著者
生友 尚志 永井 宏達 西本 智一 田篭 慶一 大畑 光司 山本 昌樹 中川 法一 前田 香 綾田 裕子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0851, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】広背筋は上半身の中で最も大きい筋であり、その働きは多岐にわたる。この広背筋の筋電図学的研究は多くなされているが、その中でもPatonらは広背筋を6つに分けて筋活動の測定を行い、機能的な分化があることを報告している。また、前田らも同様の方法により行っているが、両者とも肩関節運動時の筋活動を測定しており体幹運動時の筋活動は測定していない。さらに広背筋の体幹伸展、回旋動作の研究は多く行われているが、体幹側屈動作時の筋活動の研究は少ない。本研究の目的は、体幹側屈動作を先行研究に加えて測定し、広背筋の体幹側屈時の筋活動とその機能的分化について筋電図学的特徴を明らかにすることである。【対象と方法】対象は上下肢及び体幹に整形外科的疾患のない健常成人男性10名(平均年齢24.9±3.0歳)とした。なお、被験者には本研究の趣旨を説明し同意を得た上で測定を行った。筋電図の測定にはNORAXON社製MyoSystem 1400を使用し、表面電極による双極誘導法にて行った。測定筋は右広背筋とし、Patonらの方法をもとに広背筋をC7棘突起と上前腸骨棘を結んだ線上で等間隔に4つ(広背筋上部、中上部、中下部、下外側部)に分け、筋線維に平行に表面電極を貼付した。また、体側のTh9の高さの筋腹(広背筋上外側部)にも貼付した。測定動作は腹臥位での右肩関節伸展・内転・水平伸展・内旋・下方突き押し、端座位での体幹右側屈・プッシュアップ、側臥位での体幹右側屈・右股関節外転・左股関節内転、背臥位での右骨盤引き上げ運動の計11項目とした。プッシュアップは端座位で臀部を床から持ち上げた状態で3秒間保持した時の積分筋電図値(以下IEMG)を、それ以外は3秒間最大等尺性収縮した時のIEMGを求め、それらを徒手筋力検査に準じた肢位にて測定した肩関節伸展最大等尺性収縮時のIEMGを100%として正規化し、各部位ごとに%IEMGを求めた。統計処理は反復測定分散分析を行った。【結果と考察】各動作において部位ごとの%IEMGを比較すると、全ての動作において有意な差がみられた。肩関節水平伸展、内旋においては広背筋上部が他の部位に比べて高値を示し、肩関節内転やプッシュアップは広背筋下外側部が高値を示した。肩関節下方突き押しについては広背筋上外側部、下外側部が高値となった。これに対して、体幹側屈動作では側臥位体幹右側屈において広背筋上外側部、中下部、下外側部が高値を示し、座位体幹右側屈、側臥位右股関節外転・左股関節内転、背臥位右骨盤引き上げ運動においては広背筋下外側部が高値となった。本研究の結果より、広背筋は筋線維により機能的に分化していることが確認できた。また、広背筋の上部線維は肩関節運動時に大きく働き、外側線維については体幹の側屈を伴うような運動時に大きく働くということが示唆された。
著者
伊澤 佳久平 野間 晃幸 山本 昌志 木村 勝紀 伊藤 裕之 竹友 直生 沼野 香世子 川島 眞
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-5, 2008 (Released:2008-02-07)
参考文献数
6
被引用文献数
2

慢性的便秘で乾燥皮膚を有する20歳~39歳までの女性56名を2群に分け,LB81乳酸菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus 2038株ならびにStreptococcus thermophilus 1131株)を使用したヨーグルトあるいはこれにコラーゲンペプチド(CP)ならびにセラミド(CE)を配合したヨーグルトをそれぞれ120 mlずつ1日2回,4週間摂取させた.摂取前後の比較で,両群ともに皮膚の弾力性,乾燥および鱗屑の程度が改善された.CP・CE含有ヨーグルト摂取群ではキメ密度が有意に改善された.肌状態に関するアンケート調査(19項目)では,両群とも多くの項目で改善がみられた.両群ともに便秘の症状が有意に改善されたことから,本結果にヨーグルトの整腸作用が関与している可能性が考えられた.
