著者
井上 雅友 渡邉 勇太 島田 達郎 山内 将行 田中 衞
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.547, pp.43-48, 2006-01-17
参考文献数
8

本論文では, 離散時間型セルラーニューラルネットワーク(DT-CNN)を利用し, 学習によって得られたデータをもとに時系列データの予測方法を提案している. 予測に用いられるモデルは連立微分方程式であり, その係数はDT-CNNの状態方程式の平衡解から得られる. 機械学習によって得られたAテンプレートは時系列が多系列になるにつれて密行列になる. そこで, ハウスホルダ変換(HHT)を用いてAテンプレートを3重対角化することにより疎行列にし計算の小規模化を実現している. 時系列データにはChua回路のカオスアトラクタを用いている. シミュレーション結果では, 本提案手法を用いて観測されたデータから十分にアトラクタの予測が可能であることを示している.
著者
橋本 晃治 池田 完 志賀 智一 五十嵐 清 御子柴 茂生 高久 重剛 西山 清一 南村 雄一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.143, pp.25-30, 1999-06-24
参考文献数
4
被引用文献数
2

電界結合型放電を利用した高周波電界点灯ランプを8本用い、直下方式の18インチLCD用バックライトを開発した。高周波電界点灯ランプは、外部電極型であるため長寿命が期待でき、高周波駆動であるため高効率であると考えられる。また、外部電極の位置や数が任意であるため、より長い放電管に容易に対応できる。均一な放電を得るために、外部電極を分割して配置した。このバックライトを5.24MHz,790V_<p-p>で駆動した時、輝度3500cd/m^2,発光効率341m/Wが得られた。また、このバックライトは8本の放電管を1つのインバータで駆動できる。
著者
宮崎 武 荒木 俊輔 上原 聡 野上 保之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.470, pp.97-102, 2015-03-02

素体上のロジスティック写像は,一般的に実数上で定義されるロジスティック写像を素体上で定義し,入力値と写像値を素体の元として計算機上で演算しやすい繰り返し写像である.この写像より得られる擬似乱数系列は,低い演算精度でも十分な乱数性を有していることを示したが,その系列については,まだ十分な解析がなされていない.本稿では,素体上のロジスティック写像における自己相関値により,演算精度に近い周期を持つループの存在を示し,そのループの種類を分類する.また,素体を構成する素数がメルセンヌ素数である場合は,それらのループが同じ種類になることを実験的に示す.
著者
風戸 嘉幸 檜垣 泰彦 池田 宏明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.346, pp.43-48, 2007-11-15
参考文献数
10

ウェブアクセシビリティを確保する有効な手法の一つに,表示スタイルを文書構造と分離し,外部スタイルシートでレイアウトを制御する方法がある.読みやすさという言葉には,視覚的・理解的の2種類の意味が含まれているが,行間余白はこのうち前者に対して大きな影響を及ぼす.本研究では,外部スタイルシートから行の高さが制御されているHTML文書の読みやすさについて主観評価基礎実験を行うとともに,一定の観測条件のもとでの行間余白と日本語文章の読みやすさ評価値について試算を行い,行間余白と読みやすさの関連性について考察を加えた.
著者
吉田 英司 三田 誠一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.157, pp.29-34, 2007-07-17
参考文献数
8

本論文では四元数ニューラルネットワークと実数ニューラルネットワークの性能比較について扱う.主に数字認識と顔認識実験についての比較をする.その際に四元数ニューラルネットワークには実数ニューラルネットワークに見られない興味深い性質が現れたのでその説明を行う.
著者
豊坂 祐樹 廣瀬 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.232, pp.31-36, 2009-10-09
参考文献数
23

常微分方程式によるSIRモデルとマルチエージェントモデルMASを組み合わせて,パンデミックシミュレーションを効率的に行うMADEモデルを提案し,また,その妥当性についても検証を行なってきた.パンデミックシミュレーションは観測例が極めて少ないので通常はシナリオによるシミュレーションが行なわれる.しかしながら,2009年4月にメキシコに端を発したと思われる新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)はまれにみるパンデミックの実例となっている.9月現在,まだ感染は拡大し続けており,今後の動向は不明である.ここでは,観測されたパンデミック初期のデータを用いて,感染蔓延がどのように広がるかという予測をシミュレーションによって行う.また,他の統計的な予測方法との比較も行う.シミュレーションによる予測が観測結果とどのように合致しているか,あるいは異なっているかについては未知であるが,初期段階でのこのような取り組みは重要と考えるので,現段階でできる結果について報告する.MADEモデルによれば,2009年7月までの観測データを用いた場合の日本での感染者総数の予測値は約3,000万人,全世界では5億人程度と予測された.
著者
仁科 エミ 河合 徳枝 大橋 力
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.239, pp.1-6, 2011-10-10
参考文献数
12

