著者
田中 久雄 落合 清茂
出版者
山形大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

平成元年度〜3年度の3ケ年において、主に福島県鮫川村から塙町東部にわたる地域と、郡山市東部の宇津峰周辺の地域に分布する深成岩類と変成岩類の地質調査を行い、地質図を作成すると共に岩石の記載を行った。鮫川村から塙町東部にわたる地域には片状黒雲母角閃石ト-ナル岩、黒雲母花崗閃緑岩類、竹貫変成岩類が錯綜して分布する。それらの岩石は棚倉構造線に近づく従い、石英の細粒化・波動消光・伸長、斜長石の変形双晶・波動消光、黒雲母のキンクバンド・波動消光などの変形組織を呈する。この変形組織は棚倉構造線東縁部に近接した岩石で最も著しく、構造線から離れるに従い無変形組織の岩石に漸移しており、後者の岩石が生成した約1億年前には棚倉構造線がすでに活動したことを示している。塙町湯船の、石川深成岩体の閃緑岩と竹貫変成岩類の角閃岩が接する露頭において、角閃岩の部分融解により多数の細脈が生成した現象を見いだし、この露頭の岩石の詳細な記載を行った。角閃岩中の細脈は組織・鉱物組合せ・化学組成において、はんれい岩質から閃緑岩質・ト-ナル岩質・トロニエム岩質へと連続して変化しており、角閃岩の部分融解により生成した溶液が種々の程度に分泌・分化したと推定される。郡山市東部の宇津峰付近にはユ-クセン石、モナズ石、ゼノタイム等の希元素鉱物を含むペグマタイト脈が分布する。このペグマタイト脈をもたらした深成岩類について調査・研究を行い、深成岩類のモ-ド組成、主要・微量化学組成、造岩鉱物の化学組成を明らかにした。含希元素鉱物ペグマタイトをもたらしたと推定されている新期斑状両雲母花崗岩類は、阿武隈山地の深成岩類の中では最もSiO_2に富み、Sタイプに類似した岩石学的性質を示す。
著者
竹本 幹夫
出版者
早稲田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1、江戸時代の能は、幕府で行われた四座の能、地方諸藩の大名の下で行われた四座の弟子筋に指導された能、地方在住の町衆や農民による神事能、諸国を巡業する群小猿楽役者の辻能の四種に大別される。2、その担い手は、幕府直属の役者である四座の役者及びその弟子筋と、四座以外の系統の役者とに分かれる。四座の系統の役者がいわゆる玄人猿楽であり、それ以外の役者は手猿楽と呼ばれていた。3、四座の役者がそれ以外の系統の役者を圧倒し、能に志す者が四座の家元の印可を得るようになり、幕府直属の能役者、その弟子筋のお抱え役者や雇い役者、さらにその弟子の町役者という一枚岩の構造へと、江戸時代を通じて徐々に整えられていくのであるが、その過程がすなわち家元制度の完成過程でもあった。4、将軍の四座の能愛好に迎合して多くの大名がその弟子の能役者を育成・雇用したため、武士本来の職務から能方に転じる者もあり、また浪人していた武士階級の多くが役者に転身して仕官の道を求めるようになった。5、このようにして誕生した武家役者は武士とも役者ともつかぬ中途半端な身分であったが、多くは次第に役者として専門化した。養子を迎えて役者の家業を継がせ、自分の嫡子には武士の道を歩ませる者もあった。6、藩の方でも、神事能大夫に扶持や名字帯刀の格式を与えて藩の制度に取り込んだり(熊本藩の場合など)、辻能の興行を藩当局の権威を背景として藩の役者が妨害・弾圧したり(加賀藩の場合など複数の例がある)、ということが行われた。そうした動きが全国的な傾向かどうか、またいつごろから具体化しはじめるかを解明するのが今後の課題であろう。
著者
小寺 悦子 武田 義明 青木 務
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

研究の目的を,1.年齢計数可能な樹種の範囲の拡大 2.立木の年齢計数の実施に設定し,その基礎としての木材(樹木)の弾性的性質(音速,減衰定数など)の測定,年齢計数の実行を目標とした。1)青木は,各種木材の打音の周波数,時間特性測定と官能評価の相関性および材質評価との関連性を調べ,木材の吸湿度,表面加工(ラッカー塗装)が周波数分布,減衰特性に影響すること,樹種による違いを明らかにした。2)武田は,西宮市の標高300m付近における森林の生態解析の際,95〜130年の6本のアカマツの年齢計測を従来の方法で行い,成長特性を(年輪半径)^2で表現できることを示した。