著者
富樫 穎
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は、住空間デザインの志向性からみた住文化の典型的な型を抽出し、居住者の属性からみた各型の規定要因を明らかにすることにある。調査項目は、(1)住宅の外観デザインに対する志向性、(2)接客室の室内デザインに対する志向性、(3)住宅の内外空間構成要素に対する志向性、(4)居住空間の名称に対する志向性、(5)生活行事に対する志向性の5項目である。調査は、都市・農山村の女性を対象に実施し、901名の有効解答を得た。分析の結果、次の2つの典型的な型が抽出された。(1)「伝統和風志向」型……伝統和風の外観デザイン、伝統和風の室内デザイン、神棚、仏壇・床の間などの伝統的な室内空間構成要素や灯篭・庭石・築山などの伝統的な外部空間構成要素、続き間座敷・茶の間などの伝統的な空間名称、七草・月見・お盆・正月などの伝統的生活行事を志向する。(2)「現代洋風志向」型……現代的な「ペンション風」の外観デザイン、現代的な洋風の室内デザイン、吹抜け・大テーブル・フローリング・テラス・バルコニー・芝生などの現代的で洋風の内外空間構成要素、大きな居間・アトリエ・ホビールームなどの現代的な洋風の空間名称、誕生日・結婚記念日・聖バレンタインデー・クリスマスなどの現代的な洋風の生活行事を志向する。この2つの型は対立しあう関係にある。すなわち、「伝統和風志向」型は「現代洋風志向」型の要素を志向せず、「現代洋風志向」型は「伝統和風志向」型の要素を志向しない。この2つの型を規定する大きな要因は、年齢と都市・農山村という居住地の差異である。すなわち、若年層には「現代洋風志向」型が多く、高年層には「伝統和風志向」型が多い。また、都市居住者には「現代洋風志向」型が多く、農山村居住者には「伝統和風志向」型が多い。
著者
大中 忠勝 都築 和代 栃原 裕
出版者
国立公衆衛生院
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究は高齢者において、1)生理・心理機能の変動を指標とした寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適条件を求める研究と2)生理・心理反応から寝室の快適な温熱条件を求める研究の2つから成り立っている。1)寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適温度条件63〜73歳の女子高齢者8名(高齢群)と19〜27女子若年者9名(若年群)を対象に、寒冷および暑熱曝露後の快適温度を被検者が快適となるように室温を制御する方法で調査した。高齢者の暑熱および常温暴露後の快適温度条件は若年者と異ならないものの(24〜25℃)、寒冷暴露後では高齢者はやや高い温度を好む傾向にあり、時間経過に伴っても変化が無かった。また、高齢者では快適とする範囲は大きく、温熱環境を正確に把握できない場合も見られた。これらの結果は、高齢者の居住温熱環境の設定、改善には高齢者以外の関与が不可欠である場合があることを示唆するものである。2)生理・心理反応に基づく寝室の快適な温熱条件高齢者の睡眠に及ぼす室温の影響を調べるため、年齢67〜82歳の高齢者20名の睡眠中の体動を冬季(1〜2月)と夏期(7〜8月)において、各被検者の住居で測定した。同事に室温、寝床内温度を測定した。夏季においては、年齢20〜21歳の若年者20名についても同様の測定を行った。睡眠中の体動と室温との関係について検討し、以下の結果を得た。1)測定期間中の室温は冬季8℃、夏季28℃前後であり、両季節ともは睡眠に好適とされる温度範囲外であった。2)寝床内温度は、夏季は室温と正の相関関係にあり、室温よりやや高い値であった。一方、冬季は電気毛布等の使用により、10〜40℃の間の広い範囲に分布していた。3)夏季での体動数は高齢者において若年者より有意に高い値であった。4)高齢者の冬季での体動数は夏季より有意に低い値であった。5)夏季での体動数は室温と有意な正の相関関係にあり、特に高齢者では室温26℃付近で体動数が増加する傾向にあった。一方、若年者では高齢者よりやや高い室温で体動数は増加した。以上より、高齢者では睡眠は快適とされる環境温度域においても、若年者と比較し体動が多く、さらに夏季の睡眠において体動数が増加する環境温度は高齢者で低く、高温環境は高齢者の睡眠により強い影響を与えていることが示唆された。
著者
錦見 盛光 幸村 定昭
出版者
