著者
中村 仁 北田 修 岡村 婦美子 来栖 昌朗 杉田 實
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.718-723, 1989-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14

33歳女性, 血痰と胸痛のため昭和60年9月当科に入院. 血管造影で右肺動脈の上中葉枝に欠損が認められたが, 大動脈とその分枝には異常はみられなかった. このため肺梗塞症と診断された. その後抗凝固療法を受けていたが, 62年6月, 右頚部に血管雑音が聴取されたため再入院となった. 血管造影では, 肺動脈病変の進行と共に, 両側総頚動脈と右椎骨動脈の狭窄が認められ大動脈炎症候群と診断された. 肺動脈病変の先行を血管造影で確認できた非常に稀な例と考えられ報告した.
著者
佐々木 巌 赤柴 恒人 堀江 孝至
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.57-65, 1992-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者の両心機能を, 安静時, 運動負荷時に, RIアンジオグラフィーで検討した. COPD群16名, 対照群8名を対象に, Tc-99mで生体内赤血球標識し, マルチゲート法で記録した. 運動負荷は臥位エルゴメータによる多段階漸増法で, 心室容積測定は standard voxel count 法によった. その結果, COPD群では両心室とも収縮能障害の存在が示唆され, また, 右心カテーテルを施行した12症例において, 左心機能低下と高炭酸ガス血症との関連性が示唆された. 安静時の全肺血管抵抗指数および平均肺動脈圧と, RI法による安静時右室収縮末期容積指数との間に, 各々γ=0.769 (p<0.01), γ=0.631 (p<0.05) の正相関を認めた. 一方, 運動負荷時の一回拍出量は, 16例中10例で増加が見られず, その半数例で, 運動中の両心室拡張末期容積が減少しており, COPD群では肺過膨張などの機械的影響が, 心循環動態に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された.
著者
浅野 浩一郎 山口 佳寿博 河合 章 森 正明 高杉 知明 梅田 啓 川城 丈夫 横山 哲朗
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.2098-2104, 1992-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

急性低酸素症における臓器レベルの代償機構を検討するため, 麻酔犬に室内気または13%酸素を吸入させ各種血行動態指標および動脈血, 混合静脈血, 頸, 冠, 肝, 腎静脈血の血液ガス諸量を測定した. これらの測定諸量を用いて室内気ならびに低濃度酸素吸入下における生体全体ならびに主要臓器の酸素利用・輸送に関する諸指標を解析した. 低濃度酸素吸入時には生体全体の酸素供給量が減少したが, 酸素摂取率の増加により酸素消費量は有意な変化を示さなかった. 臓器レベルでは低酸素吸入時に酸素摂取率が肝・門脈系臓器で室内気吸入時の1.5倍に, 腎臓で2倍に増加したが, 心臓, 脳では有意な変化を認めなかった. 一方低酸素吸入時の臓器血流量は肝・門脈系で34%減少したのに対し心臓, 脳では各々11%, 22%増加した. 腎血流量には有意な変化を認めなかった. 以上の結果より急性低酸素症時には肝・門脈系, 腎臓の腹部各臓器はその酸素摂取率を増加させることによって, 脳, 心臓は血流量の増加によって臓器レベルの好気性代謝を維持することが示唆された.
著者
吉村 邦彦 中谷 龍王 中森 祥隆 蝶名林 直彦 立花 昭生 中田 紘一郎 岡野 弘 谷本 普一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.22, no.11, pp.1012-1020, 1984-11-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
21