3)小寺は,ベイマツ材からの超音波パルスエコーの波形解析を行い,ノイズ部分が1MHz成分を多く含むのに対し,木を伝播した後受信される反射波の周波数分布では,1MHzよりずっと低い位置にピークを持つことを明らかにし,より内部の年輪からの反射波をノイズから分離して計測できるようにした。しかし,ベイマツ材の場合では1年輪からの反射ごとに超音波の音圧は約1/3に減衰するので,13年輪を透過した超音波は(1/3)^<13>(124dB)に減衰し,市販の超音波探傷器の最大増幅度程度となる。超音波探傷器のパルスエコー検出限界の改善を行ったとしても,百年輪の検出には不十分であると予想されるが,1MHz程度の超音波の減衰定数の文献値には大きなばらつきがあるので今後は更に樹種の検討を必要とする。また,研究の方向の変更も考え,1本の木について各所で年輪を検出し,そのデータの総合の結果として樹齢を求めること,これまでの超音波による年齢計測で得られた蓄積を利用して木材(樹木)の物性研究に利用する方向を積極的に模索することを予定している。
著者
坂本 正裕 有田 秀穂
出版者
東邦大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は、ネコの脳幹を免疫組織化学的方法で染め出し、特定の表情筋を支配する顔面神経核内の細胞群とそこに投射する伝達物質を含有する神経終末の分布様式を化学顕微鏡で調べた。1)セロトニン含有終末は、顔面神経核内のいずれの亜核においても細胞体や近位の樹状突起に対して付着している様に見えた。その中で特に腹内側核と腹外側核には強い投射が観察された。このセロトニン入力の起始細胞は脳幹の縫線核にあると考えられる、縫線核の細胞の活動は日中増大し、夜間には減少する。したがってセロトニン入力の役割が覚醒時の口唇部の緊張維持に関係していることが示唆された。2)「痛み」に関係している伝達物質とされているエンケファリンは、主に眼輪筋を支配する運動神経細胞の樹状突起の遠心部に付着しているが、セロトニンにはそのような付着がみられなかった。このことは眼の周囲の表情形成にはエンケファリンの影響が強いと考えられる。3)p物質は主に近位の樹状突起に付着しており、鼻の周囲以外の表情筋の緊張(特に口唇部において)に関与している可能性があった。上記の研究成果は、情動表出における表情筋の動きが顔面神経核レベルでの神経伝達物質含有終末の分布差に影響されていることを示唆している。しかし、表情表出パターンの生成は、より上位の中枢で行われているらしい。そこで表情パターンの発生機構を探るために、予備実験をラットを用いて行った。顔面神経核に投射を持つ扁桃核を電気刺激した結果、中心核より深い部位の刺激は、血圧の上昇とともに刺激と同側の眼球突出や耳、口唇の動きを誘発した。また、顔面神経核に逆行性標識物質を微量注入して、扁桃核の吻側部の中心核付近に標識細胞を見いだした。これらのことは扁桃核が表情表出パターンの生成に直接に関与していることを示唆した。
著者
加藤 祐三 新城 竜一
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1993年8月、沖縄島中部西海岸読谷村の海岸でハンマーの打撃で発火する物質の存在が確認され、これが天然の白リンであることが明らかになった。このリンの分布を明らかにすることと、実験にたえる量の試料を採集する目的で、第1発見地点付近を中心に、50m×36mの範囲を2m間隔のメッシュで切り、潮溜まりであるために採集できない場所を除いて系401個の試料採集を行った。採集した試料は水に漬けて実験室に持ち帰った。試料は白色の物が多いが、リンを含む地点の周辺では不規則に黒色に着色している。この黒色物質は不安定で、保管するうちに次第に消失し、試料全体が白色に変化していく。全岩分析をしてP_2O_5%を定量・比較すると、黒色部では明瞭に多く、0.15%以上、最大0.82%含有しているのに対して、白色部では平均0.10%である。これらの値は今回沖縄島各地で採集した琉球石灰岩の平均値0.05%より明らかに多い。リンを主成分とする唯一の造岩鉱物であるアパタイトの含有を、黒色部を粉末にし重液分離して調べたところ、極めて僅かであるが共生鉱物としての存在が確認できた。一方、白リンについてX線粉末回折実験を行った結果、人工合成したリンと、産状から見て人工物と判断されるフィリピンで発見されたリンの2試料には、リンのピークには一致しない不明のブロードピークが同じ位置に存在するのに対して、読谷村産のリンにはこのピークが認められない。このことは、このリンが前2者とは成因が異なり天然産であることの傍証となる。
著者
道津 喜衛
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

