- 著者
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藤井 美穂
寒河江 悟
豊田 実
時野 隆至
- 出版者
- 札幌医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
MCA法による新しい遺伝子の同定:卵巣癌細胞株を用いMCA(methylated CpG island amplification)法により、正常細胞とでサブトラクションを行うことにより、卵巣癌での異常メチル化している多数の遺伝子を同定した。これは卵巣癌に抑制的に働く新たな遺伝子の発見につながるもので、現在遺伝子データベースを利用し各遺伝子について検討している。同時に各遺伝子のエピジェネティクな異常と卵巣癌での分子生物学的特徴について検討中である。TCF2遺伝子についての解析:上記のMCA法により、メチル化によりサイレンシングしている遺伝子の一つとしてTCF2遺伝子を同定した。TCF2は細胞の分化に関与する転写因子であり、各種腫瘍において発現異常が報告されている。実際卵巣癌ではTCF2遺伝子のメチル化は、卵巣癌細胞株16例中8例(50%)、卵巣癌症例68例中16例(23.5%)に認めた。メチル化を認める細胞株においては、発現の低下あるいは消失を認め、DNAメチル化阻害剤により遺伝子の再発現を認めた。また、プロモーター領域のヒストン脱アセチル化を認め、メチル化による遺伝子発現抑制にヒストン修飾が関与することが示唆された。さらに組織型別では明細胞性腺癌ではメチル化による抑制は少なく高頻度な発現が認められた。これは卵巣癌の中でも予後不良な明細胞性腺癌の生物学的解明につながる可能性がある。(投稿中)癌での細胞周期M期の制御の解析:これまで細胞周期M期に関わる遺伝子の異常と微小管阻害剤の感受性を検討してきた。ドセタキセルを暴露させたMitotic Indexの高い細胞株は抗癌剤に高い感受性を示し、CyclinBの核への集積が認められた。発現を調節している分子としてBUB1,MAD, Auroraなどの分子について検討中である。さらにCHFR遺伝子を細胞株に導入することによって、M期での分子制御機構の解明や抗癌剤の感受性の変化についても検討中である。