発し, 本装置の有用性につき健常者10例 (N群) で検討し (研究1), これを用いてN群及び慢性肺疾患患者7例 (CPD群) で低酸素血症と不整脈との関係につき検討した (研究2). 研究1: SpO<sub>2</sub>・心電図ホルターは携帯用ホルター装置 (SM50) を使用, 第1, 2chに心電図, 第3chにSpO<sub>2</sub>のデータを各々入力した. すなわちSpO<sub>2</sub>測定用センサ (D・25) を全対象例の第4指か第5指に装着し, パルスオキシメーター (MicrO2) で入手したSpO<sub>2</sub>データをディジタルコード化してホルター記録器に入力し, 心電図と同時に記録した. データの解析はホルター解析装置 (DMW-9000H) で行った. 又, ノイズエラーを自動的に削除する解析プログラムを考案, 作成した. 研究2: N群では24時間SpO<sub>2</sub>は90%以上を維持した. CPD群では全例, 夜間あるいは15分間歩行後にSpO<sub>2</sub>が90%以下を示した. 不整脈のうち一過性心房性頻拍 (TAT) はCPD 7例中3例で認められ, SpO<sub>2</sub>を低下させた. 心室性期外収縮の単発と2連発 (Ve) の全心拍数に対する発生率はN群に比して多かった (1.21±0.89 vs 0.6±0.3%, p<0.05) が, SpO<sub>2</sub>は低下しなかった. 本システムは外来及び在宅患者において呼吸不全と不整脈の診断を同時に評価可能であり, さらにCPDにおける desaturation の発現はTATを誘発する事が示唆される.
著者
吉村 信行 野寺 博志 大河内 稔 新 謙一 月本 光一 別府 穂積 松原 修 中谷 行雄 吉澤 靖之
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1067-1073, 1997-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
17

症例は64歳, 女性. 35年前から60羽の鳩を自宅の庭で飼育していた. 8年前の健診で胸部X線写真上, び慢性粒状網状影を指摘された. 以後原因不明の肺の線維症として外来フォローされていたが, 乾性咳嗽と労作時息切れが出現したため精査入院となった. 胸部CTでは区域性の拡がりを示す蜂窩肺形成および気管支拡張所見を認めた. 気管支肺胞洗浄液では, Pigeon Dropping Extracts に対する抗体と鳩血清添加リンパ球の blastogenic response が強陽性を示した. 胸腔鏡下肺生検では, 細気管支炎, 胞隔炎, 小葉中心性の蜂窩肺形成を認めた. 以上より鳩による慢性過敏性肺炎と診断した.本例のごとく急性期のエピソードがない慢性過敏性肺炎は診断が難しく気管支拡張症や特発性間質性肺炎等と診断されている例も多い. 肺に線維化をきたす症例に遭遇した場合, 慢性過敏性肺炎も念頭におき, 鳥の飼育歴を含めた生活歴, 職業歴を聴取することが重要である.
著者
毛利 孝 小原 秋穂 小西 一樹 田村 昌士 冨地 信和 石井 宗彦 工藤 国雄
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.165-171, 1990

呼吸困難, 発熱の症状を示し, 胸部X線像, CT像ではびまん性粒状影を示したハト飼病の一例を報告した. ハト血清とハト排泄物に対する沈降抗体が検出され, 肺生検の病理所見では間質性肺炎の所見が得られた. ハト血清の吸入誘発試験では発熱, 白血球の増加, 肺活量の低下, P<sub>O<sub>2</sub></sub>の低下, CRPの陽性化の所見が得られハト飼病と診断した. BALでは回収細胞数の増加, リンパ球比率の増加が見られ, リンパ球サブセットでは, OKT8陽性細胞, HLA-DR陽性細胞が増加していた. 二重染色によるリンパ球表面マーカーの検索ではHLA-DR陽性細胞のほとんどはOKT8陽性であった. in vitro での末梢血単核球のハト血清添加による幼若化反応は陰性であったがステロイド治療の影響と考えられた. ガリウムシンチグラムでは肺野への集積は認められなかった.
著者
閔 庚〓 河合 正行 田本 敦子 茂在 敏司 内田 英一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.722-730, 1987-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18