特発性間質性肺炎 (IIP) の急性増悪に関する臨床的諸問題を検討した. 当院の本症急性増悪35例43回の検討成績は 1) 発症から急性増悪までの期間は平均4.8年である. 2) 主な誘因は呼吸器感染症, コルチコステロイド減量, 開胸術の順である. 3) 増悪時全例で胸部Xp上間質性陰影増強, PaO2低下が認められ, 特に増悪前後で有意に血清LDH活性が上昇し, PaO2およびPaCO2が低下した (ともに<0.001). 4) 治療上コルチコステロイドが95.1%の症例に投与されたが, 全急性増悪の81.4%, 対象症例の97.1%が増悪後平均31.5日で死亡し, 本症の急性増悪の転帰はきわめて不良であった. 以上の結果から以下の急性増悪の診断基準を作成した. 1) 呼吸困難増強, 2) crackle ラ音 (Velcro ラ音) 聴取範囲の拡大, 3) 胸部Xp上間質性陰影の増強, 4) 同一条件下でPaO2 10torr以上の低下, 5) 血清LDH活性上昇: 1)-3) の全てと 4), 5) いずれか少なくとも一方を満す場合を本症の急性増悪と診断する.
著者
梅枝 愛郎 松井 茂 色川 正貴 片貝 重之 中沢 次夫 飯塚 邦彦 三浦 進 笛木 隆三 小林 節雄 北市 正則
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.804-809, 1986-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
17

「蚕 (カイコ)」体成分の吸入に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) の1例を報告した. 症例は48歳女性, 養蚕農家の主婦で咳, 痰, 労作時息切れ等が「繭かき」「ケバ取り」などの養蚕作業と関連して出現. 初診時軽いチアノーゼを認め, 胸部で捻髪音聴取. 血沈亢進, CRP (2+), 白血球増多, 低酸素血症, 胸部レ線でスリガラス様陰影を認め, 肺機能で拘束性障害と拡散能の低下がみられた. 免疫学的検査ではツベルクリン反応陰性で, 蚕体成分の一つである熟蚕尿に対する沈降抗体陽性であった. 肺組織には胞隔炎, 類上皮細胞肉芽腫, マッソン体が認められた. 入院後症状の自然改善が見られ, 血沈等が正常化し, ラ音の聴取されないことを確認して熟蚕尿による吸入誘発試験を行った. 吸入後捻髪音が出現し, 拡散能は前値に比し30%低下したため, 誘発試験陽性と判定した. 以上より本症例は蚕体成分である熟蚕尿に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) と診断した.
著者
長坂 行雄 山本 暁
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.348-354, 1985-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
23

著者らはすでに長期酸素療法で著効をみた原発性肺高血圧症の第1例 (Chest 74: 299) を報告しているが, この例は酸素投与開始後8年の現在も夜間のみの酸素吸入によって良好に経過している. 以下に報告する例はこの第一例と異り酸素の急性効果は認められなかったが, 長期酸素療法により同じく改善を認めた. 症例は原発性肺高血圧症の10歳男子でカテーテル中に酸素への反応はほとんど認められず, phentolamine の投与では逆に30%以上の肺動脈圧の急激な上昇を認めた. しかし, 酸素の長期投与の結果 NYHA IV°→II°へと有意の改善を認めた. EKG, 胸部レ線像では特に改善を認めなかったが, 理学所見で肺動脈, 右室の拍動は軽微となり, 右心性4音は消失した. 5ヵ月間の安定期の後, 酸素吸入時間が大幅に短縮し,「感冒」様症状の後, 急速に悪化した. この後3ヵ月で治療に反応し難い右心不全で死亡した. 剖検により典型的な原発性高血圧症の肺血管病変 (plexiform lesion), 高度の右室肥大を認めた. 左心系にはシャント, 弁膜症などの異常は認めなかった. 肺実質にも異常を認めず, 酸素による障害時にみられるような細気管支肺胞炎は認めなかった. 著者らは現在, 4症例に家庭酸素療法を行っており, 全例良好な経過をとっている. 原発性肺高血圧症における長期酸素療法は, 血管拡張剤の投与時にみられるような低血圧, 逆説的な肺動脈圧の上昇も認められず, 安全かつ有効であり, 本症に先づ試みられるべき治療と考えられる.
著者
佐藤 勝重 中村 清一 小関 隆 山内 富美子 馬場 美智子 三上 正志 小林 龍一郎 藤川 晃成 長岡 滋
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.1037-1041, 1991-08-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
15
被引用文献数
2

