著者
菊地 晶裕
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

セレノプロテインP(SeP)は糖尿病病態を形成するヘパトカインである。本研究ではSePの立体構造情報を基盤としてSeP阻害剤の候補化合物を見出すことを目標とした。結晶化を行うため、ヒト血漿から高純度に天然型SePを精製する手法の確立し、あわせて、システイン置換体SePの発現・精製手法も確立することが出来た。研究期間内に良質な結晶を得るには至らなかったが、ホモロジーモデリングからSePの立体構造モデルを提示することが出来た。また、骨格筋ではLRP1がSePの取り込み受容体として機能すること、骨格筋に取り込まれたSePは運動抵抗性を誘導する要因となっていることを解明することが出来た。
著者
松浦 敏雄 中西 通雄 西田 知博
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,中学校の「技術」分野で必履修の『プログラムによる計測・制御』を学ぶための学習支援ソフトウェアおよびその教材を開発した.我々が既に開発していた初学者向けプログラミング学習環境PENを拡張し、PEN上でハードウェア制御プログラムを開発できるようにした。また、ここで開発したプログラムを、PEN上で動作させることで、パソコンから直接、入出力制御用ハードウェア(Arduino)を制御できるようにした。また、この学習環境を用いたコースウェアを開発した。実験授業の結果、多くの学生の興味をひくことができ、理解度も高かったことを確認した。
著者
藤原 滋樹 笹倉 靖徳
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ホヤ胚におけるHox1遺伝子の発現をレチノイン酸が活性化することを証明した。また,ホヤ幼生の器官形成にレチノイン酸とHox1が必要であることを証明した。オタマボヤはホヤと近縁なのにレチノイン酸合成酵素や受容体を持たない。本研究では,オタマボヤとホヤの両者がレチノイン酸に依存せずHox1の転写を活性化する仕組みをもつことを発見した。オタマボヤがレチノイン酸を失って絶滅しなかったのは,共通祖先がレチノイン酸依存的/非依存的な転写活性化機構の両方を備えていたからと思われる。
著者
水島 治郎 土倉 莞爾 野田 昌吾 中山 洋平 伊藤 武 津田 由美子 田口 晃
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

第二次世界大戦後、西欧諸国の多くで政権を掌握していたキリスト教民主主義政党は、1990年代に入ると各国で凋落し、政権を離れるに至ったが、国によってはその後、党改革を進め、一定の「革新」を可能とした例もある。本研究ではこのキリスト教民主主義政党の危機と革新という現代的展開の動態を明らかにすることで、西欧保守政治における構造的変容の実態の解明を試みた。成果は学会セッション企画、著書、論文などで幅広く公表された。
著者
井奈波 良一 井上 眞人
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

1年目研修医、研修医以外の病院勤務医および病院看護師を対象に職業性ストレス、勤務状況、日常生活習慣、燃え尽き度、仕事満足度、健康支援策等に関するアンケート調査を行い、職業性ストレス、燃え尽き、過度の眠気の要因を分析し、対策を立案・実施した。さらに再度、アンケート調査を行い、対策の効果を評価した。また、病院看護師を対象にフルオーダリングシステム導入前後でアンケート調査を行い、その健康影響を評価した。
著者
佐藤 由利子 野水 勉 近藤 佐知彦 堀田 泰司 太田 浩 鈴木 雅久 恒松 直美 高浜 愛 水戸 考道
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

非英語圏として英語による授業という弱みを有する日本の短期留学を強化するには、縦横2つの軸からの拡充を検討する必要がある。縦とは、留学前、留学中、留学後の3つの時間軸にそった拡充策で、 特に「留学前」の海外における日本語・日本文化普及活動、「留学後」のキャリア形成支援活動との連携が必要である。横とは、企業、自治体、他大学、研究助成機関、国際協力機関、国際機関等との連携で、日本留学の魅力を高めることが可能になると 考えられる。
著者
権 純哲
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近代的国家体制構築のさなか、侵略を露骨化しつつある日本との友好関係の維持に腐心していた大韓帝国に受容される近代学問と思想が如何なる役割を果たしたか、という問題意識のもと、とくに国家学・反国家思想の受容実態を、近代学術の伝授と受容の観点から究明しようとする本研究において、まず、「国家学」関係書籍の原書確認と対照考察をおこない、その受容実態を明かにしたのであり、つぎに、帝国主義批判書の原書確認と対照分析を通じて、近代日本の帝国主義国家思想に対する批判論の意義と韓国知識人によるその受容実態の一端を究明した。
著者
石割 隆喜 渡邉 克昭 貴志 雅之
出版者
大阪外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