フグ科魚類の中には天然交雑種と思われる個体がしばしば出現する。これ迄の研究から次の5つが天然交雑種と考えられている。マフグ×トラフグあるいはカラス,シマフグ×ナシフグ,シマフグ×コモンフグ,シマフグ×トラフグあるいはカラス,シロサバフグ×クロサバフグである。この中で最初のものゝの中には交雑種の後世代と考えられるフグも含まれている。これら天然交雑フグの起源解明のために、トラフグ属6種について、天然および凍結精子を用いて計20回の人為交雑実験を行った。供試フグは次の通りである。トラフグ,シマフグ,クサフグ,ヒガンフグ,コモンフグの雌雄およびカラス,マフグ,ナシフグの雄である。これら8種類の交雑フグの中でふ化仔魚を若魚ないしは成魚まで飼育できた7種類の体色,斑紋についてみると、トラフグ♀×カラス♂,トラフグ♀×シマフグ♂,ヒガンフグ♀×トラフグ♂,クサフグ♀×トラフグ♂はいずれも母親に似ている。一方、トラフグ♀Xマフグ♂,トラフグ♀×クサフグ♂は共に父親に似ている。さらに、トラフグ♀×コモンフグ♂では、母親に似るものと父親に似るものとの両方がみられた。これらの人為交雑フグの形質の検討結果からは、上記の天然交雑種とと思われるフグの両親を明確にできる資料は得られなかった。人為交雑フグの中には、体色,斑紋がトラフグに似たものが3種類あったがそれらの成長はいずれもトラフグより劣っていた。また、トラフグ養殖の障害となっている尾鰭の咬み合い行動がみられないものもあった。しかし、いずれも、外観,成長などの点でトラフグより優れた養殖適種と思われるフグは見出されなかった。
著者
大島 章子 伊藤 宗之
出版者
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

てんかんの遺伝性モデル動物スナネズミの発作は、ヒトにみられるような年齢依存的な発作形成過程を持つ。われわれは、スナネズミの発作形成初期に、発作誘因である床換えにより耳介のリズミカルな運動が出現し、その後、発作部位が拡大することを見出し、遺伝素因の上に加えられた外部刺激、前庭刺激後の後発射による耳介の動きの出現が、全身発作に至る発作形成の初期過程であるという仮説をたて、以下の実験を行った。耳介のリズミカルな運動の原因部位として、電気刺激により耳介の運動を誘発しうる大脳皮質部位を調べたところ、冠状縫合の側後方に存在した。一方、前庭刺激に応答する大脳皮質部位、前庭皮質の存在およびその位置を調べるため、前庭装置の解剖学的特徴を調べ、前庭刺激としての電気刺激を行うための手術手技を開発した。見出された前庭皮質の位置は、耳介の運動を誘発する大脳皮質部位と位置的に重なった。また、耳介の運動を誘発しうる大脳皮質部位の刺激条件を検討したところ、特定範囲内の刺激間隔で最低3発の低電流の矩形波で運動が誘発された。これらの結果は、上に述べたわれわれの仮説の可能性を空間的な、また電気生理学的な意味で支持する結果と考えられる。また、耳介の動きを誘発しうる大脳皮質部位へ投射している可能性のある細胞群が視床に見出されたが、その部位が、他の動物種で前庭皮質へ投射していると報告されている部位に対応していたことから、前庭反応と耳介運動誘発の二つの現象が、視床内で関連している可能性も考えられた。さらに、遺伝素因の可能性のある物質として、実験的なてんかん発作形成に関与しているP70蛋白について調べた結果、抗P70抗体と反応し、P70と等電点と分子量の似た蛋白が、神経細胞の主として核、およびゴルジ装置に存在することがわかった。これらの結果をもとに、スナネズミの発作の初期過程から抵闘値部位の拡大に至る発作形成機序、また、ヒトにみられる闘値の固体差についてさらに検討を進めうると考えられる。
著者
佐藤 理史
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、電子ニュースにおける、いわゆる「掲示型」と呼ばれるニュースグループ(例えば、fj. wantedやfj. forsale等)のダイジェストを自動作成する方法について検討し、fj. wantedのダイジェストの自動生成システムを実現した。本システムの中心技術は、ニュース記事からその記事のカテゴリを判定し、その記事の内容を端的に表すサマリ文を抽出する技術である。本研究で開発した方法は,言わば「斜め読みを模擬した処理」であり、まず、表層的な表現を手がかりとして、42の特徴を抽出する。次に、それらの特徴を利用したルールによって、記事のカテゴリとサマリ文を抽出する。