著者
児玉 直樹 竹内 裕之 山口 弘次郎 小杉 尚子
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、mild ADとMCIを対象にデータベースに蓄積されたMRIとADAS-Jcogを使用し、mild ADとMCIの早期診断について検討した。対象はmild AD192名とMCI138名の計330名である。本研究の結果、VOI内萎縮度、全脳萎縮領域の割合、VOI内萎縮領域の割合、萎縮比の全てにおいて有意な差が認められた。また、ADAS-Jcogの下位項目のうち10項目で有意な差が認められた。さらに、判別分析の結果、全脳萎縮領域の割合、見当識、単語再生、再生能力、物品呼称で判別率80.9%を得た。よって、この5項目はmild ADとMCIの診断に有用な指標であった。
著者
小倉 幸雄 井上 芳光 近藤 徳彦
出版者
大阪国際大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

高温下運動時における摂取水分の温度と量が体温・循環調節反応に及ぼす影響を,(1)摂取水温の相違,(2)夏季スポーツ活動時の飲水量と飲みやすさ,(3)摂取水温の相違と飲水量,から検討した.その結果,摂取水温の相違は,飲水量が等しい場合には低水温ほど運動の早期から物理的な冷却効果により直腸温を抑制し,自由飲水の場合には低水温の冷却効果と飲水量の調節による影響が推察された。さらに,実際のフィールド運動時においても 5℃水温では物理的冷却効果による体温上昇の抑制,発汗量の抑制,脱水率の軽減を導くことが窺え,5℃程度の水分補給が生体負担度を軽減し,ひいては熱中症予防に有効であることが示唆された.
著者
内田 浩明
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、カントの晩年の草稿である『オプス・ポストゥムム』の思想を、他の哲学者・思想家との関係に着目しながら究明した。本研究では、スピノザ主義やシェリング、シュルツェの『エーネジデムス』等の『オプス・ポストゥムム』の第7束や第1束で言及される思想との関係について考察したが、特にカントがどのような意図でスピノザ主義に言及したのか、そもそもスピノザやシェリングの思想を肯定的に捉えたのかどうかが解明できた。
著者
大村 一史
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-10-21

定型発達と非定型発達を隔てうる分水嶺を探るための手がかりを、情動的実行機能(情動処理機能)と認知的実行機能(抑制機能)の両面から捉え、課題遂行時の課題成績・脳活動に及ぼす性差および障害特性傾向の影響を調べた。情動処理機能および抑制機能ともに、課題成績・脳活動に及ぼす性差および障害特性傾向の影響を明らかにするまでには至らなかった。情動処理機能の解析は今後も継続し、更なる検討を進めていく予定である。
著者
犬飼 隆
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

大宝2年度と養老5年度の戸籍及び8世紀の計帳、出土木簡等に書かれた約5千人の古代日本人の名について、日本語語彙としてのよみを確定し、多くに語義解釈を施した。併せて、それらを古代における漢字使用の資料として利用する方法を開発した。
著者
瀬口 昌久
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

アトミズにおける生命論の最も深刻な問題点は、魂を構成するアトムにアトム本来の規定を逸脱した、他のアトムを統合する働きが要請されていたことであった。このことはより一般化すれば、アトム同士が結合する「力」の問題である。その根底には、アトムが結合する場合に、なぜアトムが結合して新たな大きなアトムを形成せず独立性を保ちうるのかというアトムの独立性の問題が伏在している。それはアトムの不可分割の本質規定の問題と表裏一体である。アトムの不可分割の理由として、従来、アトムが空虚をうちに含まないことが最大の理由とされていた。しかし、そこから論理的に導出されるのは、アトム同士の結合や衝突は、アトムが独立性を保つ限り、空虚の薄膜が介在する遠隔的な間接的接触になるという帰結である。しかし、その帰結はピロポノスが6世紀にアリストテレスのテキストから可能性として古注で示唆する以外は、古代アトミストたちの文献には見られず、また、古代アトミズムが復活された16世紀以降の西洋の思想家たちにも総じて無視されている。しかも、重要なことに遠隔的な斥力や引力を働かせる働きは、空虚そのものにもアトムの性質にも何ら想定されていないのである。空虚を内部に含まないことに基礎を置くアトムの不可分割性は、アトムに、結合や衝突や反発のあり方をまったく説明できないという重大な欠陥をはらんでいる。それゆえ、ハイゼンベルグが指摘しているように、19世紀までのアトム同士の結合の説明として、アトムにホックや釣り金具がついたような、奇妙な形態のアトムが想像されたのである。古代原子論とそれを歴史的に継承した原子論において、不可分割性というアトムの本質規定が、アトム同士の結合を説明できない原理的な欠陥を内包している。それが生命論として、魂を構成するアトムが他の他のアトムを統合する力を説明できないことのより原理的な問題であることが明らかになった。
著者
大西 浩次
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

