著者
佐藤 朝美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.33-42, 2008
参考文献数
20
被引用文献数
5

本研究では,幼児期の5歳半頃から活発にみられるようになる物語行為を支援するソフトウェアを開発する.本ソフトウェアにより幼児の物語行為を活性化し,発話の種類を増加させ,前後文の統合を支援することを目的とする.支援形態は,幼児の物語産出の発達過程の先行研究や物語支援システムの先行研究の知見から検討し,機能を実装した.本ソフトウェアの効果の検討を行う為,5歳児を対象に紙を使った作話との比較実験を行った.その結果,ソフトウェアの機能を使用しながら作話することにより,発話が活性化され,発話の種類も増えることがわかった.特に,登場人物の表情を付加する機能から心情に触れる発話が増加した.また,話の前後文が統合され,聞き手に理解しやすい内容になるという結果が得られた.
著者
堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.131-142, 2016-12-24 (Released:2017-03-23)
参考文献数
68
被引用文献数
5

我が国の初等中等教育における情報教育について,その定義,教育内容や教育課程における制度的な位置付け,関連する調査研究等の結果を示し,日本教育工学会における初等中等教育を対象とした情報教育の研究についてレビューした.これらのレビューから浮かび上がる教育工学に対する要請について,(1) 政策立案への継続的な関与,(2) 国が実施できない精緻な調査,(3) 情報教育の実践を評価する指標の開発,(4) 実践の長期化を支えるシステムの開発,(5) 実践的な研究を査読論文にするための知見共有の仕組みの5点に整理した.
著者
安斎 勇樹 東南 裕美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.155-174, 2020-10-10 (Released:2020-10-15)
参考文献数
26

本研究の目的は,ワークショップ熟達者のファシリテーションの実践知を構造的に明らかにすることである.本研究では,3名の熟達者を対象とした観察調査とインタビュー調査を行った.分析の結果,熟達者はファシリテーションの場面において知覚した情報を,個人の心理や集団の性質・関係性に関する概念的知識に照らし合わせ,参加者の観察・プログラムの調整・情報伝達の調整・関係性の調整・リアクションの調整に関する手続的知識を用いて具体的な行為を決定していることが明らかになった.また,これらの背後には,ワークショップが権威や規範から解放された民主的な手法であることに価値を置くメタ認知的知識が共通して存在していること,またそれらのメタ認知的知識同士には葛藤関係があり,それによる熟達者固有のファシリテーションの困難さが存在していることも示唆された.分析結果から,実践者育成に関するいくつかの示唆が得られた.
著者
小野田 亮介 河北 拓也 秋田 喜代美
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.403-413, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究の目的は,付箋により意見を分類しながら共有すること(付箋分類介入)が議論プロセスに与える影響をシャイネスとの関連に着目して明らかにすることである.大学生32名を対象とし,シャイネス低群と高群のペアを,意見を書きながら共有する対照条件と,付箋を用いて意見を分類しながら共有する実験条件に半数ずつ割り当てた.条件間で発話傾向を比較した結果,対照条件に比べ,実験条件において「主張」や議論の方向性を決める「方針」の発話数が増加し,「つぶやき」の発話数が減少する傾向が認められた.議論プロセスの分析から,実験条件では,付箋を介して思考プロセスを共有していたのに対し,それができない対照条件では,つぶやきによって思考プロセスを共有する傾向にある可能性が示唆された.また,付箋分類介入はシャイネスの高さを補償し,既出意見と異なる新たな意見を提示する「新規アイデア」の発話を促していたことが示された.
著者
松河 秀哉 大山 牧子 根岸 千悠 新居 佳子 岩﨑 千晶 堀田 博史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.233-244, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3

本研究では,様々な制約から活用が難しかった授業評価アンケートの自由記述の分析に関し,ある大学で実施された9年分,約6万件のデータに対して,潜在ディリクレ分配モデル(LDA)に基づいたトピックモデルによる分析を行い,170のトピックを抽出した.抽出したトピックに対しては,一定の手順に従ってラベルを付与し,ラベルの妥当性を検証した.その結果,ラベルには十分な妥当性が確認され,トピックモデルによる分類が全体的には人間の感覚に適合したものであることが示された.本研究ではさらに,自由記述を科目群の情報と紐付けて分析を行い,各科目群に存在するトピックの割合や,全体の傾向と比較した各科目群のトピック分布の特徴について,クロス表による情報の可視化を行った.こうした分析手法は今後Institutional Research (IR),Learning Analytics (LA)等での応用が期待される.
著者
佐藤 和紀 小田 晴菜 三井 一希 久川 慶貴 森下 孟 谷塚 光典
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45061, (Released:2021-11-02)
参考文献数
6