(財)応用生化学研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ヒトはアスコルビン酸生合成経路の最終段階を触媒するグロノラクトン酸化酵素(GLO)を欠損しているため、ビタミンCを合成できない。本研究において、ヒトにおけるGLO欠損の原因を遺伝子レベルで解明することを目指し、次のような結果を得た。ラット肝臓のGLOに対するcDNAをプロ-ブとして用い、種々の動物ゲノムDNAをサザンブロット法で分析した結果、ヒトはGLO遺伝子を持つが、ハイブリダイゼ-ションの強さは、他のGLO活性を有する動物の場合に比して弱いことが分かった。そこで、ヒトとラットのGLO遺伝子を塩基配列の上で比較するため、ラムダファ-ジで作ったヒトおよびラットのゲノムDNAライブラリ-から同遺伝子のクロ-ニングを行い、得られたクロ-ンの塩基配列を決定した。ラットの重りを持つ三つのクロ-ンについて調べたところ、ラットのGLO遺伝子は20キロベ-ス以上の長さを持ち、12個のエキソンと11個のイントロンより構成されることが明らかとなった。また、ヒトの陽性クロ-ンの一つはゲノムDNAのサザンブロットで認められる約12キロベ-スのEcoRI断片を含み、その中にラットのGLO遺伝子の3個のエキソンに対応する塩基配列が見出された。その内一つの配列では、ラットのエキソンの5′側でかなりの部分が欠失していた。108塩基からなるエキソンについてラットとヒトの間で配列を比較すると、ヒトで1塩基の欠失があり、両者の相同性は75%であった。アミノ酸配列で比較すると相同性は64%と低く、しかも変化の大きい置換が数多く認められた。これらの事実は、ヒトのGLO遺伝子が進化の過程で機能を失った後、選択圧を受けることなく変異を蓄積して来たことを示唆する。即ち、ヒトのGLO遺伝子は偽遺伝子の状態でヒトゲノム中に存在していることが判明した。
著者
塩月 義隆
出版者
東和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

昨年度行ったヒアリング調査結果に基づいてアンケート項目を整理・検討し、福岡市立全小学校のクラス担任教諭に対して、夏季の教室環境に関するアンケート調査を実施した(144校を対象として9月中旬に実施する、配布数2,648票、回収数1,569票)。また、用途地域、建設年度、教室の方位、空調の有無等を考慮して6校の小学校を対象として、夏季の教室環境に関しての実測調査を行った。教室内に形成される夏季の温熱環境を要約すれば以下のようである。1)夏の授業中の教室では日射の有無にかかわらず教室全体は暑いが、日射遮蔽と通風によって窓際の厚さはかなり改善される。しかし、雨や強風によって窓が開放できないという問題がある。2)窓からの直射の有無によって、窓側と廊下側では明るさに大きな差を感じている。実測の結果、教室の昼光率分布は大きく、窓際では8%程度であるが、廊下側では1%以下の場所もある。3)カ-テンは日射を防ぐ意味で必要ではあるが、教室の風通しや明るさの点で問題が生じている。4)結露は冬季だけでなく、夏季にも生じており、衛生面だけでなく歩行するのにも危険である。5)通風を得るために窓を開放しているので、教室内の気温分布は小さいが、グローブ温度は窓際の方が廊下側より3℃ほど高い。室内湿度は、外気とほとんど変わらない。6)北東向きの教室は午前中に直射が侵入するため、南向き教室より温熱環境は不利である。7)開口部が大きいので通風は良好であるが、窓の方位や開閉状況によって、室内気流分布が生じる。8)パッシブを基本とする学校建築では、通風・換気を促進し日射熱を排除することが、良好な熱環境を得るために必要であり、窓の方位や大きさが重要な因子となることを明らかにした。
著者
橋本 正治 川野 常夫 西田 修三
出版者
摂南大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

以下に示す計画に従い研究を実施した。(1)3次元曲線の入力法の提案・入力装置の試作・評価実験(2)作業者の特性の検出法の提案・検出装置の試作・評価実験(3)個性や熟練度の検出法・評価法の提案と試作装置による評価実験(4)熟練度に応じて柔軟に対応するインタフェースの提案と評価実験CADシステムに用いるための3次元入力法を提案し、試作装置の精度と入力に要する時間について評価した。その結果、精度に関して300mmの曲線の長さに対して5mm程度の誤差が生じていることと、処理時間に関して作業者が違和感を覚えるとされている0.1sec以内に前ての処理が行われているとが明らかとなった。評価実験を行った結果、本入力装置のように作業者の表現内容を機械が判断し入力情報として用いる方式を用いることで未熟者であっても容易に熟練者と同じ入力処理が行えることが明らかとなった。作業者の熟練度は、作業結果や作業工程などに現れると考えられるが、作業の内容に応じて評価しなければならない。本研究では、未熟者と熟練者では作業の疲労度に差がでることから、疲労度を生理的情報を検出することで熟練度合いを評価する手法を提案した。作業の負担とならない生理情報の検出法の提案と測定装置の試作を行い、生理情報と精神的疲労度との関連を実験により明らかにした。熟練を要する作業のシミュレータを開発し、作業者の熟練度に応じてインタフェースのC/D値を作業中に変化させる実験を行った。被験者が熟練者の場合、作業成績を維持しながら作業時間が短くなった。これは、本手法を用いることによりさらに技能の習熟が進んだことを意味し、有効性が確認されたと考えられる。
著者
板見 智 高安 進 園田 忠重