多胡事象とは、近傍の星で確認された初めての重力マイクロレンズ現象である。標準的な銀河系構造で、このような現象が起きる確率は非常に小さい。しかし、「質量分布関数の低質量側が、標準モデルより大きい」と考えると、この現象が説明出来る可能性がある。実際、MOAグループによる重力マイクロレンズの探査による、近傍の褐色矮星によるレンズ現象の発見や「浮遊惑星」の発見などから、低質量側の質量分布関数が、標準モデルの2倍程度になる事が判った。これらより、多胡天体の正体は褐色矮星や浮遊惑星であると考えられる。これらは、近い将来、固有運動の測定によって明らかにされるであろう。
著者
片倉 喜範 藤井 薫 原田 額郎 山下 俊太郎 門岡 桂史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Caco-2細胞をヒト腸管モデル細胞株として用い、SIRT1プロモーター制御下でEGFPを発現するベクターを安定導入した組換えCaco-2細胞を樹立した。フローサイトメーターを用いてEGFPの蛍光強度の変化を追跡した結果、乳酸菌T2102株を陽性菌として選定した。T2102株は、SIRT1の活性化の結果、β-カテニンの脱アセチル化を誘導するとともに、その発現を消失させうることが明らかとなった。また、T2102株はDLD-1細胞におけるテロメラーゼ発現も抑制するとともに、細胞老化を誘導することが明らかとなった。またがん細胞抑制能が足場非依存性増殖能及び造腫瘍能の結果より明らかとなった。
著者
中村 民雄
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

この研究はイギリスのEU脱退(Brexit)の前後を比較し、イギリスとEUの各法制が、越境的な広がりを持つ共通の問題についてグローバル次元でいかなる法を形成するかを観察することを前提に、グローバル行政法の基礎理論を考えようとする。ところが観察の前提であるBrexitが、イギリス国内政治の混乱により、本研究期間の2年度めに入っても実現しておらず、先行きも不透明である(2019年4月時点)。そこで研究の有意義な成果がでるように方法と焦点を再考する必要に迫られた。ゆえに初年度の環境法制の変化については、(1)現行の法制度が脱退協定により変化するものかどうかを検証すること。(2)イギリス独自の制度的工夫でグローバル行政法形成に直結しそうな展開を調査すること。(3)グローバル行政法の基礎理論の考察をEUが日本と締結した協定も手がかりに進めること(これはBrexit後のイギリスがEUと締結する協定のモデルとなりうる)。以上の3点に絞って研究を進めた。(1)については、EUの環境法制度のうち、イギリスがもっとも実施において困難を抱えてきた大気汚染防止の項目について、脱退後は独自法制度で取り組むことが示唆されていることを把握した。(2)については、全国規模ではないが、地方分権後のウェールズにおいて議会が、将来世代の利益を代弁して現在の世代の政策形成において考慮させる「将来世代オンブズマン(Future Generations Ombudsman)」の制度を、ウェールズ議会の制定法により創設したことに焦点をあて、2019年3月に当該オンブズマン事務局において法令やネット情報等では得られない具体的な活動の成果や活動上の困難や留意点、そして世界の類似の制度との協力の有無や協力の成果についてインタビュー調査をした。(3)については、EU-Japan Forumにおいて研究発表をした。
著者
瀬尾 尚宏 八木 宏明 八木 宏明
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