56歳女性. 右耳痛・右顔面痛を主訴に当院耳鼻咽喉科を受診, その後右耳介及びその周囲に水疱形成がみられ, 急性呼吸不全を呈して当科に紹介された. 血中抗帯状疱疹ウイルス抗体価は1,024倍と上昇, 神経学的に多発性脳神経麻痺を呈し, 胸部X線写真上右下肺野に浸潤影が見られた. 多発性脳神経麻痺を合併した Ramsey Hunt 症候群と診断, 急性呼吸不全の原因は反回神経麻痺による中枢部気道閉塞と嚥下性肺炎によるものと考えられた. 抗生剤と抗ウイルス剤 (アシクロビル) の併用により著明な改善がみられた. 文献的検索では, 下部脳神経麻痺を合併した Ramsey Hunt 症候群の報告は比較的少なく, さらに, 呼吸器合併症を呈した症例は稀であった.
著者
後藤 幸生 山原 武
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.155-161, 1975-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14

In this report, a resuscitated case of 54 year old female who developed the pneumothorax following the asthmatic attack and led to acute asphyxic state was described in detail.At first, the dangerous course to acute asphyxic death resulted in regarding the psychosomatic factors seriously and the withdrawal of steroid hormone. The general conservative treatment for the attack of serious bronchial asthma was done. But this attack became very serious because of the rupture of the alveolar wall caused by the increase of intrapulmonary pressure. In this circumstance, it is an only lifesaving method to do the controlled ventilation and bronchopulmonary lavage under the intratracheal intubation as the limit to conservative treatment. Therefore the prolonged respiratory management in ICU is needed to release the airway resistance rised. In this case, the control of the continuous oxygen humidification therapy, the maintenance of acid-base balance and the administration of some neuromuscular blocking agent and sedativa during mechanical ventilation were required. In addition, the importance of nutrition must be emphasized during the management of long time intensive respiratory therapy. The patient was succeeded in lifesaving after prolonged respiratory management such as controlled respiration for six days and assisted respiration continuously under the tracheotomy done in the third day, though the movement of extremities were disturbed. And her consciousness was recovered in half a month. It is known that the sitting position are more comfortable to patient than supine in asthmatic attack. This fact was confirmed in this case by the data of both the respiratory and circulatory functions.
著者
増本 英男 賀来 満夫 荒木 潤 浅井 貞宏 高田 俊夫 窪田 芙佐雄 松尾 武 池田 高良
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.1087-1091, 1989-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12

症例は66歳, 男性. 胸部X線上, 縦隔腫瘤影の増大を指摘され, 来院. 手術にて右心縁に接する15cm大の胸腺嚢腫が摘出された. 嚢胞液の性状は灰白色混濁した, 蛋白0.5g/dlの漏出液であった. 本例において最も興味深いのは血清CEAが2.1ng/mlに対し, 嚢胞液中のCEAが223.2ng/mlと異常高値を示したことであった. 免疫組織化学による検討では, 嚢胞内腔を被う上皮細胞及びハッサール小体の一部にCEA陽性細胞が認められた. 今後の症例の集積が必要であるが, 少なくとも嚢胞液中のCEAが高値でも悪性を示唆する所見はみられないことより, このCEAはCEA関連抗原の可能性もあるように思われた.
著者
菊池 清子
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.639-652, 1975-11-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
32

