著者
影山 穂波
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、ホノルルにおける戦後移住の日本人の「居住空間」とジェンダーの関係を明らかにすることである。そこで日本人女性を中心に展開されるネットワークに注目し、それぞれの活動内容と参加者のライフヒストリーの聞き取り調査を実施した。その結果、彼女たちが、自分たちの必要とおかれた状況に応じて居住空間を形成していることが分かった。彼女たちは、意識的にも無意識的にも周囲に期待される「日本人女性」としての役割を演じており、それがアイデンティティの再生産にもつながっていた。一方でこうしたネットワークを通じて、彼女たちはハワイ社会で自らの居住空間を形成していたのである。
著者
平田 彰 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

有機塩素化合物は脱油脂やドライクリーニングなどさまざまな分野で使用されているが,発ガン性や催奇性があるため,土壌中から地下水に浸透した場合,飲料水として使うことは不可能である。地下水については光触媒反応を利用して有機塩素化合物の分解が試みられているが,地下水中に含まれているミネラル分がヒドロキシラジカルのスカベンジャーとして作用するため,効率が上がらない。本研究では,有機塩素化合物ガスを脱イオン水へ移動させ,紫外線(UV)ランプを備えた気泡塔型UVリアクター内で分解する手法を提案した。この手法における最大のメリットは,リアクター内の有機塩素化合物がUVランプからの光子や,気液界面ならびにバルク液相でのヒドロキシラジカルと反応できるため,高速かつ副生成物の少ない分解処理が可能になる点である。本研究では,上記リアクター内における物質移動および有機塩素化合物ガス分解の速度論的解析を行い,装置設計や操作条件の最適化を行った。その結果,テトラクロロエチレン(PCE)を対象汚染物質とした場合,PCE/過酸化水素の化学量論比がPCE分解速度に大きく影響を与えることがわかった。また,PCE分解の初期段階で塩素原子がはずれて塩化物イオンが生成し,これらの蓄積がPCE分解速度に影響を与えることもわかった。次に,各種センサーを備えた気泡塔型紫外線リアクターの作製を行い,空隙率分布の影響を確認するために,UVランプの近傍に局所的に気泡が集中するような多孔質板,およびUVランプの周りに均一に気泡が生成するようなリングタイプの散気板を用いて実験を行った。その結果,まず,UVランプ近傍の空隙率の分布を特殊な導電率プローブを用いてオンラインでモニタリングすることに成功した。また,空隙率の分布が反射・散乱などの効果により光の吸収に影響を与えることを明らかにした。
著者
平田 彰 新船 幸二 桜井 誠人 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、単結晶育成時における温度差と濃度差に起因するマランゴニ対流の相互干渉機構を厳密に解明し,それに基づいたマランゴニ対流の抑制・促進等の制御手法を確立し,単結晶の高品質化手法を確立することを目的として研究を行っている。本年度は、前年度に引き続き,半導体単結晶育成の一つである水平ブリッジマン法によりInSb結晶成長実験を行い,初期融液濃度を変化させることにより温度差および濃度差マランゴニ対流が同方向に作用する系(促進系)と,互いに逆方向に作用する系(抑制系)の融液自由界面上の界面流速を測定した。その結果,抑制系においては,自由界面流れの方向が、融液から結晶方向(温度差マランゴニ対流による)及び結晶から融液方向(濃度差マランゴニ対流による)が同時に存在し,流動の淀み点(2方向の流れが衝突する点)が存在する場合があることが明らかになった。これは,同時に行った数値シュミュレーションからも同様の結果が得られた。さらに抑制系に関しては,航空機を利用した微小重力場においても実験を実施した。その際,放物飛行中の到達重力レベルを変化させ,自然対流が融液自由界面流れに及ぼす影響を観察した。その結果,本実験系においては,自然対流は表面流速にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。以上の結果から,結晶成長時の融液側移動現象が,自然対流よりも,結晶成長時の偏析現象に伴う濃度差マランゴニ対流に強く影響を受けることが明らかになった。
著者
杉山 章子
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、予防に力を入れて長寿と医療費縮減に成功した地域の健康づくり事業の実地調査を通して、住民の自主的な動きを生み出すコミュニティ・エンパワメントの方法を考察することにある。調査の中心は長野県八千穂村(合併により現在は佐久穂町)だが、沖縄県佐敷町(合併により現在は南城市)のデータを加えることによって八千穂村の検討内容の相対化を企図した。八千穂村と佐敷町、どちらの自治体においても、行政主導で開始された健康増進事業から住民主体の活動が生み出されており、その過程を検討することによって、住民の主体性を引き出した専門職の支援が明らかになった。両地域で展開されたコミュニティ・エンパワメントの過程には、行政機関等が社会的、政治的経済的資源を整備して個人や組織が活動しやすい環境をつくるコミュニティレベルのエンパワメントアプローチと、専門職が住民組織に対して地域の政策や資源配分に影響を及ぼす力量をもてるように支援する組織レベルのエンパワメントアプローチが含まれていた。(1)国の健康増進政策の流れの中で独自の事業展開を可能にした、「官」と「民」が重なりあう「公共」領域の創出(2)地域に根ざした健康づくりを実現した専門職の的確なアセスメント(3)専門職と住民の間の円滑なコミュニケーションに基づいて地域に張りめぐらされたネットワーク(4)病院や大学など外部資源の有効活用留意すべきは、両地域の実践から見出されたこれらのエンパワメントアプローチが、専門職が住民に対して指導者ではなく協働者として接することによって実効性を発揮している点である。そして、地域社会とそこに住む人々の「個別性」を捉え、一人ひとりの主体的な取り組みを生み出す健康づくりの実践が、狭義の保健・医療活動の域をこえた地域づくりとしての側面をもつことも見逃せない。
著者
坂口 嘉之 田中 弘美 脇田 航
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

