著者
薄井 宏航 フランク イアン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.499, pp.71-76, 2012-03-22
参考文献数
9

人は直感や理性を用い意思決定を行うと古くから考えられてきたが,近年の研究により,意思決定における体性感覚の影響の大きさが示唆されている.本研究では,理性や感情,そして身体感覚が意思決定に及ぼす影響を調査する.我々は,Wilsonらの実験に倣い,理性的な考え方と,直感的な考え方を比較する実験を行った.さらに,体感覚(味覚)が意思決定に及ぼす影響についてを調査する実験を行った.結果として,顔の魅力を評価する際は,Wilsonらの実験で見られた考えることを強制するような質問とのプライミングの効果が見られなかった.さらに,味覚と意思決定間のつながりを示した.
著者
鈴木 誠史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.291, pp.25-30, 2002-08-22
参考文献数
29

筆者は、1955年に郵政省電波研究所(現独立行政法人通信総合研究所)に入所して、情報通信、音声情報処理の研究を始めた。これらの分野の黎明期であったため、限られた情報源から、広い関連分野を学びながらの実験的研究を進めた。音声研究を主としたが、その方向性は手探り状態だった。中田和男氏がMIT留学から帰国後、ホルマント合成方式の合成器を制作し、母音.半母音・子音の合成音による言語音知覚の実験を行った。引き続き、母音、数字語の認識装置を試作した。ハードウェアによる限界を知り、1960年頃からは、計算機処理による分析、認識を開始した。これらの研究は、研究法が定式化していない時代としては、正鵠を得ていたと思う。1965年頃には連続音声認識、神経回路による分析などを手がけた。FFTを導入するとともに基礎的研究を指向した。音声、通信、信号処理の境界領域のプロジェクト的研究も行った。ヘリウム音声の性質の解明.了解性改善、騒音や雑音で妨害された音声の品質向上などがあげられる。研究テーマが早すきたり、技術が追いつかなかったことも多い。ほとんどの研究が初めてチャレンジするもので、研究・開発に際しての考え方等は、今の研究者の参考になるであろう。
著者
伊藤 太介 武田 一哉 板倉 文忠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.325, pp.59-64, 2001-09-21
参考文献数
10
被引用文献数
1

本報告では, ささやき声の音響特性と音声認識手法について述べる.データベースとして100名以上の話者が発生した6, 000文以上のささやき声, 通常発生, 顔画像を収録した.ささやき声と通常発声の比較では, 1)ケプストラム距離が有声音で4dB, 無声音で2dBであること, 2)ささやき声のスペクトルの傾きが通常発生に比べ緩やかであること, 3)1.5kHz以下のフォルマント周波数が通常発声に比べ高くなっていることが得られた.収録したささやき声から音響モデル(HMM)を学習し認識を行ったところ, 64%の単語正解精度が得られ, MLLRによる話者適応を用いた認識では, 単語正解精度が76%まで改善された.
著者
本間 亘 鈴木 拓海 若月 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMD, 機構デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.46, pp.11-14, 2007-05-11

電磁リレーでは、電気接点が閉成するときに、接点の衝突現象によるバウンスが生じる。過渡電流スイッチ回路によるアーク放電抑制を前提にすれば、接点電極の消耗や転移が激減するので、バウンスの抑制方法も従来とは別なアプローチがありそうである。そこで、従来のバウンス現象を可動電極の運動に着目して、現象の解明を試みた。このバウンス原因を明らかにするため、電極接点の形状を変え、接点開閉時の電流・電圧測定に同期させて可動接点の弾性振動を光変位計で測定した。閉成時の電気的特性と光変位計による測定を対比させたところ、可動電極は、片持ちはり構造の基本共振モードのほかに、2次モードの振動が確認され、それがバウンスと関係することがわかった。
著者
望月 貴裕 蓼沼 眞 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.118, pp.37-42, 2005-06-09
被引用文献数
2

