著者
岡川 梓 堀江 哲也 日引 聡
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

農業の生産性・効率性上昇のためには、農業経営の大規模化を図ることと、高付加価値化が重要であることが従来から指摘され続けてきたが、いまだ実現できていない。本研究では、農家の効率性評価を行い、地域、出荷先、環境保全への取り組みと非効率性との間に統計的な関係がみられることを示した。とくに出荷先の選択は農家の経営技術が反映されていると考えられ、農協頼みでない農業経営が効率性の高さと相関することがわかった。また、作物選択と環境保全への取り組みについても統計的な関係が認められた。
著者
吉永 龍起
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

イカナゴ属魚類は,沿岸生態系の食物連鎖を支え,水産資源としても重要な魚類である.一方,日本各地で資源が激減しており,禁漁措置がとられているにも関わらず回復の兆しが見られないことが深刻な問題となっている.そこで,イカナゴ属の特徴的な行動である潜砂に着目し,本属魚類の再生産を阻む要因を探ることを目的とした.まず(1)北海道南部から瀬戸内海までを網羅した複数の地点に分布するイカナゴ属を用いた飼育実験を行い,潜砂行動の制御機構を明らかにする.続いて,(2)夏季の数カ月間にわたって砂に潜る夏眠について,潜砂により獲得される高水温耐性の分子機構を解明する.
著者
西村 善博 山本 正嗣 小林 和幸 永野 達也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

粒径が0.1µm以下のナノ粒子(PM0.1)は肺胞まで到達し、その影響は全身へと波及することから、健康への影響が懸念されている。しかし、PM0.1が喘息の増悪や難治化に及ぼす影響は分かっておらず、本研究ではそれを明らかにする。まず、粒子状物質の分級サンプリングが可能なナノサンプラーⅡ(Kanomax)を用い、2019年2月7日から2月12日の5日間、東京都新宿区において計640.5µgのPM0.1を回収した。次に、マウス喘息モデルの作成およびPM0.1の経鼻投与実験を行った。すなわち、OVA(卵白アルブミン)10µg/匹と水酸化アルミニウム1mg/匹をDay1とDay8に腹腔注射してOVAに感作させたマウスに、PM0.1 10µg/匹とOVA 200µg/匹をDay14,15,16に経鼻投与し、Day17に気管支肺胞洗浄液を採取した(PM0.1群)。OVA群、PBS群では、Day14,15,16にOVAのみ、ないしPBSのみを投与した。気道炎症の評価として気管支肺胞洗浄液の総細胞数、好酸球数の解析をしたところ、PM0.1群およびOVA群ではPBS群に比して有意な上昇を認めたが、PM0.1群とOVA群の間に差を認めなかった。また、上記のPM0.1群とOVA群に対して、Day14, 15, 16の経鼻投与1時間前にステロイド(デキサメタゾン20µg/匹)を腹腔注射する治療実験も行った。ステロイド投与により、PM0.1群、OVA群ともに総細胞数、好酸球数の減少を認めたが、ステロイドへの反応性は2群間で有意な差を認めなかった。上記の結果、PM0.1と喘息の増悪や難治化には関係性がみられない可能性があるが、粒子径の違いにより気道炎症の程度に差が生じる可能性があり、引き続きPM2.5やPM10といった粒径のより大きな物質との比較検討を行う予定である。
著者
畦 五月 中田 理恵子
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

レクチンは主に生の食品から精製され、加熱して後、つまり食用の食品からのレクチンの精製やその生物学的性質の研究は管見の限りみられない。そこで、材料にキントキマメ、ナタマメ、サトイモを選択し、加熱後にも食品中に残存するレクチンを精製しその性質を、食品として摂取した場合に期待できるガン細胞抑制作用及び、免疫賦活作用の両側面から明らかにした。加熱したキントキマメとサトイモにはレクチンが失活せずに残存し、タンパク質分解酵素にも耐性を示した結果から、人体に取り込まれた場合の機能性を検討した。その結果、一部のガン細胞に対する増殖抑制作用並びに、免疫賦活作用を有することが明らかになった。
著者
今川 真治 中道 正之 大芝 宣昭 金澤 忠博 糸魚川 直祐 中道 正之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

