著者
小野 秀樹 松本 欣三 太田 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

フェニルエチルアミン(PEA)は生体内に存在する微量アミンであり, 精神機能と関わりがあると考えられている. その化学構造や薬理作用は覚醒剤であるメタンフェタミン(MAP)のものと類似しているが, その作用機序は不明である. 本研究においては, PEAのラット脊髄の単シナプス反射増強の機序をMAPと比較しながら研究した. 麻酔ラットの腰部脊髄を露出し腰髄第5髄節の単シナプス反射を記録した. PEA(1mg/kg, iv, )は単シナプス反射を増強した. この増強はα_1-アドレナリン受容体を選択的に遮断するプラゾシンにより抑制された. さらにアミン類を枯渇するレセルピン処理, ノルアドレナリンの合成を阻害するジスルフィラム処理, 下行性ノルアドレナリン神経を破壊する6-ヒドロキシドパミン処理, およびすべての下行性神経を破壊する慢性的な脊髄切断処理もPEAの単シナプス反射増強効果を抑制した. MAP(0.3mg/kg, iv, )もPEAと同様に単シナプス反射を増強した. この増強効果も, α_1-遮断薬, ノルアドレナリン枯渇薬, ノルアドレナリン神経の破壊処理によって抑制され, MAPがPEAと同様の機序で単シナプス反射を増強することが示された. PEAとMAPの作用はセロトニン拮抗薬およびドパミン拮抗薬によっては影響されなかった. またPEAの効果はB型MAO阻害薬のデプレニルによって増強, 延長され, PEAが代謝されないで作用していることが示された. さらにPEAとMAPの単シナプス反射増強作用は血圧変化に起因するものではないことも示された. 以上, PEAおよびMAPは, 脳幹から脊髄へ下行するノルアドレナリン神経の終末からノルアドレナリンを放出させることにより, 単シナプス反射を増強, すなわち, 運動系を亢進させることが示された. さらにPEAが脊髄に比較的高濃度存在することから, PEAが脊髄運動系の調節になんらかの役割を持っている可能性が示された.
著者
中園 明信
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1984

本研究では、水産上重要魚種であるにもかかわらず、その雌雄同体性についてまったく研究の行われていない、マダイ,チダイ,キダイの3種について、性転換が行われるか否かを検討した。【I】マダイマダイは1才前後は卵巣様の生殖腺を持ち、明瞭な精巣組織は認められない。しかしながら、2才になるころに1部の個体で精巣組織が卵巣の腹側で顕著になり両性生殖腺となる。両性生殖腺が見られるのは主として2才魚で3才以上の個体ではほとんど見られなかった。しかし、3才以上の個体でも精巣には元の卵巣腔に相当する空所が認められ、精巣は両性生殖腺をへて分化してくると判断された。以上の結果から、マダイは幼時雌雄同体性で、機能的雌雄同体ではないと判断した。【II】チダイチダイの生殖腺の転換過程もマダイと良く類似していた。すなわち、卵巣から精巣への転換は、未成魚においてのみ観察され、満1才以上の成魚の生殖腺には両性のものは出現せず、精巣には卵巣腔に相当する空所のみが見られた。以上の結果より、チダイも幼時雌雄同体で、機能的な雌雄同体ではないと判断した。【III】キダイキダイは機能的な雌雄同体で、雌から雄への性転換を行うことが知られている。しかし、性成熟に達する満3才で、約20%の雌が存在することが知られている。そこで、本研究では性成熟時に出現する精巣の由来について調べた。その結果、これらの精巣は未熟な卵巣が精巣へと転換することによって生じることが分かった。すなわち、機能的な雌雄同体とされるキダイにおいても幼時雌雄同体性が見られる。
著者
氏家 等 村上 孝一 出利葉 浩司 小林 考二 矢島 睿
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

積雪地帯における伝統的有形民俗資料の比較研究調査は, カンジキと除雪具を対象に青森県, 岩手県, 福島県, 秋田県, 山形県, 富山県, 石川県, 福井県, 長野県, 北海道を中心に調査を行った.カンジキは, いわゆる竹を曲げた単輪型が本州における共通した形態であった. 中でも新潟県山間部, 北陸地方を中心に分布するスカリとその類似型は最も大型のカンジキであり, スカリの上にさらに小型のカンジキをはくといった重複型は, 豪雪地帯における最も大きな特色であった.これに対し, 北海道では前輪と後輪で構成するいわゆる複輪型のカンジキが主流であった. また, 新潟県山間部から移住した人々の場合も, 単輪型のカンジキよりも複輪型カンジキを使用している. このことは, 両地域における雪質の相異が最も大きな要因と考えられる.北海道アイヌが使用したヒョウタン型カンジキは, 岩手県北部, 青森県南部にも分布していた. しかし, この関連性については, 今回の調査でも解明できなかった. また, 八戸市是川遺跡出土のカンジキは, カンジキであるかどうかが問題であり, これらの問題を解明するてがかりにはならなかった. 本州における除雪具は, 一枚板で製作する雪ベラ, コスキ(木鋤)が主流であった. 柄が2m前後ある長いものは, 岩手県から北陸地方の山間部にみられ, 屋根の雪おろしに使用するものであった. また, 日本海沿岸部, 山間部の雪ベラは, ブナ材を使用することも大きな特色であった.これに対し, 北海道では, 箱型状の雪ベラが主流であった. また, 1枚板のコスキを使用していた人々も移住後は箱状の除雪具を使用している. これらの要因もやはり雪質の相異によるものと考えられる.