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

ヒトの毛の発育の男性ホルモン感受性の違いを分子レベルで解析するために毛組織の上皮系、間葉系それぞれの細胞を培養し、男性ホルモンレセプター、5α-リダクターゼについてmRNAレベルで解析した。手術時に得た皮膚より手術顕微鏡下に頭髪、髭、脇毛等の外毛根鞘、毛乳頭を単離し継代数4-6代に達した細胞を実験に用いた。I型、II型それぞれの5α-リダクターゼのmRNAの発現をRT-PCR法で調べたところ、I型5α-リダクターゼのmRNAはすべての外毛根鞘、毛乳頭細胞に認められたがII型の5α-リダクターゼは髭及び前頭部毛乳頭細胞で強く発現していた。男性ホルモン受容体mRNAの発現は腋毛の毛乳頭細胞で最も強く後頭部毛乳頭細胞ではわずかに認めるのみであった。男性ホルモン受容体に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織染色では、いずれの部位より得た毛包においても上皮系の細胞は陽性所見を示さず男性ホルモン受容体は毛乳頭細胞に局在していた。後頭部毛乳頭細胞には男性ホルモン受容体は認められなかった。以上の知見より髭、腋毛、男性型脱毛の前頭部毛の毛乳頭細胞はいずれも男性ホルモンの標的細胞であるが、II型の5α-リダクターゼは髭、男性型脱毛など強い男性化徴候を示すために必要と考えられた。毛乳頭細胞の分泌する男性ホルモン依存性の毛包上皮系細胞増殖因子について、in vitroで毛の発育作用が報告されているFGF、HGF、IGF-I等についてmRNAの発現を検討したところ、IGF-IのmRNAの発現のみが男性ホルモンにより促進されていた。また髭毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞の混合培養では、男性ホルモンによる外毛根鞘細胞の増殖促進はIGF-Iに対する中和抗体により抑制された。これらの結果より髭組織においてはIGF-Iが毛乳頭細胞由来の男性ホルモン依存性の毛の増殖因子の一つであることが明らかとなった。
著者
水越 允治
出版者
三重大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

18〜19世紀前半の近世小氷期末の気候特性を,近世文書の記録により復元し,19世紀後半もしくはそれ以後の気候特性との違いを明らかにした。またその様な差異を起こす原因について検討・考察を行った。主要な成果は次のとおりである。(1)冬の寒さは1820年代まで厳しく,30年代からは温暖化した。1860年代の寒さは近年と同程度。したがって近年の暖冬は決して未曽有のものではない。(2)冬の太平洋側の降水量は19世紀前半には少な目,後半に入って次第に増加する。(3)19世法前半には春先に冬型気圧配置の出現頻度が大で,春の到来が遅かったことがわかる。(4)梅雨明けは1780年代,1830年代に特に遅かった。梅雨期の降水量は19世紀初頃には少なく,1830年代から増加している。(5)1820年代までは空梅雨の年が折々現れているが,1830年代以後は梅雨末期の豪雨が頻発する。(6)年間台風襲来数は19世紀初には1〜2回程度,1820年代の後半から急増し年間3〜4回にも達する程になる。(7)夏の乾湿度(降水量の多少)は,1820年代までは乾燥傾向,30年代からは湿潤に向かい,40年代以後は湿潤年が目立つ。(8)以上から1820〜30年代付近を境として,これ以前には寒冬,暑夏で乾燥した気候条件が,それ以後には暖冬,冷夏で湿潤な気候条件が中部日本では卓越したと考えられる。19世紀初頃の気候条件をもって近世小氷期の特性とするまらば,この時代の大気大循環は東アジアの東西指数が冬は低く,夏は高い傾向にあったと推定できる。またこのような大気大循環型形成の背景には,大気と海との相互作用の存在がうかがわれ,例えば近世小氷期の時代にはエルニ-ニョ現象が比較的不明瞭ではなかったかと推測される。火山活動もまた近世小氷期の気候特性と係わることが,気候復元の結果と照合してみると推察される。現在これらの気候と対応関係の分析を進めている。
著者
松永 和人 中西 裕二 片多 順
出版者
福岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