サル社会の中では、ケンカなどの敵対的行動をしながらも毛づくろいなどの親和的行動も行われる。これら2種の行動は、社会の中で他の個体と共存していくための不可欠な行動である。順位関係が比較的厳しいマカク属のサル類を対象として、この敵対的行動と親和的行動の関係が調べられた。野外で生息するニホンザル集団の場合には、生後4年間を通して、オスの子ザルが親しく付き合う同性の個体は一定であり、「仲間関係における恒常性」が認められた。敵対的行動に基づいて明らかとなったこれらの個体の間の順位は、その母ザルの順位関係とほとんど同じであった。親しく付き合う個体は互いに、順位が隣り合うか、近い個体であった。メスの子ザルの間でも、オスの子ザルと同様の傾向が確認できた。しかし、オスとメスの異性間における仲間関係の恒常性は認められなかった。ケージ内で飼育されている準成体、成体の親和的行動と敵対的行動の頻度を、ケージ内に止まり木が多数設置されて豊かな環境と止まり木の少ない乏しい環境で比較した。予想に反して、豊かな環境内では敵対的行動も親和的行動も生起頻度は少なかった。他方、乏しい環境ではどちらの行動の生起頻度も高くなった。この事実は、止まり木が少なく、互いに好ましい場所にサルが集まり、局所的に過密になり敵対的行動が多くなりやすいが、同時に、敵対的行動が生起した後の仲直り行動や、過密による心的緊張を低下させるための親和的行動が比較的頻繁に生起したためと考えられる。これらの事実は、環境条件に即して、サルが社会的緊張を軽減する行動を行っていることを意味している。
著者
牧野 泰美
出版者
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、吃音のある子どものレジリエンス(精神的な回復力、立ち直る力)とその向上に関する知見として、レジリエンスは、人間関係、主体性、ユーモア、創造性、コミュニケーション等により構築されること、吃音問題との関連としては、折り合い、仲間、客観視、気持ちの解放、笑い、感情の対処、他者信頼等が重要な要素であること、子ども自身が吃音を対象化できること等の重要性が整理された。上記の観点を踏まえた指導・支援として、子どもと教師が対等に対話を進め、吃音について語ることができる実践内容・方法を検討・提案した。
著者
中嶋 文子 赤澤 千春 BECKER CARL.B
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

SOC(首尾一貫感覚)はストレスを乗り越える力とされ、SOCが高い人ほどストレスを乗り越える力があり、ストレスを乗り越えた経験を積み重ねることはSOCを高めるとされている。就職後間もない新人看護師は、ストレスを乗り越えてゆくことでSOCを高める機会とすることもできる。我々の先行研究では、SOCを高める介入によって、就職時のSOCが低い場合、就職3ヶ月後には一旦上昇するが、その後は低下することが明らかとなった。また、教育担当者からは、看護実践の意味を言語化することが難しい者のSOCが低い傾向が指摘された。そこで、SOC得点の低い者に特化した支援を開発するため、新人看護師へのインタビューを実施した。分析対象となった6名の就職時のSOC合計得点は、50点未満の者4名、51点以上60点未満の者1名、60点以上の者はいなかった。研究協力機関では、継続的な研修とともに6ヶ月間のローテーションを行っているが、就職後6ヶ月は本配属の直前の時期であり「部署配属への期待と不安」を語っていた。そして、「看護実践の困難感」を抱きながらも「成長の実感」や「対人関係の困難感」を感じつつ「患者中心の看護の希求」を「自己実現への意欲」としていることを語っていた。また、就職後12ヶ月までに到達可能な目標をイメージできない者は、就職時SOC得点が低い傾向にあった。就職後12ヶ月のインタビューにおいて「成長の自覚」「職場チームへの帰属感」「看護の手応え」を語った者は、就職時のSOC得点が低くても、その後徐々に上昇していた。一方で、12ヶ月のインタビューにおいて「否定的な教育体制」「成長の遅れに対する焦り」を訴え、患者への看護に目を向ける余裕のなかった者は、1年間を通してSOC得点が低下していた。新卒看護師が定期的に到達可能な目標を描き、自らの成長を自覚する支援が求められていることが明らかとなった。
著者
高野 淳一朗
出版者
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究でヒトと類人猿以外で唯一B型肝炎ウイルス(HBV)に感受性のあるツパイ(Tupaia belangeri)を用いて、HBV感染動物モデルの作製を目的としてHBV高感受性ツパイ系統の樹立を目的とした。血中ウイルス量としては低いレベルしか確認はできなかったが、検出率の比較では雑系動物であるツパイにおいてHBV分子クローンの有用性が確認でき、F1群とF2群で比較したところ、2倍以上の検出率であることが確認できた。また、1頭だけだが、肝臓の腫瘍化も確認できた。これらの結果から、HBV高感受性ツパイ系統樹立の高い可能性と今後のHBV研究での有用性が確認できた。
著者
吉田 久美 尾山 公一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

花色素アントシアニンの機能性研究、および生合成・膜輸送研究のさらなる展開を目指し、柔軟かつ効率的なアントシアニンの化学合成法の研究を行った。アントシアニンの生合成における鍵酵素であるアントシアニジン合成酵素(ANS)が酸化酵素であることにヒントを得て、配糖化フラボノールの金属還元によるアントシアニン合成を試みた。本反応が、フラボノール体からフラベノール体への還元と次のアントシアニンへの空気酸化の二段階の反応であることを明らかにした。さらに、種々の母核および配糖化様式のフラボノール体へ本反応を適用し、汎用性の高い反応であることを確認できた。
著者
比良松 道一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