制御性T(regulatory T ; Treg)細胞は自己免疫、がん免疫、感染免疫、移植免疫、さらにはアレルギー免疫など、あらゆる免疫応答の調節に関与する。皮膚免疫領域においても、アトピー性皮膚炎や自己免疫性脱毛症や接触皮膚炎など、皮膚炎症を伴う薬疹の発症など皮膚免疫アンバランスに大きく関与することが解明されつつあり、皮膚疾患を含めた免疫性疾患の治療では、Treg細胞をどのように制御するかが今後の重大な鍵になると考えられている。Treg細胞はCD4^+CD25^(++)forkhead box(fox)p3^(++)のTリンパ球群であるが、現在知られている最も特異性の高いfoxp3は細胞内分子であるため、siRNAなどを用いてその分子の機能を制御することは可能だと考えられるが、現時点で広く受け入れられた方法とは考えにくく、それを標的としたTreg細胞活性の制御に関する臨床応用は難しい。Treg細胞表面分子としては、CD25の他にCTLA-4やGITRなどの発現の優位性が知られているが、そのほとんどが通常のT細胞の活性化マーカーでもあるため、Treg細胞を他のリンパ球集団から見分けることが可能な特異的マーカーとはなりえない。近年、EDG1やCXCR4といったGタンパク質共役型受容体(Gprotein-coupled receptor ; GPCR)がTreg細胞制御に関係すると予測できる報告がなされた。我々もこれまでの研究でTreg細胞には種々のGPCRが優位に発現している可能性を示唆できる結果を得ている。このように、Treg細胞制御には細胞表面上のGPCR発現パターンと細胞内シグナル、さらにはGPCR刺激による細胞動態を詳細に理解することが重要だと思われる。本研究では、各種GPCRのTreg細胞発現を検討し、Treg細胞優位と考えられる15分子を同定することができた。その15種GPCR分子中4分子は、特異的なポリクローン抗体を用いたTreg細胞染色で比較的強い発現を示す。さらに、それら抗体を用いたTreg細胞除去により、効果的に免疫抑制活性を取り除くことができる初期的実験にも成功した。このように、本研究においては、GPCR分子がTreg細胞の動態と制御において極めて重要だという世界で初めての見解を示すことができた。
著者
久保田 紀彦 中川 敬夫 有島 英孝 井戸 一憲
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1. VEGF-Aに対するsiRNAをデザインし、ヒト悪性神経膠腫細胞株U87およびU251に対するVGEF-Aの発現抑制効果をRT-PCRおよびELISAにて検討し、2種のVEGF-Aの発現抑制効果の高いsiRNA配列を見出した。2.先のsiRNAをU87およびU251細胞にトランスフェクションし、その培養上清によるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の血管形成能をfibrin gel assay法にて検討し、血管形成能が阻害されることを確認した。3.U87およびU251細胞に対するsiRNAの導入効率を通常のリポフェクタミン法とMagnetofection法にて比較検討した。Magnetofection法により、より短時間に培養腫瘍細胞に導入できることを確認した。4.手術にて採取された神経膠腫組織中のVEGA-A発現をRT-PCR、ELISA、免疫組織染色にて検討した。腫瘍の悪性度と、腫瘍組織内血管密度、VEGF-A発現量に正の相関を認めた。5.VEGF-A mRNAの安定化因子であるHuRの発現を、培養悪性神経膠腫細胞および手術組織において、RT-PCRおよび免疫組織染色にて検討した。悪性神経膠原細胞は、高率にHuRを発現していた。6.HuRに対するsiRNAを作成、U87およびU251細胞にトランスフェクションし、腫瘍細胞の増殖能に及ぼす影響をMTS assayにて、VGEF-Aの発現抑制効果をELISAにて検討した。腫瘍細胞の増殖およびVGEF-A発現に対し抑制効果を認めた。7. HuR inhibitorであるleptomycin B(LMB)のU87およびU251細胞に対する効果を検討した。腫瘍細胞の増殖およびVEGF-A発現に対し抑制効果を認めた。8. U87細胞をヌードマウスの皮下に接種し、腫瘍モデルを作成、3週間後に、先のsiRNAを通常のアテロコラーゲン法にて局注し、腫瘍の成長抑制効果を検討したが、抑制効果は得られなかった。さらに、同siRNAを磁性粒子にて標識し、Magnetofection法を併用したが、腫瘍成長に対する抑制効果は得られなかった。
著者
谷山 紘太郎 上園 保仁 林 日出喜 貝原 宗重
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

