著者
安田 久美子 村松 大吾 松井 淳 松本 隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.384, pp.53-58, 2007-12-06
参考文献数
3
被引用文献数
1

ユーザが筆記する動作をウェブカメラで撮影し,その映像からオンライン署名の特徴を抽出し,認証に用いる手法を提案する.本システムの特長の一つは,汎用のウェブカメラを入力デバイスとして用いることにより,タブレットのような特殊な装置を必要としない点である.Sequential Monte Carloを用いて動画像データにおけるペン先位置を追跡することで,ペン先の軌跡情報(x,y座標データ)を取得する.取得した各データ間の距離を計算することで認証に用いる.本稿では,7名の被験者から収集した画像データによりオンライン署名認証初期実験を行い,認証に用いる真筆と偽筆の判別が可能であることを確認した.
著者
菅原 徹 佐渡山 亜兵 上條 正義 岡本 宜久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.341, pp.41-44, 2002-09-20
参考文献数
7
被引用文献数
2

本研究の目的は生活用の製品を使用をしているときに生じる情動変化を顔面筋の筋電図計測によって推定することである.まず,顔面筋の筋活動を精度よく計測するために,多点電極を使用して筋の神経支配帯の位置を確認した.次に表情筋と咀嚼筋を同時に計測した.その結果,両者の筋活動は互いに密接に関連していることから,顔面筋の活動を計測する際には咀嚼筋の活動をモニターすることが必要であった.第3に閾値を設定することによって,顔面筋の活動レベルを2値化した.2値化された頻度によって快-不快の情動を定量的に表現した.応用例として,ドライビングゲーム中及び自動車運転中の顔面筋の活動を計測し比較した.その結果,アンケートから引き出せなかった情動変化が顔面筋の活動から計測できた.
著者
松山 洋一 藤江 真也 齋藤 彰宏 XU Yushi 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.220, pp.7-12, 2010-10-01
参考文献数
7

通所介護施設において,人同士の会話に介在させ,コミュニケーションを活性化するロボットについて報告する.本研究では,具体的なタスクとして高齢者通所施設で行われている難読ゲームを取り上げる.難読ゲームは,司会者の存在する複数人対話の一形態だと考えることができる.ここでロボットは,複数人会話における制約を満たしながら,会話を活性化させるための行動選択を行う必要がある.本論文では,既に人同士で行われているコミュニケーションを妨害せずに活性化を実現するため,会話における参加者の役割や,参加者間が共有する話題を推定しながら,様々な場面において適した行動を取るフレームワークを提案する.
著者
持田 武明 原田 啓司 丸山 充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.127, pp.25-28, 2005-06-16
被引用文献数
2

放送のデジタル化に伴う効率的なHDTVコンテンツ制作作業を支援するため, IPネットワーク技術を用いて非圧縮HDTV映像信号を低遅延で伝送可能な「i-Visto(アイビスト)ゲートウェイXG」を開発した.「i-VistoゲートウェイXG」は, 10Gbit/sのネットワークインタフェースを使い複数のHDTV映像信号を同時に送受信できる多重伝送機能, 1Gbit/sのGbEインタフェースを2本束ねてHDTV映像信号を送受可能なインバースマックス機能を有する.本稿では各機能の実現方法, フィールド実験を含む評価結果, およびi-Vistoの今後の展開について紹介する.
著者
小倉 史帆 豊田 規人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.249, pp.53-56, 2014-10-16

本研究ではラダー型ネットワークについて4×3種類のモデルを作り,ブライスのパラドックスが起きるかどうか考察した.今回のモデルでは,バイパスは双方向であると仮定している.コンピュータシミュレーションによってナッシュフローを求め,バイパスの流量がノントリビアルな場合において,ブライスのパラドックスが起きうることを示した.また,パラドックスが起き得る条件も求めた.
著者
鈴木 賢一郎 坂野 鋭 大塚 作一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.742, pp.7-10, 2005-03-11
参考文献数
10

