著者
三浦 佳世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.261, pp.41-46, 2009-10-22
被引用文献数
2

実写なのに模型を写したように見える写真作品がある。こうした作品は、三つの観点で興味深い。ひとつには、大きさ-距離判断という知覚の観点からである。どのような知覚要因が判断の誤りに関与しているのだろうか?二つめには、リアリティ判断の観点からである。私たちは何に基づき、リアルな実体という判断を下すのだろうか?三つめには、こうした作品が注目される社会的背景からである。写真の記録性が技術的には高まる一方、それを否定する写真が楽しまれる背景に何があるのだろうか?ここでは1番目の知覚的観点に焦点をあて、撮影俯角、ぼけ、色彩、線遠近法などの視覚要因を中心に、ミニチュア効果について考える。また、リアリティ判断ならびに社会的背景についても触れることとする。アイステーシスとは広義の「知覚」を意味する古代ギリシャ語で、感覚から感性まで、また、生理学から文化までを含む概念である。模型のように見える実写の作品を通して、「知覚」を多層的に捉えてみたい。
著者
牛島 瑞恵 藤原 暁宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.339, pp.25-32, 2004-10-08

近年の高性能計算に関する研究において,非シリコン型計算の1つとしてDNA分子を用いて計算を行うDNA計算が注目を集めている.本研究では,DNAを用いて表現された2進数の集合に対してソートを行うアルゴリズムを2つ提案する.これらのアルゴリズムに対する入力は, O(mn)種類の一本鎖DNAで表現されているn個のmビットの2進数の集合である.本研究では,まず最初に2つのソートアルゴリズムの基本演算として,2つの数を比較し昇順に並べる比較交換操作を定義し,この比較交換操作を効率よく行うアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムの計算量はO(n)個の対のmビットの2進数に対してO(1)ステップで実行可能である.次に前述の比較交換操作を用いて奇偶転換ソートに基づくソートアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムは,O(mn^2)種類のDNAを用いることによりO(n)ステップでソートを実行可能である.最後に,前述の比較交換操作を用いてシェアソートに基づくソートアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムは,O(√n log n)種類のDNAを用いることにより O(mn√n log n)ステップでソートを実行可能である.
著者
西本 博則 島田 育廣 藤本 一郎 正木 信夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.99, pp.17-22, 2009-06-17
被引用文献数
2

声帯振動や歯茎ふるえ音等の高速で振動する調音器官の観測のための超高時間分解能MRI movieの撮像法を提案する.本手法では光マイクロホンを用いてMRI撮像中の被験者の音声を,さらに空芯ソレノイドコイルを用いてMRIスキャナーの傾斜磁場の磁場変動を両方同時収録することで両者の正確な時間的関係を求め,動画の各フレームを作成している.さらにMRIスキャナーの高性能化によりデータ収録時間の短縮が可能になり,MRI movieの高時間分解能化を実現した.本稿では,振動子からなるファントムによる実証実験を行い,最大6384 fpsのフレームレートの画像が得られた.さらに歯茎ふるえ音発話時の舌の振動の撮像を行い,舌の振動の様子が確認された.
著者
宮部 滋樹 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.246, pp.19-24, 2004-08-12
被引用文献数
1

本稿では,制御点で出力音を相殺するマルチチャネル音場制御とマイクロホンアレーを併用した,新たな小規模バージインフリー音声対話インタフェースを提案する.従来手法は,無音信号を再現するマイクロホン素子位置以外に応答音の再現点を制御点として設けているため,ユーザの位置を拘束していた.しかし提案手法は応答音を厳密に再現する制御点を設けないため,ユーザの移動を許容する.更に,応答音再現の制御点を設けないことにより,従来法では安定に動作させることができない少数のラウドスピーカ数でも安定なシステムを設計できる.実験により,従来法では安定に動作しない少ないラウドスピーカ数でも安定な制御が行えるということを示す.
著者
ストヤノフ ジョージ 川又 政征 バルコバ ズラトヤ
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.96, no.424, pp.39-45, 1996-12-13

本稿では,さまざまな低域通過プロトタイプセクションの構成とその検討によって,極めて低い振幅感度をもつ1次および2次の複素係数直交フィルタの構造を導出する.これらの構造と既知の構造とを比較・検討する.新しい構造に用いられる遅延素子数と乗算器数は標準的(最小)である.このため,導出された構造の素子数は,既知の構造と比べて,1次の場合には1/2に減少し,2次の場合には1/3に減少している.しかも同時に,狭帯域実現では,従来のものより1/10〜1/100以下の低感度性をもっている.既知の構造では,3ビットの係数語長を使用しても振幅特性が破壊されるにも係わらず,新しい構造では,係数が2ビットの正規SDコードで表現された場合でさえ,振幅特性が損なわれないとことが実験によって実証される.新しい構造は高性能な高次直交フィルタの実現に適している.
著者
豊嶋 守生 高山 佳久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.156, pp.21-26, 2010-07-22
被引用文献数
2