A clinical follow-up study on bronchiectasis in 116 children, who had been diagnosed between 1951 and 1971, showed the following results:1. Subjective course and prognosis:Coughing, sputum and other respiratory complaints were remarkably reduced in both operated and non-operated groups and almost 80% of the patients feel recovered from their pulmonary disease and spend a normal school life or are able to work without any trouble.2. Objective course and prognosis:In the non-operated group, bronchographic findings showed that the ectatic bronchi still had remained in all cases after 1-21 years process and furthermore, newly ectatic bronchi were noticed. In the operated group, bronchographic findings showed that no ectatic bronchi had appeared in completely resected cases, but in incompletely resected cases ectatic bronchi had newly developed or ectatic tendencies were noted. Pulmonary function tests such as vital capacity, one-second forced expiratory volume and maximum voluntary ventilation revealed no remarkable differences between the operated and non-operated groups. Normal volume was noticed in the completely resected group, but in the non-operated group, residual volume had increased.3. General results:In the non-operated group, no one had recovered completely and only 28.6% had slightly improved, 42.8% were almost unchanged and 28.6% had deteriorated. In the operated group, 50.0% had almost recovered completely and of the improved cases almost 83.3% proved to have good prognosis, but 8.3% unchanged and 8.3% deteriorated cases were noticed. Considering the objective and subjective data, it is clear that there is a great discrepancy between the results of the objective and subjective course and progresses. This is an important point in seeking to cure bronchiectasis in children. Considering these points, 1 suggest the three following major principles in the attempt to cure bronchiectasis in children:1) Complete resection of the invading focus should be performed after bronchography examinations and full consideration of the post operative pulmonary function.2) Operation should be decided after observing irreversible changes of the bronchus after six months or one year follow up.3) Treatment of bronchiectasis in children should be combined with antibiotics, drainage, treatment of complication and so on when necessary.
著者
花田 伸英 冨田 友幸 阿部 直 片桐 真人 矢那瀬 信雄 山下 えり子 塩谷 茂 吉村 博邦 笠井 潔 亀谷 徹
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.231-234, 1993

Human T-lymphotropic virus type I (HTLV-I) 抗体価が高値を示し, 多発結節性陰影を呈したT細胞性リンパ腫の1例を経験した. 症例は42歳, 男性. 千葉県出身. 昭和63年6月に胆嚢摘出術後, 発熱が持続したため当院受診, HTLV-I抗体価の高値を指摘された. 約8ヵ月後, 胸部X線上多発結節性陰影が出現, 開胸肺生検にてT細胞性リンパ腫と診断された. 文献を検索し得た限りでは肺原発のT細胞性リンパ腫において, 多発結節性陰影を呈した報告例は1例のみであった. また本症例の肺病変はHTLV-I感染との間に関連性があり, Adult T-cell lymphoma の初発の病変と考えられたので報告する.
著者
藤原 寛 栗原 直嗣 太田 勝康 平田 一人 松下 晴彦 金澤 博 武田 忠直
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.469-475, 1994

症例は48歳女性で福岡出身. 咳嗽および微熱を主訴として当科に来院し, 胸部レントゲンにて多発性の辺縁不明瞭な結節影が認められ, 血液検査では成人T細胞白血病ウイルス関連抗体が×1,024と高値を示した. 気管支鏡検査にて確定診断がつかず, 開胸肺生検が行われた. 組織は異型性のないリンパ球, 形質細胞, 組織球を中心としたリンパ系細胞が浸潤した肉芽組織で, 壊死を伴わず, 結節病変の内部および周辺の血管はこれらの細胞が浸潤している所見が認められた. 以上の所見より Jaffe の提唱する angiocentric immunoproliferative lesions (grade I) と診断し, プレドニゾロン, サイクロフォスファミドの併用療法を行い寛解が得られた. 本疾患はリンパ腫様肉芽腫症を悪性度により3つに分類したもので, 近年, EBウイルスとの関係が注目されている. 本例ではATLウイルスが発症に関係した可能性があると考えられた.
著者
西村 善博 前田 均 田中 勝治 橋本 彰則 橋本 由香子 横山 光宏 福崎 恒
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.795-801, 1991-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18
被引用文献数
8