小学校高学年児童がクラウドサービスの相互参照を用いて,他者の文章を参照して意見文を作成する実践を行った.意見文の評価と意識調査の結果,他者の意見文を参照したグループ児童の意見文の評価は有意に高く,他者の意見文を参照していないグループの児童よりも読み手にどう伝わるか気をつけて書く,自分の考え以外の視点でも書く,主語と述語のつながりを注意して書く,形式的なミスを少なくする,ことを意識していた.
著者
山本 裕子 七田 麻美子 横矢 祥代 中西 良文
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45047, (Released:2021-09-07)
参考文献数
6

本稿は三重大学の学部卒業生及びその就職先を対象に質問紙調査を実施し,当該大学の教育が社会的ニーズに合致しているかを検討することを目的とした.卒業生・就職先データの比較分析の結果,卒業生と就職先の評価にずれがあることや,就職先からの評価が卒業生の自己評価より高くてもジェネリックスキルや外国語の力について身についたとする評価が比較的低かったことから,この点をさらに改善する必要性等が見出せた.今後の課題として,カリキュラム評価や教学改革についてより精度の高い評価を行うために経年比較による分析の必要性が明らかとなった.
著者
木村 充 舘野 泰一 松井 彩子 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.105-115, 2019

<p>本研究は,大学の経験学習型リーダーシップ教育における学生のリーダーシップ行動尺度を開発し,尺度の信頼性・妥当性を検討することを目的とする.経験学習型リーダーシップ教育とは,経験学習を理論的基盤として行われるリーダーシップ教育のことを指す.先行研究や予備調査に基づいて54の項目案を作成し,リーダーシップ教育を国内で大規模に実施しているA 大学の学生156名(Time1)および110名(Time2)を対象に調査を実施した.因子分析の結果,リーダーシップ行動は,「率先垂範」「挑戦」「目標共有」「目標管理」「成果志向支援」「対人志向支援」の6因子によって構成された.さらに,項目を精選し,30項目からなる尺度を作成した.開発した尺度の信頼性及び妥当性の検討を行った結果,概ね良好な値が得られた.</p>
著者
田中 光 上山 瑠津子 山根 嵩史 中條 和光
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.49-58, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
参考文献数
20

本研究では,小学校5,6年児童を対象とする意見文産出方略使用の程度を測定する尺度を開発した.研究1では,5,6年児童426名に対して意見文産出時の方略使用に関する質問紙調査を行った.探索的因子分析を行い,読み手意識,反対意見の考慮,文章の構成,自分の意見の表明,校正・校閲の5因子からなる意見文産出方略が見出された.尺度の妥当性を検討するため,意見文産出の自己効力感,意見文を書く主観的頻度の高群と低群間で方略使用を比較した.その結果,全因子で高群の評定値が低群の児童の評定値よりも高く,尺度の内容的妥当性が支持された.研究2では意見文に対する評価と方略使用との関連を調べた.その結果,評価が高い意見文の書き手は低い書き手に比べて読み手意識,文章の構成,自分の意見の表明の3因子の評定値が高いことが見いだされた.今後の課題として,尺度の使用によって意見文の質が高まるかどうかを検証することが必要である.
著者
風間 眞理 加藤 浩治 板山 稔 川内 健三 藤谷 哲
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43046, (Released:2020-01-16)
参考文献数
35

本研究の目的は,スマートフォンの使い方を大学生が自ら評価できるスマートフォン行動嗜癖自己評価尺度を開発することである.首都圏の大学に在籍し,スマートフォンを使用している大学生を対象に,研究者で作成したスマートフォン行動嗜癖自己評価尺度の調査を実施した.探索的因子分析と共分散構造分析,使用時間等との相関を求めた.その結果,有効回答数は587.男子学生243名,女子学生344名であった.探索的因子分析後,5因子20項目となり,各因子名を「自己支配性」,「生活への侵食性」,「離脱症状」,「再燃性」,「非制御な通話」とした.共分散構造分析では,GFI=0.931,AGFI=0.909,CFI=0.932,RMSEA=0.052であった.また,スマートフォン行動嗜癖自己評価尺度総得点と利用時間で有意な相関がみられた.以上より,信頼性と妥当性が示された.
著者
望月 俊男 佐々木 博史 脇本 健弘 平山 涼也 久保田 善彦 鈴木 栄幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.319-331, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