著者
進藤 宗洋 西間 三馨 田中 守 田中 宏暁
出版者
福岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

運動誘発性喘息(EIB)は、喘息児の身体活動を制限する大きな障害である。このため、喘息児のEIBを軽減してやることは、発育発達途上にある児の身体的・社会的な成熟を促すと思われる。この一連の研究では、喘息児を対象にし、いくつかの有酸素性運動の強度に対する生理的反応に基づいてEIBの重症度に関係する、危険因子と運動条件とを明確にし運動療法の至適運動強度を決定した。そして、持久的トレーニングがEIBに及ぼす影響を検討した。初年度には、EIBに及ぼす運動強度の影響について観察し、喘息児の運動療法における至適運動強度の検討を行った。その結果EIBの程度は運動強度に依存して増加することが確認され、乳酸闘値の125%に相当する強度は、有酸素性作業能の向上が期待でき、尚かつ、重症なEIBを起こすことなく安全に行える運動強度として上限であると考えられた。そこで次年度には、自転車エルゴメーターを用い、125%LT強度で1回30分、週6回、4週間のトレーニングを施行したところ、有酸素性作業能の向上、トレーニング前と同一強度でのEIBの改善が認められ、EIBの改善は有酸素性作業能の向上によるものであることが示唆された。また、トレーニング期間を延長し、2ケ月間行ったところ、同一強度だけでなく、相対強度においてもEIBが改善され、何らかの病理的変化が起こったと思われた。最終年度には、3週間の脱トレーニングが、有酸素性作業能とEIBや気道過敏性などの6週間のトレーニング効果に及ぼす影響を検討した。その結果、脱トレーニングによるトレーニング効果の消失は、EIBや気道過敏性における力が有酸素性作業能におけるより遅く、トレーニングは、EIBに及ぼす何等かの病理的改善にも関与することが示唆された。以上の結果から、持久的トレーニングは、喘息児の体力を向上させるだけでなく、EIB、気道過敏性を改善させ、臨床症状の改善にも十分期待できる治療法の一つであると考えられた。
著者
熊谷 エツ子
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

われわれは、これまでに経験年数の長い診療放射線技師の中に放射線の影響と考えられる染色体異常やEBウイルス(EBV)に対する液性免疫応答異常の疑われる人が存在することを明らかにしてきた。本研究では、熊本県が成人T細胞白血病(ATL)の好発地域であることに着目して、診療放射線技師におけるhuman T cell lymphotropic virus typeー1(HTLVー1)と放射線被曝との関係を、ATL細胞、HTLVー1抗体、および染色体異常を指標として調べた。また、転座染色体と癌遺伝子存在部位との関連を調べるとともに、EBVと同じヘルペス科ウイルスであるサイトメガロウイルス(CMV)抗体の動態から低線量放射線の長期複曝の影響を追求した。その結果、1.HTLVー1抗体陽性例は診療放射線技師(経験年数が1年以上)99名中3例(3.0%)、対照群96例中4例(4.2%)みられた。その中の技師1例の末梢血にATL細胞が50%観察された。この技師の白血球数は8500/mm^3、Ca値は9.2mg/dlであり、当大学病院で慢性型ATLと診断された。しかし、残りのHTLVー1抗体陽性例にはATL細胞は見いだせなかった。2.構造異常を有する染色体が放射線技師(53名)には2.5%、対照群(36名)には1.6%の頻度で観察された。構造異常では転座染色体が最も多く検出され、その頻度は技師群が対照群に比べて有意に高かった。相互転座染色体の中ではt(7;14)の頻度が最も高かったが、技師群と対照群との間には有意差はみられなかった。7番染色体と14番染色体間の相互転座例の大多数が7q32ー36、14q11ー12の部位で部分交換をしていた。ATLでは14q11ー12に切断点を有する異常が報告されているが、今回対象としたHTLVー1抗体陽性例にはクロ-ンとしての異常はみられなかった。また、ski、abl、myb、mos、myc、Nーmycなどの癌遺伝子存在部位での転座例も若干みられたが、クロ-ンとしての異常は観察されなかった。3.CMV抗体量と低線量放射線被曝量との間には特定の関連はみられなかったが、CMV抗体異常陽性(ELISA OD値≧0.4)の放射線技師ではCMV抗体陰性の技師に比べて、EBVーVCA/IgGおよびEA/IgG抗体異常陽性例が高率にみられた。