松永は,仏教が定着していない鹿児島県徳之島において,死の儀礼にかかわって「神葬祭」の研究調査を実施し,死者が死後神となるプロセスを分析した。当地において家内部には先祖神のみが祭られ,死者と先祖神とのかかわりにおいて死の観念上よくいわれている死の穢れということはいえず,死の穢れの概念は,本土と比較するとき,ムラの氏神に祭られている神その他外来神とのかかわりで認められるということがいえそうである。そのために,死の穢れの観念を神の種類との関係において分析的にみる必要があるということが研究調査の一つの結果である。片多は,人口100万人以上の社会としては世界一長寿である沖縄を調査地に,長寿の社会文化的要点を分析し,とくに健康と長寿を祝う沖縄に独特の儀礼を焦点に研究した。その結果,数え年85歳,97歳に行われる儀礼が,天寿を全うし安らかに死を迎える準備として機能していることが判明した。また,このような長寿儀礼は沖縄の伝統文化が生みだした人生終末期の儀礼であり,(1)仮葬儀の意味合いをもつ,(2)この機会に人々のつながりが再確認,再強化される,(3)長寿者の死への移行をスムースにする,などから長寿から死への通過儀礼としてとらえられることを提起した。中西は,沖縄において数え年の13歳から97歳まで12年毎に行われるトゥシビ-と呼ばれる年祝いの儀礼に注目し,中でも88歳のトウカチ,97歳のカジマヤ-の現地調査を行った。具体的には沖縄県北部の名護市と本部市をフィールドに,長寿を祝う儀礼についての民俗知識や観念についての聞き取り調査と参与観察を実施した。その結果,長寿儀礼の中に高齢者をめぐるコミュニティーの紐帯の強さを確認できた。しかし,その伝統が儀礼を家単位で行う傾向とともに弱体化する可能性を示唆した。また,長寿者に「アヤカル」という観念と行為を長寿以外の文脈でみていくことが今後の課題として残された。
著者
倉光 正己
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究では、広い分野で注目される自己組織化の概念を、非線形現象の研究では蓄積のある電気回路網を具体的対象として解明することを目的とした。特に、従来、自己組織化の具体例とされてきた周期現象、同期現象などの秩序化の対極にあるカオス現象に注目し、その発生条件、物理的本質を解明することにより、非線形電気回路網に生じる諸現象を統一的に理解することを目指した。本研究の主な成果は以下の通りである。(1)非線形能動素子1個、線形で正のインダクタ及びキャパシタ合わせて3個、線形抵抗1個、以上計5個の素子で構成できる11個の3次元発振器群を考えた。パラメタ値の変化に伴う平衡点の安定性の変化とカオス発生との関係を明らかにし、これらの発振器群をカオスの発生に関して分類することに成功した。これにより、3次元発振器におけるカオス発生の必要条件を得ることができ、従来、試行錯誤的にしか求められなかったカオスを系統的に探索することができることになる。今後、同様の考え方を、他の非線形特性素子を用いた系、あるいは4次元以上の系に対して拡張し、一般的なカオス発生条件を明らかにすることが課題である。(2)以上の結果から、カオスとは、非線形性の強さに伴い、非発振から発振状態(交流)、さらに発振停止(直流へと変化する経過で、発振状態の一つの特殊な状況として生じ得るものであることが明かとなった。今後、筆者が先に提唱した「平均ポテンシャル」を拡張し、これら一連の現象を物理的、統一的に理解する必要がある。(3)非線形素子が2個の系として、同一特性の2個の弛張振動発振器の結合系を考察し、2つ存在する同期状態の一方が、非線形性が強くなるとき不安定化する現象を見いだした。多数の非線形素子を含む系の振舞いを理解する基本として、この現象を物理的に解明することが今後の課題の一つである。
著者
水谷 仁 早川 雅彦 藤村 彰夫
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本年度は昨年度に引き続き当初の研究計画どおり月深発地震とくにA1震源、A33震源からの地震波を利用して月の深部構造に関するデータを得ることを試みた。当初の予定通り、これらの震源からの地震波を多数スタッキングすることにより、これまで気づかれていなかった多くの後続波のフェーズを発見することが出来た。これらの中にはPKP、PKKPフェーズと思われるものがあり、これらが本当にそうであれば、月の中心部に約450kmの鉄のコアが存在することが推定される。この結論はきわめて重要な結論であるので、さらにこの後続波の一般性を確認する必要があると考えている。そのためにA1、A33震源以外の震源からの波についても同様な研究を開始したが、そのためにはアポロ地震波データの使いやすいデータベースを構築する事が効果的であると考えられるようになってきた。これはデータ処理を多数、迅速に行うためにどうしても必要になることであると同時に、将来の月探査計画、LUNAR-Aの準備的研究としても緊急を要する課題であると認識されたためである。このために本研究のかなりの時間を、この研究をさらに発展させるために必要なデータベース形態、仕様を決定するために使った。現在ではこのデータベースの仕様に基づきそれをimplementする作業に入っており、ほぼ80%の作業が終了した段階である。このデータベースは広く関連研究者に利用できるようにする予定であり、本研究が完成した暁には月地震学にとって大きな貢献をすることが出来るものと信じている。
著者
丹治 愛
