著者
滝澤 恵美 鈴木 雄太 小林 育斗
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

抗重力動作における股関節内転筋の役割を検討するために、内転筋が発揮する股関節伸展筋トルクを大殿筋やハムストリングスと比較した。抗重力動作としてスクワット動作を選択した。三次元的に運動データと床反力データを収集し、筋骨格モデル(SIMM)を用いて各筋の伸展筋トルクを推定した。大殿筋と大内転筋は、ハムストリングスよりもより大きな伸展筋トルクを発揮した。大内転筋の抗重力機能はハムストリングスよりも大殿筋に類似するものであり、この筋は補助的ではなく主要な抗重力筋として機能するだろう。
著者
日笠 弘基
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

がん抑制シグナルであるHippo経路の分子基盤を解明するために、その活性を制御し、機能的に相互作用する遺伝子や化合物を、細胞ベースのハイスループットスクリーニングや質量分析法により同定し、機能解析を行った。これらの研究により、その活性制御剤として、イベルメクチンを始めとする複数の薬剤を特許出願して一部を論文発表するとともに、Hippo経路の新規抑制標的として、がん遺伝子産物であるmicroRNA制御タンパク質Lin28Bを見出し、発表した。
著者
山本 耕平
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、人獣共通感染症の可能性のない魚コラーゲンを足場材として用い、歯髄除去後の歯髄を再生する、真に細胞生物学的な歯髄治療法の可能性を多面的に解析し、新たな歯髄再生療法の開発を図ることを目的とする。再生医療を推進する上で基礎となる組織再生工学には、細胞、成長因子、足場の3項目が不可欠である。歯科保存学領域において特に歯内療法分野において今回、再生医療の原理・原則を導入した。確実で早期に歯髄欠損修復を進めることで歯の延命化が可能となり、臨床上極めて重要である。具体的な研究項目は、①ヒト歯髄幹細胞の特性の確認②魚コラーゲンを使った足場材の有効性・安全性の証明をin vitro、in vivoの系で検証する。予定であるSCIDラットが入手が難しくその代替実験を考える間、令和元年度秋季学術大会にて魚由来コラーゲンペプチドによるヒト歯髄由来幹細胞の骨芽細胞分化誘導能の解析を共同実験者としてポスター発表した。しかし、SCIDラットは入手困難であり代替としたSCIDマウスでは歯髄再生には困難であった。令和元年度は歯髄組織由来歯髄幹細胞膜分取の研究に着手している。
著者
大澤 陽介
出版者
東京都立駒込病院(臨床研究室)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

スフィンゴ脂質シグナルは種々の細胞機能に関与している。そこで、大腸がんの肝転移モデルをマウスで作成し、スフィンゴ脂質を調節する酸性スフィンゴミエリナーゼの役割を解析した。酸性スフィンゴミエリナーゼは腫瘍のマクロファージを増加させることにより抗腫瘍効果を示すことを見出した。この効果は、悪性黒色腫の肝転移モデルでも認められた。また、肝臓内のマクロファージは肝線維化や原発性肝細胞癌に対してもβカテニンシグナルを介して重要であることを見出した。スフィンゴ脂質はマクロファージの機能を調節しており、種々の病態の治療標的になりうることが示唆された。
著者
山本 寛 長瀬 隆英 新藤 隆行
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

Adrenomedullin(AM)ヘテロ接合体ノックアウトマウス(AMKO)とその同腹子(野生型)を用いてOvalbumin(OVA)腹腔内投与により感作した喘息モデルマウスを作製した。対照群には生理食塩水の投与を行った。マウスを麻酔・人工換気下におき気道内圧、気流を測定し、肺抵抗、肺コンプライアンスを算出した。気道反応性を評価するためメサコリン(MCh)吸入負荷を施行した。その結果、AMKOマウスにおいて有意に気道過敏性が亢進していることが判明した(EC200RL : saline-treated・AM^<+/+>, 16.81±2.01mg/ml ; saline-treated AM^<+/->, 16.73±2.34mg/ml ; OVA-treated・AM^<+/+>, 7.95±0.98mg/ml ; OVA-treated AM^<+/->, 2.41±0.63*mg/ml, respectively, *P<0.05 vs. the other groups)。MCh負荷前後の組織AM濃度を検討したところ、AMKO群ではMCh負荷後のAM濃度が有意に低く、組織AM濃度の不足が気道反応性の亢進に関与している可能性が示唆された。また、肺組織の形態学的解析を行ったところ、OVA感作AMKO群では野生型群と比較して有意に気道内腔が狭窄しており、気道周囲の平滑筋層の面積の増加、気道上皮細胞層の面積の増加もあわせて認められた。したがって、AMの不足が何らかの機序で気道周囲の平滑筋を腫大・増生させたり気道上皮細胞を膨化させるため、結果として気道内腔が狭窄すると考えられた。なお、気道周囲の好酸球浸潤の程度、気道分泌・杯細胞増生の程度、TH1、Th2系サイトカイン、ロイコトリエンについても検討したが、AMKO群と野生型群の間に有意な差は認められなかった。
著者
佐々木 淳
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