加齢による呼吸筋力の変化を検討するため, 成人116名 (男性57例, 女性59例) を対象に, 座位にて全肺気量位での呼気最大口腔内圧 (PEmax) 及び残気量位での吸気最大口腔内圧 (PImax) を測定した. 口腔内圧測定の至適回数に対する予備的検討で, 最低3回測定すれば再現性のよい値が得られたので, 3回測定での最大値を用いた. PEmaxの平均値は, 男女それぞれ123.6cmH2O及び79.0cmH2O, PImaxの平均値はそれぞれ98.4cmH2O及び71.9cmH2を示し, 性別間で有意差を認めた. PEmax及びPImaxは男女とも年齢との間に有意な負の相関を認めた. PEmaxは全肺気量と有意な正相関を, PImaxは残気率と有意な負の相関を認めた. 残気率は加齢による増加を認めた. 以上の呼吸筋力の検討より, 加齢による吸気筋力低下の原因の一つに経年的な残気率増大が関与している可能性が示唆された. 一方, 呼気筋力の経年的筋力低下は肺機能諸量と明確な関係を示さず, 栄養状態, 全身的筋力低下など多因子の関与が推測された. 最大口腔内圧測定は最低3回行えば再現性のある値の得られることが確認された.
著者
西 耕一 水口 雅之 橘 秀樹 大家 他喜雄 藤村 政樹 松田 保
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.350-354, 1996

トロンボキサン合成酵素阻害薬が著効を示したと考えられる慢性持続性咳嗽患者を経験したので報告する. 症例は25歳の女性で, 8週間以上継続する乾性咳嗽を主訴として受診した. 乾性咳嗽のエピソードは今回が2回目であり, 前回は気管支拡張薬が無効であり, 塩基性抗アレルギー薬 (塩酸アゼラスチン)が有効であった. しかし, 今回の咳嗽は, 塩基性抗アレルギー薬や吸入ステロイド薬は十分効果的ではなく, トロンボキサン合成酵素阻害薬 (塩酸オザグレル) が著効を示した. さらに, カプサイシンに対する咳の感受性も同薬物の投与にて改善した. トロンボキサンA<sub>2</sub>, 咳嗽, およびカプサイシンに対する咳感受性の3者の関係に関する報告は今までのところ少なく, 詳細は不明であるが, 本症例のようにトロンボキサン合成酵素阻害薬が効果的な咳嗽患者が存在することは, 臨床的に重要な知見と考えられたため報告した.
著者
亀井 俊彦 尾崎 敏夫 安岡 劭 小倉 剛
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.66-75, 1992-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
24

気管支喘息患者における好酸球増多の機序を解明するため, 気管支喘息患者の末梢血単核球 (MNC) 及びリンパ球からの好酸球コロニー刺激因子 (Eo-CSF) 産生を検討した. 特に, Eo-CSF産生における特異抗原刺激の役割, 及び, 産生されたEo-CSFの生物学的な解析を行った. その結果, 1) 気管支喘息患者MNC, T cellは, in vitro に於いて, PHA及びIL-2刺激により, Eo-CSFを産生した. 健常人では, PHA刺激ではEo-CSFを産生したが, IL-2刺激ではEo-CSFを産生しなかった. 2) 気管支喘息患者MNCは, 特異抗原刺激により, Eo-CSFを産生したが, 健常人MNCではこの産生は見られなかった. 3) IL-3, IL-5, GM-CSFに対する各抗体で気管支喘息患者単核球培養上清を処理することにより, Eo-CSF活性は低下した. 以上より, 気管支喘息患者の好酸球増多には, 特異抗原に対するリンパ球の反応性の亢進と, T cell から産生されるサイトカイン, 特にIL-5, GM-CSFが中心的な役割を果たすことが示唆された.
著者
杉江 琢美
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.12, pp.1355-1360, 1995-12-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
21

高地における睡眠時に出現する周期性呼吸 (PB) と高地順化や急性高山病 (AMS) との関係について明らかにするため, 標高5,100mにおいてパルスオキシメーターを用いてPBの出現時間を測定し, 主に標高5,100m前後で行動した日本人6人 (A群), 標高7,000m以上で行動した日本人9人 (B群), 高地居住民族であるシェルパ8人 (S群) の3群で比較検討した. 又, AMSの諸症状を点数化し (AMS-SCORE), PBとの関係をみた. その結果, 日本人の2群間では有意差は見られなかったがA群でPBの出現は多い傾向がみられ, S群ではPBの出現はほとんどみられなかった. 日本人においてAMS-SCOREとPBの発現には正の相関がみられた. PBの周期時間は3群間で差は見られなかった. PBの出現と高度順化, AMSとは密接な関係のあることが示唆された.
著者
石崎 達 宮本 昭正 清水 保 可部 順三郎 牧野 荘平 児玉 太郎 信太 隆夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3-4, pp.217-229, 1964-12-20 (Released:2010-02-23)
参考文献数
28