私たちは、インドネシア・バリ島の伝統的民族音楽"ガムラン"について長年にわたる研究を行っている。その結果、ガムラン音は、可聴域上限をこえる高複雑性超高周波を含むことを見出した。そうした音は、脳幹・視床・視床下部を含む脳の最高中枢<基幹脳>の活動を劇的に高めることにより、環境適応や生体防御を司り健康と深く関わる<自律神経系・内分泌系・免疫系>、そして美しさ快さを司り感性や芸術と深く関わる脳の<報酬系>の活動を連携して向上させる効果をもつ。高密度のバリ島絵画を被写体とした4K映像に同様の効果が期待されることも私たちは見出している。これらの知見は、今後の衛星通信において、技術的可能性とともに、人間の生理的反応や文化的多様性をも考慮した映像音響密度が必要であることを示唆していると考える。
著者
池田 清志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.345, pp.23-26, 2005-10-13
参考文献数
12

本論文では、VHF帯超音波光回折効果を用いた溶液濃度測定について述べている。駆動超音波周波数には、9MHzPZTトランスジューサーの高調波で生じる30-100MHzを用いた。試料溶液として、0.0-20.0% NaCl溶液と蔗糖溶液を用いた。AOセルで偏向された輝点を距離検出器により、トラッカ電圧V_Tに変換して、溶液濃度を測定した。NaCl溶液のトラッカ電圧感度は、第9高調波94.02MHzで、139.1mV/%となった。蔗糖溶液の感度は、第9高調波94.02MHzで、47.1mV/%となった。この感度は、9-30MHzのRaman-Nath回折を利用した時より、約11.2倍改善された。NaCl溶液の電圧感度の周波数依存性の比例係数は、1.23mV/%MHzを得た。
著者
齋藤 牧子 潮田 浩 和田 裕一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.369, pp.73-78, 2007-11-29
参考文献数
12

ペットボトル緑茶飲料のパッケージカラーがその味覚印象に及ぼす効果について検討した。実験1では、パッケージカラーとして9色(赤、橙、黄、緑、青、紫、茶、黒、白)を提示し、味覚印象(甘み、渋み、まろやかさ、爽快感、うまみ、味の濃さ、飲みやすさ、香りのよさ、嗜好)の評定を求めた。その結果、これらのすべての味覚印象に対する評価は色によって変化することが示された。実験2では、評定者がどのようにして色の選好評価をしているかを調べるために、AHP(階層化意思決定法)を用いた検討を行った。AHPにおける評価項目として、甘さ、濃さ、飲みやすさの3つを設定した。分析の結果、緑はすべての評価項目において最も好ましさを感じさせるパッケージカラーであることが明らかとなった。
著者
中野 允裕 石黒 勝彦 木村 昭悟 山田 武士 上田 修功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.286, pp.197-204, 2013-11-12

本稿では,関係データ解析への応用を目的として,無限サイズを持つ行列の長方形分割を行う確率過程について議論する.関係データ解析法の一つとして、与えられたデータを行列として表現し、その行列を少数の長方形クラスタに分割する手法が広く利用されている。長方形分割を表す確率的生成モデルとして従来Chinese restaurant processの積やMondrian processなどが用いられてきたが,これらは限られたクラスの長方形分割しか表現することが出来なかった.より一般に任意の長方形分割を生成しうる確率モデルとしてGilbert tessellationが知られているが,これは統計的な振る舞いの解析が困難であることが知られている.そこで本稿では,有限確率モデルの無限拡張によって長方形分割のための確率過程を構成する方法を提案する.はじめに,確率過程構成の常套手段であるKomogorovの拡張定理を用いた方法を示し,その問題点を明らかにした後,より洗練された構成法として有限のベイズ階層モデルに関する射影系をOrbanzの拡張定理によって無限拡張する方法を提案する.
著者
服部 充洋 廣瀬 勝一 吉田 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.422, pp.85-91, 2004-11-09
参考文献数
9

SHA-OのメッセージスケジュールにはGF(2)上の16次原始多項式が用いられている.GF(2)上の16次原始多項式は全部で2048個存在する.各多項式を用いてメッセージスケジュールを構成することにより,2048個のSHA-O variantが構成される.本稿ではこれらのSHA-O variantsに対しCRYPTO'98で提案されたChabaud-Joux攻撃を適用する.そして,いくつかのvariantsが攻撃に耐性を持つこと,元のSHA-Oが必ずしも攻撃に耐性をもたないことを示す.また最も攻撃に弱いvariantにおけるcollisionを示す.これらの結果はChabaud-Joux攻撃を何ら改良することなくそのまま適用することにより得られる.
著者
酒井 恭徳 藤井 威生 マイケル ロックラン 中川 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.99, pp.1-6, 2001-05-22
参考文献数
11
被引用文献数
2