著者
坂口 英
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究ではまずはじめに,後腸発酵動物(モルモット,デグー,オオミミマウス,マーラ,ヌートリア,ハムスター,ハタネズミ,ラット,ウサギ)のADF消化率と消化管内容物滞留時間との関係を検討した.その結果,繊維の消化能力は微生物発酵槽である大腸の内容物貯留能に支配されるが,それぞれの動物の消化管によって異なる貯留機能が備わっており,繊維消化能はその機能に応じて異なることが示された.また,ウサギの消化管機能は飼料の物理性,特に粒子サイズに大きく影響され,飼料繊維の消化率の変動は他の後腸発酵動物とは異なった要因によってもたらされることが明らかになった.次に,異なる大腸内容物貯留機能と繊維消化能力を備えた動物種間で,消化管内微生物活性にどのような違いがあるかを検討するために,同一飼料を与えたラット,モルモット,オオミミマウスの大腸内容物中の繊維分解菌数,有機酸組成,大腸内微生物の繊維分解活性等を調べた.繊維分解菌数は繊維消化能力の高いモルモットが必ずしも多くなく,短鎖脂肪酸組成,短鎖脂肪酸総量,セルロース分解活性にも動物種間差が認められ,これら3動物種の盲腸内セルロース分解菌の種類と性質に差異があることが示された.しかしながら繊維の消化能力とこれらの微生物に関わる測定結果との一定の関係はつかめなかった.以上のように本研究で調べた齧歯類間の繊維消化能力の違いは,動物の持つ盲腸内セルロース分解菌数と活性からだけでは説明することはできないことが示唆された.繊維分解の動物種間差は,セルロース分解菌群が存在する発酵槽(盲腸)へ流入する内容物(基質)の質的な違い,セルロース分解菌を効率よく保持できる消化管構造と機能の有無などによってもたらされるものと考えられる.
著者
吉葉 繁雄
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.山蛭生息密度の定点調査の継続により,活動期間が寒季側に延長し,12月1月にも採集され,それらが2月に産卵したのは寒冷に対する馴化と見られ,大繁殖終息の兆しはなく,生見域は拡大しつつある。2.大繁殖の要因として(1)シカを主とする野獣の人里出現(源樓地からの伝搬と供血),(2)山蛭の天敵は不在に等しいこと,(3)1984年頃の天候が山蛭の定着繁殖に適したこと;(1)の原因として(a)山林事情(薪炭の需要減でマテバシイ葉繁茂→日射遮断→地表食草不生育),(b)保護獣指定による頭数過密,(c)食性変化,(d)野犬の追撃から逃亡,等が判明。3.水樓昆虫コオイムシの山蛭捕食能力を確認,天敵は4種となったが,双方の生息密度比,遭遇頻度から,駆除には実質上は役立たない。4.ヒトの吸血被害時の最著症状は吸血痕からの出血時間の延長と凝固性喪失による1時間に及ぶ出血で,その後創囲皮内出血,〓痒,人により硬結が生ずるが,1%タンニン酸綿清拭,抗ヒスタミン軟膏塗布,カット絆貼付が有効な簡易必要処置となる。5.山蛭に吸血された人獣の血中には抗山蛭抗体ができ,吸血回数と共に増量,出血を緩和,吸血した山蛭に致死作用を発揮する。外国産別亜種による抗体も共通で,17年前の被害でも抗体価は維持されていた。6.山蛭生息域のシカの第3・4趾間には有穴性炎性腫瘤が形成されてその穴腔内には山蛭が潜居するほか,四肢遠位部全体で数十匹の吸血とは無関数に付着し,シカの恰も山蛭の固有宿主にような関係にある。7.山蛭生息密度は抗体による免疫学的間引きで制御されてもいる。8.鳥類は山蛭に好まれ,吸血による抗体はでき難いので,地上歩行種はヤマビルにとって安全な供血および伝搬宿主となりうる。9.山蛭の野外駆除には煙草葉熱湯浸漬液や硫酸ニコチン液,皮膚面からの除去には食塩末や各種の灰が有効で,全て殺蛭作用を示した。
著者
有賀 豊彦 石井 謙二 桜井 英敏 熊谷 日登美 関 泰一郎