肺の構成単位としての肺小葉の肺内における配置の様式を肺小葉の多面体としての性質から検討した. 76歳女性の剖検右肺と38歳男性の剖検左肺とを伸展固定し, 肺表面および肺割面における小葉の境界を点と線と面の集合と見なしてそれらの幾何学的性質を検討した. 肺小葉多面体は,頂点に3本の稜線があつまり, それぞれが3~9辺形を呈する面によって囲まれた多面体を呈していた. 辺の長さは平均5.7mm, 5.0mmで, 形状パラメータ m=3.07, 2.38, 尺度パラメータη=6.1mm, 5.3mmの Weibull 分布をなしていた. これを参考に5mmを単位として胸膜上の任意の点より半径5mm (つまり1単位) から20mm (つまり8単位) の同心円を描き, その円と交じわる小葉多面体数を検討したところ, 10mm (2単位) ごとにほぼ10個ずつ増え均等配列と考えられた. これらの性質は Bernal が多数の剛体球のランダム最密充填モデルで検討した液体分子の周りに作った Voronoi 多面体の性質と同じであった. 以上より小葉多面体を Voronoi 多面体とみなすと肺は液体分子の配置と同じ非結晶型格子に小葉構造を配置したものと考えられ, 気管支, 血管枝は非結晶格子の逆格子である小葉多面体 (Voronoi 多面体) の稜線網に配置された二分岐樹構造であると見ることができる. これを新たな肺の構造モデルとして, 小葉モデルと呼ぶことを提唱した. このモデルから肺動脈樹の流体力学的性質の理論的導出を試みた.
著者
野村 将春 藤村 政樹 松田 保 北川 正信
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.72-76, 1997-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
16

症例は75歳男性, 以前より風邪症状があると市販の総合感冒薬 (パブロンS®) を常用していた. 入院6日前より風邪症状を認め, パブロンS®を内服していたが, なくなったので, 新しい総合感冒薬 (パブロンゴールド®)を内服した. その翌日より呼吸困難出現, 近医にて胸部レントゲン写真上, 両側にびまん性陰影を認めたため, 精査目的で当科に紹介された. 胸部CTでは両側に間質性陰影が認められた. 気管支肺胞洗浄液中には好中球, リンパ球などの炎症細胞が認められた. 経気管支肺生検では肥厚した肺胞壁や間質への単核球の浸潤が認められた. 末梢血のリンパ球を用いた薬剤リンパ球刺激試験ではパブロンゴールド®が陽性であった. 以上よりパブロンゴールド®による薬剤性肺炎と診断した. 入院後, ステロイドを投与したところ症状は速やかに改善したが陰影は遷延した.
著者
石崎 武志 服部 絢一 松田 保 宮保 進 越野 健 藤村 政樹 岡藤 和博 南 真司 金森 一紀 佐賀 務 舟田 久
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.86-97, 1985

肺真菌感染症を合併した21例の血液疾患を臨床床状, 胸部X線写真, 免疫血清学の観点から検討した. 起炎真菌はアスペルギルス17例, ムコール1例, 不明3例であった. 経気管支肺生検法で2例, 臨床経過で6例 (剖検所見で確認) を生前診断し抗真菌療法を行った. 抗真菌療法中に血液学的改善の得られた6例は治癒し, 改善の得られなかった2例は死亡した. 臨床症状として, 全例に通常の抗生剤不応性の熱発, 咳 (15例), 喀痰 (10例), 血痰 (10例), 胸痛 (9例), ラ音 (16例) 呼吸困難 (9例) を認めた. 胸部X線写真上, 肺炎様陰影 (12例), パッチイな浸潤影 (3例), びまん性微細網状小結節状影 (3例) シスト様影 (1例) を認め, air crescent sign を5例, 胸膜肥厚を9例に認めた.全例流血中アスペルギルスフミガーツス抗原・抗体とも陰性であった. 全体として, 注意深い臨床症状の観察, 胸部X線写真と経気管支肺生検法などによって早期に真菌性肺炎を診断し, 的確な抗真菌療法を開始することが, この致死的感染症治癒への一歩となる.
著者
堀尾 裕俊 野守 裕明 森永 正二郎 冬野 玄太郎 小林 龍一郎 伊賀 六一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.439-443, 1996-04-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は51歳, 男性. 特発性間質性肺炎の経過観察中, 肺癌を発見された. 肺癌の病期および間質性肺炎の活動性や呼吸機能の結果より手術可能と判断し, 左上葉切除を施行した. 術後9日目に間質性肺炎の急性増悪を認めたが, 迅速な診断と早急なステロイド治療により救命し得た. 肺癌術後急性増悪例は致命的であり, その救命率はきわめてまれであるため報告した.
著者
磯部 宏 西村 正治 稲葉 秀一 山本 宏司 神島 薫 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.535-538, 1987-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

