著者
井山 諭 佐藤 勉 小船 雅義
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

多発性骨髄腫の予後は新薬の登場によって改善されたものの、造血幹細胞移植を行ってすら治癒を得られる症例はなく、新たな機序の治療法が希求されている。我々はこれまでにDPP4ファミリーに属するDPP8/9の活性を阻害する1G244 は骨髄腫細胞にアポトーシス細胞死を誘導することを見出した。このことはDPP8/9 の阻害を機序とする新たな骨髄腫の治療を示唆していると考えている。そこで本研究では、1G244 の抗骨髄腫効果を検討し、更にそのシグナルを解析した。
著者
櫻井 美佳
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、関節リウマチおよびクローン病等の慢性炎症性疾患において、血清ビオチン値の低下やビオチン投与による症状の改善が報告されているが、ビオチン代謝がこれらの疾患発症にどのように関わるのか、その機構は殆ど明らかにされていない。当研究室の先行研究により、血清ビオチン値とスギ花粉症の発症との間に有意な相関が見られていることから、本研究ではスギ花粉症のモデルマウスやヒト鼻粘膜培養細胞の炎症モデルを用いて、ビオチンが炎症性サイトカイン、ケモカイン、MMPの発現、分泌にどのように関与するのかそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度までに、アジュバントを用いずに花粉症を誘導するマウスモデル系を確立したが、本年度は、4週齢より約2ヶ月間通常あるいはビオチン除去飼料により飼育したマウスに対して花粉症を誘導し、ビオチンの有無がその症状や分子病態に与える影響を解析した。その結果、精製スギ花粉抗原 Cry j1の局所感作による鼻かきの症状はビオチン(+)と比較してビオチン(-)の方が高い傾向が見られたが、ビオチン(-)についてはPBSでも鼻かきを起こす個体が見られたことから、SPFでない飼育環境では、ビオチンの除去そのものがアレルギー性疾患の発症に関与する可能性が考えられた。現在、鼻粘膜細胞におけるサイトカイン(IFN-gamma、IL-5、IL-4)の遺伝子発現や免疫組織学的解析により好酸球浸潤を検討している。
著者
村重 淳
出版者
公立はこだて未来大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

カオスに代表される複雑な非線形現象を体系的にとらえるためには, システムの基本的な状態(平衡点, 周期解など)の安定性を調べる必要がある. 本研究では, 常微分方程式で与えられるシステムの周期解の安定性を, コンピュータを用いて数値的に精度良く調べる方法を提案した. 代表的な常微分方程式に対して提案手法を適用した結果, 従来の手法ではかなり誤差が大きくなる条件でも, 精度の良い計算結果が得られることがわかった.
著者
山本 野人 中村 健一
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、力学系の研究のための精度保証ツールを開発するため、☆既存の精度保証の技法を再点検してさまざまなテクニックを取り込むこと☆手法の統合や計算効率向上のための新しい理論・技術をつくり出すことを目指し、以下のような研究開発を行った。常微分方程式初期値問題の精度保証法としては、Taylor展開とその打ち切り誤差の評価に基づく方法(Lohner法・TM法など)が主流となっている。これらは時間分割点の上での関数値の包み込みに主眼をおき、時間ステップの進行に伴う特殊な累積誤差(Wrapping Effect)の軽減のために様々な技法が展開されている。これに対し、偏微分方程式の精度保証法である中尾理論を用いても常微分方程式の精度保証を行うことができる。そこで、1)初期値問題に対しstepwiseに中尾理論を適用した場合のWrapping Effectの軽減法2)初期値問題に対し考えている時間範囲の全体に中尾理論を適用した場合に現れる大きなシステムの取扱い3)初期値問題の解の最終時刻における値を包み込むため、境界値問題に対する中尾理論を利用した方法について研究を行い、これらについて3つの海外での国際研究集会をはじめとする複数の国際学会、およびいくつかの国内の研究集会で発表した。研究業績リストには主なもののみを記す。
著者
田中 智子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2011年度に開始した助成事業「官立高等学校設立史の研究――「学都」論序説――」(課題番号23531029)を、最終年度前年度応募によって引き継いだ。主に、文部省「八年計画」を契機とした「ナンバースクール」(第六~第八高等学校)の設置過程、第一次世界大戦後の各「地名校」設立経緯、京都における七度の官立学校設置(誘致)構想について、文部省ならびに地域の諸勢力(県知事・県会・市会・ジャーナリズム・旧藩主・地域出身中央官僚など)の動向、地域の負担実態を明らかにした。並行して、今日、文部省と地方行政府あるいは国立大学法人が主体となって地方都市で行われている「学都」創生諸事業に対する評価を行った。
著者
日野 正輝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