石割は、いまだ「小説」的である『V.』における「個」としてのパラノイア的主体が、同様にパラノイア的でありながら『重力の虹』においては「多」的主体性へと変容したと捉え、これを従来の「小説」という表現形式の「ポスト・ノヴェル」への移行という観点から検証した。これを踏まえ、ピンチョンの「ラッダイト」が「多」として表象されていないこと(「デカさ」ゆえ、"apparition"たりえていないこと)の重要性も指摘した。渡辺は、死をもたらす銃の発砲と映像の撮影との問に見られる類同性によって引き起こされるアポリアを強調しつつ、デリーロ文学の弾道を描いた。両者の不安的な共犯関係を視野に入れ、無限に反復される暗殺の映像によって増殖する亡霊的なアウラという視点から、『リブラ』に描かれたオズワルドの肖像の分析を行った。『アンダーワールド』におけるザプルダー博物館とテキサス・ハイウェイ・キラーをめぐる論考において、多次元的な「シューティング」が、歴史を無化する揺らぎをいかに惹起するかを考察した結果、正史へのパリンプセスト的な上書きにおいて、銃とナラティヴが螺旋状に振れ合っていることが明らかになった。貴志は、アメリカ演劇について以下の3つの観点から研究課題にアプローチし、その成果を論文、著書、口頭発表の形で公表してきた:(1)「他者」の記憶と人種的歴史を再現し、正史脱構築を目指すメディアとしての身体;(2)人種・ジェンダー・階級を包摂した文化的アイデンティティの表象・形成メディアとしての身体;(3)「他者」のアクティヴィズムを表象・生産し、支配的権力を脱構築する政治文化戦略メディアしての身体。以上から、現代アメリカ演劇における身体は、政治文化的表象性を多様に変容しつつ、複雑化するポストモダンの文化的アイデンティティと歴史認識問題を可視化する(再)表象メディアとして強力に作動していることが明らかになった。
著者
長谷 千代子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

現在中国では、宗教的な活動や慣習の意味が問い直されている。本研究では、主に中国における宗教についてのとらえ方の現代的変化を、聖性の在り方そのものと聖性が現れる「場所」や「もの」の在り方の具体的な変化をとおして明らかにしようとした。その結果分かったのは、政治的には宗教活動場所を特定の場所に限定しようとする力が働く一方で、そうした場所での活動に飽き足らなくなった人々が新たな活動場所を作ったり、世俗的な生活そのものを宗教的な修業の場として読み替えたりして、伝統的なものとは異なる聖なる場所を創造していることだった。
著者
杉原 数美 太田 茂 北村 繁幸 西嶋 渉
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、先ず近年環境汚染が懸念されはじめた医薬品の日本の河川における汚染実態を調査し、生活雑排水や簡易浄化槽処理水が流入する二級河川で一級河川より高濃度で検出されることを明らかとした。さらに、医薬品は環境中での動態が調査されておらず、環境中における代謝分解などの受けやすさ、代謝分解物の毒性変動などは不明である。本研究では、化学物質の分解代謝にかかわる環境因子として紫外線による医薬品分解とその生物毒性変動を調査し、毒性が発現する医薬品があることを明らかにした。
著者
鬼塚 千絵
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

