著者
柿田 秀樹
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、コミュニケーション学、とりわけレトリック研究の視点から、騙し絵と遠近法箱という具体的な視覚文化に焦点を絞り、そこに介在するレトリックの力を考察した。とりわけ、オランダとイギリスで17世紀に活躍したサミュエル・ファン・ホーホストラーテンを中心に、彼の絵画論とアナモルフォーズ、そしてレトリックに関する文献調査と共に騙し絵と遠近法箱の作品を分析した。西欧絵画に内在するアナモルフォーズ(と遠近法)に焦点を当て、その歴史的変遷と視覚レトリックの文化的力について批判的に考察した。
著者
李 孝徳
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

東アジア系(日系、朝鮮系、沖縄系)移民の第二次世界大戦後の文学表現は、日本の近代文学・比較文学あるいは各国文学研究においては、特殊なものとして個別的にしか扱われてこなかった。本研究では、こうした文学表現を、日本とアメリカ合衆国の植民地主義と人種主義が生み出した環太平洋地域のディアスポラによる、共通した「根こぎ」の経験が普遍的に表されたものと捉え、関係史的な観点から新たな文学研究のアプローチを提示した。
著者
坂本 勉 永和 良之助
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、高齢者の経済的虐待防止に焦点を絞った。まず、国内での高齢者虐待防止の相談機関として地域包括支援センターの状況を分析し、その課題を抽出した。また、海外での先行研究などから、消費者被害や経済的虐待事件から高齢者を守るために、金融機関と連携する事例が認められた。これらの先行研究を国内で応用するための基礎的課題を、法律専門家および福祉専門家との協議からその連携を探ろうとしたものである。
著者
松井 徳光 田畑 麻里子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本応募研究課題の主要な実験内容は、食肉を発酵する担子菌のスクリーニングを行い、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症を予防する担子菌由来および発酵作用によって生じる抗トロンビン活性、線溶活性、抗酸化活性および免疫力を高めガンを予防するβ-D-グルカンなどを有する機能性食肉を製造することである。研究の結果、食肉の発酵にはスエヒロタケが適しており、発酵に伴って肉懸濁液中のトリグリセライド量が減少し遊離脂肪酸が増加していること、トータルコレステロールおよび遊離コレステロールも減少の傾向を示したこと、それぞれの発酵期間後に独特の風味を呈することなど、機能性のみならず、新しい加工食品として有効であることが示唆された。さらに詳細な実験が必要であるが、本研究で、担子菌で食肉を発酵させることによって、脂肪分やコレステロールが分解できることが明らかとなり、担子菌による食肉の発酵は、より健康的な食肉の製造に適していることを確信した。
著者
別所 義隆 河野 能顕 SAULIUS Klimasauskas
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

tRNAメチル基転移酵素と人工補酵素のAdoMet類似体を用いて、メチル基以外の非天然官能基がtRNA分子に高効率で取り込まれる技術を開発した。tRNA分子に転移される非天然官能基末端を蛍光標識することで、tRNA基質の均一な蛍光標識試料を準備し、tRNA・タンパク質複合体の蛍光結晶を作成した。大型放射光SPring-8のマイクロビームBL32XUビームラインにて、レーザー照射により結晶からの蛍光発色を観測し、微小結晶X線回折測定法を開発した。
著者
小林 謙一 坂本 稔 松崎 浩之 宮田 佳樹 坂本 稔 松崎 浩之 宮田 佳樹 遠部 慎
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

縄紋時代の居住期間、特に竪穴住居の構築・使用・廃絶の時間経過を研究する目的で福島県井出上ノ原遺跡、神奈川県相模原市大日野原遺跡の縄文時代中期集落発掘調査を行い、データをとりながら年代測定用炭化種実・炭化材・土器付着物を採取し、年代測定を両遺跡あわせて約60測定行った。他に、日本先史時代の火災住居、重複住居や盛土遺構などの年代を測定し、縄紋集落の形成期間や形成過程を明らかにした。
著者
中村 史
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成29年度は、単著『七仙人の名乗りーインド叙事詩『マハーバーラタ』「教説の巻」の研究ー」の執筆・出版に相当な時間を費やすこととなった(平成29年12月20日出版)。この著書は、平成27年度末に北海道大学・文学研究科に提出していた博士論文「サンスクリット叙事詩『マハーバーラタ』第13巻の文学研究」を改稿し、博士論文には無かった二章を新たに付加して執筆したものである。この著書は『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」の文学研究を試みたものであり、『マハーバーラタ』に文学研究が少なく(決して多くなく)、『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」には研究そのものが少ない状況において、大きな意義を持つものと考える。特に、この著書の書名の元とした『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」の神話「七仙人の名乗り」については、そこに様々な文学技巧が見られるという点において、『マハーバーラタ』の神話としては非常に特異な存在である。そうした、この神話の文学性、特異性を指摘したことは、私の今後の研究の展開について大きなきっかけとなったと言える。しかし、この説話は非常に難解な説話であるため、さらなる解釈・研究を続けていかなければならないと考えられる。平成29年度10月より1年間の長期研修期間を得、京都大学文学研究科の内地研究員として、研鑽を積んでいる。その中で、『マハーバーラタ』第13巻「教説の巻」「七仙人の名乗り」の研究を英文の論文とすることが1つの課題である。
著者
河島 基弘
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