タイ北部の中心都市チェンマイ周辺に立地する中高等教育機関の新規学卒者の進路先調査を実施した。その結果、次の点が明らかになった。(1)高校卒業者の大学・職業専門学校等への進学率は先進国並みの水準にある。(2)地元高校の卒業生の地元大学に進学する傾向は強い。(3)大学卒業者の多くはチェンマイを中心にした北部に就職している。(4)次いで、バンコク都市圏に就職する者が多い。その点では、高等教育機関が北部からバンコク都市圏に若年の高学歴の労働力を送り出す働きをしていると言える。
著者
鈴木 幸人 大縄 将史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

既に提案されている圧縮性Navier-Stokes方程式に対するGENERICによる定式化の手法を調査・検討し,今後の利用に向けて理論を整理した.またvan der Waalsの状態方程式をもつ圧縮性流れに対して,そのGENERIC定式化に離散変分導関数法とmimetic finite difference法を適用することを検討した.さらに,非圧縮流れに対する三次元渦度方程式にCahn-Hilliard方程式あるいはAllen-Cahn方程式を組み合わせたdiffuse interface modelに対しても同様にGENERIC型の定式化と構造保存型数値解法の適用性を検討した.その結果,このdiffuse interface modelに対しては歪対称のPoisson括弧と半負定値対称の散逸括弧を用いた定式化が可能であり,それにmimetic finite difference法と離散変分導関数法を適用できることが明らかになった.そこで,それらに基づき,三次元Euclid空間上のde Rham複体の構造を正しく受け継ぐとともに,運動エネルギーとヘリシティが非粘性流れにおいては正確に保存し,粘性流れに対しては適切に散逸する数値計算手法を開発した.特に,これは流れの物理的解釈において重要な意味をもつ運動エネルギー,ヘリシティ,エンストロフィーの収支をそのまま離散式で模擬できるような計算手法になっている.また実際にC++言語による計算プログラムを作成し,それを用いて周期的に配置された液滴の表面張力による振動運動の計算を行って,開発した数値解析手法の有効性を確認した.
著者
植戸 貴子 杉野 昭博 新道 由記子
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

親による知的障害児者の殺害予防やケアの抱え込みの解消を目的とした相談支援の実践方法について実証的研究を行った。相談支援従事者及び母親に対する調査を実施した結果、子の世話に熱心に取り組む母親には、世話に積極的な意味を見出して子の自立や社会参加を促そうとする「開かれたタイプの母親」と、子と一心同体になり世話に限界や孤立を感じている「閉じたタイプの母親」がいることが分かった。更に「母親によるケアから社会的ケアへの移行」の促進要因と阻害要因を抽出し、それらを踏まえて「社会的ケアへの移行」に向けた相談支援の実践ガイド(案)を作成し、熟練相談支援従事者の意見を踏まえて実践ガイド(案)を修正した。
著者
遠藤 哲也
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