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ニンニクを摂取すると,血液凝固系および線溶系には変動はみられないが,血小板機能が特異的に抑制される。私どもは,このような作用をもたらすニンニク成分をその精油中より分離同定し,メチルアリルトリスルフィド(MATS)であることを確認した。MATSは,in vitroおよびin vivoにおいて抗血小板作用を示すが,その作用機構については不明であった。このたびの科研費補助金による3年間の研究プロジェクトは,主としてMATSの血小板内作用点を特定することを目的に計画され,以下のような成績を得ることができた。1.MATSは消化管より吸収され,血中に出現し,尿中に排泄される。血中出現時間は90〜180分で,その後の臓器分布は,肝と腎に多く認められた。血中では,血球成分に移行し,血小板内の存在も確認された。2.血小板に対するMATSの作用は,アラキドン酸代謝系について確認したところ,専らアラキドン酸からプロスタグランジンが生成されるところが阻害されることが確認された。この代謝系に関る諸酵素について,それぞれ活性測定系を確立して検討したところ,cyclooxygenaseとlipoxygenaseの両酵素活性が阻害されることが明かとなった。MATSがこれらの酵素分子とどのようにinteractするかは不明であるが,恐らく酸化反応にMATSの硫黄原子が何らかの影響を及ぼし反応を阻害する結果になっているものと推察している。3.以上の成績に加えて,無臭ニンニクと呼称されている数種のネギ属植物の分類を,それらの成分分析を行うことで試行した。興味ある結果が得られているので,今後その成績をまとめ報告したい。
著者
綾木 歳一
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

放射線DNA損傷の修復と突然変異生成の関係を明らかにするため,キイロショウジョウバエの複製後修復欠損株(meiー41^<D5>)に白眼座の2.9kbDNA片重複による象牙色眼色変異(W^i)の4重複変異株〔(W^i)_4〕を導入し,4重複したW^iのうちのどれか1つでの2.9kbDNA片の欠失によるW^i眼色から野生型赤色眼色への復帰突然変異を指標に,核分裂中性子およびγ線の遺伝子誘発作用をDNA修復能との関係で比較検討した。3令初期雄幼虫に広島大学原医研設置の ^<252>Cfおよび ^<60>Co線源からの放射線0〜1Gyを照射し,幼虫の眼成虫原基細胞におけるW^i遺伝子での2.9kbDNA片の欠失細胞のクロ-ンを成虫W^i眼中の赤色スポットとして検出した。使用したハエ株のDNA修復能,放射線の違いによらず得られた線量ー効果関係は直線的であった。単位線量(CGg)当り,個体当りのγ線誘発率は修復能正常株で5.7×10^<ー2>,欠損株で2.3×10^<ー2>, ^<252>Cf放射線中の中性子の混在比(67%)で補正した核分裂中性子の誘発率は同様に修復正常株6.1×10^<ー2>,欠損株3.1×10^<ー2>となり,両放射線で修復欠損株での誘発率は正常株のそれの約半分に低下した。検出した型の突然変異生成にはmeiー41に代表される複製後修復後が正常である事が重要である。またDNA修復正常株,複製後修復欠損meiー41^<D5>株共に中性子のγ線に対する相対的生物効果比(RBE値)はほゞ1と変らない事から,meiー41修復系依存性で2.9kbDNA欠失に結果するDNA損傷の量はLETに依存しない事を示している。高LET放射線は二重鎖切断を高密度かつ高頻度に誘発する事,二重鎖切断の修復がら染色体組換えが生ずる事はイ-ストで報告されている。今回検出した突然変異は二重鎖切断以外の損傷修復によると考えられる。今後さらに実験をくり返す事により今回の結果を確認すると共に,除去修復欠損株を含め種々のDNA修復欠損株を用いて研究を進めたい。
著者
渡辺 俊行 龍 有二 林 徹夫
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、パッシブ住宅の室内熱環境を予測評価するための設計支援システムの開発を目的としている。パッシブ住宅とは、日射・風・気温・地温などの自然エネルギ-を利用して、建築の構造体や空間が持っている熱的環境調整機能をコントロ-ルすることにより、夏涼しくて冬暖かい快適な室内環境の形成を図るものである。最終的に得られた成果は以下の通りである。1.パッシブ住宅の熱環境計画基本フロ-を示し、住宅用熱負荷概算プログラム,単室定常熱環境予測プログラム,多数室非定常熱環境予測プログラムを作成した。2.単室定常熱環境予測モデルにおいては、新たに室内平均放射温度と室内相対湿度の計算を組み込み、体感温度SET^*による評価を可能にした。このモデルは設計途中で熱環境を予測する際に有効であり、どの程度の通風を期待したらよいかなどを決定することができる。3.