著者
大田 肇
出版者
津山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

イギリス軍のイラク戦争・占領におけるイラク人虐殺事件に関し、その遺族が、イギリス国防省を相手取って、イギリスの国内裁判所の訴訟を起こした。遺族の主張の法的根拠は、ヨーロッパ人権条約及び1998年人権法の中の「生命に対する権利」であった。この主張を、国内裁判所は、人権条約の適用範囲から外れるとして斥けた。しかしながら、ヨーロッパ人権裁判所は、管轄権の例外にあてはまるとして、その適用を認めた。この判決は、他の類似の事件の判断にも影響を及ぼしている。
著者
小林 龍彦
出版者
四日市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中国の明清代にイエズス会士が漢訳した西洋の数学・天文・暦学書を漢訳西洋暦算書と言う。これら書籍は八代将軍徳川吉宗の禁書緩和政策によって我が国へ舶載され、日本人が広く研究するところとなった。本研究ではこれら書籍の日本への伝播と日本の暦算家への影響について研究した。享保11年舶載の『暦算全書』は建部賢弘や中根元圭らによって翻訳されたが、これ以降、日本人は三角法の重要性を認識し、天文・暦学や測量術の研究へ応用するようになった。天文方の高橋至時や間重富は『霊台義象志』から振り子の等時性と物体の落下法則を理解した。また。高橋が同書と『西洋新法暦書』から大洋航海法を学んでいたことも解明した。
著者
玉田 吉行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究の目的は、英語で書かれたアフリカ文学がどのようにアフリカのエイズ問題を描いているかを探ることで、ケニアの2つの小説Nice PeopleとThe Last Plagueを軸に、疫病に映し出された人間のさがを考察しました。政治や経済の局面ではとらえられない人間のさがを知らなければ、アフリカのエイズに対抗出来ません。アフリカの文学作品は、政治や経済の局面ではとらえられない人問のさがを見事に描き出しています。報告書は、以下の5章にまとめました。1章アフリカとエイズ2章アフリカの歴史3章『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』4章南アフリカとエイズ治療薬5章哀しき人間の性(さが)1章では、HIVの特徴を軸に、アフリカのエイズの状況を描きました。2章では、現在のエイズの惨状を生み出したアフリカの歴史を概観しています。3章では、アフリカのエイズの現状を描き出しているケニアの小説『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』を取り上げ、ケニアの歴史と作家グギを軸に、二つの作品を分析しました。4章では、南アフリカの歴史を辿りながら、エイズ治療薬を巡る南アフリカの状況を考察しています。5章では、辿ってきた哀しき人間のさがについてまとめました。疎外された状況下での自己意識をテーマにリチャード・ライトの作品の研究を始めました。作品理解のために、アメリカの歴史を辿る過程で、アフリカに辿り着きました。以来、ラ・グーマの文学だけでなく、アフリカ全般、医療についても考えるようになりました。授業でも、アメリカやアフリカの歴史・文学・医療などを取り上げてきました。そうした「アフロ・アメリカ→アフリカ→エイズ」の流れと(1)文学と医学,(2)教育と研究、(3)教養と専門の狭間から、「エイズを主題とするアフリカ文学が描く人間のさが」を考えました。
著者
川合 悟
出版者
帝塚山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