和歌山県で販売されていた鯨内臓食品の水銀濃度は著しく高く、肝臓から最高で2000ppmの総水銀が検出された(Sci. Total Environ.,300,15-22,2002).この肝臓食品をラットに1回経口投与したところ、無機水銀による急性腎毒性が認められた(Arch. Environ. Comtam. Toxcol.,44,412-416,2003).最も一般的な鯨食品である赤身肉の水銀汚染度は鯨種により大きく異なること,また捕獲地域でも異なることを明らかにした(Endo et al., Environ. Sci.Tech.,37,2681-2685,2003).PCBなどの有機塩素系化合物の汚染度にも顕著な種差があることを示した(J.Toxicol. Environ.Health A,65,1211-1235,2002).市販されていた赤身肉のなかで最も汚染度が高かったものには,81ppmの総水銀と26.2ppmのメチル水銀が含まれていた(Chemosphere,54,1653-1662).この鯨肉をラットに1週間連続経口投与したところ,急性毒性症状は認められなかったが,メチル水銀による特徴的な体内水銀分布が認められ,頻繁に摂取すれば慢性中毒になることが示されたChemosphere, in press).鯨脂肪食品からの抽出物は催奇性を有することをラット胎児培養を用いて明らかにした(Organohalogen Compounds,55,421-423,2002).マグロの水銀汚染にも明らかな種差が認められ,その汚染度は魚体の大きさと関係すると思われる(食品衛生学発表,東京,2004).
著者
中田 和義
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は,希少種を含む在来生物に対して深刻な悪影響を与えるとともに,巣穴を掘って水田漏水を引き起こすなどの農業被害をもたらしている外来種アメリカザリガニについて,効率的な管理・駆除手法を検討することである。アメリカザリガニは,環境省と農林水産省によって2015年に公表された「生態系被害防止外来種リスト」で,緊急対策外来種に選定されており,被害が生じている水域では早急な駆除対策が求められている。令和元年度の研究では,平成30年度の研究においてアメリカザリガニが掘る巣穴長が長くなると水田漏水が発生する可能性が高くなると考えられた結果をふまえて,本種が巣穴を掘削できる土壌硬度の限界値を明らかにすることを目的とした室内実験を行った。この実験では,ワグネルポットに水田土壌を満たして土壌硬度の異なる模擬耕盤層を作製し,アメリカザリガニが巣穴を掘削できるかを観察した。模擬耕盤層の土壌硬度については,1 mm刻みで4~9 mm(計6実験区)となるように調整した。本実験によって得られた主要な結果は以下のとおりである。1)アメリカザリガニは土壌硬度7 mm以下の模擬耕盤層には巣穴を掘削できた。2)土壌硬度4 mm以下では,アメリカザリガニは模擬耕盤層内に長い巣穴を掘り進めることができた。3)土壌硬度8 mm以上の模擬耕盤層では,アメリカザリガニは巣穴を掘削できなかった。以上の研究成果については,現場の水田管理においてアメリカザリガニの巣穴による水田漏水対策を検討するうえで有用な知見になると考えられる。
著者
安達 修二 木村 幸敬
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

水溶性めビタミンC(アスコルビン酸)は,体内における吸収効率が低い.一方,炭素数6〜12の飽和脂肪酸である中鎖脂肪酸は腸管などの上皮での親水性物質の吸収を促進することが知られている.そこで,アスコルビン酸を中鎖脂肪酸によりアシル化することにより,その腸管吸収効率の向上を図るとともに,還元能を有するアスコルビン酸に疎水性を付与することによる脂溶性還元剤としての利用,並びに生成物が界面活性をもつと期待されることより還元能を具備した乳化剤(界面活性剤)としての使用を意図して本研究を行った.まず,Candida antarctica起源の固定化リパーゼがアセトニトリル中でラウリル酸とアスコルビン酸の縮合反応を効率的に触媒し,溶媒の含水率が低いほど収率が向上することを見出した.また,各種炭素鎖長の中鎖脂肪酸との縮合反応の平衡収率について検討したところ,脂肪酸の炭素鎖長は平衡収率に顕著な影響を及ぼさなかった.さらに,食品への応用を念頭において各種水可溶性有機溶媒を対象に反応溶媒の選択を行い,沸点が低く,精製過程での除去が容易と考えられるアセトン中でも本反応が効率的に進行することを見出した.また,アセトンの含水率が低いほど目的生成物の平衡収率が高かった.さらに,中鎖脂肪酸による親水性物質の腸管吸収機構などに関して小腸上皮様に分化したCaco-2培養細胞を用いた検討を行い,吸収促進効果には中鎖脂肪酸の界面活性剤としての性質が深く関与していることを示した.一方,リパーゼ触媒反応により調製したアスコルビン酸のアシル化物は比較的強い界面活性能を有していた.上述のように,酵素法を用いて中鎖脂肪酸によりビタミンCをアシル化する方法を確立するとともに,ビタミンCの腸管吸収効率の改善に関する基礎的な知見が得られ,所期の目的をほぼ達成した.
著者
樋口 理 瀬筒 秀樹 中根 俊成 瀬筒 秀樹
出版者
独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター(臨床研究部)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