ロールプレイはさまざまな分野の学習において,学習者の視点の拡大や転換を促進する強力な学習方法として知られている.本稿では,とくに複雑で非構造的な(ill-structured)問題状況下におけるコミュニケーションや意思決定についてロールプレイする上で,対面協調学習の中で人形劇を使うことで,これまでにない多様な視点からの洞察を促す可能性について議論する.複数の人形を操作して人形劇をすることで,演者である参加者と,直接演じている人形との間の心理的距離を作り出すとともに,多様な役割で演技をしやすくすることができる.本稿ではこれを理論的に示した後,人形劇のロールプレイによって演者がより現実的な状況を再現するように様々な役割を演じることを事例研究から示した.そして,そうした人形劇をロールプレイの媒介として利用する上で,学習支援テクノロジの可能性について議論した.
著者
古田 貴久 楜澤 秀樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.57-60, 2008

テレビアニメにおける力学的に間違ったシーンを題材に,力学的な問題の解決能力と,特に領域を限らず批判的に物事を見る態度のどちらが,シーンの力学的な正誤を指摘する上で役に立つのかを検討した.実験の結果,批判的思考態度が高いだけでは,正誤をあまり正しく指摘できないことが示された.与えられた情報を批判的に理解する上では,情報を鵜呑みにしない一般的な批判的思考態度よりも,特定の領域に関する知識や問題解決能力の果たす役割が大きいようである.
著者
舘野 泰一 大川内 隆朗 平野 智紀 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.241-254, 2013

本研究では,正課課程外におけるアカデミック・ライティングの指導を想定し,チューターによる学生の「執筆プロセスの理解」を支援するために,レポートの執筆プロセスを可視化することのできるシステム「レポレコ」を開発した.「執筆プロセスの理解」とは,チューターが,学生の文章生成過程を把握することである.開発したシステムの特徴は執筆プロセスの記録・可視化である.学生がレポートを執筆する過程を一字一句自動で記録し,可視化することができる.このシステムを使うことで,チューターの「執筆プロセスの理解」を促すことができる.実験の結果,システムを使用することで,チューターの「執筆プロセスの理解」につながることが示唆された.
著者
舘野 泰一 中原 淳 木村 充 保田 江美 吉村 春美 田中 聡 浜屋 祐子 高崎 美佐 溝上 慎一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-11, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
27

本研究では,大学での学び・生活が就職後のプロアクティブ行動にどのような影響を与えているかを検証するために質問紙調査を行った.本研究の特徴は2点ある.1点目は縦断調査という点である.近年,大学教育において「学校から仕事への移行」に関する調査研究は増えてきているが,その多くは振り返り調査という限界があった.2点目は,就職後のプロアクティブ行動に着目した点である.プロアクティブ行動とは,個人の主体的な行動のことであり,近年大学教育で議論されてきた「主体的な学び」の成果に関連が深い.しかし,これまでその影響について検証されてこなかった. 共分散構造分析を行った結果,1.授業外のコミュニティを持っている学生,2.大学生活が充実している学生ほど,就職後にプロアクティブ行動を行っていることが明らかになった.
著者
小山 義徳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.351-358, 2009
被引用文献数
1 1

英文速読指導が大学生の英語リスニング能力の伸長に効果があるか検討を行った.まず,予備実験を行い,英語リスニング得点高群と低群の英文読解時の読み戻り数を比較した.その結果,高群は低群と比較して読み戻り数が少ないことが明らかになった.本実験では速読訓練を行うことで読み戻り数が減少し,入力情報を継時的に処理するスキルが向上することで英語リスニング能力の伸長につながるのか,ディクテーション訓練との比較検討を行った.8週間の間,速読群(24名)には週1回10分間の英文速読訓練を行い,ディクテーション群(18名)には8週間の間,週1回10分間のディクテーション訓練を行った.その結果,ディクテーション群のリスニング能力は伸びなかったが,速読群のリスニング成績が向上し,英文速読訓練を行うことで読む速さが向上するだけでなく,副次的に英語リスニング能力も伸長する可能性があることが明らかになった.
著者
野上 俊一 生田 淳一 丸野 俊一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.173-176, 2005
参考文献数
3
被引用文献数
1