持ち上げ時に知覚される物体の重さへの慣性力の影響を検討した。慣性力は指先の物体接触面から物体までの距離(作用点-重心)および軸周りの質量分布に影響される。故に同じ質量で大きさ(3水準)および距離(3水準)が異なる9種類の竿付立方体を用い、これら刺激から知覚される重さの変化から、距離(実験1)および大きさと距離(実験2)の影響を調べた。実験1からは距離の増大は重さの増大を生じた(p <.05)。実験2からは距離の増大+大きさの減少は重さの増大(あるいはその逆)を生じたが、両要因の拮抗関係が崩れると重さは複雑に変化した。そこで複雑な両要因の影響を量的・組織的に説明できるモデルを提案した。
著者
山川 充夫
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東日本大震災と原子力災害の発生により,研究目的及び研究実施計画を一部変更して,被災商店街や商業者を対象とする調査を行った。調査結果からは「歩いて暮らせるまちづくり」の重要性がより強く認識されることとなった。商店街は地域社会の経済活動だけでなく,地域社会における諸活動の要の役割を果たしてきている。それは震災・原災という非常時においても,地域住民に商品やサービスを可能な限り早く提供するという業務的役割のほかに,瓦礫の片づけ,除染活動,食糧援助,募金活動など地域社会への貢献活動を積極的に行った。それは大型店とは違った顔の見える地域社会への貢献である。併せて,商店街が復旧に立ち上がるためにも,水・電気・ガソリンなどのライフラインの確保が前提となることが再認識された。
著者
一ノ瀬 俊明 LIKHVAR Victoria ビクトリア リグバル
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

AndroidにCO2濃度等のセンサーを組み込み、リアルタイムに計測データを位置情報、時刻情報とともにサーバーに集約する、ポータブル型環境モニタリングシステムを開発し、ラグランジュ的環境モニタリングの実施をつくばと東京で行った結果、大気汚染現象の局地性がきわめて高いことが具体的な時空間情報として示された。また、送信された被験者の暴露情報と健康情報を組み合わせることにより、リアルタイムのリスク診断が可能となった。
著者
小澤 智宏 米村 俊昭
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

生体内で血管弛緩、免疫などに関与している一酸化窒素(NO)は、作用に応じた適量が決まっているが、いったんその濃度が変化すると動脈硬化や敗血症など重篤な病気を引き起こす。本研究では生体内NO濃度に着目し、これをセンシング可能なシステムの構築を目指した。強い電子供与により正味の正電荷が減少した金属イオンは、外部からのさらなる電子供与に対して抵抗する。これを利用して金属イオンとの反応性が高いもの(NOなど)のみが反応する分子の構築に成功した。これらを電極表面に修飾してデバイスの構築を試みたところ、金属イオンと電極表面との直接的な相互作用により、本来の分子の性質を電極上で再現することができなかった。
著者
尾松 万里子 松浦 博 山元 武文 森 康博
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Atypically-shaped cardiomyocytes(ACMs)は,成体マウスの心室組織から単離された細胞である。ACMsは低酸素環境に耐性を有し,培養すると自発的に大きく成長して拍動を開始する.培養ACMsを経時的に観察した結果,プリオンタンパク質を発現する小型細胞が互いに融合して多核の大型細胞に成長することを見出したが,細胞分裂は現在の培養条件下では観察されなかった.これらのことから,ACMsは幹細胞から次の段階へ分化の進んだ心筋前駆細胞の一種であると考えられた.また,ACMsはマウスおよびヒトにおいて老齢に至るまで心臓組織に存在することも明らかにした.
著者
馬場 雅志
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

画像を撮影するカメラとCG画像を作成するカメラモデルとの対応付けをとるカメラキャリブレーションとカメラモデルに基づく画像生成について研究を行い、以下の成果を得た。(1)ぼけと幾何特徴の統合カメラキャリブレーションについては、キャリブレーションに用いる各特徴点でのぼけ幅の計測において、空間フィルタリングの手法を適用し閾値処理によりぼけ幅を求めることで高速な処理が可能となった。(2)カメラキャリブレーションに基づく画像生成については、通常のCG画像の生成に使用されるピンホールカメラモデルとは異なるカメラモデルによる画像生成の手法を複数提案した。また、カメラキャリブレーションに基づく画像生成の応用として、広島原爆によるきのこ雲の写真からの高さ推定を行った。
著者
大下 修造 田中 克哉 堤 保夫
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