織物は、極細い短繊維から構成される糸が、経糸と緯糸として複雑に絡み合ってできているために、その見え方をCG表現することは容易ではない。織物のような複雑な構造でも、数値計算で画像化するために、新しい反射モデルの研究を行った。実験では、ミクロレベルの織り構造が見えるまで拡大したスペクトル画像を測定した。また、反射のダイレクト成分とグローバル成分を分離するためにパターン光投影も行った。実験の結果、織物の直接反射成分は、わずかに光源色を含むものの、その大部分が物体色を帯びていることがわかった。これは、光源からの光が糸の内部を通過して反射する、表面下散乱が起きているためだと考えられる。
著者
所 功 川北 靖之 黒住 祥祐 小林 一彦 宮川 康子 若松 正志 海野 圭介 山口 剛史 飯塚 ひろみ 石田 俊 今江 廣道 宇野 日出生 岸本 香織 京條 寛樹 久世 奈欧 (野村 奈欧) 嵯峨井 建 笹部 昌利 篠田 孝一 宍戸 忠男 末松 剛 土橋 誠 橋本 富太郎 松本 公一 村山 弘太郎 山本 宗尚 吉野 健一 米田 裕之 若杉 準治
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近世(江戸時代)の賀茂大社(上賀茂・下鴨両社)では、世襲の社家神職たちにより、朝廷と幕府の支援をえて、葵祭や社務が運営されてきた。私共は、その実情を伝える社家の記録や祭礼の絵巻などを、朝廷の御記や公家の日記などと照合しながら、相互関係の解明に努めた。その成果は、本学日本文化研究所の紀要や所報などに発表し、また本学図書館所蔵の賀茂関係絵巻などは大半をデジタル化し詞書(ことばがき)の解読も加えて貴重書アーカイブスに公開している。
著者
佐藤 毅彦 熊野 善介 石井 雅幸 五島 政一 坪田 幸政 松本 榮次 福田 章人 丸山 修 岩崎 泰久 木村 かおる
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