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.ガブラー版『ユリシーズ』の第11挿話(「セイレーン」)にかんして、『ユリシーズ』各版のテクストと比較したうえで、河出書房版を参照しながら日本語訳をおこなった。その際、読解のうえで有用と思われるデータを注釈として蓄積した。2.日本ジェイムズ・ジョイス学会に所属する研究者(とくに結城英雄氏)との意見交換をしながら、第14挿話(「太陽神の牛」)から第18挿話(「ペネロペイア」)までの各挿話についてテクストを検討し、読解のうえで有用と思われるデータを注釈として蓄積した。3.今年度も作業をしながら次のような印象をつよくもった。たしかにガブラー版はそれまでのどの版よりもテクストとしての妥当性を主張しうる版である。しかしながら、ジョン・キッドの「ユリシーズのスキャンダル」という論文以後、その妥当性はかなり揺らいでいると見なければならない。たとえ反ガブラー派の批評家たちが問題にする箇所のほとんど--あえて97%以上と言っておこう--が、コンマかセミコロンか、あるいは大文字か小文字かといった、日本語になおした場合にはほとんど表面に浮かびあがってこない細部であるにしても、残る3%のなかにはわれわれにとってもひじょうに重要と思われる論点がふくまれている。そのようななかでわれわれにとって重要なのは、いずれの版も絶対化することなく、テクストの妥当性を相対的に判断していく態度であろう。
著者
小佐古 敏荘 志田 孝二
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

研究は以下の2つの項目にわけて行なわれた。1.原爆爆発地点からの中性子の自由空気中の輸送現象の評価中性子の空中伝播特性を線量評価の観点から、主として大型計算機による中性子輸送計算法により評価した。計算に際してはレイエフェクト等の計算法に基づく誤差をさけるため最近のモンテカルロコードMCNPを用いた。2.広島の残留放射能の測定結果の解析評価広島の岩石中に残留する【^(152)Eu】の放射能測定を広島大学グループと共同でおこない、この結果を解析し原爆爆発時の中性子情報を得た。これらの結果は(1)広島大との共同の論文(1)形で米国Health Physics誌に投稿,印刷中(2)米国政府NCRP(放射線防護審議会)第23回年会で招待講演(1987年4月)(3)解析結果を中心とした論文とし米国Health Physics誌に投稿準備中である。(3)の論文の要旨を示すと‥‥「広島原爆の中性子線量再評価を元安橋橋柱の花崗岩中41.5cm深さの【^(152)Eu】残留放射能を用いておこない、爆心よりSSW方向1.32m地点における中性子線量(空気中ティシュカーマ)を15.5Gyであると実験的に評価した。これは従前のT65Dの値121Gy/12.5kt,Loeweらの値65.2Gy/15kt,Kerrらの値24.6Gy/12.5kt,DS86システムの値31.4Gy/15ktよりもさらに小さいものであった。これに対して広島原爆の弾頭部からの放出中性子の異方性を示す【IV】halenの実測データを用いた補正をおこなえば、これらは各々60.3Gy,27.1Gy,12.3Gy,13.1Gyとなることがわかり、地上での線量評価にはソース点での非等方効果を正しく評価する必要性が示された。また、ここでの実測値に元づくデータ、15.5Gyと、DS86のデータとから広島原爆の線源強度を推定すると17.7ktとなり、Kaulの最近の推定値17ktに近い数値となった。」‥‥となっている。
著者
植木 貞人
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1990年11月の噴火開始以来実施してきた精密重力測定データには,地下のマグマの運動とは無関係な種々の"雑音"が含まれている.そこで,今年度は,これらの雑音の特性を解明し,その影響を定量的に評価するための研究をおこなった.具体的な内容は以下のとおりである.1.火山活動静穏期の重力変化を明らかにするため,1995年8月,重力計3台を用いて重力測定を実施した.2.このデータをも含めて,CG-3型重力計の感度係数の誤差を見積もった.その結果,CG-3型重力計の感度係数には公称値の1〜14x10^<-4>の誤差があり,個々の機械によって大きく異なっていること,G型重力計に比較して数倍誤差の大きなものもあることが初めて明らかにされた.このことは,火山地域のような重力差の大きな地域における測定では,使用する重力計が異なること100μgalにも達する測定差が生じるということを意味しており,重力変化を論じるためにはその補正が不可欠であることを示している.3.これまで溶岩ドームの成長による地形変化の影響を定量的に見積もってきたが,本年度は新たに,山麓での火砕流堆積物による谷の埋設,山腹でのガリ-の発達による地形変化の影響を,デジタルマップを作成して定量的に見積もった.その結果,山腹・山麓部の地形変化による影響は,測定誤差をやや上回る20μgal程度であることが判明した.4.地下水変動の影響を解明するために,地下水面自動測定システムを整備した.しかし,まだ実験中であり,実際の地下水変動データに基づくその影響の評価は,来年度の課題として残された.地下水変動の影響が定量的に評価できれば,地下のマグマの運動に起因する真の重力変化を抽出することが可能になる.