特に日本における人間と動物の関係の現状を(1)宗教の影響や民俗史などの歴史的視点、(2)社会の個人化傾向やペットブームなどの現代社会論的視点、(3)諸外国との比較という比較文化論的視点の3つの観点から考察した。具体的な成果としては、捕鯨問題に特化した形で単著を1冊、和文と英文の共著をそれぞれ1冊ずつ刊行。また、肉食の倫理、動物実験の是非、ペット飼育をめぐる問題などを理論と実践の両面で詳述した動物倫理の入門書を翻訳出版した。
著者
太田 孝彦 林田 新 村木 桂子 森下 麻衣子 吉田 智美
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

従来、江戸時代絵画は様式を語るのが常で、筆法が果たす機能に注意することはなかった。筆法の機能に注目してみれば、「書と画」の南画家たちにとって筆法修得は「古人になる」王道であり、狩野派が語る粉本の重視は筆法の価値を取り戻そうとする試みだったと解釈できる。こうした筆法重視の観点からは新たなる江戸時代の絵画史が語られることになる。それは従来の「美術」の観点から語っていた江戸時代の絵画史とは別の面を見せることになるだろう。
著者
稲垣 勉 大橋 健一 白坂 蕃
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、宗主国によって植民地に建設された避暑地・ヒルステーションの現状を、領域横断的なアプローチで明らかにすることである。ヒルステーションはレジャーを通じた国際間の文化接触の先駆けであり、現在でも観光地として機能し続けている。リゾートの祖型のひとつであるヒルステーションの現状分析を通じて、新興国民国家における国内観光の社会的役割を明確化し、さらにグローバル化の下における、気候条件やより良い生活環境を求める「人の移動」を分析することで、ヒルステーションの現代的な意義を明らかにした。
著者
服部 進 小野 徹
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

この研究の目的は平成13年から15年の3年間で,トンネルや斜面の変位を検知し,あるいは橋梁部材のような大きな構造物の変形を計測できるディジタル写真測量システムを開発することであった.システムの実現のために下記の課題を研究し,ほぼ当初の目的を達成した.以下研究結果の概要である.1.計測精度の向上-ディジタルカメラの低い解像度でトータルステーションの観測精度を実現するため,ターゲット,撮影法,画像座標計測法の改良を進め,10mで400μm以内の誤差の3次元精度を得た.2.計測速度の向上-100点の計測点,30枚の画像で1時間以内の計測を達成するため,画像点の自動ラベル付け,コードをつけたターゲットの開発,高速の調整計算法などを開発した.3.網設計の研究-計測は観測の網を作って精度を向上させるため,最適な網の設計が重要であった.ZODと呼ぶ基準形の問題を解決するとともに,変位検知のためのFOD(観測形態の最適化),SOD(観測の重みの最適化)を研究した.4.実用性の向上-トンネル,橋梁部材,コンクリート歪試験,斜面模型などの計測を通して,実用性を向上させた.5.遠方監視法-遠方の岩盤変位を監視するためには,望遠カメラが必要である.このため正射投影変換法を考案し標定法やキャリブレーション法を研究した.
著者
伊藤 裕久 栢木 まどか 杉山 経子
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、伝統都市の祭礼空間(巡行路・祭礼拠点の構成など)が、都市空間の形成・改変に対して、どのような変容過程をたどったかを文献史資料と現状の祭礼調査によって解明するものである。主な調査研究対象として取り上げた江戸・東京の神田祭、福岡の博多祇園山笠では、とくに近代・現代都市化過程において、伝統的な祭礼空間が、断絶的な都市空間の改変を修復しながら連続的に変化することで、地域社会の歴史性の継承や地域コミュニティの持続・形成に重要な役割を果たしたことが明らかとなった。
著者
中里 裕一 遠山 茂樹
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、薬液や造影剤の注入、血管の拡張あるいは閉塞などを行うカテーテル手術を自動的に行うシステムの開発を目的としている。特にカテーテルの挿入作業は術者の技能や経験に依存するため、自走式のカテーテルの開発を行った。生理食塩水の圧送・吸収による複数の節に分かれたバルーンの周期的な膨張・収縮による蠕動運動を利用した自走式のカテーテルの開発をした。この結果を基に、移動メカニズムのモデル構築の検証も行った。
著者
大河 正志 佐藤 孝 新國 広幸
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