多数室非定常熱環境予測モデルにおいては、居住者の在室スケジュ-ルと体感指標PMVを設定した予測シミュレ-ションが可能である。ブラインドを含む窓面の伝熱モデルを追加し、いわゆるニアサイクル型のパッシブ住宅も取り扱えるよう改良した。夏季の日射遮蔽,通風,夜間換気,地中冷熱、冬季の断熱,気密,集熱,蓄熱を考えて基準住宅モデルの仕様を変更し、PMV±0.5以内を目標値とした室温および負荷変動のシミュレ-ション結果を基に、各パッシブ要素の個別効果と複合効果、補助冷暖房の必要期間と所要エネルギ-を明らかにした。4.徳山市および福岡市の各実験住宅において、夏季および冬季の室内熱環境を実測調査し、多数室非定常熱環境予測モデルによる計算値と比較検証した。その結果、計算値は測定値とよく一致し、本予測評価システムの有効性が確認された。
著者
泉 幽香 森田 三郎 中田 睦子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

今年度は、昨年度に引き続いて長崎県五島列島の福江島に、八月十三〜一五日の盆の現行の行事の一環として各地区の青年団或は近年変貌の著しい保存会による"念仏踊り"を、"チャンココ"を執行する福江市内一〇地区のみでなく、一昨年訪れた富江町の"オネオンデ"の寺回り(狩立)と墓回り(山下)、玉の浦町の"カケ"の寺での練習後の直会と南北に別れての町回りに先立っての寺での踊り始め、三井楽町嵯峨島の観光で名高い千畳敷での"オーモンデ"等の諸行事のうち今迄臨場してビデオカメラに収録出来なかったものを対象とした。その際、各地区で異なる装束や踊りなどの視覚的なものからパーカッシブな鉦や太鼓或は大小の鉦どうしの呼応と掛け声や合いの手、斉唱や輪唱或は一声多声や掛け合いなどの唄い方や時と場所に応じた変化に注目してみた"チャンココ"の場合、特に八月七日に、1)町内会長宅や郷長宅を訪れたり(野々切)、2)ムラの地蔵等"神さん参り"をして村内の寺に行く(崎山では一〇日は上崎山、一一日は下崎山が寺で施餓鬼を行う際同様にする)、3)"七夕宿"と称して、順番に割り当てられたムラ内の当屋でムラ全戸から人を招きその家の祖先の祖霊になっていない霊をかしわ御飯を炊いて供し、僧にお経を挙げてもらい、チャンココにも庭で踊ってもらう、所謂祖先内の施食供養をする(現在は高田で。以前は大窄でも行なわれていた)。一四,一五日の昼念仏に先立っての"部落回り"に先立って、上記の行事は夜念仏の範ちゅうに分類され、祖霊に対する死霊或は餓鬼、家(の仏壇)に墓や辻・地蔵(ムラの境界或は結界)対すると言える。只、初盆の家の仏壇の脇の新仏の為の盆棚と精霊棚、七夕宿は、五島の祖先供養の両義性と家と村落の関係の多様性を象徴していると考える。
著者
西渕 光昭 山崎 伸二 竹田 美文
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

腸炎ビブリオの重要な病原因子である耐熱性溶血毒(TDH)をコ-ドする遺伝子(tdh)の発現を促進する調節因子(VpーToxR)を解析した。VpーToxRをコ-ドする遺伝子(VpーtoxR)はコレラ菌の病原因子発現調節因子(ToxR)の遺伝子と52%の相同性を有しており、推定アミノ酸配列も類似し、特に発現調節に関与すると推定される領域およびtransmembrane領域と考えられる部分では非常に強い売似性が認められた。大腸菌中で、クロ-ン化したtdh遺伝子とVpーtoxR遺伝子を共存させた系で、VpーToxRがtdh遺伝子(tdh1〜tdh4の中で特にtdh2およびtdh4)の発現を促進することを確認した。またtdh2遺伝子について、コ-ドン領域上流144bp付近の塩基配列がVpーToxRによる発現促進において重要な役割を果たしていることが明らかになった。ただし、ゲルシフト法によってVpーToxRの結合能を調べたところ、VpーToxRはコ-ドン領域のすぐ上流(68bpまで)に結合することを示唆する成績が得られ、さらに上流(144bp近付)の塩基配列は、結合したVpーToxRとの間の何らかの相互作用によってtdh2遺伝子の発現促進に関与しているのではないかと考えられた。VpーtoxR遺伝子プロ-ブを作製し、これを用いたハイブリダイゼ-ション試験により、この遺伝子はほとんどの腸炎ビブリオ菌株に存在することを明らかにした。AQ3815株を用いて、VpーtoxR遺伝子を特異的に不活化したisegenic変異株を作製した。この変異株と野生株との比較によって、VpーToxRによるtdh遺伝子の発現促進は、KPブロス中で菌を発育させた場合に特に顕著で、発現促進作用は転写レベル(mRNA)でおこっていることを聖らかにした。