著者
生友 尚志 永井 宏達 西本 智一 田篭 慶一 大畑 光司 山本 昌樹 中川 法一 前田 香 綾田 裕子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.A0851, 2006

【目的】広背筋は上半身の中で最も大きい筋であり、その働きは多岐にわたる。この広背筋の筋電図学的研究は多くなされているが、その中でもPatonらは広背筋を6つに分けて筋活動の測定を行い、機能的な分化があることを報告している。また、前田らも同様の方法により行っているが、両者とも肩関節運動時の筋活動を測定しており体幹運動時の筋活動は測定していない。さらに広背筋の体幹伸展、回旋動作の研究は多く行われているが、体幹側屈動作時の筋活動の研究は少ない。本研究の目的は、体幹側屈動作を先行研究に加えて測定し、広背筋の体幹側屈時の筋活動とその機能的分化について筋電図学的特徴を明らかにすることである。<BR>【対象と方法】対象は上下肢及び体幹に整形外科的疾患のない健常成人男性10名(平均年齢24.9±3.0歳)とした。なお、被験者には本研究の趣旨を説明し同意を得た上で測定を行った。筋電図の測定にはNORAXON社製MyoSystem 1400を使用し、表面電極による双極誘導法にて行った。測定筋は右広背筋とし、Patonらの方法をもとに広背筋をC7棘突起と上前腸骨棘を結んだ線上で等間隔に4つ(広背筋上部、中上部、中下部、下外側部)に分け、筋線維に平行に表面電極を貼付した。また、体側のTh9の高さの筋腹(広背筋上外側部)にも貼付した。測定動作は腹臥位での右肩関節伸展・内転・水平伸展・内旋・下方突き押し、端座位での体幹右側屈・プッシュアップ、側臥位での体幹右側屈・右股関節外転・左股関節内転、背臥位での右骨盤引き上げ運動の計11項目とした。プッシュアップは端座位で臀部を床から持ち上げた状態で3秒間保持した時の積分筋電図値(以下IEMG)を、それ以外は3秒間最大等尺性収縮した時のIEMGを求め、それらを徒手筋力検査に準じた肢位にて測定した肩関節伸展最大等尺性収縮時のIEMGを100%として正規化し、各部位ごとに%IEMGを求めた。統計処理は反復測定分散分析を行った。<BR>【結果と考察】各動作において部位ごとの%IEMGを比較すると、全ての動作において有意な差がみられた。肩関節水平伸展、内旋においては広背筋上部が他の部位に比べて高値を示し、肩関節内転やプッシュアップは広背筋下外側部が高値を示した。肩関節下方突き押しについては広背筋上外側部、下外側部が高値となった。これに対して、体幹側屈動作では側臥位体幹右側屈において広背筋上外側部、中下部、下外側部が高値を示し、座位体幹右側屈、側臥位右股関節外転・左股関節内転、背臥位右骨盤引き上げ運動においては広背筋下外側部が高値となった。本研究の結果より、広背筋は筋線維により機能的に分化していることが確認できた。また、広背筋の上部線維は肩関節運動時に大きく働き、外側線維については体幹の側屈を伴うような運動時に大きく働くということが示唆された。<BR>
著者
前田 陽一郎 丹羽 俊明 山本 昌幸
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.507-518, 2006 (Released:2007-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
7 11

カオティックサウンドは, インタラクティブアート生成システムの1つとして人工生命の分野で研究が行なわれている. これにより, 人間の予想を超える多様性と複雑さをもつ音楽をコンピュータを利用して生成することが可能である. カオティックサウンドの研究目的は, カオス理論を用いることにより, 複雑かつ可変なサウンドを作り出す有効な手法を見つけることである. しかしながら, 単純にカオスで得た数値と対応する音を演奏する場合, 人間にとってただ音が鳴るだけの不協和音となることが予想される. そこで本研究では, カオス的非同期性や全体の同期性の制御が可能な大規模カオスを用いて音の生成を行い, さらにより自然な音に感じられるよう音楽理論の要素技術の一部を導入する手法を提案する. 本システムでは, 大域結合写像 (GCM) によって音高, 音長, 音量要素を決定し, 生成した音楽に小節, 調性, 休符, テンポ, エコー, 音色などの音楽的要素が追加される. これにより生成される音は自然音, 環境音楽などの, ヒーリングミュージックのような効果が予想される. また, この手法を用いてインタラクティブカオティックアミューズメントシステム (ICAS) を構築し, シミュレーションにより生成された音の感性評価を試みたので, これについても報告する.