To investigate air pollution respiratory diseases (especially T-Y asthma) among Japanese, mass survery in the Niigata area and T-Y area was carried out. Subjects submitted for statistic analysis were 2825 in total. There were increased incidence of respiratory symptoms such as chronic coughing, increased sputum production and throat irritation among the subjects who are living in T-Y area. This incidence was highest in the native group of T-Y area and particulary high among smokers and subjects with allergic constitution. There were no increased incidence of air way obstructive diseases in T-Y area but group of subjects who were exposed to heavy air pollution tended to have low vital capacity. These reaults give the evidence that air pollution is harmful for respiratory tract.There were no definite evidence that respiratory sensitivity to inhaled acetylcholine in subjects in T-Y area was increased, inspite of the fact that asthmatic patients have significantly high sensitivity to acetylcholine. On the other hand, 7 cases of T-Y asthma at Zama U. S. Army Hospital showed the range of bronchial asthma and chronic bronchitis.Among 237 cases of asthmatic patients at our clinic there were only 15 cases who deveolped their 1st onset of asthma in T-Y area after their move to this industrialized area from rural areas but none of them presented compatible characteristics with the entity of the so-called T-Y asthma, though some presented quite similar pictures. From our study, it may not be quite feasible to use the name of T-Y asthma for Japanese since the incidence of air way obstructive diseases does not seem to have particularly increased in T-Y area. Possible reasons for the differnce between our views and those of the U. S. military physicians were discussed.
著者
青島 正大 中田 紘一郎 松岡 正裕 河端 正也 中村 卓郎
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.1521-1527, 1989

症例は48歳男性で, 骨盤部腫瘤による臀部痛を初発し, 腫瘤生検にて芽殖孤虫虫体を認め, 経過中に胸部X線及び胸部CT上肺浸潤影と多発性結節状陰影を呈し, 経気管支的肺生検 (TBLB) により好酸球浸潤を伴う非破壊性血管炎の所見を得, 芽殖孤虫の肺内寄生及び寄生に伴うPIE症候群と診断し, 駆虫剤及び副腎皮質ステロイド剤の投与を行ったが肺塞栓を併発し死亡した.
著者
中島 正光 玉田 貞夫 吉田 耕一郎 杉村 悟 沖本 二郎 二木 芳人 真鍋 俊明 副島 林造
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.1109-1114, 1994-11-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

症例は39歳, 男性. 労作時呼吸困難, 胸部X線上異常陰影にて当科に紹介入院となった. 入院後経気管支肺生検にて肺胞蛋白症と診断し, 現在までに2回の全身麻酔下左肺洗浄を施行し, 軽快退院している. 今回再度肺胞蛋白症の増悪がみられたため入院となった. 血清中のCEAが高値であったため他の腫瘍マーカーの測定を行い, 血清中のCA153, TPAの高値を認めた. さらに肺洗浄液中の腫瘍マーカーの測定を行い, CEA, CA19-9, CA125, CA15-3, CA50, SLX, SCC, TPAが血清正常値以上を示した. 血清中高値の腫瘍マーカー全て肺洗浄後減少傾向を示した. そこで, 高値を示した腫瘍マーカーの産生部位を検索する目的で経気管支肺生検組織の免疫染色を行った. 肺胞上皮にCEA, CA15-3, SLXが陽性を示し, これらはII型肺胞上皮を含む肺胞上皮より産生されていることが示唆された. 本症の肺洗浄液中でCEAが高値を示すことは知られているが, その他の腫瘍マーカーについての検討は少なく興味ある症例と考えられた.