著者
熊谷 信男
出版者
関西大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

チタン合金を高品位・高能率に研削するために、従来の砥石低周速度研削法に代わって、砥粒の熱伝導率が高いダイヤモンド砥石を使用し、研削点に高圧力の注液を行いながら通常(32m/s)の砥石周速度で研削した。この方法で研削した仕上面の品位を解明するために、Ti-6A1-4V合金の焼純材などをプランジ研削した。その結果、砥粒には靱性が比較的高いダイヤモンドが適し、ボンドの砥粒保持力が強力で、砥石表面に研削液が充分に浸入しうる気孔をもつダイヤモンド砥石が適することがわかった。また、砥粒の粒度には最適値が存在する。仕上面品位は、研削液の注液圧力の増加に伴って向上し、圧力2MPaでは、材料除去率が約5mm^3/mm・s以下で砥石の目づまりや研削焼けなどがない加工が可能であり、仕上面直下の残留応力分布は圧縮タイプになる。材料除去率の増加に伴って変質層の深さは増加するが、研削表面に残留応力が発生することは少く、内部のピーク応力は引張り側へ移行する傾向がある。仕上面の性状は工作物速度を速くし、切込みを少なくすると向上する。また、βチタン合金はα+β合金より仕上面の品位が悪くなり難削である。次に、焼純したTi-6A1-4V合金薄板疲労試験片の表裏両面を長手方向に平面トラバース研削して、これを両振り平面曲げ疲労試験を行った。その結果、次のことが明らかになった。疲れ強さは、上述の砥石を使用すると向上して焼純材よりも強化される。また、注液圧力を増加すると向上する。研削液は冷却性が重要であるが、冷却性以外の油性も強さを支配している。水溶性研削液の濃度は、気泡が発生しない範囲で高くするのが良く、供試研削液の中ではW1種1号相当品の10%希釈液の場合に最も高い疲れ限度が得られた。研削によって仕上面に生じる残留応力及び加工変質層は、仕上面粗さ以上に疲れ強さに大きい影響を及ぼす。
著者
小柳 正司
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は,以下の諸点について,2年間にわたる研究のまとめを行った。第1に,機能的リテラシーの捉え方の変遷を考察した。その結果,能的リテラシーは,当初の経済開発と人的資源確保に結び付いた「仕事のためのリテラシー」から,より広く社会的,市民的,文化的な次元を含む人間の基本的な生活能力の一環として捉えられるようになったことが明らかになった。第2に,機能的リテラシーの官製モデルを分析した。そして,一般の成人識字教育は,もっぱら非識字の「二流市民」を「良き市民」へと社会的に再適応を図る一種の補償教育であることを明らかにした。第3に,こうした通常の機能的リテラシーと成人式字教育の在り方を「飼い慣らし」と「非人間化」と批判したパウロ・フレインの識字教育論を考察した。そして,彼の識字教育は,文字の獲得を,民衆が自らの言葉で現実世界の成り立ちを読み取っていく過程として組織するものであることを明らかにした。第4に,1980年代のレ-ガン・ブッシュ政権下で新保守主義の教育改革が進行する中で登場した「文化的リテラシー」の主張を取り上げ,それが多民族国家アメリカの国民的共通文化の確保という課題をリテラシーの問題として新たに提起するものであることを明らかにした。第5に,文化的リテラシーの新保守主義的傾向への対抗理論として登場した批判的教育学のリテラシー概念を取り上げ,そこでは,(1)リテラシーの獲得は人々を既成の文化構造への参入を保証しつつ,それへの従属を図るものであり,(2)従ってリテラシーの問題は,何をもって「正統文化」とするのか,だれがそれを決めるのかという政治力学の問題であることが鋭く問われていることを明らかにした。
著者
奥津 聖
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

『預言者ヨナの幻視-ミケランジェロのシスティナ礼拝堂天井画の構造について-』と題して『山口大学「文学会志」』に研究成果を現在連載中であるが, 枚数の制約もあって研究の現状に発表が追いつかない状態にある. 今年度の研究は上記連載とは別の形で『幻想天井画論』と題して美学会誌『美学』に発表する予定である. 二年間に亙るシスティナ礼拝堂天井画のイコノロジカルな画面内容の意味の解釈とイコニカルな画面構成そのものがもたらす新たな意味の摘出を踏まえて, 今年度の研究の主たる目的はこの特殊な幻想天井画の歴史的な系譜の探究に置かれた. その結果, 従来考えられてきたミケランジェロのバロック天井画への影響は本質的なものではなく, むしろ時代と場所を遥かに超えて, 南ドイツのバロケットの画家たちに受け継がれていることが判明した. 