ブラインドデータに対する実験において、本方法は、カテゴリ判定正解率81%、サマリ文抽出正解率76%という値を示した。抽出されたサマリ文はカテゴリ毎に整理され、HTML形式のダイジェストとして出力される。このとき、元の記事へのポインタは、ハイパーテキストのリンクとして埋め込まれる。作成されたダイジェストは、WWWのクライアントプログラムによって読むことができる。本研究で開発した方法は、fj. wantedを対象としたものであるが、他の掲示情報型ニュースグループや質問応答型のニュースグループのダイジェスト作成にも、同様な手法が適用できると考えられる。また、本方法をさらに発展させることによって、FAQの自動作成も可能になると考えられる。
著者
太田口 和久
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

大規模プラント排ガス中のCO_2を除去する技術のうちモノエタノ-ルアミン化学吸収法は、吸収能力および経済性および経済性などの点で高く評価されている。この方法では、CO_2吸収後のモノエタノ-ルアミンは水蒸気の作用によりCO_2を分離し再生される。しかし、長期間に亘る反復使用の後に劣化物を含んだ吸収液のCO_2吸収能力は低下し、吸収液は廃棄されている。本研究では、そのような使用済みモノエタノ-ルアミンを大腸菌Escherichia coli K12株を用いて生分解し、有価物の酢酸へと変換するバイオリアクタ-を考案し、培養条件が生物反応に及ぼす効果について検討した。培地成分について吟味した結果、モノエタノ-ルアミンはE.coliの生育のための窒素源となるが、効率良い増殖を望むためにはグリセロ-ルまたはグルコ-スなどの炭素源が不可欠であることがわかった。モノエタノ-ルアミンを分解するエタノ-ルアミンアンモニアリア-ゼは、その生合成および機能発現のためにビタミンB_<12>を必要とした。この酵素は、反応生成物のアセトアルデヒドにより不活性化したが、培養液中のアセトアルデヒドの蓄積を抑えるためにはアセトアルデヒドを酢酸へと変換するアルデヒドデヒドロゲナ-ゼの活性を高めることが大切であることがわかった。酢液は、これらの酵素の活性を低下させ、また細胞の増殖を抑制したためpH制御が生分解反応を促すことを演繹した。モノエタノ-ルアミン自身をpH制御用のアルカリ溶液とする新しい培養方法を考案し最適pH値を求めた。モノエタノ-ルアミンの処理産および酢液の生成量はpHが7.5の時に最大となり、処理量1g/(l・h)および酢液生産性0.9g/(l.h)が得られた。
著者
高 哲男
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

『国富論』第1・2編を「経済発展の理論」として統一的かつ内在的に再構成するという当初の目的は、第2編第2章の長大な信用制度論の実証的・理論再検討に十分手が届かなかった点で、完全には遂行できなっかた。経済発展の理論における「貨幣」の位置や意義の解明については、今後の課題として残ったという事である。しかし、そのほかの目標はほぼ満足しうるほどに達成したと言ってよく、予期していなかった新事実の発見も含めてその要点を箇条書きすれば、以下のとおりである。(1)『法学講義A』でもすでに、『国富論』と同様に、市場社会には必ず「自然的均衡」があるという考え方はあったが、「価格」はまだ財の数量と単純に反比例すると捉えられており、労働価値説は未確立であった。(2)スミス労働価値説は、その基礎にある価値尺度論が「時と所」の異同の組み合わせにおうじてことなる4つの理論次元をもつものとして構想されていた。すなわち「安楽と自由の犠牲」である「労働」は「時と所」を問わずつねに「等しい価値」をもつが、貨幣が正確な価値尺度でありうるのは「時と所」が同じ場合だけであり、異なるときには「穀物」が「近似的な」それであるから、経済成長の理論的解明は労働と穀物を基準に組み立てらるべきであると。(3)スミスは経済成長の推進力を分業の発展にみたが、発展のためのファンドの大きさは「維持しうる労働量」と「維持しえた労働量」との差にあるから、したがって労働の投入産出のエネルギー転換効率がもっとも高い穀物生産の効率性が、経済発展=分業の進展の程度を究極的に規定していると説くことになった。換言すれば、「維持しうる労働量」を実物的に表す「総需要」は、市場での交換・取引をつうじて「維持しえた労働量」内部の社会的配分替え(=分業構造の変化)を引き起こすが、この配分替えの基準が、いわゆる生産3要素の自然率つまり「自然的均衡」に他ならないという主張である。
