著者
江頭 伸昭 堤 国章 山本 将大
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、うつおよび糖尿病を考慮して、抗がん薬による末梢神経障害に対して予防および治療薬として有望な候補薬剤の探索を行った。その結果、抗うつ薬であるデュロキセチンや抗糖尿病薬であるエキセナチドが、抗がん薬であるオキサリプラチンによる末梢神経障害を改善することを見出した。さらに、胃潰瘍治療薬であるポラプレジンクが、抗がん薬であるパクリタキセルの抗腫瘍効果に影響せずに、パクリタキセルによる末梢神経障害を抑制することも明らかにした。
著者
中川 真一
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

網膜の最もマージン側の領域には長期間にわたって多分化能と分裂能を保つ網膜幹細胞が存在しており、それらは分泌性のシグナル分子であるWnt2bによって維持されている。本研究においては、Wntの下流で働いている転写因子に注目し、それらが作るネットワーク構造を解明することを目指した。その結果、Wntによって活性化されるβ-catenin/LEF1複合体がc-mycを含む複数の転写因子群を活性化していること、それらが協調して転写抑制因子であるc-hairy1を活性化していること、c-hairy1はWntの幹細胞維持活性を細胞に伝えるためのノードとして働いている事などを明らかにした。
著者
舩津 賢人 北川 一敬 松原 雅昭
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、先進的な空間的時間的発光分光計測技術により、高エンタルピー流中のケイ素系超高温耐熱材料周りに生ずる極めて強い発光現象を解明することである。主な研究成果は、次のとおりである。(1)高エンタルピー流中のケイ素系超高温耐熱材料の加熱試験における強い発光現象を複数の波長フィルターと汎用ビデオカメラにより空間的時間的な発光強度分布を取得した。これらの発光強度分布の強度比からケイ素系超高温耐熱材料の温度分布を推定した。(2)高エンタルピー流中のケイ素系超高温耐熱材料の加熱試験における強い発光現象を二波長分光光学系により空間的時間的な発光強度分布を取得した。
著者
森脇 久隆 清水 雅仁 高井 光治
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. リン酸化型RXRα蛋白発現がマウスES細胞に及ぼす影響:はじめに、doxycycline投与によってリン酸化型RXRαの発現調節が可能なクローニングベクターを作製し、リン酸化型RXRα誘導性ES細胞およびマウスの作製を作成した。リン酸化型RXRα蛋白がRARE, RXRE, PPREプロモーター活性に及ぼす影響について検討したところ、RXRE, PPRE活性の明らかな低下を認めたが、RAREへの影響は認めなかった。次に、マウスES細胞を分化培地で培養し、doxycycline投与の有無による細胞増殖への影響について検討したところ、リン酸化型RXRα蛋白発現群では、非投与群に比べて優位な細胞増殖の増加を認めた。また、リン酸化型RXRα蛋白発現群では、alkalinephosphatase染色に陽性を示す、比較的未分化な形態を保った細胞の出現を認めた。2. リン酸化型RXRα蛋白の肝発癌感受性に関する研究:我々が作成したトランスジェニックマウスを、リン酸化型RXRα mutant発現群(Rxrα/+; Rosa/+)と対照群(Rosa/+)の2群に分け、Diethylnitrosamine(DEN: 25mg/kg、生後15日腹腔内投与)で肝腫瘍を誘発した後、4週齢より0.2% doxycyclineを飲水投与し、月齢6ヶ月にて屠殺を行った。各群の肝腫瘍発生率、腫瘍最大径、総腫瘍数について肉眼的に評価を行ったところ、肝腫瘍は各群とも全例に認められたが、総腫瘍数についてはRxrα/+; Rosa/+群において、Rosa/+群と比べ明らかな増加を認めた。また、腫瘍最大径、肝重量についてもRxrα/+; Rosa/+群での増加を認めた。以上の結果から、リン酸化型RXRα蛋白はDEN誘発肝腫瘍形成の過程において促進的に影響しうる可能性が考えられた。
著者
今里 悟之
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、日本の村落空間における極小スケールの微細地名である、田畑一枚ごとの名称の実態を明らかにし、命名のパターンや一般的傾向を見出した。あわせて、そのようなパターンや傾向について、地域間の差異、集落間の差異、集落内部の世帯間の差異などを分析し、その差異を生み出す自然的・社会的条件について考察した。事例集落は長崎県平戸市の諸集落であり、比較の対象として滋賀県野洲市の3つの集落にも言及した。
著者
高橋 徹 谷口 誠
出版者
美作大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