本稿では, シーンのパターン化とHidden Markov Model (HMM)を用いた, 野球の各シーンのイベントを自動的に識別する手法を提案する.本手法では, 学習処理としてまず, シーンを構成する各ショットをパターン化し, 学習用映像の各シーンをパターンデータの系列で表現する.パターン化データは, 位置情報, 画像特徴および動きベクトルを情報として持つ複数の矩形から構成される.このパターン化処理は, 映像上に配置した点群のブロックマッチングによる移動情報およびそれらの点の近傍領域の画像特徴に基づき行われる.次に, 学習用映像の各シーンを, 各ショットのパターン化データに基づき数値列で表現し, ホームラン, シングルヒット, フォアボールなどの「イベント種」で振り分ける.そして, 各イベント種について数値列の長さで区別して数値列を学習し, HMMのパラメータを設定する.それらの学習済みHMMを用いて未知イベントシーンの識別を行う.識別処理も, 学習処理と同様にショットのパターン化処理に基づき行われる.本手法については, 7試合分の大リーグ野球中継映像を用いた識別実験により評価を行った.
著者
安田 貴徳 櫻井 幸一 高木 剛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.34, pp.9-16, 2011-05-06
参考文献数
19

多項式公開鍵暗号(MPKC)はポスト量子暗号の候補の一つである。RainbowはMPKCによる電子署名方式であり、暗号化および復号化の処理が高速であるという利点を持つ。一方で、MPKCの安全性は多変数方程式の求解問題の困難性に基づいており、暗号学的に安全なパラメータを選択すると鍵長がRSA暗号と比較して大きくなる問題がある。公開鍵長の削減に関しては既に研究が進められているが、秘密鍵長の削減に関する研究の報告はまだなされていない。本稿では非可換環を利用したRainbowの一署名手法を提案し、それによりRainbowの秘密鍵長が従来の場合より削減できることを説明する。特に1024ビットRSA署名と同等の安全性を持つとされるRainbowの場合、秘密鍵長を約75%削減できる。また、現在知られているRainbowの主な攻撃方法に対して安全性評価を行い、安全と思われる非可換Rainbowのパラメータを記述する。
著者
大田 裕之 川村 和郎 福留 秀暢 田島 貢 岡部 堅一 池田 圭司 保坂 公彦 籾山 陽一 佐藤 成生 杉井 寿博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.140, pp.115-119, 2008-07-10
参考文献数
9

本論文では新しい歪み技術である不純物閉じ込め層(DCL)をNMOSに、2層のNiフルシリサイド(Ni-FUSI)をPMOSにそれぞれ用いたハイブリッドゲート構造について報告する。DCL技術はIEDM2007において我々が報告した歪印加効果が大きいストレス・メモリー(SMT)に属する手法である。2層Ni-FUISIはFLA(フラッシュ・ランプ・アニール)を用いてPMOSゲートのみに選択的に形成した。結果として、PMOSの実効酸化膜換算膜厚の薄膜化による飽和電流の向上、仕事関数差によるしきい値変動からRoll-off特性の向上が得られた。またNMOSに関してもFLAによる不純物の活性化、実効酸化膜換算膜厚の多少の薄膜化による飽和電流の向上、ハローの不活性化抑制によるRoll-off特性の向上が得られた。性能としては|V_d|=1.0VにおいてnMOSFET、pMOSFETで1255/759μA/μmが得られた。
著者
平田 佐智子 小松 孝徳 中村 聡史 秋田 喜美 澤井 大樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.185, pp.1-6, 2013-08-16