三倍体生物種が稀に高い有性繁殖能力を発現する機構はよくわかっていない. オニユリとその近縁種コオニユリ(いずれもユリ科ユリ属)では, オニユリゲノム2組, コオニユリゲノム1組を有する三倍体オニユリが発生し易く, 三倍体オニユリの成熟種子の生産は, 花粉親の遺伝子型に大きく影響された. 自然条件下での三倍体オニユリの発生と遺伝的分化は, 二倍性のオニユリ配偶子と高い交雑親和性を有する一倍性のコオニユリ配偶子によって促進されていると考えられる. こうした性質を有する一倍性配偶子は, ユリ属植物における三倍体レベルでの交雑育種を可能にすると考えられる.
著者
阪口 雅弘 辻本 元
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

犬においてワクチン接種後の副反応としてアナフィラキシーなどワクチン成分に対するアレルギー反応が認められている。このワクチン接種後の副反応の原因アレルゲンを検討したところ、ワクチンに含まれる牛胎児血清(FCS)成分が原因であることをこれまでに明らかにした。本研究においてはFCS中の原因アレルゲンを検討した。ワクチン接種後アレルギー反応を起こした犬血清を用いたImmunoblot法により、FCSを解析した。68kDaに強いバンドが、75kDaに弱いバンドが検出された。分子量から68kDaのタンパクとして牛血清アルブミン(BSA)が疑われたため、精製BSAに対するImmunoblot法を行ったところ、BSAに対する強いバンドが検出された。以上の結果から、BSAがFCS中に存在するアレルゲンの1つとして同定された。初めてワクチンを接種する犬においても副反応が起こることや犬の食物アレルギーの原因として牛肉が最も多く報告されている。これらの理由からワクチンを接種前に犬が牛肉等のアレルギーに感作されていた可能性があると考え、牛肉成分中のアレルゲン成分を解析した。牛肉アレルギー犬の血清を用いたImmunoblot法では、牛肉アレルギーの犬において67-kDaと55-kDaに陽性バンド認められた。精製タンパクを用いたimmunoblot法により、67-kDaのバンドはBSA、55-kDaのバンドはbovine gamma- globulin (BGG)であることが判った。BSAおよびBGGは、牛肉アレルギーの犬における牛肉成分中のアレルゲンであることが同定された。市販の犬用ワクチン中には多量のBSAおよびBGGが含まれていることから、本研究結果はワクチン接種後アレルギー反応と牛肉アレルギーの関連性を示唆している。
著者
渡 孝則
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では亜鉛結晶釉 (Willemite結晶 (Zn2SiO4)) において, 平成30年度の議論を基に磁器素地に穴をあけずに、シード材(ZnO+陶土)を表面に塗布する方法による結晶成長に成功した。結晶の成長温度が成長速度及び結晶形態に及ぼす影響を調べた。また、Mn発光結晶の形成について、シードより釉薬への添加が良いことが分かった。結晶成長温度を1050~1200℃まで50℃刻みで変化させ、結晶の大きさ及び形状を調べた。1100℃及び1150℃で最も大きく成長し(3時間で16mm)、前者では円盤状結晶と針状結晶が混在した組織、後者では針状組織となった。これは高温ほど結晶がガラスへ融解し易いためと考えられる。各保持温度で得られた結晶の配向性を調べた処、1050℃では粒状結晶からなっていたため配向性は認められなかったが、1100℃及び1150℃では(hk0)面の強い配向が認められた。これまではシード材である(ZnO+陶土)へのみMnOを添加していたが、この場合には発光強度が中央で最も強く、結晶周辺では殆ど認められなかった。そこで、今回の実験ではこれ以外にMnOを釉薬へ配合した実験も行った。254nmの紫外線照射下で、Willemite結晶自身も薄い緑色の発光を示した。ただし、装飾には利用できない。シード材に混合した場合には昨年と同様に結晶内で発光強度が低下した。一方、釉薬にMnOを乳鉢混合した場合には結晶が2~3mmしか成長せず、添加MnOが成長阻害材となっていることが分かった。なお、この結晶は緑色発行を示した。ただし、(釉薬+MnO粒子)混合物をボール見る粉砕・混合すると成長阻害効果は認められず、16mmの結晶が得られた。MnO添加量は0.3mol%が適切で、多くすると結晶成長阻害が認められた。この結晶は均一に強い緑色発光を示し、実用へ一歩近づいたと考えられる。
著者
小宮 秀明 森 豊 黒川 修行
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまで内臓脂肪面積(VFA)と肥満関連遺伝子との関連性についての報告はない.今回は肥満関連遺伝子としてB3AR、B2ARやUCP1を用い、VFAの蓄積に及ぼす肥満関連遺伝子の影響について検討した.被験者は男性81名、女性186名である.測定項目はVFA、腹囲、血糖、血清脂質、血圧である.アンケートは生活習慣、食習慣及び運動習慣である.3遺伝子の多型別にVFAを比較した結果、有意差は認められなかった.また、年齢、運動習慣、歩行量を調整した分析においても多型間に有意差は見られなかった.一方、男性においては運動習慣との間に有意差が確認され、運動の実施がVFAの減少に影響を及ぼすことが示唆された.