症例は28歳女性で, 咳嗽, 喘鳴を主訴に当科に入院した. 約5年前より上記症状を繰り返し, 気管支喘息として通院加療を受けていたが, コントロールは不十分であった. ペットとして猫を飼育している. アロテック吸入による1秒量の改善率は24.4%であり, 皮内テストでは猫毛, 犬毛, ハウスダストが陽性, IgE-RAST score は猫毛4, 犬毛3, ハウスダスト3であった. 猫毛抗原による吸入誘発試験を施行したところ二相性喘息反応を呈した. 以上より猫毛による気管支喘息と診断し, 猫を遠ざけた生活を指導し良好なコントロールが得られている. 我々の知る限りでは, 我が国での猫毛, 猫毛皮屑による気管支喘息の報告は少なく, また二相性喘息反応を呈した報告例は認めない. 猫毛による気管支喘息の臨床像とともに, 特に二相性喘息反応での臨床的, 肺生理学的変化について報告した.
著者
青木 昭子 萩原 恵里 白井 輝 石ケ坪 良明 谷 賢治 大久保 隆男 横田 俊平 清水 広子 松山 秀介
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.729-735, 1990-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
22

結核患者の高免疫グロブリン血症を血清クラス別に検討するとともに, BCG菌体成分を抗原としたELISA法にて特異的血清抗体を測定した. 成人患者では血清IgG, IgAの上昇は認められたが, IgMの上昇は認められなかった. 血清IgG型抗BCG抗体価は, 結核患者血清が健常人血清に比べて有意に高値を示した. 活動性患者ではとくに高値を示し, 治療によって抗体価の低下が見られた. この抗体価の測定は結核症の診断や経過観察に有用と考えた. ついで血清抗体の認識するBCG抗原分画をイムノブロット法にて解析した. 65KDa分画は健康人血清でも高頻度で認識され, 他の一般細菌抗原との交差反応性によると考えた. 65KDa蛋白による感作が感染症の病態や自己免疫反応に影響を与えている可能性について考察した. 血清抗体に認識されたBCG抗原分画の中で, 16KDa分画は結核患者に有意に高頻度で認識された. この分画が特異性, 感受性に優れた診断法やコンポーネント・ワクチンの開発に有用ではないかと考えた.
著者
岡野 弘 立花 昭生 谷本 普一 中田 紘一郎 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中谷 龍生 吉村 邦彦 原 満
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.858-864, 1986-08-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
22

肺アスペルギローマをもつ自験22例の免疫学的反応について検討した. A. fumigatus の皮内反応は―相性の即時型が特徴的であった. 症例の30%が血清IgE高値, A. fumigatus のIgE型特異抗体が陽性であり, IgE値が12,000IU/ml以上の症例も認めた. A. fumigatus の沈降抗体は症例の約70%が陽性であり, A. fumigatus によるリンパ球刺激試験は症例の50%が陽性であった. 本症例中には自験のアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の免疫学的反応と差のない症例も認めた. 本症例の62%がツ反の陰性または偽陽性であり, 剖検肺で活動性結核性病巣を認めたツ反陰性の2例から本症治療上, 注意すべき点と考える. 本症の免疫学的反応は本症の診断. 治療, 病態を考える上に有用と考える.
著者
大石 修司 人見 秀昭 酒井 正雄 小林 英夫 永田 直一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.1401-1407, 1995-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12