オノマトペ(擬音語・擬態語)は表現力豊かな言葉であるとされており、その性質や応用可能性について明らかにされつつある。本研究は、オノマトペが言語コミュニケーションにおいて果たす役割を検討するため、地域によってオノマトペの使用頻度が異なるのか、またどのような人に対して用いられるのか、どのような伝達内容に対して用いられるのか、を調べるため全国規模の調査を行った。結果として、主観的な使用頻度には地域差は無いものの、オノマトペの地域差に対する根強い信念が存在すること、またオノマトペが親密性の高い間柄で用いられる点や、触覚や視覚情報を伝達する際に最も多く使用されることがわかった。
著者
石野 正彦 五月女 健治 工藤 司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SWIM, ソフトウェアインタプライズモデリング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.192, pp.37-42, 2009-09-04
参考文献数
14
被引用文献数
1

いままで、顧客への商品推奨のモデリング手法をベースに学生向け履修支援や情報セキュリティのリスク推定などについてリコメンデーションシステムの応用研究を進めてきた。それらの共通の数理的モデリング手法と各々の応用事例について発表する。「属性関係行列」を使って各々の学生向けのお奨めの履修コースや情報セキュリティのリスク推定について紹介する。
著者
ホァン ブイフイ 小田 昌宏 二村 幸孝 北坂 孝幸 三澤 一成 藤原 道隆 森 健策
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.389, pp.395-400, 2012-01-12
参考文献数
8

外科手術における医師の血管構造把握を支援するため,我々は腹部血管を対象とした血管名自動命名法の研究を行ってきた.この手法は,抽出した血管領域から血管木構造を作成し,血管木構造の各血管枝ごとに多クラスAdaBoostを用いた識別器により血管名を命名する.しかし,識別器の誤分類により誤った名前を命名されたり名前なしと命名された血管枝が多数存在した.そこで,新しい特徴量を追加し,更にAdaBoostに用いる識別器学習時の重み調整により,識別器の命名対象血管に対する命名性能を向上させた.提案手法を3次元CT像38症例に適用したところ,血管名命名の平均再現率と平均適合率はそれぞれ87.6%と72.5%であった. We have developed an automated anatomical labeling method for the abdominal arteries to support understanding of the structure of the arteries for doctors in abdominal surgeries. This method labels artery names by using classifiers constructed with the multi-class AdaBoost. However, miss-labelings of the classifiers were caused in many cases. In this paper, we present a method to improve artery name labeling performance by adjusting weights of the classifiers of the AdaBoost. We also introduce new future values for the classifiers. We applied the proposed method to 38 cases of 3D contrasted abdominal CT images. The average recall and precision rates of the proposed method were 87.6% and 72.5%, respectively.
著者
坂本 杏子 佐藤 智照 小竹 直子 〓 瑩 チュウ ロザリン 金 英周 小野 創 酒井 弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.184, pp.23-28, 2008-08-01
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では,成人日本語母語話者が新奇動詞を学習する際に,助詞を手がかりにした意味推論を行うかどうかを検討する実験を行った.その結果,日本語母語話者は助詞の違いに応じて使役事象から異なる局面を切り出して動詞と対応づけることが明らかにされた.さらに動詞の意味推論には,名詞句とガ格助詞を手がかりとした項構造の決定と,項構造に基づく事象の切り出しという二つの段階が関与していることが示唆された.
著者
掛川 茉祐 小宮山 諒 政倉 祐子 菊池 眞之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.480, pp.233-238, 2013-03-13

本研究では脳活動データと感性評価結果から,音楽のジャンル識別を行う.脳活動の計測にはNIRSを用いて行い,感性評価の指標としてSD法を用いて実験を行った.これら2つのデータから既知の曲判別やジャンルによる感性評価と脳活動の関連性を見出すことを行った.結果として,既知の判別であれば平均88%で判別が可能であり,2ジャンル間での識別では平均66%で可能であった.感性評価の回帰に関しては,一部の感性評価において回帰が可能であることが示唆された.
著者
蓑輪 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.546, pp.185-190, 2004-01-08
参考文献数
11