実験・観察を重視する新学習指導要領理科「天体」分野の教育を現場レベルで向上させることを目的に、教材・カリキュラムの開発を行った。昼間に星空を見るためには、インターネットを経由した遠隔天体観察ツールを活用した。新設単元「月と太陽」における「満ち欠け」指導方法には特に力を入れ、学習教材BaMoonを開発するとともに、視点共有のためのカメラ活用を考案し、教員研修会等で広める活動をした。
著者
河本 正次
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではコンニャクグルコマンナンをモデルとした微粉砕食物繊維の抗アレルギー作用機構を解析し、アトピー合併性自己免疫応答に対する予防効果やアレルギー性鼻炎における局所肥満細胞浸潤への抑制作用、また過剰な抗原特異的T 細胞応答に対する寛容誘導作用など、本品が多段階の免疫学的作用点に働いて抗炎症作用を発揮している実態を突き止めた。更に本品の機能性発揮に最適な粒子経を検討すると共に、機能性食品の試作を行った。
著者
関本 朝久 帖佐 悦男 黒木 修司 荒木 正健 荒木 喜美
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は骨粗鬆症などのロコモティブシンドロームの病因病態解明のために、可変型遺伝子トラップ法により樹立したNedd4遺伝子欠損トラップマウスを用いて、Nedd4の骨代謝における機能を解析した。Nedd4欠損ホモマウスでは、μCT解析、骨形態計測、骨力学試験にて有意に骨量、骨強度の低下を認めた。骨組織像では1次海綿骨量の減少を認め、骨芽細胞は細胞質が少なく扁平な細胞形態を示し、ALP活性が低かった。遺伝子発現解析では骨芽細胞関連の発現が低下傾向にあった。培養骨芽細胞では、明らかに石灰化能が低下していた。したがって、Nedd4遺伝子は骨芽細胞機能制御において重要な機能を担っている可能性が考えられた。
著者
吉田 典子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

従来のゾラ研究では、ゾラとボードレールの関係が問題にされることはほとんどなかった。それに対して本研究では、自然主義の理論家としてのゾラは反ボードレールの立場を表明しているが、実際は、マネ擁護をはじめボードレールと少なからぬ共通項を持つことを明らかにした。また一般にゾラは、70 年代後半にマネや印象派の画家たちから離反していくと言われているが、本研究では、ゾラとマネの共闘関係は 80 年代初めまで続いており、ゾラの小説とマネの絵画のあいだには多くの相関関係が見られることを示した。
著者
原田 幸一 魏 長年 皆本 景子 上田 厚
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

い草染土や珪藻土じん肺の発症メカニズムならびに修飾因子を解明するため、動物実験や環境調査をおこなった。珪藻土曝露ラットでは、肺胞洗浄液に好中球数が増加したが、マクロファージ数は、減少し、貪食した二酸化ケイ素により融解または破壊されることが考えられた。紫外線吸収剤は、実用品に添加される濃度では、感作性はみられず、日焼け止めの化粧などが、炎天下のい草栽培ほ場での日射作業の有効な対策となることがわかった。泥染処理のない草製織による畳表製造がおこなわれており、い草染土粉じん曝露対策としては、有効な対策であると解された。
著者
ニヨンサバ フランソワ 秋山 俊洋 キアツラヤノン チャニサ 梅原 芳恵 スミスリッティ リッティ 池田 志斈 奥村 康 小川 秀興
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