Self-practice/Self-reflectionプログラム(SP/SR)とは、認知行動療法の新しいトレーニング法である。自らの問題に対して認知行動療法の技法を使って取り組み(Self-practice)、そのプロセスを振り返って記述する(Self-reflection)ことによって、スキルの知識や技法の習熟だけでなく、体験的理解が促され今後に生かすべきことを自分で見つける省察力が育まれることが明らかになっている。本研究では、SP/SRプログラムの日本語版を確定し、心理職のトレイニーの省察力がこのプログラムによって高まるかを確認する。
著者
庄司 優 保嶋 稔
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

遺伝子多型の分布には人種差があり高血圧連鎖連関研究への影響が無視できない。すなわち、研究対象によりその病態的意義が異なる可能性がある。その理由として遺伝子・遺伝子や遺伝子・生活習慣の間の相互関係の差の関与が推察されているが、この問題にいかにアプローチしていくかについてこれまで明確な方向性は打ち出されていない。一方、分子人類学におけるヒト系統樹マーカーの研究が進んでいる。特にミトコンドリアとY染色体の多型が各々母系と父系のマーカーとして重視されている。本邦においてはY染色体Alu反復多型(YAP)Alu挿入が縄文系由来を、Alu欠失が弥生系由来を示唆すると考えられている。ある集団のある遺伝子多型に片寄りを認める場合、ヒト系統樹マーカーと連鎖している可能性が仮定できる。そこで本研究では青森県下16市町村より無作為に抽出し本研究に同意の得られた男性303例を対象とし、この仮説を検証した。YAP Alu挿入型は対象の約38%で、本州の他の地域の報告と差は認められなかった。高血圧感受性マーカーとして重要な遺伝子多型とYAPの連鎖の有無について検討したところ、YAPのAlu挿入型とAlu欠失型において、15遺伝子多型中3遺伝子多型(内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型、アルデヒド脱水素酵素-2 Glu487Lys多型、ミトコンドリアC16223T多型)の遺伝子型で分布の差が認められた。さらに、香港大学との協同研究を行い、香港男性ではYAPのAlu欠失型が殆どであることと、内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型のa対立遺伝子が偏在していることを確認した。また、YAP自体と高血圧とは連関を認めなかったが、内皮型一酸化窒素合成酵素4b/a多型とはYAPのAlu挿入型でのみ連関を示した。今回の研究では3つの遺伝子多型がYAPと連鎖不平衡を示した。これらの多型は、YAPが出現した以降に発生しYAPと歩みを共にしてきた可能性が示唆される。また、ヒト系統樹マーカーによる対象集団の層別化が実現すると、連鎖連関研究の臨床的意義が一層明確になる可能性が期待される。
著者
岡林 孝作
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、遺物論的視点に立った古墳時代木棺研究の一つの試みとして、その製作材料である木材の樹種に注目した検討をおこなった。具体的には、古墳等から出土した遺存木棺材の木材科学的な樹種同定作業を進め、資料を蓄積するとともに、木材科学的な同定により樹種が判明した出土木棺材の調査例を全国的に集成し、用材選択の地域性・階層性と時期的変化を分析した。資料収集の結果、全国で165例の樹種同定例を集成した。針葉樹が91%、広葉樹が9%で、針葉樹が圧倒的に多い。なかでもコウヤマキの使用が突出しており、全体の51%を占めるが、その分布域が近畿地方を中心として西は岡山県から東は愛知県にかけての太平洋側の地域にほぼ限定されることが顕著な顕著な地域的傾向として認められる。その他の樹種としては、スギ、ヒノキがやや多く、カヤ、サワラと続くが、コウヤマキにみられるような明確な使用の選択性は認められない。近畿地方を中心とした地域では、前期〜中期にはコウヤマキの使用率が90%に近い高率を示す。コウヤマキの使用率は後期になると80%程度になり、6世紀末〜7世紀初頭頃を境にして選択的な使用はみられなくなる。この状況の要因は、コウヤマキ材の大量消費による資源の枯渇であったと考えられる。後期におけるコウヤマキ材の不足状態は、木棺自体の小型化や、部材の軽薄化、細長い板の接ぎ合わせ行為などから裏付けられる。コウヤマキ材の選択的使用地域の枠組みが古墳時代を通じて変化せず、その使用のあり方に一定の階層性も反映していることから、古墳時代にはコウヤマキ材を供給する何らかの木材移送システムが存在していた可能性が高い。また、6〜7世紀にはコウヤマキの自生しない朝鮮半島南部の百済王陵へ棺材としてのコウヤマキ材の供給もおこなわれており、そうしたシステムへの王権の関与を示唆する事実として興味深い。
著者
清水 暢子 松永 昌宏 長谷川 昇 梅村 朋弘 山田 恭子 望月 美也子 加藤 真弓
出版者
石川県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