著者
田中 夏樹 岡西 尚人 稲葉 将史 山本 紘之 川本 鮎美 早川 智広 加藤 哲弘 山本 昌樹
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第24回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O032, 2008 (Released:2008-12-09)

【はじめに】 母趾種子骨(以下、種子骨)障害に対しては、保存療法が第一選択となるが、そのほとんどが足底挿板による免荷の有効性を報告するものである。今回、足底挿板が処方できない状況であった症例の理学療法を経験した。Dynamic Alignmentを変化させるべく運動療法を行うことで種子骨周囲の運動時痛が消失した。本症例におけるDynamic Alignmentの特徴と理学所見、荷重時における種子骨の疼痛との関係について考察を踏まえ報告する。 【症例紹介】 症例は野球、空手を行っている中学1年の男性である。2年前から両側種子骨周囲に運動時痛を訴え、本年5月に歩行時痛が憎悪したため当院を受診し、理学療法開始となった。 【初診時理学所見】 両側とも種子骨を中心に圧痛を認め、歩行時痛(右>左)を訴えた。歩行時footprintにて両側ともに凹足傾向であった。また、Thomas testが陽性/陽性(右/左)、SLRが50°/50°、大腿直筋短縮テストが10横指/5横指(殿踵部間距離)と股関節周囲筋に伸張性の低下を認めた。足関節背屈可動域は25°/25°であり、両足をそろえたしゃがみ込みでは後方に倒れる状態であった。歩容はmid stance以降、支持脚方向への骨盤回旋が過度に認められた。 【治療内容および経過】 腸腰筋、大腿直筋、hamstringsを中心にstretchingおよびself stretchingの指導を行い、距骨を押し込むためのTapingを指導した。また、3週後からはショパール関節のmobilizationを行った。5週後にはThomas testが両側とも陰性化、SLRが80°/80°、大腿直筋短縮テストが0横指/0横指と改善を認め、歩行時、ランニング時の疼痛が消失し、全力疾走時の疼痛程度が右2/10、左1/10と改善した。 【考察】 hamstringsのtightnessによる易骨盤後傾、重心の後方化に拮抗するため、股関節屈筋群の活動量が増加し、腸腰筋、大腿直筋のtightnessが出現したと推察された。そのため、股関節伸展可動域の低下が生じ、歩行ではmid stance以降に骨盤の支持脚方向への過回旋による代償動作による足角の増加に加え、凹足傾向と足関節背屈可動域の低下によりmid stance~toe offにかけて荷重が足部内側へ急激に移動することで母趾球への荷重が過剰となり歩行時痛が出現していると推察された。そのため、股関節周囲筋のtightnessを除去するとともにショパール関節のmobilization、足関節背屈可動域増加を目的としたtapingを行い、toe off時における母趾球への過剰な荷重を回避することで種子骨への荷重による機械的ストレスの減少を図ることが可能となり、運動時痛が軽減、消失したと考えた。有痛性足部障害といえども、全身の機能障害が関与しているケースもあると考えられ、足底挿板療法以外にも症状改善に足部以外の部位に対するアプローチの有効性が示唆されたものと考える。
著者
山本 昌弘 徳田 泰子 芦田 康示 谷 幸治
出版者
日本未病システム学会
雑誌
日本未病システム学会雑誌 (ISSN:13475541)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.267-273, 2007-03-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
5

目的: 「ルンブルクスルベルス末」は, ミミズ類アカミミズが原料のルンブルクスルベルス末を主成分とする機能性健康食品である。ミミズ類は伝統的医学では地竜として, 脳卒中, 関節痛などに用いられる。成分ルンブロキナーゼが見出され, 線溶系促進作用を持つと報告されている。今回, 製造元である (株) ワキ製薬から本品の提供を受け, 初期段階の臨床試験を行った。方法: 高脂血症・高血圧症・軽症糖尿病などの生活習慣病を有する被験者10名の参加を得て行った。男性8名, 女性2名, 平均年齢48.0±2.8歳 (S. E.)。凍結乾燥精製成分160mgを含む被験品1カプセルずつ1日3回, 毎食後服用。診察・採血検査は, 服用開始2週前, 服用開始直前, 1カ月後, 2カ月後, 3カ月後終了時に行った。原疾患治療のための薬剤は, 服用量を変えないで継続。その他の薬剤は, 試験開始2週前から服用を禁止。推計学的処理はWilcoxon matched-pairs signed rank testによった。