宇宙空間における通信は,空間的に離れた場所へ情報を伝送するために,通常電波が用いられている.しかし,近年,光ファイバ通信をはじめとする光学技術やレーザ技術の発達に伴い,レーザ光線つまり光波を用いて離れた宇宙機器間で通信を実現できる時代に突入した.電波も光波も同じ電磁波であるが,とりわけ宇宙における光波の利用は,使用レーザの周波数が非常に高いことに起因して,小型・軽量化,高速・大容量化などの特徴を有し,周波数資源の有効活用や法的規制が無いこともあり,電波よりも将来に向けて有望な手段である.欧州では,低高度軌道(LEO)の観測衛星と静止軌道(GEO)の衛星間において,既に2003年から50Mbpsの光通信回線が定常的に運用されている.日本においては,光通信機器を搭載した光衛星間通信衛星(OICETS)が2005年8月に打ち上げられ,欧州の衛星との間で光衛星間通信実験が成功裏に実施された.その後,世界の4局の光地上局(OGS)との間でOICETSを用いた衛星-光地上局間レーザ通信実験が実施され,各サイトにおけるレーザ伝搬データの取得に成功している.情報通信研究機構(NICT)では,これらの伝搬データを持ち寄り,伝搬モデルの構築に資するため,光地上局-OICETS間レーザ通信実験に関する国際ワークショップ2010(GOLCE2010)を主催し,スペインのテネリフェ島で2010年5月に開催した.GOLCE2010では,世界各国での宇宙光通信に関する活動状況も報告された.本稿では,GOLCE2010を通して,宇宙光通信に関する研究開発動向を紹介する.
著者
榊 純一 坂本 静生 矢野 博司 神田 宰 塩原 守人 助川 寛 磯部 義明 春山 智 村田 伸一 吉澤 正浩 平野 誠治 室田 秀樹 瀬戸 哲司 松中 耕二 山越 学 西尾 太 林 義昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.374, pp.51-56, 2005-10-20
被引用文献数
2

まもなく旅券(パスポート)にコンタクトレスICが搭載されようとしている.またこのICチップ上には, 本人認証を行うためのバイオメトリクスデータ, 顔画像が記録されることとなっている.本稿では, このIC旅券導入にあたっての経緯について簡単に照会すると共に, 日本において発給を開始するにあたって, IC旅券調査委員会が実施した調査検討の中から, 特に, (1)顔認証技術適用を前提とした旅券写真に関する技術的妥当性評価と, (2)IC旅券有効期間中の加齢に伴う顔認証精度評価の二点について述べる.
著者
中村 素典 西村 健 山地 一禎 佐藤 周行 岡部 寿男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICM, 情報通信マネジメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.23, pp.163-169, 2013-05-02

近年,シングルサインオンの技術を応用し,組織をまたがった認証連携を行う取り組みが広がりを見せている.民間ではOpenIDの仕組みを活用した認証連携が進む一方,学術ではSAML(Secudty Assertion Markup Language)を用いた認証連携の枠組みが,国を単位として世界的に立ち上がってきている.OpenIDやSAMLでは,認証結果とともに,認証された利用者に関する属性情報をサービス提供側に受け渡す仕組みが用意されているため,単なる利用者の本人確認にとどまらない,高度な情報連携の可能性を秘めている.本報告では,大学等が運用管理する認証サーバと,民間のサービス提供サーバとを連携させ,大学が保持する職種(学生,職員,教員など)に関する属性情報を提供することにより,学割サービスを実現するためのプロトコルゲートウェイの設計および試作について述べる.
著者
江原 美恵子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.297, pp.7-11, 2009-11-14

日本語学習において、しばしば話題にされるコミュニケーション能力の育成とはどのような環境でなされるものなのだろうか。例えばプロジェクトワークは、その能力育成に貢献できる科目のひとつとされているが、コミュニケーション能力がどのように伸びたのかを実証するデータを提示することは難しく、それを証明するような報告をすることも難しいだろう。本稿では、授業実践自体をコミュニケーションの「場」と捉え、「場」が生成される、また「場」で起こりうる授業参加者の「共鳴」「協働」「共創」について分析・考察を行った。その結果、「場」の生成には条件があり、同様に共鳴、協働、共創が生まれるにも条件があるのではないか、また日本語は、知識として与えられるということではなく、場における自己表現のために一回性の場での創出知として学ばれていくのではないかということが分かった。
著者
林 友直 岡本 良夫 横山 幸嗣 細川 繁 冨田 秀徳 升本 喜就
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.531, pp.19-25, 2003-12-12
被引用文献数
1