医学的管理が充実している日本の高齢者であっても、認知症予備群から認知症へ移行する数は増加の一途である。一方、チェンマイ県での認知症罹患率は、日本の6分の1程度に留まっている。そこで本研究の目的は、タイ北部農村部とタイの都市部の高齢者、日本の北陸地方の農村部と都市部の高齢者の、認知機能面、身体機能面、社会生活面、栄養摂取面、精神心理面、保健行動面を評価し、その影響要因について、また、継続して3年間の認知機能経年変化値や脳血流量変化量を従属変数に、生活習慣や環境、社会背景を説明変数として何が認知機能の経年変化に影響を与えているかを比較検討することであった。日本側の農村部および都市部在住の高齢者の調査から、ミニメンタルステートテスト(MMSE)の値と言語流暢性課題と運動課題を同時に行う二重課題実施中の前頭前野の脳血流との間に有意な関連がみられ、近赤外分光法(NIRS)を使用した前頭前野血流変化量は認知機能低下の予測因子として重要な指標となり得ることが示唆された。また高齢者の宗教観および社会的孤立が認知機能に及ぼす影響についての調査結果から日本の都市部と農村部ではMMSEとMOCAの認知機能検査結果に違いはなかったが、農村部では信仰有りが有意に高く、「信仰の有無」、「高齢者のうつ」、「社会的孤立状態」は認知機能の経年変化の予測因子になり得ることが示唆された。一方、タイ,チェンマイ市内都市部と農村部の3か所の高齢者サロンに通所する高齢者へ、半構成的インタビューを中心に行った結果からは、「老いることの意味」について全員が「老い」をポジティブに受け止めていた。タイ高齢者の宗教心が老いへ向かう態度や日々の生活への態度にポジティブに関連している可能性があった。宗教的背景が他者とかかわる機会を持たせ、「人の役に立つ」ことを満たすために、高齢であっても孤立しない環境である可能性があった。
著者
小野 紀明 堀田 新五郎 小田川 大典 藤田 潤一郎 森川 輝一 平野 啓一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究課題について、社会思想史学会で二度の「政治と文学」研究セッションを組織したほか(2008、2009年)、芥川賞作家の平野啓一郎氏をゲストに招いて「政治と文学」座談会を実施した(2010年)。また、それぞれのメンバーが研究課題についての個別研究を刊行した。代表的なものとして小野紀明『ハイデガーの政治哲学』(岩波書店、2010年)と森川輝一『〈始まり〉のアーレント』)岩波書店、2010年)が挙げられる。
著者
大石 了三 江頭 伸昭 伊藤 善規 江頭 伸昭 伊藤 善規
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ポリエン系抗真菌薬のアムホテリシンBは、腎細胞膜のコレステロールに結合してポアを形成し、細胞内へのNa^+流入ならびに、小胞体およびミトコンドリア由来のCa^<2+>上昇を引き起こすことで、腎細胞にネクローシスを引き起こすことが明らかとなった。加えて、アムホテリシンBによる腎細胞内のCa^<2+>上昇およびミトコンドリア機能障害には、MAPキナーゼの活性化が重要な役割を担っていることが明らかとなった。
著者
神崎 真哉
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、マンゴーの花成制御因子とされるMiFTの発現様式を解析し、環境要因や樹体要因がMiFTの発現と花芽形成に及ぼす影響を調査するとともに、MiFT以外の花成関連遺伝子を単離して解析することを目的として行った。その結果、MiFTの発現増加には15℃以下の低温に約130時間遭遇すれば十分であることが示された。また、葉齢によってMiFTの発現量が異なることも明らかとなった。一方、MiFT以外の花成関連遺伝子として、低温遭遇前後で発現量が変動する候補遺伝子をいくつか得ることができ、現在解析を進めている。
著者
荻野 弘之 佐良土 茂樹 辻 麻衣子 中村 信隆
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