著者
前田 辰昭 高木 省吾 中谷 敏邦 高橋 豊美
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

北海道西岸沖合に産卵のため来遊するスケトウダラの魚群構造と回遊の研究は、当初計画通り実施された。昭和62年度から平成元年度の4月と10月に、後志沖合から青森県沖合の日本海で水温、塩分、餌料プランクトン等の外、航走中24KHzの魚探を作動させて、スケトウダラの分布と密度を観察した。また、中層トロ-ルによる漁獲試験と標本採集をした。この外2月には檜山沖合で本種の標識放流を実施した。1.4月の魚群は沿岸の産卵場付近では150〜300m層に、沖合では200〜400m層と、沖合ほど深い。分布域は日本海の中央部にまで達し、対馬暖流水と亜寒帯水との境界域に当る前線域に高密度群が出現した。2.10月の魚群は産卵期の接近に伴い、次第に接岸し、沿岸域で最も密度が高い。この時期は高水温のため、400〜500m層と分布層が深い。3.魚群の年齢組成は3〜8才で、それらの中心は卓越年級群の1984年生れである。3ケ年間では1989年10月が最高密度を示した。4.標識放流は昭和62年度から平成元年度までの2月に、檜山沖合で約4500尾について実施した。本研究期間内の再捕結果は、従来の知見とされた定説の北上回遊と異なり、索餌期の夏期には南下して津軽海峡に出現し、さらに新潟県沖合から富山湾沖合にまで回遊して再捕されている。しかし、産卵期には放流地点の檜山沖合でのみ再捕され、本種の回帰性の強さが示唆された。5.本種の回遊は従来、北部の武蔵堆周辺から陸棚沿に南下し、産卵後は再び北上するとされていた。しかし、本研究では、成魚は南西部沖合から接岸し、産卵後は再び南西海域に回遊することが明らかになった。今後は不明であった幼稚魚の移送先や未成魚期の生活域の把握が必要である。それは来遊量予測や資源変動の解明に不可欠なためである。
著者
渡部 宗助
出版者
国立教育研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.戦後改革期の児童観と児童文化概念の検討は、戦前・戦中のそれを抜きには考えられない。戦前・戦中の支配的児童観・児童文化概念は日本少国民文化協会(昭和16年12月創立)とその機関紙『少国民文化』に集約される。それは、資本主義的俗悪「児童読物」に対する官民一体の「改善・浄化」運動(昭和13年)と「大東亜戦争」遂行のための児童政策の結合体として形成された。それは明らかに「大人が子どものために与える文化財諸領域の総和」と表現すべきものであり、且つ暗黙裡に「学校文化」を含めないものとするところに特徴があった。2.戦後改革期の児童観と児童文化概念も基本的には、政策的にも、運動の面でもそれを継受するものであった。そこに見られる新しい「変化」は、スローガンが「大東亜戦争」遂行から「文化国家・平和国家」建設へとかわったこと・もう一つは子どもを人格・人権の主体として把える自覚的方法意識が社会化したことであった。それは、新憲法を基底として教育基本法や児童福祉法等で法的表現を与えられた。子どもを主体として見る児童観から、「児童文化」に子ども自身の創造・制作を含める考えが一般化した。3.戦後における「児童憲章」の制定は画期的なことであったが、児童観や児童文化概念の変革はその後の国民的実践に委ねられたものと解すべきであった。新旧の児童観・児童文化概念の相克をよ具体的に示したのは、「こどもの日」の制定であった。それは厚生省児童局設置(昭和21年3月)に見られる「児童保護」の系譜と「こどもの人格」の社会的認知の折衷であった。「こどもの日」制定を主導した国会の衆参両院文化委員会にける「国民の祝日に関する法律」審議に反映された。4.本研究では、戦前・戦中と戦後の児童文化関係雑誌5種(『少国民文化』『新児童文化』、同復刊版、『児童文化』『児童』)を用いた。
著者
猿田 佳那子
出版者