本報告において, 我々は日本語テロップの縁取りに着目した文字認識手法を提案する.日本語テロップには可読性の向上のために黒い縁取りがなされている.この縁取りと文字領域の輝度勾配は比較的安定していると考えられることから, このエッジをSobelフィルタで検出し, 加重方向ヒストグラム特徴と同様の方法でヒストグラム化する特徴抽出系を設計した.認識実験の結果, 位置, サイズが完全に正規化された人工データでは100%, また, 評価用映像データベースに現れるテロップでは約70%の認識率が得られ, 提案手法の有効性を確認した.
著者
出口 大輔 村瀬 洋 梅田 一彰 斎藤 正孝 藤 賢一朗 山下 真吾 末次 祐樹 高井 翔太 佐藤 竜太 丸山 拓馬
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.467, pp.347-358, 2011-03-03
参考文献数
4

電子情報通信学会情報・システムソサイエティパターン認識・メディア理解(PRMU)研究専門委員会が今年度実施したアルゴリズムコンテスト「ターゲットをロックオンせよ!〜移動物体の追跡〜」の実施内容について報告すると共に,受賞者によるアルゴリズム紹介を掲載する.今回の課題は「動画中の物体追跡」をテーマとし,高速かつ精度良い物体追跡の実現を課題とした.また,応募総数は歴代2位の73件であり,そのうち7件が入賞した. This paper reports a summary of the 14th algorithm contest entitled "Lock on targets! - object tracking -". This contest is supported by PRMU (Pattern Recognition and Media Understanding) technical group of IEICE-ISS. In this paper, brief overviews of prize-winning algorithms are presented by the winners. The contest in this year asks fast and accurate algorithms to track objects from videos. 73 algorithms were submitted to this contest (2nd largest submissions among the past contests), and 7 algorithms had won the prizes.
著者
横山 牧 蜂須 拓 佐藤 未知 福嶋 政期 梶本 裕之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.483, pp.93-98, 2013-03-13

タッチパネルを搭載した携帯端末が近年急激に普及しているが,このタッチパネルは触覚フィードバックが欠けているためにテキスト入力が難しいという問題を抱えている.この問題に対して,本研究ではキーの境界線に段差がついたシートと視触覚クロスモーダル現象を用いることで,タッチパネルに触覚フィードバックを簡便に付加する手法を提案する.本稿では提案手法により付加される触覚フィードバックがテキスト入力パフォーマンスに与える効果を検証した実験,そして視触覚クロスモーダル現象によってヒトの知覚量がどの程度変化するかを検証した実験について述べる.
著者
渡辺 大
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.314, pp.17-22, 2009-11-24
参考文献数
23

暗号学的ハッシュ関数は電子署名やメッセージ認証子をはじめとして多くの応用を持つ重要な暗号プリミティブである。しかし、近年になってハッシュ関数に対する攻撃手法が大きな進展を見せ、既存のハッシュ関数の多くが安全ではないことがわかってきた。そこで、米国標準技術研究所(NIST)は最新の設計および安全性評価技術を盛り込んだ新しいハッシュ関数を標準に定めるべく、ハッシュ関数アルゴリズムを広く一般に公募して選考を開始した1(SHA-3コンペティション)。本稿では、これまでのハッシュ関数の技術を概観すると共に、SHA-3コンペティションの途中経過を簡単に紹介する。
著者
東郷 俊太 香川 高弘 宇野 洋二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.480, pp.173-178, 2013-03-13