神経変性疾患の1つである筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者血清中のLRP4抗体の探索を行った結果、40-50%の症例でLRP4抗体が陽性という結果を得た。マウス筋管細胞においてagrinが誘導するAChR誘導活性に対する阻害効果を調べたところ、LRP4抗体陽性重症筋無力症患者血清はその阻害効果を有していたが、LRP4抗体陽性ALS患者血清にはそれを認めなかった。今回の結果は疾患特異的なLRP4抗体のエピトープの違いを反映するものと推測される。ALS患者の血中に認められるLRP4抗体は将来的にALS発症や治療応答性を追跡可能なサロゲートマーカーとしての役割が期待できるかもしれない。
著者
大泉 宏
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

飼育下のミナミハンドウイルカ(Tursiops aduncus) 1頭に給餌し、その後の食道胃内における消化の進行を内視鏡を用いて観察した。観察では餌の種と尾数または量を変化させて、餌の消化段階と時間経過の関係、および一定量の餌が消化されて空胃に至るまでの時間を明らかにした。また、イルカにイカの顎板を給餌し、食道胃に不消化物として滞留する顎板が吐出されるまでの時間を調べた。その結果、100gから200g程度の餌一尾は約1時間半から2時間程度で消化されること、一回の満腹量に相当する餌は12時間で完全に胃内の消化が完了すること、イカの顎板の大部分は24時間で排出されることが明らかになった。さらに餌の一部を人工消化液を用いて試験管内で消化させ、餌種による消化の進行速度の違いの検証と、イルカの胃から抽出したペプシンの活性条件をpHと温度について明らかにした。これらの結果は、イルカの食道胃における餌の消化速度を明らかにしたものである。これは、野生のイルカ類から得られる胃内容物の分析を行う際に、単位時間当たりの餌摂取量を推定する手がかりとなると期待され、自然条件下におけるイルカの餌消費量やエネルギー要求量を明らかにする上で有用と考えられる。
著者
山本 武
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

食物アレルギーを安全にかつ効率良く治療を行うために、抗原摂取によりアレルギー性消化器症状を発症する食物アレルギー病態モデルマウスに対して経口免疫療法を行う経口免疫療法モデルを作製し、葛根湯を併用した治療法の効果とその機序の検討を行った。経口免疫療法のみの治療よりも、葛根湯を併用した治療が腸管でFoxp3+制御性T細胞を増加させ、腸管粘膜免疫系のTh2免疫応答の過剰な亢進を改善し、食物アレルギーを有意に改善することを明らかにした。また、経口免疫療法や葛根湯併用療法によりアレルギー症状発症に関与する粘膜型マスト細胞が腸管で増加したが、葛根湯併用療法では粘膜型マスト細胞の脱顆粒によって増加する血漿中mouse mast cell protease-1量が減少した。このことから、葛根湯併用療法により粘膜型マスト細胞の脱顆粒が抑制され、食物アレルギー症状の発症が抑制されたことを明らかにした。葛根湯併用療法の治療効率改善の作用を示す葛根湯の有効成分を検討するために、葛根湯を構成する生薬の各単味エキスを経口免疫療法と併用して検討を行った。しかし、葛根湯併用療法と同様のアレルギー症状発症抑制効果は得られなかったため、葛根湯併用療法による治療効果は単独の生薬や成分による作用ではなく、複数の生薬エキスによる複数の機序を介した作用によることが示唆された。さらに、葛根湯併用療法による治療効果が長期間維持されるかを明らかにするため、治療後に抗原除去期間を経た後に抗原の投与を行いアレルギー症状の発症率について検討を行った。経口免疫療法のみでは抗原除去期間後に再びアレルギー症状を発症したが、葛根湯併用療法では治療効果が維持されアレルギー症状発症率は低かった。従って、経口免疫療法と葛根湯の併用療法による原因抗原に対する耐性獲得の可能性が示唆された。
著者
吉村 俊朗 中野 治郎 本村 政勝
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)および抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体(抗MuSK抗体)共に陰性で筋無力症が疑われる患者の中に筋萎縮性側索硬化症もある。誘発筋電図でもWaningが認められ、テンシロンテストも陽性と判断されることがあり、抗体陰性の重症筋無力症の鑑別に重要と結論した。運動終板に補体C3の沈着が認められ、postsynaptic foldの減少も認められた。αバンガロトキシンの減少も認められる例もある。意義付けが困難であるが、眼筋型MGでは、AChR抗体が陰性のことが多く補体の沈着があることがある。測定感度以下のAChR抗体が関与する可能性や、AChR抗体以外の抗体の関与が考えられる。補体の沈着もなく、postsynaptic foldの減少があり、臨床像は、四肢近位筋の筋力低下があり、他の抗体もしくは、先天性の可能性など、今後の検討が必要である。ヒト抗MuSK抗体は、ラットの再生筋の運動終板においてもいても、ヒト運動終板と類似の変化をもたらす。 抗MuSK抗体は Postsynaptic areaの形成に影響を及ぼす。抗ラミニン抗体は抗体陰性の筋無力症の原因でありうる可能性を否定できないが、電気生理学的な検討も含めて、今後の検討が必要である。ラミニンも運動終板の形成に関与している可能性がある。
著者
秋山 学 秋山 佳奈子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