その生息域が余りにも広大なため生態の多くが謎に包まれている鯨の生態解明を目指して進めている衛星システムについて述べる。その発端は平成5年に催された第一回衛星設計コンテストに応募し入賞した計画であって、衛星が具えている地球規模データ取得能力を利用している。これは極軌道上を周回する小型衛星により、海上の鯨にとり付けた発信器から送られる種々の生態情報を受信、処理、記録する。地上管制局上空を衛星が通過するとき指令電波を送り、衛星内部に記録された生態情報を地上局に送信させ、これを処理解析するというものである。この衛星(WEOS)は平成14年12月14日、H2Aロケット4号機により地球観測衛星ADEOS-2を打ち上げるさいのピギーバック衛星の一つとして高度800kmの極軌道に投入された。その後重力傾度安定化用マストの伸展にかかわる軌道上運用を経て、衛星アンテナは常に地球を指向しつつ極めて正常に動作している。目下鯨に対する発信器の装着作業を進めているところであるが、このシステムは鯨の生態解明のみならず海難救助、陸棲動物の生態調査、地上環境の監視等にも広く応用が可能である。
著者
柳井 孝介 廣瀬 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.730, pp.67-72, 2003-03-11

生体神経回路では、活性化するニューロンの位置関係が刺激の意味と密接な関係を持つ。そこで、われわれは人工的な情報処理方式として、連続的な場を考えその中を情報の担体(キャリア)が移動し近傍と相互作用することによって情報処理を行う「ベクトル場マシン」を提案する。そして、特にその処理空間の位相(トポロジー)が学習や処理に対して大きな影響を与えることを示す。本報告は、ベクトル場マシンをソフトウェアとして構成し、数値実験を行った結果を示す。課題として視覚の初期処理を考え、さまざまな角度の棒線刺激が入力されたときに、物理的な角度の相似度がそのまま情報的な相似度であると考えられるような近さ・速さにあるニューロンが発火するようなマッピングの学習を進める。角度情報は周期性を有する。このため、処理を行うベクトル場が周期的なトポロジーを持つことが、有利に働くと期待される。数値実験により、そのことが確認されたことを報告する。
著者
石橋 洋輝 鈴木 博 府川 和彦 須山 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.130, pp.137-142, 2009-07-09

受信アナログ信号から同相・直交成分のディジタル信号を生成するIQ検波において,リアルゼロ系列から波形を再生する技術を適用し,受信信号の飽和増幅出力からIQ波形を生成する方法を提案する.この方法では受信線形増幅における非線形歪抑圧の要求が大幅に緩和される.そのため,今後のRFとベースバンドを一体化したSi-CMOS技術に適合している.まず変調された受信信号の帯域外に正弦波を加える.その後信号を増幅し直交検波を行う.受信増幅器としてはある一定レベル以下には線形増幅の領域があり,それ以上では飽和する飽和形線形増幅器と,線形領域がない完全なリミタ形の2種類について検討する.リアルゼロ系列の時刻をサンプリングするTDCには線形補間形と単純量子化形の2種類を検討する.計算機シミュレーションにより提案した検波器の性能を明らかにする.最大変調周波数の64倍の搬送周波数で信号を送信する狭帯域信号に対して,ピーク振幅の1/32以上が飽和する歪の大きな受信増幅器でもEVMが-50dB以下の高い精度で検波波形を再生できることを示す.また,それ以上の歪の増幅器の場合,EVMが-27dB程度と再生波形の精度が大きく劣化することを示す.
著者
胡 克龍 府川 和彦 鈴木 博 張 裕淵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.490, pp.183-188, 2015-02-25

無線通信用のRFアナログ回路とベースバンド・ディジタル回路とを一体化したSi-CMOS ICの実現を目指し,アナログ回路の低電圧化,SNR低下,低利得化,素子不均一性等に対処できる新しいアナログ・ディジタル変換方式を検討する.具体的にはTDC(Time Digital Conversion)に基づき,バンドパス信号から基準信号である正弦波を減算し,基準信号とバンドパス信号が交差する時刻の系列,即ちリアルゼロ(ゼロクロス)系列を用いて,ベースバンド信号のサンプリング値を拘束条件付き最小2乗法を用いて推定する.また,バンドパス信号の系列長が長いとき,推定すべきサンプリング値の数が非常に多くなり,演算量が膨大になる,この演算量削減のため,信号を一定区間に分割して推定する.計算機シミュレーションにより,基準信号の周波数及びリアルゼロ系列の時間精度をパラメータにして,提案手法の信号再生の精度を定量的に評価する.
著者
古橋 良一 小林 正彦 金子 美博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.455, pp.153-157, 2009-02-23