本研究では,人間が一次元の手先の目標軌道を追従する,一次元軌道追従タスクを行う動作を計測し,解析を行った.このタスクにおいて,追従方向と直交する方向はタスクの達成とは関係の無い方向である.計測結果として,終端姿勢において被験者の手先はタスク達成と関係の無い方向に大きくばらついた.また,接線速度の概形はベル型であり,小さなピークが多く含まれていた.UCM解析を用いて関節間協調を定量的に評価した結果,タスクの達成に影響を与えないばらつきが時間と共に増加した.これらの運動学的な特徴や関節間協調の特徴は,我々が提案したUCM参照フィードバック制御法によってよく再現された.UCM参照フィードバック制御法は,時々刻々と目標UCM空間を生成し,UCM空間上から最適な一点を選び続ける制御方策である.これらの結果は,人間はUCM空間を参照することによって,タスク達成に関係の無いばらつきを許容しながら,多関節を協調的に制御していることを示唆している.また,人間の視覚運動制御系においてUCM空間の神経表現が存在している可能性があることを示唆している.In this paper, we measured and analyzed a one-dimensional target tracking task in which human subjects tracked one-dimensional target trajectory of the hand. In this task, the direction orthogonal to the movement direction is task-irrelevant. As a result, the hand position at the movement end was more varied in the task-irrelevant direction. Moreover, the profile of tangential hand velocity was roughly bell-shaped but they also had small peaks. Results of UCM analysis which is used to quantify the joint coordination showed that the task-irrelevant variance increased with time. These characteristics of kinematics and joint coordination were well reproduced by our UCM reference feedback control. UCM reference feedback control generates a target UCM space each time step and selects one point in UCM space. These results suggest that the human refers to UCM space step by step to control a multi-joint arm allowing the task-irrelevant variability. Moreover, it is suggested that the human would represent UCM space in visuomotor control system.
著者
青山 秀紀 山岡 勝 坂田 毅 大嶋 光昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.248, pp.49-52, 2013-10-17

本稿では,スマートフォンとクラウドサーバを利用した新しい形式の家電システムである「スマート家電」を紹介する.スマート家電は,家電機能の外部化と利用ログの収集機能により,従来の家電の持っていた物理構造的制約,時間的制約,顧客接点の制約を解決する.我々は,スマート家電の実装方法として,スマートフォンの NFC と通信回線を利用して家電{スマートフォン{クラウドサーバを繋ぐ NFC 接続方式と,無線で家電とスマートフォンやクラウドサーバを接続する無線接続方式の二つの方式を開発・実用化し,スマート家電の特徴を活かした新しいユーザ価値を実現した.
著者
原 大介 前田 吉則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.67, pp.61-66, 2005-05-13
参考文献数
1
被引用文献数
1

ろう者, Coda, 聴者(通訳者および手話学習者)の各グループに対して, 日本ろうあ連盟発行の「新しい手話I」に掲載されている手話単語を提示し, 1から5までの5段階で容認度判定を実施した.ろう者と聴者(通訳者), ろう者と聴者(手話学習者)による容認度判定の結果には, 統計的に有意な差が認められた.ここでは, ろう者と通訳者の2者間の容認度判定結果に論点を絞りその詳細およびx2乗検定結果を詳しく論じる.
著者
片山 滋友
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.536, pp.11-16, 2003-12-12
参考文献数
10

図表とその内容を説明した230字程度の文章を左右に配置してCRTディスプレイ上に2分間提示し、その内容をどの程度記憶しているか特性を測定した。その結果、20歳前後の右利きの男子学生において、図表を左に横書き文章を右に配置したとき、その逆の配置に対して有意差が認められ、平均13%ほど記憶成績が良くなることが明らかになった,しかし、被験者が女性の場合や左利きの男性では、左右配置に有意差が認められなかった。また、左右配置の因子と文章の左右揃え、配置間隔、視距離の各因子に対してそれぞれ交互作用が認められた。これらの実験結果より左右差発生の原因として人間の視線動作の習慣性と認知機能のラテラリティの二つが考えられることを指摘した。
著者
三浦 健一郎 坂戸 勇介 河野 憲二 小川 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.96, pp.61-66, 2011-06-16
参考文献数
11

日常の視覚環境において、興味を惹く対象物が視野の中で動いている場合には、その対象物を見るために2種類の眼球運動が起こる。一つは対象物に視線を向ける高速で一過性の眼球運動であり、サッケードと呼ばれる。この眼球運動は対象物の像を網膜中心窩に捉えるように働く。もう一つは、対象物の像を網膜中心窩に保持し続けるように働く、ゆっくりとした滑らかな眼球運動であり、追跡眼球運動と呼ばれる。これら二つの眼球運動は、通常一つの対象物に向かって起こるが、その協調動作を実現する神経機構はまだ良くわかっていない。本研究では、この二つの眼球運動の基盤となる視標選択が、同一の神経機構に支配されているか否かを調べるために、動く6つの刺激を用いた、視標選択の難易度が異なる二つの視標探索課題(ボトムアップ的手掛かりが利用できるか否か)を行っている時のヒトの眼球運動を調べた。その結果、追跡眼球運動系にはサッケードの実行とは無関係に働く視標選択の機構があること、サッケード系の視標選択と追跡眼球運動系の視標選択におけるボトムアップ的手掛かりの重要性が異なること、サッケード系と追跡眼球運動系で異なる視標を選択する可能性があることを示唆する所見を得た。これらの結果は、サッケードと追跡眼球運動の視標選択が完全に同一の神経機構に支配されているのではないことを示唆する。
著者
長澤 竜馬 清水 久恵 三澤 顕次 山下 政司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.279, pp.13-17, 2009-11-05
参考文献数
8