具体的にその一例を挙げれば, アルダースバッハの前シトー派修道院教会の長堂のアザム兄の手になる大天井画『聖ベルンハルトのクリスマスの幻視』がそれである. 「システィナ礼拝堂天井画に本質的な二重の意味構造を摘出し, 隠されたメイン・テーマを明らかにする」という当初の課題はほぼ達成されたが, 「この研究過程の美学的反省によって, 図像の意味内容の解釈学と構造自体の意味の解釈とを総合する方法論の模索」という第二の最も困難な課題は今後の課題として依然として残されている. 研究の方位が幻想天井画の系譜とその構造の分析にまで拡大されたため, 雑誌論文の制約の中で全てを発表することに著しい不都合を感じている. 研究成果の最終的な取り纏めは雑誌論文とは形式を別にして『預言者ヨナの幻視』と題して一冊の著書の形で公表する予定である.
著者
山崎 柄根
出版者
東京都立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.日本列島に広く分布するヒメギス属は、旧北区東部から広く見られるもので、従来Metrioptera属に属するとされていたが,この地域のものはそれまでの亜属のひとつEobianaに相当すると考えられ,しかもこれを属レベルに扱うことが望ましいと考えられたので,これを独立属として認めた。この属にはイブキヒメギスとengelhardtiの2種が含まれていて,後者にはシベリアヒメギスとヒメギスの2亜種が含まれると結論づけ、これらの属、種,亜種の記載をそれぞれ行った。2.本州に分布するキリギリス類のうち,広く分布するヒメツユムシ属Leptoteraturaはalbicorne,すなわちヒメツユムシ,1種があるが,本属の雄は特異な外部生殖器をもつことによって、琉球列島に産する国属のものとは系統を異にするように思われる。そしてこの系統が中国大陸に由来をもつであろうと推定していたが(Yamasaki,1982),フィラデルフィアの自然科学アカデミーにあるXiphidiopsis omeiensisを検したところ,ヒメツユムシalbicornisそのものであることがわかったので,日本のものとその後に得られた中国産の材料を比較し,あわせて東南アジアの本属の種分化について仮説を提出した。これで琉球列島の異起源と思われる本属の種の起源が問題になってきた。3.日本産EobianaとLeptoteratura2属の日本への侵入ルートを考察した。それによれば、ヒメギスEobiana engelhardti subtropicaは明らかに大陸側のE.engelhardti engelhardtiから分れた島嶼型で、北海道経由,本州へと侵入した。一方,イブキヒメギスEobiana japonicaはヒメギスから分化したとも、朝鮮半島から九州を経由して侵入したとも考えられ,今後、朝鮮半島の調査が必要と考えられた。本州産ヒメツユムシLeptoteratura albicorneは同種が中国大陸で確認され,亜種の問題もあるが,明らかに朝鮮半島経由といってよいと思われる。
著者
小林 誠 日笠 健一 萩原 薫 湯川 哲之 清水 韶光 菅原 寛孝 大川 正典
出版者
高エネルギー物理学研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

トリスタン加速器による電子・陽電子衝突実験は昭和62年度より本格化した. 昭和62年中に, ビームエネルギー25.0, 26.0, 27.5GeVでの実験を終え, 28.0GeVでの実験が進行中である.こうした状況のもとで, 本課題ではトリスタン・エネルギー領域での現象論を種々の観点から行ったが, 特に輻射補正と超対称性理論に基づく現象論に力点を置いた.輻射補正では, 電子・陽電子衝突における軽粒子対生成, 光子対生成, トップ・クォーク対生成, ジェット生成などの過程に対する補正の計算を行ったほか, ニュートリノの種類数を調べるのに有効なニュートリノ対+光子の過程に対する補正の計算を行った. これによって, トリスタンにおける基本的な過程の輻射補正の計算は一応完成した.またこの研究の一環としてファイマン図の計算機による自動生成, 自動計算の開発を行った.超対称理論の関連では, トリスタンにおいて超対称性を検証する可能性について種々の検討を行った. 超重力理論ではスカラー・トップが特別に軽く, トリスタン領域に存在する可能性が指摘されている. 従ってその性質を調べることは重要であるが, 本課題では軽いスカラー・トップ・クォークの崩壊幅の計算を行い, その結果, 従来のスカラー・トップの崩壊幅の計算にはいくつかの重要な見落としがあることが判明した. そのほか, 超強理論から予想される新しいタイプの相互作用の検証の可能性について検討を行った. また陽子・反陽子衝突器による実験との関連を調べた.