著者
神木 哲男
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究は、15世紀なかば兵庫津に入津した船の一年間にわたる関税納入帳簿である「兵庫北関入舩納帳」(以下「納帳」と略称)の各項目をコンピュ-タ-入力してデ-タベ-スを作成し、これをもとにして当該時期の瀬戸内海地域における商品輸送・廻船の実態をデ-タベ-スからえられた各種統計を分析して多方面・総合的に明らかにしようとしたものである。「納帳」には、文安2年1月から文安3年1月にいたる期間の兵庫津への船の、入港年月日・船籍地・積載品目・数量・船頭名・問丸名・関銭額・納入日の基本情報に加えて、使用枡の注記、関銭納入に関する注記などが詳細に記録されている。入港総船数1964、延べ積載商品数2645にのぼり、各項目の情報量は約20,000項目に達している。初年度は(平成2年)、これらの記載事項の確定(史料解釈)、コンピュ-タ-入力のための統一と調整、確定事項のコンピュ-タ-への入力に重点をおいて作業を進めた。平成3年度において、ほぼコンピュ-タ-入力を終え、デ-タベ-スとして利用可能な状態にすることができた。さらに、これをもとに時期別・商品別・船籍別等各種統計表を作成し、兵庫津への入津量の月別変化や集荷先の移動について具体的に明らかにすることができた。平成3年度においては、「米」について検討したが、今後「塩」をじめとする積載品目すべてにわたって検討を加え、瀬戸内海における商品輸送の実態を明らかにすることにつとめたい。
著者
岡野 雅子
出版者
群馬女子短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

今日、社会機構の分化は極めて進み金銭を媒介として必要なモノ・情報・サ-ビスなどを手に入れて我々の生活は運営されている。このような中で育つ子どもたちは、金銭について及びそれに代表される社会機構についての認識をどのように発達させていくのだろうか。それを明らかにして、消費者教育のための基礎的資料としたい。研究I・「お金」に対する感じ方・捉え方については、幼稚園年長児・小学2年生・小学5年生・中学2年生・高校2年生の計1105名を対象に質問紙調査(幼児には面接調査)を行った。その結果、『お金』や『お金持ち』の刺激語に対して「欲しい」「いいな」などの羨望を伴うプラスの情緒反応が多く、小学生及び郡部でその傾向が強い。中・高生になると、「けち」「欲張り」などのマイナスの情緒反応も示し始める。『お金で買えないもの』に対しては「いのち・人間」の回答も最も多く、中2で「友人」高2で「愛・こころ」も多い。幼児は具体的なモノの回答が多い。職業選択の理由は「もうかるから」はどの発達段階にも見られ差がないが、男子に多い。研究II・子どもの消費者意識については、小2・小5・中2・高2の計971名を対象に調査を行った。「お金を得るためには働くことが必要」「自分のやりたい仕事につきたい」「コマ-シャルで視たものを買う」「無駄使いをしてはいけない」「人が持っているものが気になる」は小学生ほど多い。研究III・学庭教育の関連については、幼児とその母親の102組及び小学3年生とその母親の122組を対象に調査を行った。概して子どもと母親の間にはかなりの認識のズレがあり、「お金は働いて得たものと話してくれる」「お母さんは『もったいない』と言う」では、母親はそうしていると思っていても子どもは必ずしも受信していないようである。それぞれの母ー子をペアにして回答の相関を見ると、ほとんど有意な相関は見い出せない。
著者
寺岡 隆 真弓 麻実子 中川 正宣 瀧川 哲夫
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

実験ゲーム研究における「因人のジレンマ」とよばれている心理学的事態は、いわゆる個人合理性と集団合理性に関する社会動機間の葛藤を示す典型的事態である。こ事態が何回も繰り返される場面では、この事態に参加するふたりのプレイヤーの選択は、しばしば最適解でない共貧状態に陥ってしまうことが多いが、この状態から共栄状態へ脱出するにはどうしたらよいかという問題がこの領域におけるひとつの主題になっている。本研究は、この主題を統制者が選択する反応系列によって相手側に協力反応を選択せざるを得ないようにする方略に関する視点と相手側に事態を規定している利得構造をいかに把握させるかという事態認知と情報統制とに関する視点に焦点をあてたものである。前者は「TITーFORーTAT」とよばれる方略,後者は申請者によって提起された「合成的分解型ゲーム」というパラダイムを基盤とする。