共振周波数の高周波数化を目的に,共振周波数のダイヤフラムサイズ依存性について考察を行った。理論どおり,ダイヤフラム厚に比例し,辺長の二乗に反比例する結果が得られた。パルス時間幅特性については,時定数が数ms程度であることが分かり,音圧特性については,最大出力電圧が音圧に比例することを確認した。また,高次共振モードの利用による高周波数化についても,その有効性を確認した。AE特徴量の推定・算出システムに関しては,「雑音処理」と「AE特徴量算出」の2つの機能からなるアプリケーションを製作した。本システムに振幅,時間幅,雑音が異なる模擬信号を入力して,AE特徴量を算出できる条件を明らかにした。
著者
鍋島 俊隆 野田 幸裕 平松 正行 毛利 彰宏 吉見 陽 肥田 裕丈 長谷川 章 間宮 隆吉 尾崎 紀夫 山田 清文 北垣 伸治
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、幼児・学童期において問題視されている心理社会的ストレスを想定し、幼若期マウスに社会的敗北ストレスを負荷し、社会性行動について評価した。幼若期マウスは心理社会的ストレスに対して、成体期マウスに比べて脆弱であり、成体期まで持続する社会的行動障害を示した。社会的行動障害モデル動物としての評価系を確立できた。この動物の社会性行動障害には、グルココルチコイド受容体の活性化、モノアミン作動性神経系およびグルタミン酸作動性神経系の遺伝子発現変化に伴って、これら神経系の機能異常が関与していることが示唆された。
著者
原 一男
出版者
大阪芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大阪泉南地域のアスベスト被害の実態と「泉南アスベスト国家賠償訴訟」の経過を2007年から2015年にわたって取材撮影し、ドキュメンタリー映画として制作。撮影テープ:500余時間。撮影場所:泉南市、阪南市、岸和田市、堺市、大阪市、東京都、韓国等。撮影対象:原告、遺族47名、支援者15名、弁護団16名、医師・学者3名、計80余名。2016年2月『ニッポン国泉南アスベスト村 劇場版 命て なんぼなん?』(134分)を完成。2月9日完成試写会を大阪芸術大学映画館で開催。2月13、27日東京・シネマヴェーラ渋谷「原一男監督特集」で特別上映。秋に大阪で自主上映後、東京で劇場公開。国際映画祭に出品予定あり。
著者
野々村 美宗 眞山 博幸
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヒトがモノを食べたときに感じる食感の発現メカニズムを明らかにするために、口腔内で起こる物理現象を模倣したシステムを構築した。寒天ゲルとアパタイト/でん粉複合材料の表面に階層性のフラクタル構造を刻んで舌と歯のモデルを調製した。次に、フラクタル寒天ゲル上におけるゲルとエマルションの圧縮・摩擦特性を評価した。増粘剤水溶液を飲んだ時のとろみと舌モデル表面の摩擦変化の間には高い相関があることを見いだした。
著者
上野 耕平
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

いじめなどの問題が噴出するなか,現代社会が体育・スポーツ活動に期待する事柄の一つとして,フェアプレイの日常生活場面への般化が挙げられる。そこで本研究ではフェアプレイとして鬼ごっこにおける援助行動に注目し,附属小学校との連携のもと,スポーツ活動及び体育授業の実践を通じて,援助行動の学校生活場面への般化を促進する体育授業を構築することを研究目的とした。本研究の結果,援助・被援助行動が頻繁に行われるなかま鬼及び,その効果を測定する援助自己効力感尺度を開発した。なお体育授業場面への実践及び日常生活場面への般化については新しい研究課題に引き継いだ。
著者
川崎 恭治 加藤 友彦 熊谷 博夫 山藤 馨
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

過冷却液体のダイナミクスに対する場の理論的定式化をおこなった。ここで時間反転に対する正しい変換性を持つ事に注意した。又超伝導体の量子化された磁束のダイナミクスを表す簡単な模型について考察した。関連する問題としてスピングラスや量子論的多体系の有効相互作用について研究した。
著者
坂村 律生 新田 勇
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

シュリンクフィッタ技術により微細に集光されたレーザー光を照射できる新しいレーザー装置を作成した。この装置を用いて、ラット背部の皮膚全層に作成した黒墨汁による刺青に、様々な条件のレーザー照射を行った。肉眼所見、組織学的所見に基づいて、刺青の除去に対する、至適レーザー出力、照射方法を検討した。有効な照射条件では皮膚深部の刺青も除去可能であった。少ない副作用で深部への効果を得られる可能性が示唆された。