結果: 自覚症状: 服用開始時, 何らかの自覚症状を訴えた9例において, 改善項目数・改善程度の観点で, 服用により何らかの改善をみた例が8例あった。疲れやすさ・めまい・冷え・頭痛・肩こり・不眠・いらいらなどに対する効果がみられた。自覚症状の延べ改善率は59%, また症状ごとの改善度の総平均値をみると推計学的有意に有効であった。なお, 自覚症状の改善率および改善度の判定については, 山本らの前報に準拠。検査所見: 血圧, 脂質代謝, 糖質代謝, 血液凝固線溶系, 体重などについて, 服薬前後の比較を行った。服用前値については2回測定で平均値を採用した。脂質代謝に関して最も興味ある成績が得られた。何らかの改善は10例中7例にみられた。服用開始前と終了時との値を比較し推計学的検定を行った結果, 血中LDLコレステロール値は有意に低下, HDLコレステロール値は有意に上昇した。血液凝固線溶系については, 本試験の採血時期, 検査項目では, PT-INR, FDPにほとんど影響を見出し得なかった。また, 中性脂肪・血中総コレステロール, 血糖・HbA1C, 体重・BMI, 血圧などについては, 有意の変化は認めなかった。教案と結論: 本剤の有する自覚症状改善作用とコレステロール代謝改善作用とは, 報告されている血液凝固線溶系への良効とあいまって, 動脈硬化症・血栓症・末梢循環不全などに関連する生活習慣病予防・未病対策貢献への期待が持たれる。
著者
本橋 秀之 藤本 敦子 坂根 稔康 山本 昌 矢野 義孝
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.133, no.11, pp.1235-1241, 2013 (Released:2013-11-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

In recent years there have been over 30000 suicides annually in Japan. This is one of the most serious problems for Japanese society. Because mental disorder is closely associated with suicide, factors related to the increase in mental disorders and suicides should be clarified. In this study, various data regarding social factors were evaluated to assess the correlation of the number of patients with mental disorders and suicides among the 47 prefectures of Japan. Various data regarding social factors, such as income, savings, or rate of divorce, were obtained from the database of the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan. Among the factors, the annual income and the amount of savings were significantly correlated with the number of patients with mental disorder. On the other hand, while the annual income did not have a significant correlation with suicides, the amount of savings had a significant correlation with suicides. In conclusion, the annual income and amount of savings may both be one of the important factors involved in mental disorders, and the savings may also be a factor affecting suicides. These analyses are valuable in helping to clarify the causes of mental disease, and can hopefully contribute to the health and welfare of Japanese.