GLP-1受容体拮抗剤を前投与することで、GLP-1および吸入麻酔薬によるプレコンディショニング心筋保護作用が棄却されることを示した。このことより、吸入麻酔薬による心筋保護作用がGLP-1を介して発現することが明らかとなった。さらに、GLP-1受容体抗体とメディエイターの抗体とを共に蛍光抗体反応させ、共焦点顕微鏡を使用しタンパクの局在を同定した。また、ミトコンドリア膨化アッセイ等を用いて、GLP-1のプレコンディショニング作用に心筋保護作用があること、また、これらの作用が各種メディエイターを介して発現していること、そして最終的にはミトコンドリア機能に影響していることが明らかとなった。
著者
伊藤 芳明
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、アブラナ科野菜等に含まれるイソチオシアネート化合物の抗糖尿病効果の作用機序の解明を目的として、第1にイソチオシアネート化合物の1つであるphenethyl isothiocyanate (PEITC)がAktやErkの活性化を介してインスリン様作用を発現していること、第2にPEITCによるEGF受容体family分子であるErbBの活性化が部分的にAktの活性誘導に関わっていることを明らかにした。
著者
森元 伸枝 大森 信 加護野 忠男
出版者
大手前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

神戸の洋菓子業界には、規模の異なる複数の企業群(全国ブランド化した企業群と地域密着型の企業群)が存在しており、その企業群の人材育成のしくみに焦点をあてることで、業界が存在する地域の規範的要素や社会構造が地域産業における長期にわたる継続的成長に向けた協働にどのような戦略的影響があるかを明らかにしようとした。その過程で、菓子業界における未曽有の変化により、神戸の洋菓子業界内に新たな第三の企業群の存在を発見した。
著者
北村 勝朗 生田 久美子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は, スポーツ指導者の熟達化過程のモデル構築および育成プログラム開発である。日本で優れた指導実績を残しているエキスパート指導者を対象とし, 1対1, 深層的, 半構造的インタビューにより調査を行った。同時に, 調査対象指導者による指導を受けた経験を持つ選手を対象とし, 選手の視点から捉える指導者の思考・行動について調査を行った。得られたデータは質的データ分析法を通して多角的に指導熟達化モデルとして構築された。分析の結果, 最終的に指導熟達化モデルは, 前年度までの研究成果を受け,(1)指導者としての意識変革,(2)関係再構築への認識, および(3)指導役割の取り込み, の3つのカテゴリーから構成されることが明らかとなった。
著者
好井 千代
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、平成13年度から平成15年度にかけての3年間、19世紀末から20世紀にかけての世紀転換期のグローバリゼーションの諸相を同時代のアメリカ文学の作品を通して考察したものである。グローバリゼーション研究は社会学や経済学政治学、更には文学研究など様々な領域において最近10年間ほどの間に隆盛になったが、現代社会や現代文学を議論の中心に置くことが多かった。本研究は、グローバルな現代社会の原型は100年前の世紀転換期に培われたという立場から、こうした現代寄りのグローバリゼーションの議論を100年前の世紀転換期の社会とアメリカ文学に応用し、当時のアメリカの代表的な小説家でコスモポリタンを自認していたHenry Jamesの諸作品を通じて、当時のグローバリゼーションの諸特徴を明らかにした。具体的にいえば、国境を超えた世界の一体化と大きく定義づけられるグローバリゼーション現象の大きな原動力が資本主義であることや、そうした資本主義が支配するグローバリゼーションとは全く別の形のグローバリゼーションを異種混交の開かれたコスモポリタニズムの典型としてのクレオール文化が表していることなどを、Jamesの代表的な諸作品を分析しながら考察した。更に、9・11テロ以降「グローバリゼーション」研究から「グローバリゼーション」をふまえた上での「(アメリカ)帝国」研究へと批評が大きく推移しつつある動向と連動しながら、グローバリゼーションと帝国主義との関係にも着目し、様々な国家や文化の共存を促進するとともに多国間、多文化間の序列化、主従関係をも生むグローバリゼーションの特質にまで考察を深めた。
著者
伊集院 壮
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2型糖尿病は骨格筋をはじめとする末梢組織でのインスリン抵抗性の誘導とそれにともなう糖代謝能の低下が原因で起こる疾患である。本研究では、ホスホイノシチドホスファターゼSKIPが、骨格筋において小胞体ストレスとインスリンシグナル、そしてインスリン抵抗性を結ぶ分子であることを初めて明らかにした。さらに、SKIPによるインスリンシグナル制御は小胞体内腔のシャペロンであるGRP78との結合に大きく依存していることを明らかにした。これはPI3キナーゼシグナルと小胞体ストレスが非常に密接に機能していることを示す全く新しい発見である。
著者
赤司 英一郎
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