本稿では,GPSを用いた姿勢決定のための新しい構成方法を提案する.提案法では,多面体の頂点にGPS受信機を配置することで,姿勢変動の激しい航空機等の物体上においてもより多くのGPS衛星からの信号を的確に受信することが可能となり,姿勢決定を高精度に行うことができる.従来は,三角形の平面状の頂点に3つのGPS受信機を配置していたため,移動体が傾くと姿勢決定に十分な数のGPS信号を補足することが困難であった.提案法において主として利用可能な多面体としては,三角形の均一な面を有する正四面体,正8面体,そして正20面体がある.しかし,面数の増加とともに姿勢決定に要する信号処理も増加するため,計算量が問題である.そこで,本稿では多面体GPS受信の最適なデータ信号処理アルゴリズムに加えて,計算量を削減するための準最適なデータ信号処理アルゴリズムを提案する.最後に,多面体姿勢決定GPSの応用を議論する.
著者
増田 夏樹 黒岩 達雄 大矢 雅則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.55, pp.47-52, 1999-05-17
参考文献数
8

タンパク質の相同性解析において塩基やアミノ酸配列の整列化がまず最初に行われ, この操作はアライメントと呼ばれている. このアライメントを複数の配列に対して行うのがマルチプルアライメントであり, 配列の本数と塩基またはアミノ酸が増えることで指数関数的に計算量が増し, 非常に計算時間がかかってしまう. 本論文では, この問題を量子並列計算ができる量子コンピュータを用いて解くための量子アルゴリズムを考察する.
著者
塩野目 剛亮 加藤 伸子 若月 大輔 河野 純大 西岡 知之 村上 裕史 皆川 洋喜 内藤 一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.164, pp.69-72, 2010-07

近年,エリア限定ワンセグ放送(エリアワンセグ)という特定の範囲に存在するユーザに対する新しい情報提供の手段が試行され始めており,複数の情報を組み合わせた情報保障への適用が期待できる.本稿では,ワンセグ放送の簡便で柔軟な情報提示の手段としての可能性を検討している.聴覚に障害がある大学生を対象としたアンケート調査の結果から,ワンセグ放送を用いた情報保障提供の有効性が明らかとなった.また,実際のシステム構築や運用上の課題を示している.Area One segment-Broadcasting(Area One-Seg) has been used for information service for the users who exist particular area. In this report, we constructed the remote sign language interpret / real-time caption providing system via Area One-Seg, and conducted hearing impaired students survey at actual lecture scene. The results show that about 80% of students presented positive response, and effectiveness of captioning history. Moreover, expected feature of One-Seg receiver to provide information assurance, and acquiring a broadcasting license are also discussed.
著者
川畑 宣之 徳永 憲洋 古川 徹生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.413, pp.141-146, 2008-01-15
参考文献数
10
被引用文献数
2

本発表では自己進化型モジュラーネットワーク(SElf-Evolving Modular network: SEEM)を提案する.SEEMは進化型のモジュラーネットワークであり,入力データに対応できる能力を持ったモジュールが存在しない場合にモジュールを増加させる機能,およびモジュール間の関連性を入力データから動的に獲得する機能をもつ.さらにSEEMは外部から時々刻々と入力される情報の分節化および分節化された情報の関連づけをオンラインで行う特徴も持つ.これによりSEEMは,自律行動型ロボットが環境との相互作用により機能を進化させるような課題,大規模情報の分類問題などに応用できると期待される.本稿はSEEMのアーキテクチャ,アルゴリズム及び3次元オブジェクト画像のオンラインクラスタリングへの応用について報告する.
著者
呉 凌非
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.480, pp.31-38, 2000-11-27
参考文献数
16

本発表では、実験を通して、人間が言葉を理解する際に、与えられた文を完全に理解するのではなく、関心度などのさまざまな要素に左右され、一定のパーセンテージ、つまり確率的に理解しているのではないかと考える。よって, 自然言語処理の分野において、言葉を捉える際に決定論的のみならず, 時には量子論のような非決定論的な考え方も重要ではないかと主張したい.