LL-37のタイトジャンクション(TJ)バリア機能に及ぼす影響を調べた結果,LL-37がケラチノサイトの分化マーカーとTJ構成タンパクの発現を増加し,さらに,TJバリア機能を強化した.また,β-デフェンシン-3がLL-37同様にRac1,非定型的PKC,グリコーゲン合成酵素キナーゼ3とPI3Kの経路を介して,TJバリア機能を調整することが分かった.また,LL-37等の抗菌ペプチドがバリア機能の調節だけではなく,痒みの抑制と抗炎症作用にも関与することを確認した.これらの結果は,LL-37等が皮膚の感染防御とアトピー性皮膚炎等の病変形成のメカニズムと治療法に大きなインパクトを与えると考えられる.
著者
野津 憲治 藤井 直之 森 俊哉
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マグマ揮発性物質は、火山ガスとして山頂火口や山腹噴気孔から放出しているだけでなく、火山体表面全体から拡散放出している。本研究では伊豆東部火山群の単成火山直下のマグマの動きをマグマ揮発性物質の拡散放出から捉えようとした。1989年の海底噴火で形成した手石海丘では、火口底直上の海水の精密化学・同位体分析から極めて少量のマグマ-熱水起源のCO2とCH4の放出を検出した。最近の群発地震震央域の陸上部分や2700年前の割れ目噴火域では、マグマ起源CO2の拡散放出は検出できなかった。4000年前に生成した大室山では、CO2拡散放出量は火口内で少し高く、積算放出量は(22+2)トン/日であった。
著者
大和 雅之
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1 短時間で細胞を脱着させる温度応答性培養床表面の創製:温度応答性培養皿からの非侵襲的な細胞脱着は、培養皿表面に固定化した温度応答性高分子が低温処理にともない親水性化して、細胞接着分子との相互作用を減少させることを必要とするため、培養皿表面に固定化した温度応答性高分子への水の供給の制御は重要である。これまでに作成した温度応答性培養皿は市販のポリスチレン製細胞培養皿上に固定化していたが、ポリスチレンは疎水性を示し、水分子の供給という観点からは最適ではないと考えられる。今回、この点に着目し、微小孔(直径1μm以下)より水分子が容易に侵入できる多孔性膜上に温度応答性高分子をグラフトした。PIPAAmのグラフト量が同程度であ、直径を同一にした従来型の培養皿に比べ、細胞や細胞シートをより早くより完全に脱着させることに成功した。また脱着の加速化の程度は、細胞シートの場合により顕著であった。2 サイトカインによる細胞脱着速度の制御:これまでの研究で、低温処理により細胞が温度応答性培養床表面から脱着するには、ATPを消費して発生する細胞骨格に起因する収縮力が必要であることが明らかになっている。種々の因子により細胞骨格の再組織化に関与する情報伝達系を刺激することができるが、これらのうち、ATP,dbcAMP、各種細胞成長因子、カルシウムイオノフォアを検討した。いずれを用いても顕著な加速化を達成する条件は得らなかった。3 サポータを用いた脱着過程の短時間化:温度応答性培養皿から回収した細胞シートを組織工学的に応用することを目標として、欠陥のない細胞シートを回収し、別表面に移動して再接着する種々の条件を精緻化する過程で、条件の最適化により脱着に要する時間を十倍以上短縮することに成功した。これらの成果の一部についてはすでに論文発表した。残りについても今後発表していく予定である。
著者
大和 雅之
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ラット背部皮膚および人工的に作成した創傷部位について、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、免疫組織学的検討をおこなった。培養細胞では高度の組織化が観察されるアクチン線維は、正常真皮中に存在する線維芽細胞ではまったく観察されなかった。β1インテグリンは、表皮細胞や毛包細胞では発現していたが、その局在は細胞-基質間接着ではなく細胞-細胞間接着に関与することを強く示唆するものであった。正常真皮中の線維芽細胞ではβ1インテグリンは検出されなかったが、創傷治癒部位の線維芽細胞では、血球系の細胞と共に強く発現していた。創傷治癒部位の線維芽細胞はアクチン線維の組織化も観察された。正常真皮中の線維芽細胞は、大量のコラーゲン線維によって三次元的に覆われているため、抗体が認識するエピトープがインテグリン細胞外ドメインにある場合、コラーゲン線維によるマスキングの可能性を否定できないが、インテグリン細胞質ドメインを認識するポリクローナル抗体を用いても同一の結果がえられたので、マスキングはないと結論した。有限寿命をもつ正常二倍体線維芽細胞を用いた、基質接着部位に濃縮する種々の分子の抗体染色の結果は、これまでに用いられてきた無限寿命をもつNIH3T3やSwiss3T3と同様であった。培養細胞では非常によくその発現を検出できるFAKは、正常組織では、ほとんど検出できなかった。以上の結果は、培養細胞系は、創傷治癒部位の線維芽細胞とは似ているものの、正常真皮中の線維芽細胞とは大きく異なることを示唆している。
著者
大和 雅之 清水 達也
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