十九世紀末から二十世紀初めにかけてのハプスブルク帝国における「部屋」のトポスについて研究することで、この多民族国家において他者からの分離と孤立の度を深めていった人々および個人にとっての心理的避難所として機能した「部屋」のはたらきを明確にするとともに、そのような内部としての「部屋」と外部にいる他者との関係をあらたに見直し、その当時に表された作品と作者と社会とをむすぶ糸について新しい見解を提示した。
著者
吉村 治正 澁谷 泰秀 渡部 論
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

職歴に関する社会調査を従来の訪問面接法ではなく、郵送法およびインターネット法で実施することは可能か、これを実施した場合にどのような技術的な問題が生じるかを、実験的社会調査を通じて検証した。その結果は、回収率・項目欠損率・回答者の偏りという三点で見る限り十分評価し得る値が示されており、職歴のような複雑な構造を持つデータであっても、自記式による調査は可能であると結論づけられる。ただし、職歴を自記式で調査する場合には、調査項目のレイアウトや選択肢の与え方など、調査票の構成を入念に行い、回答者が答えやすくなるような工夫を施すことが必要となることが明らかになった。
著者
森田 喬
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は地図学分野に大きな影響を与えてきたフランスの地図学者ジャック・ベルタン氏(2010年没)の地図学理論を系統的に整理することにより、デジタル化による地図制作という今日的なコンテクストの中で再評価しようというものである。地図学理論の文献収集については一般的な文献検索および研究所の年次活動報告書によった。体系化については、英国の地図学会誌に論文を掲載した。再評価については、ベルタン理論が強調する地図記号の一義性・多義性の区別の重要性を古代の岩絵地図まで遡って確認した。また、近年開発された作図システムによりベルタン理論のデジタル処理への親和性を確認した。ベルタン理論は一般化に向かっている。
著者
諏訪 紀幸
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の主な目的は、代数学の基本事項であるGalois理論では基本的な、そしてここ半世紀急激な進歩を遂げた数論幾何で最も重要な道具であるetale cohomologyの理論の出発点である、Kummer理論やArtin-Schreier理論を一般の可換環あるいはschemeの上で一般のfinite flat group schemeに対して定式化し、理論を展開することであった。特に、Serreが有限群の群環の単数群を代数群とみなして体のGalois拡大の正規底を捉えなおす議論を展開していたが、finite flat group schemeに対してその議論を定式化することができた。
著者
土岐 仁 廣瀬 圭
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では実滑走におけるスノーボーダーの運動計測とターンのメカニズムを解明するためのシミュレーションモデル開発のために運動解析を行った.慣性センサ・地磁気センサを搭載した運動計測システムと6軸力センサを搭載した雪面反力計測システムを用いてスノーボーダーの運動計測と動力学的解析を行い,スノーボーダーが発揮している力について明らかにした.さらに,スノーボーダーの拘束感を軽減するために,小型力センサを搭載した新しい雪面反力計測システムの開発を行い,異なるスキル(初級者と上級者)のスノーボーダーによるターン中の雪面反力計測を行うことによりターンのシミュレーションモデルを開発するための重要な要素を得た.