聖書学の「予型論」を活用した本企画では, 遠く東洋日本におけるキリスト教伝来以前の文化伝承のうちに「予型」を見出し, それを照射する「光源」としてビザンティン典礼を措定するという2段階での研究を推進した.代表者による慈雲尊者飲光の研究により, わが国の悉曇学あるいは習合神道のうちに一つの予型が, また分担者による『源氏物語』注釈史研究を通して, 四辻善成のうちに実証主義的注釈家のあり方が見出されたと考える.
著者
森 由紀恵 大島 佳代 河合 咲耶 村上 菜菜
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本中世成立期に編纂された真言宗小野流の教義書『覚禅鈔』は、政治史・外交史・美術史など多分野にわたり情報を含む歴史資料として注目されている。本研究では、『覚禅鈔』を歴史資料として活用するため『大正新修大蔵経』図像部所収『覚禅鈔』のデータベース(年号・書名・図像)を写真帳などによる調査・校訂を行いつつ作成し、年号データベース・図像データベースは報告書により公表した。また、データベース活用の結果明らかになった『覚禅鈔』と院政との関係・大和国における『覚禅鈔』の伝来過程に関する論文を公表した。
著者
丸野 健一 太田 泰広 高橋 大輔
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

大振幅非線形波動を記述する偏微分方程式の解の構造を保存する差分スキームの構築法の確立とその数値計算法への応用に向けて、これまで離散化に成功していなかったタイプの非線形波動方程式(多成分系、3次元渦糸問題、水面波の数理モデル、水の土壌への浸透を記述する数理モデルなど)の解の構造を保存する離散化を行い、様々な方程式に対して自己適合移動格子スキームを構築することに成功した。さらに、それらを用いた数値計算の精度の検証を行い、自己適合移動格子スキームの有効性を示した。また、自己適合移動格子スキームと離散微分幾何学との関係についても詳しく調べた。
著者
花房 俊昭 今川 彰久 寺崎 純吾
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.広範囲のエンテロウイルス抗体を検出できる新測定系によるウイルス抗体価の検討発症早期の劇症1型糖尿病患者19名と、年齢・性をマッチさせた発症早期自己免疫性1型糖尿病患者18名および健常コントロール19名において、エンテロウイルスIg-M,Ig-G,Ig-A抗体価を測定した。検討に用いた測定系は、特定のウイルスではなく、エコーウイルス、コクサッキーA群ウイルス、コクサッキーB群ウイルスなど広範囲のエンテロウイルスに反応する抗体を検出し得る測定系である。劇症1型糖尿病患者では、自己免疫性1型糖尿病患者および健常コントロールに比し、Ig-A抗体価が有意に上昇していた。Ig-M抗体価はすべての患者において陰性であった。以上の結果は、劇症1型糖尿病患者では繰り返しエンテロウイルスに感染していたこと、すなわち劇症1型糖尿病患者はエンテロウイルスに易感染性であることを示すと解釈できる。このような易感染性が劇症1型糖尿病の発症に関与していることが示唆された。2.劇症1型患者剖検膵におけるエンテロウイルス抗原の同定発症直後に死亡した劇症1型糖尿病患者剖検膵組織において、エンテロウイルス由来蛋白VP1を免疫組織科学的に同定した。この蛋白は膵外分泌領域に強く発現しており、膵β細胞が残存しているごくわずかな膵島においても、弱い発現を認めた。この結果は、劇症1型糖尿病患者の少なくとも一部において、エンテロウイルスが膵を標的臓器として感染していることを示唆するものと考えられた。