広島女学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の主たる調査対象は、日本占領時に収集された瀬川幸吉コレクションと、台湾総督府が中心となって残した記録類である。台湾では、17世紀以来支配勢力の興亡がくりかえされたが、1895年にはじまる日本占領期間中は、山岳地域や離島に住む先住民をも統治下においた。現時点では本研究の概要をまとめるには至っていないが、外界との接触による影響のうち、特筆すべきものをつぎにあげる。1.素材の移入:交易が開放的である民族ほど、織技の衰退が著しい。首狩の風習を残していたタイヤル族や離島に住むヤミ族では、自生の繊維を用いた剛直な織物がもちいられた。パイワン族やアミ族では交易によって木綿、モスリンなどがもたらされたことがわかる。これは肌触りがなめらかで発色もよいという理由から、日本でも同様な経過をたどったことと対比できる。また、独自の染色技術の発達がみられず、一枚の布のうち、赤は毛、青は綿、白は麻を交織している物が少なくない。これらは、毛布、藍木綿を交易によって入手し、解して自生の麻に混ぜて織った物とみられる。2.衣服の受容:家族や地域住民の集合写真をみると、子供は日本のキモノらしいものを着用している例が散見する。浴衣が支給されたり、日本から派遣された公務員の妻たちが、手縫いやミシン縫いを教えたという記録もある。男性は立襟の軍服風のものや帽子を着用している。当時の彼らが持っていた日本服観、漢満族服観、洋服観はどのようなものであったろうか。3.身体変工:満族の習慣であるところの弁髪を採用している肖像写真が目を引く。入れ墨の習慣もあったが、入れ墨が一時的な加工であるのに対して、頭髪は自然にまかせれば弁髪状態を保ち得ないのであるから、継続的にこうした理髪を続けていたことになる。
著者
横尾 武夫 福江 純
出版者
大阪教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は,理科教育特に天文学分野に関する教育用ソフトの改善と開発であり,その具体的な研究内容は(1)天文学を教材とする新しい教育用ソフトの開発(2)天文学教育用データベースの構築(3)教育現場で使用されている天文学関係の教育用ソフトの調査と分析である。この3年間の研究において,(1)については,地球や宇宙における現象をコンピュータ・シミュレーションで再現して,児童や生徒の学習と理解を助けることを目指している。この研究で開発したソフトの中に,コレオリカのシミュレーションがある。これは,シミュレーションを教具として位置付け,理解を難しい力学との問題について新しい観点にもとづいて開発したソフトであり,特に高等学級での活用を期待している。(2)については,特に,画像データベースの構築と,学術用データベースの教育的利用に重点をおいた。前者については,天体画像のデータベースの構築と検索システムの開発を行った。また本学における天体観測設備を用いた天体画像のア-カイブの構築を始めた。後者については,天文学のコミュニティーで流通している膨大なデータベースが,現在ではCD-ROMで利用できるので,これを教育の場で活用する先進的な実践的研究を行った。(3)についは,現段階では充分な成果を得ていない。なぜならば,この数年間で,マルティメディア等,コンピュータをとりまく環境が大きく変動し,教育用ソフトの改訂が急がれている状況が生まれた為であり今後,特にインターネットの発達と普及を教育の場でどのように位置づけるかが,大きな課題となっている。
著者
田中 愛治
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

平成4年度には、同年7月の参議院選挙の前後に横浜市において有権者1,000名に対し郵送法による世論調査を行い、横浜市における一般有権者の政治不信と政党離れ意識について調査した。平成5年度は、前年の郵送調査における「政党支持なし」の回答者を深層面接法により追跡調査する予定であった。しかし平成5年の政治状況は、国民の政治不信、特に既成政党に対する不信感が更に高まり、政党離れがいっそう進行した。平成5年6月の宮沢内閣不信任案の成立後、自民党から新生党、新党さきがけが分裂し、同年7月18日の衆議院総選挙の結果、昭和30年の自民党結党以来初めて政権交代が起こった。この新党(新生党、新党さきがけ、日本新党)の出現と政界再編の状況下では、少数の「政党支持なし」の有権者の深層面接よりも、一般有権者を対象に従来と異なった投票行動をとる心理的メカニズムを広範に探ることの方が重要性が高いと判断し、研究計画を変更して、総選挙の前後にパネル方式の電話世論調査を実施した。有権者の政治不信、政党離れが急激に進む状況の中で、「政党支持なし」層の役割はかつてなかったほど重要になり、それに呼応するように3新党が総選挙では躍進して、政権交代が起こった。上述の電話調査の結果からは、3新党の支持者はどの新党に対しても好意的な感情を持っており、相互に支持する傾向が見られるが、逆に既存の伝統的な自民党と社会党に対しては冷淡な態度が見られ、既存の政党離れが進んだことが明らかになった。さらに、「政党支持なし」層の存在が、92年の参議院選挙に続いて、93年の総選挙の際にも確認されたが、この積極的な「政党支持なし」層が必ずしも新党の支持に回ったとは言い切れず、単純な構造ではないことが分かった。今後、本調査のデータ分析を更に進めていく所存である。