卒業論文や修士論文など,審査員を伴う論文発表を幾つかの会場で並行して行う場合,同一の審査員が担当する発表が重ならないようにする,同一の研究室は連続して発表する,審査員の会場移動は最小限にするなど,様々な条件のもとで発表プログラムを作らなければならない.我々はこれまでこのようなプログラムを自動作成するためのソフトウェア「江戸っ子」を開発してきた.江戸っ子のアルゴリズムは,各会場での発表件数を均等にすることから始めて,それらの条件を満たすように設計されている.しかし,そのような均等性や連続性を同時に満たさないような事例に今回遭遇した.この事例に対処するためには,これまでのアルゴリズムを改良して,「江戸っ子」をバージョンアップする必要がある.本稿ではこれについて報告する.
著者
笹岡 勇佑 須藤 洸基 清水 義彦 今井 一雅 河合 和久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.482, pp.213-218, 2014-03-01

英単語を習得する方法には,従来型の単語カードを使ったものから,Web上のオンライン教材,近年では携帯情報端末上で学習する方法などがある.報告者らは,携帯情報端末の利用場面(シーン)に着目し,いわゆる「すきま時間」にも英単語の学習から復習テストが行なえる,高専生を対象とした英単語学習支援システムを開発した.このシステムを高専専攻科の学生20名に授業の一部として17週間利用させ,その利用状況や習得度を分析し,学習支援効果の検討を行なった.利用前と利用後テスト,利用時間の状況,利用者アンケートの結果から,学習支援効果を認めた.
著者
村山 優子 齊藤 義仰 西岡 大 佐藤 英彦 向井 未来
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LOIS, ライフインテリジェンスとオフィス情報システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.43, pp.113-119, 2013-05-09

本予稿では,本研究では,災害発生直後から必要な当事者間の意思疎通である緊急時のクライシスコミュニケーションを災害コミュニケーションと呼び,関連する研究課題を4件紹介する.災害から4ヵ月後に,被災者が避難所から移動した仮設住宅では,未だに立地条件の悪さから不便な生活が続いている.今回,無人の商店システムを運用した結果を報告する.また,復旧時には,情報の提供や取得に通信環境が整わない間,twitterが活用された.しかし,誤報も多く,その解決のために,何故,人は,他人のツイート・メッセージを転送(リツイート)するかを調査したので,報告する.また,復興状況を逐次確認できる定点観測のシステム,復興ウォッチャーについて報告する.さらに,津波の脅威を後世に伝えるための試みの,オンライン津波資料館の研究課題を述べる.以上,実践的な災害コミュニケーション支援の研究課題を紹介する.
著者
會田 卓也 西本 卓也 大川 茂樹 嵯峨山 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.485, pp.85-90, 2007-01-18

我々は,視覚によらずに情報機器を操作する手段として,音声認識や音声合成が広く受け入れられるための総合的なヒューマンインタフェースのあり方を検討しており,特に,頭部モーションセンサにより認識したユーザの頭部動作を音声入出力と組み合わせる手法を検討している.今回は,頭部の角度および角速度を状態遷移モデルによって認識しつつ,誤認識を防ぐ配慮を行った頭部認識モジュールを実装し,評価を行ったので報告する.
著者
金田 重郎 井田 明男 酒井 孝真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.419, pp.13-18, 2013-01-21

著者らは,(1)クラス図か英語の言語構造に立脚していること,そのため,(2)ヒシネス仕様記述から概念クラス図を作成する際には,認知言語学のコアイメーシの利用か効果的てある,と考えている本稿ては,「を格」,「に格」,「て格」の格助詞から構成される単文パタンて仕様を記述し,これを概念クラス図に変換する手法を示す結果として,ヒシネス仕様記述と概念クラス図の間にトレーサヒリティか確保されるたけてはなく,作成者に依存しない概念クラス図か生成てきる可能性かある実際に,学生による初歩的な実験の結果,作成される概念クラス図のバラエティか減少することを確認した.
著者
澤 繁実 伊藤 秀昭 中村 清彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.341, pp.39-44, 2005-10-10

環境から受け取った利得を主観的にどう評価するかの価値関数について研究したプロスペクト理論(Daniel Kahneman and Amos Tversky, 1979)[1]がある.本研究はこのプロスペクト理論の価値関数がヒトにおいてどのように獲得されたかを考察した.「環境における生き残りやすさ」という概念を導入した生存競争によってプロスペクト理論の価値関数の進化心理学的合理性を説明する.そのモデルを構築して数学的解析を行い, プロスペクト理論で示されるように価値関数がgainsの領域では上に凸となり, lossesの領域では下に凸となる条件を見出した.また, Daniel Kahneman and Amos Tversky (1992)[3]が求めたパラメーターに対して当モデルを適用し, ヒトの意志決定に関していくつかの新しい知見を得た.