車々間通信の使用は将来のITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)において, 車両同士での情報交擬のために欠かせない技術である. 本論文では対向車の干渉を考慮した車々間通信において, DS/SS(直接拡散)方式を用いた場合とFH/SS(周波数ホッピング)方式を用いた場合を計算機シミュレーションにより比較する. その中で特に, 対向車をトラヒックモデルを用いて生起させた場合の車両の認識率に注目して検討を行う. その結果からDS/SS方式では遠近問題により対向車が大きな干渉となること, そしてFH/SS方式では遠近問題がほとんど起きないため, 対向車の干渉が十分に抑えられることを明らかにする. さらに, 車両認識率において, 距離が離れた車両に対する性能がFH/SS方式の利用により大幅に改善することを示す.
著者
姫野 龍太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.225, pp.1-6, 2005-07-28

複数のPCクラスタ、ベクトル並列計算機、さらに分子動力学専用機を内蔵したクラスタという三種類の異なるコンピュータをGbitEthernetで結び、グリッド技術で結合したRSCC(Riken Super Combined Cluster)システムを昨年富士通、NEC、日本IBMと開発した。このシステムでは、ユーザーが持つ種々のアプリケーション・ニーズにより柔軟に対応するために、このような異機種複合システムとなっている。また、グリッド技術やウェッブ技術を使い、どのユーザーにも統一された使い勝手をサービスできるように配慮した。稼働から1年が経過したが、故障は当初予想よりも少なく、順調に使われている。一方で、今後マルチフィジックス、マルチ・スケールといった新たな計算ニーズの増加が予想されているが、今回のシステムでは異機種間を結ぶ通信の帯域が十分ではない。このようなニーズに対応すべく、2010年度末完成を目指した、次期複合システムの構想をまとめた。この概要もここで紹介する。
著者
亀卦川 学 長谷川 英明 吉田 真人 廣岡 敏彦 中沢 正隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFT, 光ファイバ応用技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.257, pp.51-56, 2003-08-14
参考文献数
13

我々はこれまでに従来の光ファイバをフォトニック結晶ファイバ(PCF)に接続する場合にはクラッド部の屈折率の差から大きなフレネル反射が生じることを報告した。これは従来のファイバ接続にはない巨大フレネル反射であり、フォトニック結晶ファイバを光部品や伝送路に用いる場合にはその反射が問題となる。本論文ではPCFと従来ファイバの接続特性をさらに詳細に測定し、その接続点におけるフレネル反射光強度をレイリ散乱のレベルまで抑制する接続条件を明らかにした。また、ファイバ接続点付近におけるPCFの断面構造をSEMで観測し、フレネル反射の低減とPCFのクラッド部における空孔形状の関係を議論した。
著者
稲場 肇 秋元 義明 小向 哲郎 中沢 正隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.349, pp.13-17, 2000-10-06
参考文献数
4

波長1.5μm帯の光源であるエルビウム添加光ファイバリングレーザ(EDFRL)は, 非常に狭い線幅, 低雑音, 十分な出力, 長寿命, アライメントフリーなどの多くの特長を持つが, 激しいモード競合や, それを抑えてもモードホップを避けるのが困難であるという短所を持つ.我々は光ファイバブラッググレーティング(FBG)を用いてEDFRLのモード競合を抑制した.そのEDFRLのモードホップフリー動作をFabry-Perotフィルタを用いて行い, その結果からモードホップの要因と対策について考察した.モードホップには隣接縦モード間のモードホップと大きなモードホップがあり, Fabrv-Perotフィルタのパラメータの最適化, 短い共振器長およびFBGの温調が重要であることがわかった.
著者
小野 敦 吉田 真人 中沢 正隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFT, 光ファイバ応用技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.262, pp.25-30, 2004-08-20
参考文献数
13

高調波再生モード同期エルビウムファイバレーザはGHz帯で数ピコ秒のトランスフォームリミットなパルスを容易に発生できるため、超高速光通信用光源として注目されている。またこのようなファイバレーザは共振器長が長くレーザ共振器のQ値が高いため、その発振線幅が1kHz以下と狭線幅であり、縦モード間のビート信号を用いた高純度な光マイクロ波発振器としての応用も期待できる。今回我々は共振器長の大幅な可変を目指して、レーザの利得媒質として従来のエルビウム添加ファイバ(EDF)の代わりに半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)を用いた10GHzモード同期SOAファイバレーザを作製し、その発振に成功した。またその発振線幅について詳細に測定したので報告する。
著者
中村 健太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.42, pp.15-20, 2001-05-08
参考文献数
6
被引用文献数
9