我々は、温度に応じて水との親和性を大きく変化させる温度応答性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を培養皿表面に共有結合的に固定化することにより温度応答性培養皿を開発した。この表面は、37℃では市販の培養皿と同程度の弱い疎水性を示し様々な細胞が接着・伸展するが、温度を32℃以下に下げると高度の親水性を示し、トリプシンなどのタンパク質分解酵素を必要とすることなく細胞を脱着させることができる。コンフレントな細胞層を形成させた後に低温処理すると、全細胞を細胞?細胞間接着により連結した一枚の細胞シートとして脱着を・回収することができる。本研究は新しいハイブリッド型人工尿細管の開発をめざして、温度応答性培養皿を用いて作製した腎尿細管上皮細胞シートを多孔膜上に再接着させ、再吸収能・物質産生能の機能評価をおこなう。本年度に以下の成果を得た。(1)ヒト尿細管上皮細胞シートの作製:昨年度に用いていたイヌ近位尿細管上皮細胞由来株細胞に代えて、正常ヒト尿細管上皮細胞を温度応答性培養皿上で培養し、細胞シートとして回収する条件を確立した。臨床を考慮すると正常ヒト細胞の利用は必須であるが、株化(無限寿命化していない正常)していない正常ヒト尿細管上皮細胞を用いても、培養条件を工夫することにより、細胞シートとして回収し、平膜型透析デバイスに組み込むことができた。(2)物質輸送能に必要な分子群の発現、局在化:人工尿細管デバイスとしての機能に要求される種々の物質輸送関連分子の発現と局在を確認するために、免疫染色後に、共焦点レーザー走査顕微鏡により細胞シート縦断面像作製した。トリプシンで回収し、透析膜上に播種したコントロール群に比べ、有意に良好な局在が認められた。以上により、腎尿細管上皮細胞シートを利用したハイブリッド型人工尿細管の開発の可能性が示された。
著者
井田 尚
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「百科全書」(1751-72)を対象に、「誤謬」(《erreurs》)の語を含む全項目を調査し、科学項目の記述内容を詳細に分析した。その結果、「百科全書」の科学項目で記述される誤謬には、語彙のメタファー的使用に発する誤謬、対立仮説へのレッテル貼りとしての誤謬、俗信・迷信としての誤謬、不動の真理から誤謬に転じた「支配的誤謬」、誤謬から真理に転じた過渡的誤謬など、様々なケースが見られることが分かった。
著者
山本 富士男
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、近年のWeb サービスの基盤となっている分散オブジェクト技術、データベース、オブジェクト共有空間等のソフトウェア技術と、短距離無線通信やセンサ/アクチュエータを用いるフィジカルコンピューティング関連技術に関して、学習者がそれらを連携させ、興味を持って修得できるようにすることにある。具体的には、(1)現実感のある魅力的なプログラミング課題の考察を行い、(2)それらのスマートフォンや分散プログラミング環境での解決、実装例を多数示し、(3)今後の分散アプリケーション開発のための、学習者の環境や要求に応じた適切な連携手段と情報を明らかにした。
著者
伊藤 浩史 長沼 誠二 片岡 寛章 喜多村 直実
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

頭頚部扁平上皮癌培養細胞株においてHGF刺激前後で発現が変化する種々の遺伝子を制御しているmicroRNAとして上皮間葉系移行(EMT)に関与するZEB1をターゲットとするmiR-200cと、癌細胞の浸潤や増殖因子の活性化に関わるST-14/matriptaseをターゲットとするmiR-27bを同定した。また前立腺癌でGleason score別に癌細胞を分取することによって、生検時のGleason分類ではHigh riskかIntermediate riskか判定困難な症例で、miRNA-182が予後診断マーカーとして有用であることを明らかにした。
著者
森下 將史 高木 丈夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

グラファイト上吸着ヘリウム3薄膜吸着第1原子層の固相は2次元量子スピン系のモデル物質を与える。この系の磁性は多体交換相互作用の競合により支配されるが、その詳細は不明であった。本研究では、吸着ポテンシャルのcorrugationが重要な役割を演じていると考え、経路積分モンテカルロシミュレーションによる吸着エネルギーの計算に基づいて吸着構造相図を求めた。最も低面密度の固相である√<3>×√<3>相から面密度の増大に伴い、striped domain wall構造、honeycomb domain wall構造、honeycomb cage構造、incommensurate構造へと、2次構造相転移により次々と移行する。この吸着構造相図は、様々な実験事実を定性的にではあるが、非常によく説明できるものである。特に、最大の謎であった、突然の反強磁性-強磁性転移は、commensurate構造からincommensurate構造へのC-IC転移による多体交換相互作用の競合の変化の結果として説明される。一方、この系の比熱を交換相互作用の大きさと同じの100μK程度の低温まで測定し、広い面密度領域に渡り、2桁以上の広い温度範囲でほぼ温度に反比例する依存性を観測した。局在スピン系の高温比熱は温度の自乗に反比例することが期待され、観測された比熱は異常なものである。この異常なべきの正常値からのずれは、多体交換相互作用の競合の強さを反映したfrustration parameterであると考えられる。観測された比熱のべきは複雑な面密度依存性を示すが、これも本研究により提案された構造相図により説明できる。また、√<3>×√<3>相より低面密度領域で競合が弱まること、流体相の比熱の寄与は観測されず、spin polaronの比熱と考えられるbumpが観測されたことは、これまで直接的証拠が得られていない零点空孔子の存在を強く示唆する。