著者
山本 昌樹 林 省吾 鈴木 雅人 木全 健太郎 浅本 憲 中野 隆
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100444, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】上腕筋は,上腕骨前面下半部に単一の筋頭を有するとされるが,Gray’s Anatomy(2005)においては「2 〜3 部からなる変異が見られる」と記載されている.一方,Leonello et al.(2007)は,「上腕筋は,全例において浅頭と深頭の2 頭を有する」と報告している.我々は,第16 回臨床解剖研究会(2012)において,上腕筋が3 頭から構成されることを明らかにするとともに,肘関節屈曲拘縮との関連について報告した.今回,これら3 頭の形態的特徴と機能について考察する.【対象および方法】愛知医科大学医学部において,研究用に供された解剖実習体15 体24 肢を対象とした.上肢を剥皮後,上腕二頭筋,腕橈骨筋,長・短橈側手根伸筋を展開した.上腕筋を起始部より分離して筋頭を同定し,筋頭の走行や配列を詳細に観察した.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,死体解剖保存法に基づいて実施し,生前に本人の同意により篤志献体団体に入会し研究・教育に供された解剖実習体を使用した.観察は,愛知医科大学医学部解剖学講座教授の指導の下に行った.【結果】全肢において,上腕筋は,三角筋後部線維から連続する筋頭(以下,外側頭),三角筋の前方の集合腱から連続する筋頭(以下,中間頭),上腕骨前面から起始する筋頭(以下,内側頭)に区分することができた.外側頭は,上腕骨の近位外側から遠位中央に向かって斜めに,かつ,浅層を走行して腱になり,尺骨粗面の遠位部に停止していた.中間頭は,最も薄く細い筋束であり,内側頭の浅層を外側頭と平行して走行し,遠位部は内側頭に合流していた.内側頭は,最も深層を走行し,停止部付近においても幅広く厚い筋腹から成り,短い腱を介して尺骨粗面の近位内側部に停止していた.これら3 頭は,上腕中央部においては,外側から内側へ順に配列していた.しかし肘関節部においては,外側頭と中間頭は浅層に,内側頭は深層に配列していた.また,内側頭の縦断面を観察すると,一部の線維が肘関節包前面に付着する例が存在した.これらの例において肘関節を他動的に屈曲させると,内側頭とともに関節包の前面が浮き上がる様子が観察された.【考察】上腕筋を構成する3 頭は,内側から外側へ配列しているだけではなく,各頭が特徴的な走行や形態を呈するため,それぞれ異なる機能を有することが推測される.上腕筋外側頭は上腕骨の近位外側から遠位中央へ,一方の上腕二頭筋は近位内側から遠位中央へ斜走する.そのため肘関節屈曲時,上腕筋外側頭は前腕近位部を外上方へ,一方の上腕二頭筋は内上方へ牽引すると考えられる.すなわち肘関節屈曲時,外側頭と上腕二頭筋は共同で,前腕軸の調整を行うと考えられる.また外側頭は,3 頭の中で最も遠位に停止し,肘関節屈曲における最大のレバーアームを有するため,肘関節屈曲における最大の力源になることが示唆される.さらに,外側頭は三角筋後部線維から連続するため,三角筋の収縮によって,作用効率が変化する可能性がある.換言すれば,外側頭の作用効率を高めるためには,三角筋後部線維を収縮させた上で肘関節屈曲を行うことが有効であると思われる.内側頭は,肘関節部において深層を走行し,幅広く厚い筋腹を有する.したがって,肘関節屈曲時に収縮して筋の厚みが増すことによって,外側頭のレバーアームを維持または延長し,その作用効率を高める機能を有すると考えられる.また,肩関節の腱板が上腕骨頭を肩甲骨へ引き寄せる作用と同様に,内側頭は,尺骨滑車切痕を上腕骨滑車に引き寄せ,肘関節の安定性向上に寄与すると考えられる.さらに,内側頭が関節包前面に付着する例があることから,肘関節運動に伴う関節包の緊張度を調節する機能が示唆される.換言すれば,内側頭の機能不全によって,関節包前面のインピンジメントや肘関節屈曲拘縮が惹起される可能性が推測される.中間頭は,最も薄く細いため,その機能的意義は小さいと思われる.しかし,上腕中央部においては外側頭と並走し,遠位部においては内側頭に合流することから,外側頭と内側頭の機能を連携する,文字通り‘中間的な’役割を担うと考えられる.上腕筋は,3頭を有することによって,肘関節屈曲における前腕軸の調整,作用効率の向上,肘関節包の緊張度の調節など複合的な機能を担うと考えられる.また,肘関節屈曲に関しては,主として外側頭が機能することが示唆される.【理学療法学研究としての意義】根拠に基づく理学療法を行うためには,とくに筋骨格系に関する機能解剖学的かつ病態生理学的な研究が不可欠である.本研究は,上腕筋の筋頭構成を詳細に観察し,肘関節運動に対する関与について考察を加えたものであり,肘関節拘縮の病態理解や治療の発展にも寄与すると考える.