著者
志村 賢男 長沼 信之
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

従来、土地持ち労働者は農地のもつ所得補充、生活保障機能に注目されて資本にとって好都合な労働者類型として捉えられてきた。しかし、そうした評価は今や充分ではない。今日の労働者の再階層化現象の中で捉えることが必要である。その理由の1つは、階級分解の国際化の進展によるものである。地場産業や伝統的製造業における労働者の不安定就労者化は、産業、生産的業務の輸出によってもたらされたとみるべきである。労働者の再階層化現象もこうした日本の工業制度の国際的拡張の中に位置づけられる必要がある。第2は、戦後日本の社会構造的特徴とみなされてきた「階層システムの欠除」の動揺に関わる。近年、中小零細企業労働者を中心に階層化の進展がみられ、それを強調する見解も多いが「階層社会」への逆転を一面的に強調するのには、やゝ問題がある。とくに、こうした再階層化の中で土地持ち労働者がもっとも生活不安を擁する階層として析出しているかといえば、決してそうではない。彼らが、とくに福祉社会の谷間にあるとはいえない。むしろ土地持ち労働者にとって問題なのは、その平準化が農政の側面的支持に深く依存していた点にこそある。この政策費用は、現在の福祉社会補強の中心となっている「企業福祉」の場合と違って、労働生産性の向上によって報われることが少ない。それ故に農政=財政側からその支柱が漸次、撤去されてゆく可能性はあり、その意味で近い将来「平準化」した階層から転落する可能性がないとはいえない。とはいえ、より基本的問題は、現在まで東南アジア諸国を巻き込んで成立してきた日本の工業化制度がどこまで持続しうるかにある。土地持ち労働者も製造過程の熟練、半熟練的労働者と運命を共にする存在を見た方がよい。
著者
中野 和彦 杉本 太造 平沼 謙二 蛭川 登夫
出版者
愛知学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

サクソフォン、クラリネットなどの木管楽器吹奏時には、下顎前歯と楽器のマウスピースの間に下唇を巻き込むため、大多数の奏者では、長時間の演奏を行うと下唇に前歯の圧痕ができ、しばしば疼痛が生じる。また、裂傷が発生する場合もある。このため、下顎前歯部の切縁と下唇の間に紙やビニールなどを介在させ吹奏するもの、市販の保護材料で保護するもの、また少数であるが歯科医の製作によるリップシールドを使用している奏者などがいる。このリップシールドは下顎前歯を被覆する形態であり、歯列の不整を一時的に修正した形状となるため、音程が取りやすい、音色が良くなる、高音がでやすくなるなどの副次的な効果も報告されている。しかし、その形状・材質について研究・報告されたものはない。本研究は、このリップシールドの形状・材質とその音響学的影響について検討し、さらに下顎位の状態などより有効な条件を抽出・解明して理想的なリップシールドを開発することを目的とした。実験方法は、種々の形態と材質によりリップシールドを作製し、使用時の吹奏者(音の立ち上がり時・一定音になっているとき)を、楽器に取付けた加速度ピックアップを通して、アンプで増幅した後、FFTアナライザーに入力した。それをパワースペクトルに変更して、解析し有効なものの抽出を行った。その結果、形状では下顎切歯切縁上部中央がやや盛り上がったいわゆる「中野式リップシールド」では、疼痛は軽減され、奏者自身の吹奏感もよく、客観的にみても音色は向上し、音色の安定性が増した。材質では、歯科用レジンで作製したものが、他のものより、音色の向上と安定性が増加することが認められたので、リップシールドの形態、材質について有効な指標が得られた。