歯科における診断は口腔情報やエックス線写真から判断することが主であるが、医療面接で患者からの情報によりある程度の診断が可能とされている。しかし、言語情報からの判断基準については曖昧さが残っている。そこで、臨床経験の豊富な歯科医師が医療面接において患者からどのような言語情報を優先的に得ることや診断および治療方針を決定するかについて、その思考過程や熟達化プロセスを明らかにすることを目的に本研究を行った。臨床経験を積んだ歯科医師と若手の歯科医師の間に言語情報に対する認識および思考過程の違いがあることを明らかにした。
著者
山本 博徳 菅野 健太郎 喜多 宏人 砂田 圭二郎
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ダブルバルーン内視鏡を用い、臨床使用経験を増やし、平成18年3月までにはダブルバルーン内視鏡を用いた小腸内視鏡検査は530件以上となった。これらの経験によりダブルバルーン内視鏡挿入手技が確立され、小腸における止血術、ポリペクトミー、狭窄拡張術、ステント留置、異物回収などの治療手技も確立した。また、独協医科大学との共同研究の形でカプセル内視鏡との比較も行い、今後の小腸疾患に対するアプローチ法の確立に努めた。ダブルバルーン内視鏡の応用として従来の方法では内視鏡挿入が出来なかった術後バイパス腸管や、ビルロートII法やRoux-en-Y吻合などの輸入脚に対する内視鏡観察、処置を積極的に経験し、これら術後腸管に対する胆道疾患の治療法も確立した。平成15年度に立ち上げた小腸内視鏡研究会内に世話人の施設を中心に、自治医科大学、日本医科大学、名古屋大学、京都大学、広島大学、九州大学、福岡大学の7施設でワーキンググループを立ち上げ、小腸疾患に関する多施設共同研究を行った。海外におけるダブルバルーン内視鏡の教育、普及にも努め、その結果世界33カ国以上で導入されている。既にヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニアの諸国からその有用性、安全性の報告が多数見られており、世界レベルにおいてダブルバルーン内視鏡が小腸内視鏡検査のスタンダードとして認められてきている。国際的な経験の共有、技術の均一化、知識の向上のために日本、アメリカ、カナダ、ドイツ、オランダ、中国、韓国の代表者を世話人とした1st International Workshop on Double-Balloon Endoscopyを平成18年8月に東京で開催する予定で準備を進めている。ダブルバルーン内視鏡を用いた小腸の基礎的研究として腸内細菌叢の研究を自治医科大学の細菌学教室と共同で行っている。この研究には消化器内科から大学院生を専属で細菌学教室に派遣し、腸内容物を嫌気性条件で採取し、定量培養その他の手法を用いて細菌叢を定量的に同定するという手法で進めている。
著者
浦田 広朗
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題では、高等教育政策研究の一環として、我が国の私立大学が果たしている公共的機能を実証的に明らかにした。私立大学に投入される資源を示す財務データ(特に収入データ)とアウトプットを示す教育・研究の成果データを広く収集した上で、私立大学が十分には「公」に支えられていない中、公共的機能を果たしていることを、都道府県の経済水準・政府と家計の教育支出・大学教育供給量・大学進学率のパス解析や、公共性の包括的指標としての公的収益率の計測、私立大学の教育や施設設備に投入される公的資金の分析などにより明らかにした。
著者
中嶋 省志
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

商品名サホライドには優れた根面う蝕予防効果が認められている。しかし根面や歯肉が黒くなるという審美的問題があり。本研究では黒くならない根面う蝕の予防剤(象牙質ミネラルの脱灰抑制とコラーゲン分解の抑制)の開発に繋がる探索研究を行った。その結果、フッ化亜鉛に最少量の塩酸を加えた溶液に、サホライドの濃度の約1/5という低濃度フッ素にもかかわらず、これと同等レベルの脱灰抑制効果を認めた。また処置面で着色は認められなかった。一方、コラーゲンの分解抑制効果に関しては、サホライドに匹敵するような十分な効果は得られなかったが、今後、より高い濃度での評価や塗布方法を改良することでこの目標を達成したい。
著者
神谷 徳昭 鈴木 大郎 森 和好
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

非結合代数系からのG(3),F(4) D(m,n)型の構成が端的な概要です。この構成は数理物理学と非結合的代数学の融合分野の研究です。それは歴史的に述べれば19世紀の末のカルタン、キーリング,フルビッツに起源をもつと考えます。勿論現代の数学として4元数、8元数、交代代数、ジョルダン代数の立場からルート系を用いないジャコブソン的な構成方法でフロイデンタールの伝統をうけつぎながら幾何学とリー代数に特に超リー代数の特徴ずけです。三項系代数系の分類とパース分解と南部恒等式の特徴を研究しました。
著者
阿萬 弘行
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