学生が定期試験のためにどのような学習計画を立てるのか, その学習計画が失敗する要因をどのように認識しているのかを質問紙を用いて検討した(n=254).その結果, 学習計画の立案率は約70%であった.そして, 立案した被験者の約70%が実際のテスト勉強では計画通りに進まないと認識していた.計画通りに進まない原因として「無理な学習計画の立案」「誘惑や欲求に負ける」などが被験者によって挙げられた.また, 学習過程に対するメタ認知的制御で学習計画の内容を比較すると, メタ認知的制御の高い被験者は目標設定が具体的であるために無理のない学習計画を立てており, 計画通りにテスト勉強を行えることが示唆された.
著者
菅原 真悟 鷲林 潤壱 新井 紀子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.135-146, 2012

児童がサイバー犯罪の加害者となるケースの増加にともない,「情報倫理」や「法の理解や遵守」を習得させるための情報モラル教育の必要性が増している.しかし,著作権のような抽象度が高く日常生活とも関わりが少ない概念を,児童が理解することは難しい.本研究では,このような抽象的な概念を教えるための,効果的・効率的な教授法について分析を行った.情報モラル教育の教授法を(1)教材中心の「教材」型授業,(2)体験中心の「体験」型授業,(3)その両方を行う「両方」型授業の3つに定義・分類し,埼玉県K小学校5・6年生を対象に,3つの教授法による学習効果を比較する実践授業を行った.その結果「両方」型授業は,児童が体験したことを,教材を用いて言語化して理解できるため,抽象的概念を理解させるのに効果的であり,かつ他の教授法と比べて情報化社会に参画しようとする意欲を育む効果があることが示された.
著者
松河 秀哉 北村 智 永盛 祐介 久松 慎一 山内 祐平 中野 真依 金森 保智 宮下 直子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.307-316, 2007
被引用文献数
4

本研究では,高校生から得られたデータに基づいて,データマイニングを活用した学習方略フィードバックシステム「学習ナビ」を開発した.システムの試験運用をふまえ,(a)モデルの妥当性(b)学習ナビで利用したメタファの有効性(c)ユーザからの主観的評価の観点から評価を行い,以下の結果を得た.(a)モデルが仮定する学力差が評価モニタにもみられ,モデルの妥当性が示唆された.(b)学習方略の達成度を表す信号機メタファについて,解説画面の閲覧時間の差から有効性が確認された.学習方略の順序性を表す一本道メタファは,評価モニタの約半数の理解を得た.(c)一部のユーザからアニメーションの長さを指摘された以外は,システム全体として好意的な評価を得た.
著者
齊藤 智樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.281-296, 2021-03-10 (Released:2021-03-15)
参考文献数
78
被引用文献数
3

本研究は,STEM/STEAM 統合の本質である構成概念のシステムをもとに,統合的なSTEM/STEAM 教育の各類型についてレビューし,それぞれの類型において成される研究と,その課題を検討した.歴史的に示された類型に加えて,統合がどこで起こるのかに焦点を当てた研究を基に,ディシプリンを中心に考えるDisciplined Approach と,学習者のあらわれ(Appearances)を中心に考えるCreative Approach を提示した.
著者
岡田 涼 石井 僚
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.17-20, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では,小学校の算数と理科の授業場面における教師の指導スタイルの特徴を自律性支援の枠組みから分析した.7つの授業を観察し,そこでの教師の発話データを自律性支援の概念的定義にもとづくカテゴリに分類した.複数の教師に共通していたものとして,【視点の代弁】と【挑戦の喚起】がみられた.一方で,【聞き合いの促し】【意味の説明】【選択の受容】は少なかった.また,【興味の喚起】【がんばりや否定的な気持ちの受容】については,一部の教師に多くみられた.本研究の結果は,教師の指導スタイルについて,教師の間で共通する部分と個々の教師で異なる部分を明らかにするものであり,同時に指導の改善に資する知見を提供するものである.