著者
森下 啓明 坂本 英里子 保浦 晃徳 石崎 誠二 月山 克史 近藤 国和 玉井 宏史 山本 昌弘
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.120, 2006 (Released:2006-11-06)

<症例> 61歳男性、既往歴に脳梗塞がある。アレルギー歴なし。 平成17年10月29日昼頃、自宅近くの山林で採取した白色のキノコ約20本を調理して摂取した。同日20時頃より腹痛、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状が出現したが自宅で経過観察していた。10月31日には経口摂取不能となったため、当院救急外来を受診。受診時は意識清明、バイタルサインに大きな異常はなく、神経学的異常所見も認めなかった。しかし、血液検査に於いて肝機能障害、腎機能障害を認めたことからキノコ中毒を疑い緊急入院となった。 患者の持参したキノコの特徴および、経過(消化器症状に続発する肝機能障害)よりドクツルタケ(アマニタトキシン)中毒を疑い、日本中毒センターに問い合わせを行った上で治療を開始した。補液、活性炭投与(25g/回、6回/日、2日間)、血液還流療法(2日間)、ペニシリンG大量投与(1800万単位/日、2日間)を施行し、肝機能障害は改善傾向、第26病日には正常化した。また、第7病日より急性膵炎を発症したが、メシル酸ガベキサート投与などを行い第28病日には改善したため、平成17年12月26日退院となった。 入院時に採取した血液、尿および持参したキノコは日本中毒センターに送付し、分析を依頼している。<考察> ドクツルタケ、タマゴテングタケなどに含まれるアマニタトキシンは、ヒトにおいては約0.1mg/kgが致死量とされており、日本におけるキノコ中毒の中で最も致死率の高いものである。急性胃腸症状とそれに続発する肝機能障害が典型的な経過であり、肝不全が死因となる。本例は典型的な臨床経過よりアマニタトキシン中毒と診断したが、ドクツルタケでは1から2本で致死量となることから、今回摂取したキノコは比較的アマニタトキシン含有量の少ない種類であったものと推測された。治療法としては腸肝循環するアマニタトキシンを活性炭により除去すること及び対症療法が中心となり、解毒薬として確立されたものはない。血液還流療法が有効とする報告もあるが、未だに確固たる証拠はない。ペニシリンG大量投与によってアマニタトキシンの肝細胞への取り込みが阻害されることが動物実験によって確認されているが、臨床における有効性は確立されていない。その他、シリマリン、シメチジン、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン等が使用されることもあるが、いずれの有効性も未確立である。 本例では活性炭投与、血液還流療法、ペニシリンG大量投与を行い、肝機能障害を残すことなく生存退院に至った
著者
野村 俊之 山本 昌彦 鈴木 光也 吉田 友英 大和田 聡子 重田 芙由子 池宮城 慶寛 田村 裕也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.11, pp.869-874, 2011 (Released:2011-12-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

2007年8月より2009年7月までの2年間に, 東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科において良性発作性頭位めまい症と診断した1,145名を対象とし, われわれが考案した運動療法で治療を行った. われわれの方法は患側が特定できなくても整形外科疾患など頸椎・脊椎に問題のある症例でも, 患者が自宅で自分のペースで治療を行えるという特徴を有している. その結果1カ月以内に80.7%, そして3カ月以内では91.7%のめまい消失をみた. その中でも発症より1週間以内に受診した症例では2週間以内に80%の症例がめまいの消失をみている. めまい発症より受診時期が遅くなるにしたがって治癒期間も長くなる傾向があった.