本研究の目的は、これらのパラダイムが共栄状熊の実現に有効になり得るかということを実験的に検討することにある。本報告書は2部から成り、第1部はTIT-FOR-TAT方略に関する3系列の実験的研究,第2部は合成的分解型ゲームに関する2系列の実験的研究の成果を述べたものである。第1部における実験研究では、1)TIT-FOR-TAT方略には種々の型があり目的によって最適方略が異なること、2)利得和最大化のためには、可能ならば同時TIT-FOR-TAT方略が最適であること、3)利得差最大化にためには、当実験条件下では倍返しTIT-FOR-TATが最適であったこと、4)報復の遅延は効果を減ずること、などの結果が得られた。第2部における実験研究では、1)合成的分解型ゲームは理論的に標準的分解ゲームより効果があるにしても、そのままでは大きな効果を示さなかったこと、2)情報の統制効果は大で、相手に統制者の利得条件を示さない場合や相互の利得を示さない場合はとくに顕著であることなどの結果を得た。
著者
外村 泰子 上口 勇次郎
出版者
東京女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

マイクロ波の生体への障害を究明する実験は、1)上口がin vitroのヒト精子懸濁液にマイクロ波を照射し、染色体異常の出現を調査した。2)外村はマイクロ波の熱作用を、ショウジョウバエの唾腺染色体上のパフ誘発から調査した。3)マイクロ波照射対象をショウジョウバエの卵母細胞として、X-染色体不分離がF_1バエで検出されるかを調査した。1)〜3)までの実験は、電子レンジ周波数2.45GHz、出力500Wで5秒、10秒、出力200Wで60秒被爆させる処理方法ですすめた。1)の結果:in vitroのヒト精子では(1)被爆後照射時間による差は認められるが、精子懸濁液の温度の上昇がみられ、精子運動率も低下した。(2)生存した精子は、ハムスター卵に異種間受精をさせ染色体分析を行なった。マイクロ波による特定な染色体異常の増加の傾向はなく、このことはDNA損傷を生ぜめしないとして上口の実験は終了した。2)の結果:(1)マイクロ波被爆ではAshburner(1972)の記載による熱ショックパフと、新しいパフ誘発も観察された。(2)37℃、40分間湯煎器内で幼虫を飼育した時、唾腺染色体上のパフは逆に消滅する減少を示した。上述のことからマイクロ波特有な熱作用については1996年に、分子生物学的分野からの実験により追求したい。(3)の結果:(1)ある遺伝子系の雌株にマイクロ波を照射し、直ちに+雄株と交配させて羽化したF_1バエを数えた。性染色体異数体バエの検出からは対象群との間には差がなかった。この事実は上口の実験同様、マイクロ波による影響は陰性である。結果を明白にするため1996年は、対象郡にX線照射(400r)処理実験を計画する。(2)再度の実験時で、翅の奇形バエの発生、致死変異誘発による蛹から成虫バエへの羽化妨害などが見られた。1996年にはマイクロ波の特有な作用の決め手を電気泳動法から掴みたい。
著者
堀口 純子
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.データベース作成について(1)日本語の話しことばおよび中級日本語ビデオ教材のシナリオのデータベースを作成した。(2)日本語教科書の会話部分および日本語学習者の対話と聴き取りのデータベースを作成した。2.データベースの作成について(1)上記のデータベースを利用して、次のような分析を進めた。(1)縮約形のデータベースを作成し、それを分析して縮約形の練習のためのCAI教材を作成した。(2)相づちと予測のデータベースを作成し、聞き手のコミュニケーションストラテジーを明らかにした。(3)方言桃太郎の「ドンブラコ・ドンブラコト」の部分のデータベースを作成し、それをデータとして方言における清音と濁音および促音、撥音、長音の日本語学習者による聴き取りについて分析した。(4)方言桃太郎における文末のデータベースを作成し、日本語学習者による文末の聴き取りについて分析した。(2)上記のデータベースを利用して、次のような分析が進行中である。(1)話の切り出し、話順獲得、話順促し、言い淀み、などを分析することによって、会話のストラテジーを明らかにしようとする。(2)「ああ」「ええ」「まあ」「いや」「だから」「だって」「なんか」「ちょっと」「けど」「〜て」「〜し」「〜じゃない」などを分析することによって、言語形態の会話におけるストラテジーとしての機能を明らかにする。(3)初級日本語教科書に見られる縮約形のデータベースを作成し、それの類似型と数量的分析が進行中である。