消化管におけるGABAの作用を生体位(丸ごと)イヌの小腸で検討したところ、摘出小腸を用いて得られた結果と同様にGABA-B受容体を介した反応に加えてGABA-A受容体を介した反応も見られたが、総合的にはGABA-B受容体を介した反応が優勢で、結果としてGABAは消化管のコリン作動性神経からのアセチルコリン(ACh)の遊離を抑制して腸管運動を低下させた。GABA-B受容体拮抗物質でACh遊離の促進して腸管運動が亢進した結果も得られ、生体では、GABA-B受容体が優勢に作動していることが明らかになった(論文1と2)。GABA受容体のうちGABA-B受容体はG蛋白質と共役する受容体である。他のG蛋白質共役型受容体とは異なり、ヘテロ二量体(GABA-B1サブユニットとGABA-B2サブユニット)を形成してはじめて受容体機能を発揮する。GABA-B1サブユニットにはGABAの結合部位が存在し、7種類のタイプがある。GABA-B2サブユニットはG蛋白質との共役部が存在し、1種類のみである。腸管におけるGABA-B受容体の形態を検討した。RT-PCR法でこれらサブユニットのメッセンジャーの存在を調べたところ、GABA-B1とGABA-B2の両サブユニットともにイヌ、ヒトの腸管に存在し、GABA-B1サブユニットではGABA-B1dをのぞくGABA-B1aからGABA-B1gまでの6種類のサブタイプが存在していることが明らかになった(論文3)。かくして、腸管においてGABA-B受容体はヘテロ二量体として存在するものと想定される。GABA-B2受容体がヘテロ二量体を形成し、存在しているのか否かを、二つの発現系、すなわちアフリカツメガエルの卵母細胞とハムスター腎細胞(BHK細胞)を用いて検討した。(1)GABA-B1あるいはGABA-B2のサブユニットをそれぞれ単独に発現した卵母細胞ではGABA-B受容体としての機能を表現することがなかったが、両サブユニットが共発現した卵母細胞ではGABA-B受容体としての機能を表現した(論文4)。(2)2種類の蛍光蛋白標識とそれぞれのサブユニットとの複合体を作成し、BHK細胞に導入、発現させ、共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、GABA-B2サブユニットにG蛋白質が共役していること、GABA-B1aサブユニットはGABA-B2サブユニットと複合体を形成していることを形態学的にも証明できた(論文4)。GABA-B2サブユニットと組み合わせた7種類のGABA-B1サブユニットの性質を検討したところ、GABA-B受容体機能の強さは、1a=1b>1c>1dの順であった(論文投稿中)。また、ヒト食道下部括約筋においても、GABA-B1とGABA-B2の両サブユニットが蛋白質として存在することが判った。二重免疫染色法で食道下部括約筋に分布する神経細胞膜上に両サブユニットが二量体として存在することを見出した(論文投稿中)ので、GABA-B受容体作用薬を逆流性食道炎の治療薬として応用できるものと考えられる。以上の成果から、GABA-B受容体作用薬の消化管運動機能改善薬への用途について、その可能性大であることが明らかになった。GABA-B1サブユニットの組織特異性の解析によって、消化管選択的GABA-B受容体作用薬の創製が可能になる。
著者
市村 高男
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、土佐国幡多荘が四国随一の貿易陶磁器出土地である点に着目し、その荘園領主一条氏による海外貿易の可能性を探り、合わせて中世日本における幡多地域の歴史的な役割について考察した。その基本的な作業として、一条氏の外戚となった加久見氏の屋敷跡の発掘調査を実施し、建物跡や中国産陶磁器や国産の陶器・土器など多数の遺物を検出、土佐でも有数の存在であったことを確認した。加久見氏屋敷跡は、城跡や菩提寺・家臣団屋敷などを伴う小世界の中心であり、川を媒介に港湾・港町とも直結する海の領主の本拠に相応しいものであった。一条氏は、こうした海の領主たちを広く組織し、海上における彼らの日常的な活動を取り込むことによって、広域的な交易活動に参画していた。一条氏は実際に唐船を建造しており、しばしば舶来品を朝廷や京都の一条氏へ贈るなど、海外貿易に関与していた様子を明確に示している。畿内の一角からブランド石材で作られた多数の石造物が搬入されていたことも明らかになってきた。幡多地域で多量の中国産等の陶磁器類が出土するのも、一条氏の広域的な交易活動によるものと考えてよさそうである。また、一条氏は、防長の大内氏、豊後の大友氏、日向の伊東氏と婚姻関係を結び、豊後水道から瀬戸内海にかけての航路の安全を確保し、この航路を頻繁に使用していた様子も確認できる。さらに本願寺や紀州の雑賀門徒とも結んで紀淡海峡から太平洋を通って幡多や九州へ通じる航路も確保していた。土佐国幡多荘は、瀬戸内海・豊後水道ルートと太平洋ルートとが合流するところに位置しているが、それによってこの地域の海運上の位置が決定的に高まることになった。一条氏が幡多荘を重視したのはこのような理由によるものであった。
著者
國定 俊之 尾崎 敏文 藤原 智洋
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