著者
木下 泉 青海 忠久 田中 克
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

四万十川河口内で浅所と流心部の仔稚魚と魚卵の出現状況から,アユ,ハゼ科等の河川内で孵化し,成長した後,河口内浅所に接岸するグループ,カサゴ,ネズッポ科等の河口付近で孵化するが,その後他の水域へ移動するグループ,ボラ科,ヘダイ亜科等の沖合で孵化し,成長した後,河口内浅所に接岸するグループの3つに分けることができる.河口内浅所のアマモ場,非アマモ域と河口周辺の砕波帯を比べると,アマモ場と砕波帯には各々特徴的な種がみられた.本河口内には海産魚類の仔稚魚が多く出現し,砕波帯にも共通している.しかし主分布域は種独特の塩分選好性により河口内浅所と砕波帯に分かれ,河口内浅所はプロラクチン産生等で低塩分適応を獲得した特定の仔稚魚が成育場としていると考えられる.河口内浅所と砕波帯との共通種の加入サイズは一致し,これら仔魚は砕波帯を経由せず沖合から直接河口内に移入し,浅所に接岸すると考えられる.本河口内と沖合との間には著しい塩分勾配がみられ,河口内への仔稚魚の移入に塩分の水平的傾斜が関与している可能性が高い.成育場での仔稚魚郡集は滞在の長短によりresidentグループとmigrantグループに大別されるが,本河口内浅所の仔稚魚の多くは前者に属する.この点で殆どがmigrantグループである砕波帯の仔稚魚相とは大きく異なる.しかし河口内浅所におけるresidentグループには成長に伴ってアマモ場に移住する種が多い.一方,アマモ場は本河口内浅所が仔魚から若魚期に至る成育場として重要な環境要素となっている.本河口内で生活する仔稚魚は枝角類・橈脚類に加え,流心部に多く分布するハゼ科・アユ仔魚を多く摂餌している.浮遊期仔魚は浮遊甲殻類に比べて,はるかに質的に重要な餌生物であろう.以上のように,本河口域浅所は豊富で独特な餌料環境を形成するとともに,逃避場所や定着場所として利用されるアマモ場が周年存在することにより,低塩分環境に適応した特定の魚類にとって,初期生活の大部分を過ごすことができる重要な成育場となっていることが分かった.
著者
斎藤 功 佐々木 博
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

近年, 山菜は自然食品の最たるものとして需要が増大している. 本研究は落葉広葉樹林帯(ブナ帯)で広範にみられる山菜の採取および山菜の促成栽培の実態を解明し, それに風土論的考察を加えることを目的としたものである.山菜の採取は, 伝統的にブナ帯の山村, とくに多雪地の山村で行われてきたが, 山菜の促成栽培はブナ帯の少雪地で多い. 山菜の促成栽培は, フキ, ワラビ, タラノメ, コゴミ等が行われるが, タラノメの促成栽培が典型であろう.本来, タラノメは春にとるものであるが, 促成栽培はそれを夏冬の12〜3月に採取するものをいう. 当初, 山からタラノキを切り, それを植木として温室内で栽培したものであるが, 促成栽培の普及につれて, タラノキを桑のように栽培するのがみられるようになった. 現在, タラノメのキの落葉後, 台木を切り, 一芽ごとに10〜15cmに切ったものを温室内のオガクズ床に伏せこみ, 12月下旬〜3月下旬にタラノメが7〜8cmに仲が〓ように栽培している.このタラノメの促成栽培は, ブナ帯で冬季出稼を止めさせるまでになったが, 栽培技術が容易なこと, ビニールハウスを転用できることなどで普及した. 当初, 〓境期の山菜としてタラノメは高価に販売されたが, その栽培の普及とともに価格が低下した.結論的にいえば, タラノメの促成栽培は, 生産基盤の脱弱性をもった風土産業といえよう.なお, 研究結果の詳細については, 別さつの研究成果報告書を参照されたい.