空中強力超音波の音圧を光学的に測定する方法について検討した。空中超音波は疎密波であるので媒質である空気に密度変化を生じているが、これを光の屈折率変化を介して測定する。まず、音圧と空気の屈折率変化の関係を導き、この屈折率変化がレーザドップラ振動計で定量的に検出可能であることを示す。次に、呼吸振動する円環内の定在波音揚とピストン振動面から放射される進行波音揚の両方について、本方式による音圧測定を試みる。その結果、定量的な音圧測定が可能であること、走査型レーザドップラ振動計を利用することで、2次元分布が容易に測定できることを示す。
著者
添田 直樹 久保 拓真 根本 幾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.367, pp.27-29, 2011-12-20

音楽聴取時における,注意の脳活動に対する影響を測定するために,音色(timbre)注意,旋律線(melody注意時のfMRIを撮像し,統計解析を行った.4種類の旋律,3種類の音色を組合せた第1フレーズ(non-manipulated)を作成した.それと比較するために第1フレーズに「変化をさせない」「旋律の1音のみを変化させる」「音色のみを変化させる」「音色と旋律の1音を変化させる」いずれかの操作をした第2フレーズ(manipulated)を続けて配置した.ただし,第2フレーズは第1フレーズより全音高くした.被験者にはランダムに配置した2フレーズ(第1フレーズ+第2フレーズ)を続けて聞かせ,2フレーズの間の違い(全音の違いは考慮しない)の有無を判断させた.コントロール刺激としてホワイトノイズを使用した.14人の被験者のグループ検定で,音色注意時,旋律線注意時で共通する賦活部位は,一次聴覚野を含む左右の上側頭回であった.旋律注意時のみに賦活する部位は,左の運動前野であった.音色注意時のみ賦活する部位は見られなかった.
著者
川合 伸幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IMQ, イメージ・メディア・クオリティ : IEICE technical report (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.161, pp.1-6, 2012-07-20
参考文献数
21

私たちは、誰かが怒っている顔やヘビなどを見れば恐怖を感じる。これは経験によって学習した情動反応なのか、生得的にもっている脅威感知システムによるのだろうか。成人を対象とした実験で、ヘビやクモをすばやくみつけられることを実験的に示し、これらに対する敏感性を確認した。つづいて、3-5歳の子どもでも同じ結果が得られることを確認した。このことは経験の効果が弱いことを示している。さらに、ヘビを見たことのないサルでも同じ結果が得られることを示し、これらの対象に対する敏感さは進化的に培われた生得的なものであることを確認した。では、生まれる前からどのようにヘビを認識できることになっているのだろうか。これは脳の視床にある核が特定のパタンに反応することで恐怖センターである扁桃体を賦活させるためと考えられる。そのパタンとはヘビに特徴的なウロコであり、これが鍵となってヘビへのすばやい反応を喚起させていると考えられる。Humans are afraid of specific stimuli, such as angry faces and snakes. It has been a long debate on whether such fear responses are acquired through learning or an innate one. A series of our studies demonstrated that a picture of snake among those of flowers was also quickly detected by human adults. We also found that even young children of three years old detected a picture of snake among flower pictures, which suggests that humans are innately sensitive to snakes. Further, we found that macaque monkeys reared in a laboratory with no experience with snakes also detected snake pictures quickly. These results strongly suggest that snakes and/or angry face are phylogenetic fear-relevant stimuli, and that the exaggerated sensitivity to snakes by humans and monkeys have evolutional routes. A hypothesis and our on-going studies suggest scale is the key to snake fear.
著者
得丸 公明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.244, pp.31-36, 2010-10-16
参考文献数
12
被引用文献数
4

論理と感情は,原初的には生命の生存本能の不可分一体な発現であり,感情は感覚と遺伝子記憶とのパターン認識,論理は感覚と記憶の演算結果にもとづいて行動を引き起こす引き金として発展したと考えられる.高等生物は,後天的記憶を獲得・蓄積できるようになり,変転する世界に対応したより柔軟な記憶体系を構築するようになった.ヒトは,言語というデジタル符号メカニズムを獲得したために,感覚も記憶も決断もすべて言語の表現型で代用できるようになった.自然言語も人工言語もデジタルであり,表現型である.その背後にある遺伝子型の論理や感情を評価するためには,表現型を生みだす回路をモデル化することが必要である.筆者は言語を生みだす回路のモデルとして,3つの神経系(生理)モデルを提案する.神経系モデルは,論理が生命の生存本能の発現であることを前提としており,論理と感情が未分化で知能を持たない「反射モデル」,論理と感情が分化して知能の記憶をもつ「適応モデル」,言語による符号化処理が行われるヒトの「言語情報処理モデル」という3つの進化の段階に対応するため,言語に固有の問題を特定しやすい.