著者
佐藤 吉信
出版者
東京商船大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

自動車事故の抑制には、運転者のエラーをバックアップする危険回避系を備えた先進安全車の実現が必須である。本研究では、この危険回避系のフエール・セーフ/フエール・オペラブル構成問題と安全性評価について検討し、以下の研究成果を得た。1.自動車が対象物と衝突をするハザードに対して加速インタロッキング、非常停止および操舵制御バックアップを行う危険回避系のフエール・セーフ・フエール・オペラブル・システム構成の可否について検討した。2.ドライバーの居眠りやよそ見などのヒューマンエラーによる追突事故を防止するためにトラックやバスで実用化され始めている車間距離警報装置の事故抑制効果を評価するためにフォート・ツリー解析を実施した。これより追突事故が1/3から1/4に削減できると結論された。また、同様の解析により、警報出力を自動車の停止装置に連結していわゆる非常停止危険回避系を構成した場合、追突事故が1/5から1/8に低減されると評価された。3.大手のトラック運送業者では、交通災害保険をいわゆる自己保険としているため、自己の減少が利潤に直結している。このため車間距離警報装置の利用に積極性がみられる。しかし、個人ユーザでの導入をはかるためには、さらに装置製造コストの低廉化および保険料のディスカウントなどの措置が必要である。4.コンピュータを用いたプログラマブル危険回避系では、技術革新が激しいため故障率など信頼性データが入手できない場合が多々ある。そこで、そのような危険回避系のフェール・セーフ・フェール・オペラブル・システム構成に従って、コンポーネントに近似的な統計量を与えて危険回避系の自己抑制力を評価するA-Cモデル構造関数法を開発し、先進安全車等へ適用を試みた。
著者
松尾 信一
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.明治以前の日本での最大の西洋百科事典の和訳書であるショメ-ル『厚生新編』の中の家畜(馬、驢、山羊、水牛、猟犬、猫、駱駝、羊、ラム、馴鹿など)、家禽・飼鳥(アヒル、鵞、七面鳥、雉、孔雀、カナリヤなど)、畜産物等(乳、バタ-、チ-ズ、獣皮、膠、鮓答、肉料理)について詳細に調査し、更に、シヤルモ(Chalmot)のオランダ原本及び江戸時代の本草書などとの比較を行った。例えば『厚生新編』の福禄獣と天狗はオランダ原書ではzebra(シマウマ)とangelus(天使)であることが判明した。これらの成果は論文として、信州大学農学部紀要第27巻115ー132頁(1990)に掲載してある。2.我国では、七面鳥のことを吐綬鶏、ホロホロ鳥を珠鶏と記した書物や資料がある。江戸時代以降の百以上の古書や古資料について詳細に調査した。その結果、江戸時代には七面鳥のことをカラクン鳥、唐国鳥と記した文献もあった。これは七面鳥のオランダ語Kalkoenから来た言葉で、日本語の発音から唐国鳥という漢字まで作成されていることが判明した。又、七面鳥とホロホロ鳥が江戸時代に渡来していることを確認できた。これらの成果は論文として在来家畜研究会報告第13号133ー143頁(1990)に掲載してある。3.3月29日の日本畜産学会で、図書として、江戸時代の『毛詩品物攷』(1785)、『相馬略』(1867)、明治時代の『養豚説略』(1870)、『斯氏農業問答』(1875)、『斯氏農書』(1876)、『新撰農書』(1886)、『農用家畜論』(1882)(以上畜産学書):『泰西訓蒙図解』(1871)、『博物新編訳解』(1874)、『動物学初編』(1875)、『薬用動物篇』(1876)、『通常動物』(1882)、『小学動物教科書』(1882)、『応用動物学』(1883)、(以上動物学書):雑誌として「牧畜雑誌」(1889年創刊)と「東京家禽雑誌」(1903ー5)の中の家畜・家禽、特に図と表に注目して展示報告をした。
著者
李 景みん
出版者