これまでに開発した結晶セルロース添加あるいは被覆した米に、食後血糖上昇緩和効果があることをヒト試験で明らかにした。さらに、結晶セルロースが小腸管腔内の糖の移動に与える影響をスンクスを用いて検討したいところ、結晶セルロース添加によって1)消化管内容物の粘度が上昇し、2)内容物中の糖の拡散速度が低下し、管腔内の多くの糖が留まり、3)糖の吸収速度を緩和させる可能性が高いことを示した。
著者
箱石 大 福岡 万里子 ペーター パンツァー 宮田 奈々
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戊辰戦争期の維新政府が、諸藩・国内民衆・外国人に対して行なった情報・宣伝活動を政治史的観点から分析し、その成果を公表した。とくに諸藩関係では、触頭制という情報伝達制度の重要性を指摘し、民衆関係では、画像史料も活用しながら、新政府軍の宣伝歌であるトコトンヤレ節の流布状況を解明した。外国人関係では、海外所在の未紹介史料を収集し、維新政府を悩ませたプロイセンの反政府的活動に関する新事実を明らかにした。
著者
山崎 歩
出版者
日本赤十字広島看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、青年期以降に発症した1型糖尿病患者のもつ課題を患者側、医療者側の両側面から明確化することを目的とした。青年期以降に発症した患者および、支援を実践している糖尿病看護認定看護師にインタビューを実施し、得られたデータを質的に分析した。その結果、身体的変化の読み取りや、状況にあわせた療養上の対処、療養に関わる経済的問題が明確化された。また、患者ではインスリン注射や血糖測定に伴う身体的苦痛も課題として示された。今後は、結果を基に量的調査へと発展させるとともに、課題を踏まえた支援体制構築の必要性が示唆された。
著者
高木 二郎
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

新たに開発した貢献感尺度の職域における妥当性、信頼性、意義について、国内外の学会にて発表を行い、英語原著論文を発表した。いじめ、ハラスメントが自殺につながるメカニズムの検討において、それらは精神症状だけでなく、身体症状ももたらすことを見出し、国内学会にて発表を行い、英語原著論文を発表した。職場における自殺予防の検討において、職業性ストレスによる疲労感を抑える方法として、一酸化窒素に関する新たな知見を得、また、職業性ストレスは、精神的不健康だけでなく、身体的不健康も伴って自殺に影響すると考えられ、職業性ストレスの身体への影響についても知見を得、これらを国際学会にて発表し、英語原著論文を発表した。
著者
岡本 隆 浅野 志穂 岡田 康彦
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、地震動の中でどのような振動成分が地すべりに強い影響を与えるのかを明らかに することを目的とする。新潟県の地すべり地で観測された中越、中越沖、長野県北部の各地震 動の振動成分とその際に生じた地すべり変位量の関係を解析したところ、従来地震力指標とし て用いられてきた最大加速度はあまり調和的でなく、むしろ地形的に解放された方位における 最大速度を用いた方が地すべり変位量と調和的であることが分かった。
著者
吉橋 博史 小崎 健次郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ラッセル・シルバー症候群は、出生前後の成長障害、相対的大頭症、逆三角形の顔、左右非対称、第5指内彎などを主徴とする先天異常である。近年、エピジェネティック異常による発症が約40%の症例で示されているが、残り約60%の症例では発症機序は未解明である。ラッセル・シルバー症候群30例に対し、独自に作製したカスタムオリゴアレイを用いて、エピジェネティック機構の解明をめざした。7 番染色体母性片親性ダイソミーと考えられた症例以外に、有意な微細構造異常をもつ症例は同定されなかった。
著者
出口 晶子 出口 正登
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

今、日本の木造船が危ない。伝統技術をもった船大工のほとんどが70代後半から80代となり、後継者が育たないまま、腕のある作り手が急激にいなくなっている。日本は世界のなかでも特色ある木造船文化を継承しながら、今、その文化が消えようとしているのである。本研究プロジェクトでは、この終焉期にある日本の船大工の暮らしの民俗と木造船の技術の現実に正面から向き合ってきた。現役船大工による木造船の建造工程や、船造りにかかわる諸職の暮らしを詳細に調査記録し、日本の木造船の技と文化を保存継承するための諸条件について実地に考察した。
著者
阿久津 敏乃介
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,小児右室流出路再建に良好な京都府立大学山岸正明教授らの膨らみを有するePTFE弁内の弁葉形状,bulging sinus形状が,弁開閉に与える影響を検証することにある.初年度は模擬大動脈を用い,弁開口面積の変化に対する膨らみの影響と,最適寸法について検討し,流れ場解析により,膨らみ内の渦の重要性,弁葉形状変化の影響を検討した.研究2年目は,膨らみ具合に変化を加えた実験を実施し,実験範囲の拡大を図った.最終年度は,実寸法のePTFE弁モデルを使用し,更に精度の高い実験を実施し,大動脈モデルでの結果に類似した結果が得られ,膨らみ内の渦の動きにかなりの違いがあることを明らかにした.
著者
中村 精一
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