一般に,心拍数の増減が感性の興奮状態を表すとされているが,これまでの研究や専門文献から日常生活程度で起こる弱い興奮状態においては,その概念が常に成り立つとは言い難いのが現状である.そこで,弱い興奮時にも応答するセンシティブな興奮指標を考案することにした.多角的なアプローチの中で,感性喚起刺激時の呼吸波と心拍変動のRSA(呼吸性洞性不整脈)成分などの相互相関係数を互いの遅れ時間を考慮して求めたところ,主観評価の興奮スコアとの関連が見出された.これは心肺系の休息レベルとの関係が示唆されるRSA機能によるものと考えられ,感性の興奮時にはこの機能が減弱すると推測される.
著者
林 友直 岡本 良夫 横山 幸嗣 細川 繁 冨田 秀穂 升本 喜就
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.102, pp.13-20, 2005-05-20

鯨生態観測衛星(WEOS, 観太くん)は2002年12月14日に種子島宇宙センターからH-IIA-4号機により、高度800kmの太陽同期軌道に打ち上げられ、それ以来千葉工業大学津田沼キャンパスに設けられた地上管制装置によりデータ取得が順調に続けられている。鯨に対する生態観測プローブの取り付けはいまだ成功していないが、数多くの試行により装着の見通しが得られつつある。ここでは衛星、地上系、プローブとその装着について、その開発方針と其の成果について述べ、さらに本システムの応用として展開している計画とその結果を示す。
著者
大田 裕之 川村 和郎 福留 秀暢 田島 貢 岡部 堅一 池田 圭司 保坂 公彦 籾山 陽一 佐藤 成生 杉井 寿博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SDM, シリコン材料・デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.139, pp.115-119, 2008-07-10
参考文献数
9

本論文では新しい歪み技術である不純物閉じ込め層(DCL)をNMOSに、2層のNiフルシリサイド(Ni-FUSI)をPMOSにそれぞれ用いたハイブリッドゲート構造について報告する。DCL技術はIEDM2007において我々が報告した歪印加効果が大きいストレス・メモリー(SMT)に属する手法である。2層Ni-FUISIはFLA(フラッシュ・ランプ・アニール)を用いてPMOSゲートのみに選択的に形成した。結果として、PMOSの実効酸化膜換算膜厚の薄膜化による飽和電流の向上、仕事関数差によるしきい値変動からRoll-off特性の向上が得られた。またNMOSに関してもFLAによる不純物の活性化、実効酸化膜換算膜厚の多少の薄膜化による飽和電流の向上、ハローの不活性化抑制によるRoll-off特性の向上が得られた。性能としては|V_d|=1.0VにおいてnMOSFET、pMOSFETで1255/759μA/μmが得られた。
著者
松永 理恵 阿部 純一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.279, pp.53-58, 2010-11-06
参考文献数
10

人間には,単純な基本振動数比の音程ほど協和性を感じる聴神経機能が生得的に備わっている。このことから,音階の中心音となるドとより単純な振動数比の関係にある"ソ"や"ファ"を含む音階が世界中に遍在していると考えられる。本研究では,ソやファを含むかどうかによって,音階(調性スキーマ)の学習のしやすさに違いが生じるかどうかを検討した。実験1の結果は,ソとファの両方を含む音階は,どちらか片方のみしか含まない音階やどちらも含まない音階よりも学習しやすいことを示した。実験2と3では,実験1の結果が,既学習の西洋全音階への同化のしやすさによるものではないことを確認した。これらの結果は,ソとファの両方を含む音階の学習しやすさは環境的な要因よりも生得的な要因によるところが大きいことを示唆する。