著者
山本 昌幸 棚田 教生 元谷 剛 小林 靖尚 片山 知史
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.178-186, 2020-08-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1

瀬戸内海東部のアイゴの資源生態を明らかにするため,2013年4–12月に岡山県,香川県,徳島県で漁獲された本種の年齢・成長と産卵期について調べた.標準体長は117–310 mmであった.生殖腺重量指数(GSI)は雌が0.04–40.36,雄が0.01–30.16となった.組織切片観察から,雌雄それぞれGSIが3.57と4.79以上の個体が成熟し,7月下旬に退行期の雌が観察された.GSIが3.57以上の雌と4.79以上の雄は,それぞれ6–8月と6–7月に出現した.さらに雌雄ともにGSIは6月中旬から7月に高くなった.耳石のチェックマークは6–8月に年1回形成された.最高年齢は雄と雌でそれぞれ4歳と8歳であった.雌雄の有意な成長差は認められなかった.成長式は,SLt=255 (1−e−0.56(t+0.95)), (SL:標準体長mm, t:年齢)となった.
著者
田中 丈夫 木下 牧子 野村 英樹 山本 昌弘 清水 貴子 神代 龍吉 船崎 俊一 向原 茂明 松村 真司
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.239-242, 2011-08-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

1)調査した10カ国での生涯教育(CME・CPD)履修が義務化されていたのは7カ国で,2カ国では義務に近い推奨の制度であった.我が国と同様「自主性」で運用されている制度はスペインのみであった.2)2000年以降,CME,CPD制度変革がグローバルな潮流として窺えた.3)医療の社会的説明責任をはたすために,我が国のCME・CPD制度のあり方と継続について幅広い論議が必要である.
著者
山本 昌和 吉村 英祐
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.79, no.701, pp.1515-1521, 2014-07-30 (Released:2014-09-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

In order to obtain useful data for computer simulations of crowd flow in stations, we conducted surveys of upward crowds on stairs in real stations. We obtain detailed time series data of numbers, crowd flow coefficients, and walking speeds of people on stairs and confirm following 4 points quantitatively. 1. Crowd flow on stairs change from “unstable state” to “stable state” and “decreasing state”. 2. On narrow stairs, “unstable state” quickly disappears, and moves to “stable state”. 3. Crowd flow coefficients reach its peak and keep a stable value. 4. Walking speeds are almost constant during “stable state”.