抗腫瘍性サポニン・シラシロシド類の全合成に向け、CDE環部の立体選択的な合成を行った。分子内O-H挿入反応と続くオレフィン化により生じたジヒドロフランカルボン酸エステルを用いてIreland-Claisen転位を行うと、望みの異性体が立体選択的に得られることを見出した。生成物に対し、分子内1,3-双極付加環化反応によるD環構築、シクロプロパン化を経る核間位へのメチル基導入を行い、目的フラグメントの合成を達成した。また、転位の際の立体化学制御に隣接位の置換様式が重要な役割を果たしていることを明らかにし、酸化型テルペノイド合成に利用可能なキラル合成素子2種を立体選択的に得る方法を確立した。
著者
柳原 格 中平 久美子 西海 史子
出版者
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マイコプラズマ科のウレアプラズマ属細菌は、病理学的にはヒト胎盤における絨毛膜羊膜炎を引き起こし、流早産の原因となる。ウレアプラズマから精製したMBAタンパク質およびそのN末端合成リポペプチドは、in vitroにおいてTLR2依存的にNF-kBシグナルカスケードを活性化し、またin vivoでは妊娠マウスの流早産を引き起こした。これらのことからMBAは流早産の病原因子であることが示された。また、感染性流産を経験した日本人母体由来のウレアプラズマの全ゲノム配列を決定し、MBA以外の病原因子探索、ワクチン候補分子探索のための基盤となる情報を得た。
著者
矢後 勝也 上島 励
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マレー半島上に位置するクラ地峡とKangar-Pattani線は、動物地理区でのインドシナ亜区―スンダ亜区間の境界線として知られる。そこで形態や生態、分子データに基づいて、この両亜区間の境界線で種や亜種に分化したと考えられる陸上無脊椎動物(昆虫類と陸産貝類)の形成過程を調査した。今回調査した陸上無脊椎動物の範囲では、インドシナ亜区―スンダ亜区間での共通祖先からの分化は、5.0-6.0百万年前と9.5-10.5百万年前の大きく2回の分岐年代が推定された。これらの年代は海水面が大きく上昇して両亜区間が隔てられた時期とほぼ完全に一致していた。また、いくつかのグループでは分類学的再検討も行った。
著者
青山 真人 杉田 昭栄
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ヤギがトラック輸送により乗り物酔い(動揺病)になるか否かを検討した。ヒトに悪心(気分が悪いこと)や嘔吐を誘発する薬剤であるシスプラチンをヤギに投与したところ、顔を下に向け、動きが鈍くなった(これを「悪心様状態」とする)。また、ヤギをトラックで輸送すると、悪心様状態と類似の状態が誘発された。酔い止め薬として市販されている「ジフェンヒドラミン」を輸送前にヤギに投与すると、悪心様状態はかなり軽減された。これらのことより、ヤギは輸送により動揺病になるものと考えられた。
著者
島津 篤 吉村 理湖 藤本 千晴 高橋 綾華
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究において、軸索伸長のガイダンス因子として知られていたセマフォリン(Semaphorin; Sema) 3Aは、歯髄組織内および歯槽骨において広く分布していることが判明した。また歯髄細胞自身がSema3Aとその受容体を発現し、その周辺に局在するマクロファージはSema3A受容体のみを発現することが明らかとなり、歯髄細胞が分泌したSema3Aは、自身に対してオートクライン的に、マクロファージに対してはSema3Aを介して直接的あるいは間接的に制御している可能性が明らかとなり、Sema3A発現細胞を制御することによって、マクロファージの作用を制御できる可能性が示唆された。
著者
小山 富士雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は平成20年から3年に亘って開発した「LCB式組織の健康診断法」を発展させて、モノづくり分野における安全文化向上に関する実証と普及に関する研究及び医療分野とサービス分野への適用研究からなる。実証研究は大手化学産業のグループ会社や大手ガラス会社で具体的に組織改善が進められている他、ISOマネジメントシステムの補完を目的として電気・電子業界でも導入が始まったことは、産業界でも注目されることとなった。この他、医療・介護分野やサービス特に金融分野についてエラー防止に関する手法の開発、想定外の事態対応として東電福島第一原発の組織管理の評価や今後のレジリエンスの具体的な手法について提言を行った。
著者
大野 寿子 石田 仁志 河地 修 木村 一 千艘 秋男 高橋 吉文 竹原 威滋 中山 尚夫 野呂 香 溝井 裕一 山田 山田 山本 まり子 渡辺 学 早川 芳枝 藤澤 紫 池原 陽斉 松岡 芳恵
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

「異界」を、「死後世界」および「時間的空間的に異なった領域」をも指し示す、古来より現代に至る人間の精神生活の「影」、「裏」、「奥」に存在しうる空間領域と定義し、その射程をクロスジャンル的に比較考察した。文字テクストのみならず、音楽・図像における「異界」表現、精神生活内の「異空間」としての「異界」、仮想空間、コミュニケーション上の他者としての「異界」等、「異界」という語と定義の広がりとその広義の「異界」に潜む、何でも「異界」にしてしまう現代日本語の危険性を考察した