(1)幸福主義の源泉であるアリストテレス倫理学研究の進展。複数の倫理学書を総攬することで「包括主義」対「卓越主義」の論争に対して調停的な読解の可能性を探った。(2)ヘレニズム時代とローマ期ストア哲学の幸福論の読み直し、特にエピクテトスの現代的読解の可能性を開拓した。(3)1980年代以降の徳倫理学の隆盛は哲学史的研究の深化と連動しているが、コーチングを哲学的に基礎づける新しい試みを開拓しつつある。(4)「人生の意味」を問題とする倫理学の傾向に対して、幸福の概念を幸福感という主観的要素に還元しようとする前提の妥当性を検証した。(5)これは昨今経済学で言及される「幸福度」の指標の批判に通じる。
著者
菊地 達也 鎌田 繁 柳橋 博之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、シリアにおいて大きな政治的影響力を持つイスラム少数派、アラウィー派(ヌサイル派)の思想形成の過程を解明し、彼らとの類似点が多く関係も深いドゥルーズ派との比較を通じ歴史的シリアにおける少数派の文化的特徴を明らかにすることであった。研究の結果、アラウィー派の源流思想はイラクにおけるイマーム派系の極端派伝統の中から生まれたものであり、少数派相互の関係性の中でそれぞれの独自の思想が形成されたことが判明した。
著者
戸井田 敏彦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コンドロイチン硫酸(以下CS)は,グリコサミノグリカンに属する酸性多糖類である。構造的にはGalNAcにGlcAがβ1-3結合した二糖を構成単位とした繰り返し構造をもつ直鎖状多糖鎖で、GalNAcのC4位またはC6位,あるいは,GlcAのC2位に硫酸がエステル結合した化合物である。今回CSの経口的摂取における生体調節機能を明らかにするために,賦与が予想される抗炎症活性および抗アレルギー活性について,腸管免疫系に焦点を絞り,全身性免疫系への影響を分子レベルで定量的に解析した。その結果、以下のことが明らかになった。1.ウシ気管軟骨由来CS(分子量分布8〜22kDa、平均分子量15kDa)のマウス腸管からの吸収は、投与量の0.01%以下であること。2.上記CSを分子量により分画しても各画分のCSの硫酸化度、硫酸化の位置に違いがないこと。3.分子量12kDa以上のCSはほとんど経口吸収されないこと。4.腸管上皮間リンパ球(IEL)膜表面上のL-セレクチンにCSが結合し、サイトカイン産生を介して全身性免疫系を刺激すること。5.腸管吸収されたCS(分子量7〜5kDa)は脾臓細胞のヘルパーT細胞のI型、II型への分化誘導に機能すること。以上経口投与したCSはその分子量により代謝的運命が異なるものの腸管免疫系を介して全身性免疫に対しても作用する可能性が明らかになった。
著者
河端 隆志 小田 伸午
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

スポーツ時の精神的・身体的疲労が視覚情報-認知・運動制御能及び身体的行動体力の機能別に及ぼす影響について検討した。その結果、身体的行動体力の機能に及ぼす影響は高強度間歇的運動前後でVO2maxに13%の低下、サイドステップ及び前後方向ステップ動作に疲労の影響が強く現れた。また、・運動時視覚認知-運動制御系に及ぼす影響では、20分間運動時の認知―運動制御テストにおいて正答率は安静時に比べ各運動時テストにおいて増加したが、運動時テスト2回目と3回目では、正答率が低下、無回答率も低下し、平均正答時間は安静時に比べ1回目に短縮するが2回目及び3回目では正答までに時間を長く要する結果となった。