テロメラーゼ活性依存性に癌細胞内で増殖して細胞死を誘導する腫瘍選択的融解ウイルスを利用した治療は、単独で投与するよりも、放射線治療や化学療法と併用することで、より強力な抗腫瘍効果を認めた。さらに、相乗効果も確認でき、肉腫に対する新規療法となる可能性が示された。そこで、これらのウイルス治療を利用した実際の臨床応用では、単独投与ではなく、放射線治療との併用療法を考えていく。臨床応用へ向けた基礎研究は、ほぼ予定どおり行うことができた。肉腫患者へのウイルス治療の臨床試験が食道癌ですでに開始されており、今後は肉腫で早期臨床応用を開始できるように、プロトコールを作成していく。
著者
西野 友年
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では2次元的な局所重率の積として表される試行関数を、2次元量子系および3次元古典系の変分関数として用いる数値くりこみ群手法を開発した。2次元量子系については、その代表例であるS=1/2正方格子XXZ模型に対して、3自由度の等方的IRF模型を変分波動関数として用い、少ない自由度で基底エネルギーの上限値を精度良く評価できることを実証した。特に、XY異方性が強い場合に、近似精度が改善される。3次元古典系では、その代表例である立方格子イジング模型に対して、162自由度の局所重率を敷き詰めた変分関数を適用してみた。この場合は最適化すべきパラメターの数が多いので、自動的にテンソル要素を改良する必要がある。試行錯誤の結果として、エネルギーの変分極小を正しく導く計算アルゴリズムの開発に成功し、相転移温度の精密評価が可能であることを実証した。以上2つの例では系が一様であった。これは、変分エネルギーの評価手段として「角転送行列繰り込み群」を用いたことによる制限である。そこで、秩序変数が空間変調を持つ場合も取り扱えるように「密度行列繰り込み群」をテンソル積型変分の形式中に取り入れる試みもはじめた。古典競合相互作用系の代表であるANNNI模型にこの新たな解析法を適用し計算を進めている。これまでに、標準的な相図として従来用いられて来た「悪魔のバラ」的な構造には、平均場近似による「整合的変調秩序相の強い安定化」が含まれている可能性などが得られている。これらの研究の副産物の一つとして、空間次元をひとつ下げた1+1次元対称/非対称確率的拡散系に対する光円錐内部での局所因子の足し上げに、角転送行列繰り込み群がそのまま応用できることが判明した。ただ、系の初期条件によっては、角転送行列繰り込み群で用いる密度行列が自明になり、繰り込み群変換に利用できない場合がある。この問題は、今後解決すべき研究課題の一つとしたい。
著者
高橋 弘紀 茂木 巖
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

高品質・高機能材料を得るための1つの方法として,磁場・磁気力場を利用した材料プロセスの研究を行った.その手段として磁場中で同時に3方向から観察可能な加熱装置を開発し,いくつかの有機結晶に対して磁場中溶融凝固過程のその場観察を行った.その結果,尿素の凝固過程においては,過冷却状態から瞬時に凝固するのを観察し,取り出した容器内では針状結晶が生成する位置に磁気力による違いがあることを見出した.
著者
石井 徹哉 渡邊 卓也 矢野 恵美
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

情報通信技術の進展は,めぐるましく,クラウドコンピューティングがその主流となりつつある。また,今後「モノ」のインターネットが情報通信技術の中心へとなることが予想される。こうした状況にあっては,現在の情報の保護に関して,情報の化体した媒体を財物として解釈し,その保護を図っていくという保護のあり方は,弥縫策としての限界を露呈している。こうした状況を打破するには,情報の化体する媒体という財物概念を放棄し,情報それ自体の管理・支配の侵害を直接処罰する刑事立法が必要といえる。また,児童ポルノの刑事規制は,その保護法益の理解に問題があり,児童の権利・自由を直接保護するものに改められるべきである。
著者
松本 哲哉
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、消化管からのバクテリアル・トランスロケーションの過程でどのようにプロバイオティクスが消化管粘膜免疫に作用し、さらに全身感染に発展させる要因について検討することを目的としている。近年、癌化学療法の進歩や臓器移植の増加に伴い、免疫不全患者における感染症の制御は重要な課題となっている。私達のこれまでの研究では、一部のプロバイオティクス株はむしろ全身感染を増悪させ、その病態に粘膜免疫が関与していることが示唆された。そのため、消化管粘膜免疫の活性化が負の方向に感染を導く可能性を含めて、その機序を解明することを目的としている。