投資家タイプごとに、ニュース情報に対する反応がどのように相違するかを明らかにするために、多種多様な情報ソースへの投資行動の反応を分析した。主な成果として、テレビ報道や企業広告による幅広い投資家層への情報量増加は、取引高を活性化することが示された。これは、投資家の注意力仮説と一致する。得られた結果は、決算などのハードなタイプの企業情報だけでなく、より一般向けのソフトな情報もまた、個人投資家の意思決定に影響を及ぼすという意味で、新たな知見である。
著者
富田 晃彦
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

園児・保育者・保護者に宇宙への興味、そして科学的な見方・考え方をもっと持って欲しいという目的で、保育園での「天文あそび」活動を行った。その結果、宇宙の話は園での保育活動に取り入れられるものであり、考えを言葉にする、それを人とやり取りするということを含め、科学的な見方・考え方を園児に育てるのに有効であることがわかった。宇宙が対象であるが、都市域、昼間、部屋内でも十分な活動が展開できることも示した。
著者
奥田 晶彦 折茂 彰
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

F9あるいはP19細胞は、哺乳動物(マウス)の発生初期を反映する培養細胞であり、これらの細胞にレチノイン酸等を加えることにより、細胞が分化し、神経あるいは心筋を成す細胞等に変化させることができる。それ故、これらの細胞は哺乳動物の初期発生を研究する上でよいモデルシステムとなっている。また、これらの細胞を用いた研究から転写に関して興味深い報告が数多く成されている。その1つがレチノインレセプター(RAR)β2遺伝子の発現に関するものである。この遺伝子のプロモーターは、RAR認識配列を2つ有しており、この遺伝子の発現は自分自身の遺伝子産物により自己調節されている。但し、この遺伝子の発現にはRARだけでは十分ではなく、初期胚特異的に発現する転写補助因子が必要であることが実験的に証明されている。私は、1998年に初期胚特異的転写補助因子UTF1をクローン化した。UTF1のアミノ酸配列を注意深く見てみると、種保存領域の中にLxxLLモチーフが2つ存在していることがわかった。そこで、私はUTF1が、上記の初期胚特異的転写補助因子に相当するのではないかと考え研究を始めた。まず、COS細胞への遺伝子導入実験によりUTF1が確かにRARβ2遺伝子のプロモーターを活性化する能力をもつタンパク質であることがわかった。且つ、この活性化は、プロモーター上に存在するRAR認識配列を介したものであることが確認された。また、GSTプルダウンアッセイによりUTF1とRARが直接結合することが確認された。但し、この結合は、レチノイン酸及びRARのAF2領域に非依存性であることが明らかになり、TIF-2等のステロイドホルモンレセプター補助因子とは、異なる様式で結合することがわかった。
著者
嶋田 繭子 荻 朋男
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヌクレオチド除去修復機構 (NER)は、DNA修復機構の1つで、紫外線により誘発されるDNA損傷の修復に機能する。NERの欠損により発症する遺伝性疾患には、本邦で罹患頻度が高い色素性乾皮症 (XP)や、2015年に指定難病に認定されたコケイン症候群 (CS)などが含まれる。NER欠損性疾患が疑われるが疾患責任遺伝子変異が未確定の症例について解析を実施し、新規の疾患関連因子を同定することを目指した。その中で、2例の興味深い症例を見いだした。
著者
柴里 弘毅
出版者
熊本高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

振戦とは、筋肉の収縮と弛緩が不随意に繰り返されることにより生じるリズミカルなふるえである。本研究では、振戦患者のQOL向上を目的として、書字アシストシステムを提案する。提案システムは、不随意運動に由来する乱れた筆跡を補正してディスプレイに表示する提示部と、ふるえをペンに伝えないようにする振戦抑制機構で構成される。提示部については、振戦フィルタと描画補完より振戦の影響を軽減するアルゴリズムを提案した。抑制機構については、ペン操作時の運動のモデル化を行い、不随意運動のみを抑制することを目的とした外乱制御手法を考案した。