Swyer-James 症候群5例について臨床的に検討した. 平均年齢は41歳 (20歳から70歳), 全例が男性. 5例ともに胸部X線上左肺の透過性充進を認めたが, 精査の結果3例で病変が両側に存在し, 2例で病変の不均一性が認められた. 胸部CT検査が病変の分布および重症度をもっとも正確に検出した. 133Xe吸入シンチグラムでの洗い出し遅延は, 本症候群の特徴である air trapping を示す所見であり, 胸部X線上 air trapping が明らかでない症例には特に有用な検査であることが判明した. 本症候群の成因については気管支病因説が有力とされており, 自験例も画像的には後天性気管支病因説に合致するものと考えられた. しかしながら, 左肺に, しかも男性に多いという特徴を有し, さらに肺炎の既往の明らかでないものも多く, 先天素因の関与も否定できないと考えられた.
著者
高橋 亨 棟方 充 大塚 義紀 佐藤 敦子 本間 行彦 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.723-727, 1995-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14

特発性間質性肺炎 (IIP) の急性増悪症例におけるウイルス感染の関与を血清抗体価・喀痰封入体検査から検討した. 当科に入院したIIP 105名のうち急性増悪(1ヵ月以内に自覚症状の増悪, PaO2 10 Torr以上の低下, 胸部レ線像の悪化のすべてを満たすもの) を呈した症例を対象とした. 経過中にウイルス抗体価の4倍以上変動を認めたか, 喀痰ウイルス封入体を証明したかの, いずれかの例をウイルス関与ありとした. これらの症例につき, 関与したウイルス, 臨床像などを検討した. 急性増悪例は全IIP患者の27% (28例) であった. ウイルス関与ありは増悪例の39% (11例) であった. 関与したウイルスは Influenza: 6例, Parainfluenza: 1例, Adeno:1 例, Herpes simplex: 1例, RS: 1例, Cytomegalo: 2例であった. ウイルス関与群は非関与群に比べ, 増悪前の血清IgA値が有意に低値であった (p<0.05). これらの結果から, 急性増悪では血清IgA低値と関連したウイルス感染の可能性がある.
著者
蝶名林 直彦 中森 祥隆 鈴木 幹三 立花 昭生 中田 紘一郎 岡野 弘 谷本 普一 松岡 ひろ子
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.89-96, 1982-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

We examined the pathogens of 204 patients with acute pneumonia at our hospital between Jan. 1970 and Dec. 1979 to study the changes of the pathogens in community acquired acute pneumonias over a period of 10 years.The results were as follows:1) Of 204 cases, bacterial pathogens accounted for 53 cases (26.0%), mycoplasmas pneumoniae 35 cases (11.3%) and viral species 9 cases (4.4%). However, in the remaining 107 cases (52.4%) the pathogens could not be identified.2) Of bacterial pathogens, Streptococcus pneumoniae was the most frequegt etiologic agent (29.0%), Hemophilus influenzae was the second (22.6%), Pseudomonas aeruginosa the third (17.7%) and the majority of the pathogens were gram negative bacilli including E. coli, Klebsiella aerogenes and Serratia marcescens. Although lung abscess and empyema were included in this series, Staphylococcus aureus was the pathogen in only 3 cases.3) The study of the yearly incidence of each pathogen demonstrated that pneumonias due to Hemophilus influenzae increased since 1974, but the those of undetermined pathogens decreased.4) To study the relationship between the pneumonias and the underlying deseases, the pneumonias due to S. pneumoniae and H. influenzae occurred both in previously healthy patients and in those with underlying diseases. The pneumonias due to gram negative bacilli occurred in patients with underlying diseases, while mycoplasmal pneumonias primarily occurred in previously healthy patients.5) The age of the patients with bacterial pneumonias increased in recent years, however, the majority of mycoplasmal pneumonias still occurred in young or middle aged people.6) We have often used the transtracheal aspiration (TTA) technique to determine the pathogens of the pneumonias when the pathogens are not determined from the sputums. In this series, the pathogens were identified in 14 out of 42 cases examined with TTA. However in 12 out of 14 cases the pathogens could not be identified by examining sputums.