著者
石原 康成 水池 千尋 水島 健太郎 三宅 崇史 稲葉 将史 久須美 雄矢 堀江 翔太 立原 久義 橋本 恒 山本 昌樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1028, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】小・中学生の投球障害肩・肘症例の中には,棘下筋(以下,ISP)の筋力低下や筋萎縮が生じている例が存在する。これらISPの機能不全は肩甲上腕関節の不安定性に影響をもたらし,永続的な障害の一因となりうるため,早期発見の重要性が高い。しかし,投球障害肩・肘症例の中でもISPの筋力低下や筋萎縮を生じているものと,生じていないものが存在する。そこで今回,小・中学生の投球障害肩・肘症例におけるISPの状態を明らかにすることを目的として,小・中学生の野球選手を対象として調査を行った。併せて投手と投手以外のポジション(以下,野手)で比較し,ISPの状態の差が下肢タイトネスに由来している可能性を考え,これに関しても分析を行ったので,ここに報告する。【方法】対象は,少年野球団,シニアリトル,中学校野球部に所属している小・中学生の男子66名(平均年齢12.7±2.2歳)。肩もしくは肘に疼痛があり病院を受診した障害群は33名(以下S群,平均年齢12.9±2.3歳),で内訳は投手17名,捕手4名,外野手3名,内野手9名であった。投球障害のない対照群は33名(以下C群,平均年齢12.6±2.2歳)で,内訳は投手13名,捕手1名,外野手6名,内野手13名であった。方法は,対象者に対して,ISP筋萎縮の有無,下肢のタイトネスの指標として両側の下肢伸展挙上角度(以下,SLR),股関節内旋角度(以下,Hip IR)を測定した。SLR,Hip IRは投球側と非投球側に分けて検討を行った。ISP筋萎縮の有無の判定は,ISPの触診と視診により行い,投球側上肢と非投球側上肢で比較し判定を行った。統計解析には,ISP筋萎縮の有無についてはχ2検定,2群の測定値の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】全体におけるISP筋萎縮は,S群では20名(60.6%),C群では9名(27.2%)であり,有意にS群での割合が高かった。投手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち11名(65%),C群13名のうち3名(23%)で,有意にS群での割合が高かった。野手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち6名(35%),C群13名のうち10名(77%)で,両群間に有意差は認められなかった。投手のSLRは,投球側のISP筋萎縮ありで69.3±9.2°,筋萎縮なしで72.8±8.4°,非投球側の筋萎縮ありで71.1±8.6°,筋萎縮なしで71.6±8.3°と,有意差を認めなかった。Hip IRは投球側の筋萎縮ありで17.9±11.6°,筋萎縮なしで26.3±9.8°,非投球側の筋萎縮ありで17.9±11.9°,筋萎縮なしで26.3±10.1°と,両側Hip IRともに筋萎縮あり群が有意に低値を示した。野手のSLRは,投球側の筋萎縮ありで65.7±11.2°,筋萎縮なしで63.6±11.8°,非投球側の筋萎縮ありで64.3±10.8°,筋萎縮なしで64.2±10.6°と,有意差を認めなかった。Hip IR(投球側)は筋萎縮ありで19.7±7.1°,筋萎縮なし20.1±8.7°,非投球側は筋萎縮ありで20.3±9.7,筋萎縮なしで21.9±9.6°と,有意差を認めなかった。【考察】本調査の結果,小・中学生の投球障害肩・肘症例において,ISP筋萎縮は投手に多いことが明らかとなった。次に,筋萎縮のある選手の下肢のタイトネスは,SLRにおいて投手と野手とで両群間に有意差を認めなかったが,Hip IRにおいて投手が有意に低値を示した。投球動作は全身の運動連鎖から成り立つため,上肢帯だけでなく下肢の柔軟性が必要とされる。投手は野手に比べて投球数が多い。ISPはフォロースルー時に加速された上肢の減速のために遠心性収縮を強いられることが要因として考えられた。ISPの負担を軽減するには,フォロースルー時の上肢の減速に非投球側のHip IRが関わる可能性が考えられる。したがって,股関節の内旋制限のある投手は,投球動作の中で生じるISPへの負担が大きい可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】小・中学生の野球選手に対して潜在的に投球障害肩・肘を評価する方法としてISPの筋萎縮の有無が有用である可能性がある。SLRとHip IRは投球障害の機能的検査法である原テストの検査項目でもある。本研究により小・中学生の投手における投球障害肩・肘症例に関してはSLRよりHip IRを優先的に改善する機能強化やアプローチが投球障害をより早期に改善させる一助になる可能性がある。