札幌大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は主として、北朝鮮における大戦の終結について研究した。ソ連軍は一般に言われるほど、参戦当初において、破竹の勢いで北部朝鮮に進撃したのではなかった。日本軍の抵抗は根強く、日本が降伏した8月15日の時点で、ソ連軍は成鏡北道で足踏み状態であった。しかし、戦争が終結し各地において戦闘が停止すると、その先遣隊は順調に南下を始めた。そして、8月24日には平壤に進出した。8月30日までには北朝鮮のほぼ全域を制圧するに至った。ソ連軍の進駐と同時に日本軍の武装解除が行なわれ、北朝鮮の各地はソ連軍の占領状態に入った。日本の植民地行政機関はソ連軍によって接収され消滅したが、それに取って代わり、朝鮮民衆の自治機関が占領軍当局の力によって新たな権力機関として誕生した。確かに、ソ連軍は、米軍とは異なり、表面的には朝鮮民衆の自発的な行動を認め、間接的な占領統治体制を施いた。長年民族の独立を希求してきた朝鮮民衆は、こうしたソ連軍を解放軍として歓迎したのである。しかし、ソ連軍は社会主義者を中心に「人民政治委員会」を樹立し占領政策に臨んで行った。それは朝鮮民衆の反発をかうものとなった。
著者
小林 昌二
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

5月期に口頭発表をした原稿について7月期に補足・補強して「日本古代の集落形態を村落(共同体)」として発表した(『歴史学研究』、626号、1991年11月)。この要旨について簡単にふれ、以後の研究について記す。一.弥生後期の環濠集落の解体により、古墳時代の豪族居館跡と集落跡とに分化・分裂していく様子を跡づけようとした。豪族居館も6世紀半ばを境に度質し、環濠土塁などの防御施設をもたないものとなっていく実態を,これまでの発堀調査例から指摘した。二.古代史の文献からも7世紀初頭の小墾田宮に環濠土塁は知られず,最近の調査例からも確認されない。その点からも豪族居館跡の変質も類推された。その背景に,志紀県主が屋根に堅魚木を掲げて雄略大王に処断された古事記記事のように,大王様による規制・王法の存在を想定した。三.大王権・主法の関連するこの時期の問題としてミヤケの,とくに後期ミヤケの事例として播磨風土記の扱う揖保郡の開発問題と,上毛野の緑野・佐野屯倉の検討を行った。(そのためのフィ-ルドワ-クと更なる資料蒐集の必要から調査を以後において行った。)四.古代集落をいくつか集めた「村」(共同体)の史的前提の基本をミヤケにおいて理解することは,豪族居館の環濠形態の規制をした大王権・王法を媒介にして可態であると思われ,従って,日本古代の「村」ムラには同称に環濠や村門などがないという特質に結びつく。ミヤケと集落,豪族居館と集落など具体的に実証しなければならない課題を残しつつ,一応巨視的な見通しを確立できたように考えている。以後,こうした実証的課題のために資料蒐集とその分析・検討・フィ-ルドワ-クを重ねているので、成果がまとまり次第発表する予定である。
著者
肥田野 登 中川 大
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究は大都市の都心部において郊外鉄道を直通運転した場合の効果を把握し, その効果の帰属について関連する主体別に明らかにすることを目的としている. 筆者らは郊外鉄道, 道路及び公園などのインフラストラクチャー整備に伴う効果を十全にかつ二重計算なく捉える方法として土地資産価値に注目して分析を進めてきた. 本研究はその一環として従来十分明らかにされてこかった都心部での交通プロジェクトをとりあげたものである.そのため, まず都心部での主体との関連性を明確にした. そのけっか, 既成市街地内においては土地利用変化や地代上昇に対しての既得権者の抵抗があり, 必ずしも便益が地価に転移しない可能性が示された.またこれらの効果を定量的に計測するために土地利用予測モデルを構築した. 都心部での鉄道サービス向上に伴う土地利用変化をきめ細かく把握する実用的なモデルは現在のところ存在しない. そこでここでは東京の新玉川線, 小田急線の半蔵門及び千代田線乗り入れを対象としてとりあげ, 新たに商業集積地区を単位とし, かつ地区間の複合条件をとり入れた集計型ロジットモデルを作成することとした. モデルは小売, サービスその他事業所(3次のみ)ごとに推定し, 概ね妥当な結果を得た. 説明要因の中では後背地のポテンシャルに係わるものが最も説明力が大きなものとなっている. 又モデルによる現況再現性も高い. 次にこのモデルを中心として関連する土地所有者, 事業所, 鉄道事業者, 自治体ごとの便益と費用を計測するための影響分析のサブモデル及び地価関数を推定した. 又事業者の地代についてはヒアリングから得られた値を用いた. その結果これらの郊外鉄道の都心部への乗り入れは土地資産価値で8700億円の上昇をもたらし, 又事業所, 港区にも便益が帰属することが判明した.